中学受験生をもつご家庭から良く受ける質問のひとつに、「小学校の内申点は受験にどれくらい影響するのですか?」というものがあります。小学校の成績の指標として内申点が出されますが、中学受験には果たして影響するのでしょうか。
内申点とは、通知表に書かれている各教科の成績(5段階であることが多いです)を合計した点数のことです、小学校での成績がどうであったかがわかる資料として、成績表のコピーや調査書という形で中学受験の出願の際に提出することがあります。以前は調査書を必要とする中学校は女子校を中心に多かったのですが、最近は成績表のコピーでよいという学校が増えています。
また、各教科の点数だけでなく、出席日数やクラブ活動、課外活動、特別活動にどのように取り組んだかということも成績表のコピーには含まれていることが多いです。そういった部分を提出するので、入試当日の成績一本勝負ではないのか、勉強を一生懸命やっても不合格になることがあるのか、と心配される方が多いです。
今回は、中学受験における内申点の影響について考えてみたいと思います。面接などにもかかわってくることなので、知っておくと安心ですよ。
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私立中学受験に内申点は影響する?
高校受験では、内申点のウエイトが決められているので大きく影響しますが、私立中学を受験する際には内申は影響するのでしょうか。
結論から言うと、私立中学受験では特に内申点の影響はありません。私立中学受験においては、学校の成績よりも入試日の学力試験を重視します。ただし、調査書の提出を条件としているところは面接をおこなうことが多いので、小学校生活をどう送ってきたのかを判断する上で少々影響することはあり得ます。ただし、小学生と中学生・高校生の間には大きな差があるので、小学校の成績は影響しないと考えて差し支えないでしょう。
なぜ内申点は必要ないの?
私立中学を受験する際に内申点が影響しないのは、中学受験で求められる学力の内容が理由です。中学受験のカリキュラムで勉強する内容、すなわち受験で求められる学力と、小学校の学習で身につけてくる学力は異なることが関係していると言えるでしょう、中学受験のカリキュラムでは、小学校で学習する内容を逸脱しているところもあり、小学校では勉強していない内容が含まれていることもあります。
私立中学受験では、理科や社会では中学校、場合によっては原理原則は高校で学ぶような内容もカリキュラムに含まれていることがあります。また、受験算数は特殊であり、小学校で学習の時間をあまりとることがない割合や比、速さといった問題が出題されるほか、つるかめ算、旅人算、時計算といった特殊算も頻出です。XやYといった未知数を立てることはなくても、不定方程式という形で小学校では習わない内容が出題されるのも特徴的です。
方程式を使わず、線分図や面積図を書きながら、特殊な解法で解き進めていくのが受験算数の特徴です。このように、いわゆる学習指導要領から飛び出した学習内容が、中学受験では前提の知識として問われます。小学校で学習する内容は、学習指導要領に沿っていなければいけないので、文部科学省の検定教科書に基づいてその内容を学習する、そのかわりに実験や観察といったことを重視したり、ひとつの文章を時間をかけて読み解いていったりする、というように、学習する内容や形が違います。
中学受験で求められる力は違う
中学受験のための勉強と小学校での学習は、そもそも前提が異なりますし、求められている力は大きく異なります。中学受験において成績が良い生徒さんは、小学校の成績も良い傾向にありますが、その逆はまた真というわけではありません。小学校での成績が良くても、必ずしも中学受験で求められている力が備わっているとはいえず、対策を取らなければ成績を上げることはできません。
このように、中学受験で求められる力は小学校の学習で求められる力は異なるので、私立中学の受験では、成績表のコピーを提出する場合でも、各教科の成績を示す内申は必ずしも必要なものではなく、やはり当日の学力試験の結果で合否が決まります。そういった意味で、目に見えない要素が関係しない分、フェアな入試だと言えるでしょう。
出席日数は見られているので注意
ただし、各教科の成績という意味での内申は関係なくても、調査書や成績表のコピーを提出する場合、出席日数を中学校側が見ている点には注意が必要です。学力自体は、学力試験で判断できますが、出席日数は学力試験では判断できません。
出席日数については、常識的な範囲内で風邪などで休んだ日があった、という程度であれば全く心配することはありません。ただし、平日長期間にわたって休んでいる場合、何か病気にかかっていたのか、それは治っていて中学校生活に問題はないのか、あるいは家族旅行などで休んだりしていないのか、などを見られていることがあります。
それに加えて、遅刻の日数も良く見られるポイントです。遅刻が日常的にあるということは、自己管理ができていないということにつながります。中学校に入ってからきちんと通ってくれないということになると、中学校側も思ったような教育ができません。そのため、合否のライン上にいる場合に考慮される可能性はありますので注意しましょう。
公立中高一貫校の受検に内申は影響する?
中学受験というと一般的に私立中学の受験を想定する方が多いでしょうが、近年、公立中高一貫校が増えてきており、その受検の際には内申を提出します。
公立中高一貫校の受検には内申が影響する
私立中学の受験の場合、求められる学力は、小学校で学習する内容より高度なものが求められているので、学校の内申よりも入試当日の学力試験の結果を重視して合否が決定されます。
しかし、公立中高一貫校の受検は私立中学校の受験とは異なります。公立中高一貫校の入試は「受検」と言われるように、通常の学力試験とは少し異なる、いわゆる適性検査と言われるものです。
公立中高一貫校の適性検査では、まず小学校での学習内容がしっかり理解できているか、定着できているか、ということを前提にしてグラフやデータ、図表などを含めて問題を作り、思考力・判断力・表現力が求められます。大学入試改革を先取りしているような形で、多面的な考え方を見るのが適性検査の特徴です。
そういった思考力・判断力・表現力に加え、公立中高一貫校では、小学校での毎日の生活や学校での活動に積極的に取り組んできたかどうかという点も重視します。そういった点も学力とともに総合考慮して合否が決定されるのが、私立中学の受験と異なる点です。
公立中高一貫校の受検では小学校生活も大きなポイント
当日の学力試験だけでなく、クラブ活動や課外活動、特別活動などに対する積極性なども評価の対象にするため、公立中高一貫校は入試日から合格発表までの期間が長いのです。そのため、公立中高一貫校に合格するためには、学力はもちろんですが、授業に対する態度が積極的かどうか、学校生活を大切なものとして取り組んでいるか、ということが評価の対象となるため、内申は考慮要素になっています。
公立中高一貫校の適性検査では、学力の基礎中の基礎と言える教科書を大切にし、各教科バランスよく理解し、定着していて中学校以降の学習に十分活かしていけるかどうかを重視します、そして、学校生活にも積極的に取り組み、勉強だけでなくバランスが取れた人格形成ができているかという点も重視されます。そのため、適性検査に合格するのは、小学校の学習内容が各教科バランスよく理解・定着で来ている生徒であり、加えて課外活動などにも積極的に取り組んだり、委員会活動などにも積極的に参加できているか、リーダーシップがあるか、といった点を満たしているお子さんだということができるでしょう、
ただし、お子さんの個性はさまざまなので、全員が全員積極的であったりリーダーシップが強かったりするわけではありません。活発なお子さんは適性検査向きと言えますが、目立たなくても日々の小学校生活を大切にし、必要な学力を身につけるためにコツコツ粘り強く物事に取り組むことができるといったタイプのお子さんも合格により近いと言えるでしょう。
まとめ……の前に
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まとめ
中学受験と内申の関係は、私立なのか、公立中高一貫校なのか、によって大きく変わります。国立の中学校でも活動報告書などを提出する場合もありますが、おおむね普通に小学校生活を積極的に送り、遅刻や欠席などはあまりせずに学校生活を送ってきたことがわかれば特に問題はありません。
中学受験で必要な学力と、小学校で習う学習内容は、お子さんの「学力の両輪」です。どちらもお子さんが成長するうえで優劣が付けられないものなので、内申が関係ない私立中学受験をお考えの場合も、小学校での生活も大切にするようにして、受験勉強をするようにしてくださいね。
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参考
一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。