算数の成績が上がらない原因のひとつに、「分数の計算が苦手」ということがあります。分数の計算は中学受験の算数では必須ですが、つまずいてしまって分数の計算が出てくるたびに間違える、という受験生も少なくありません。
その原因としては、分数というものがどういうものなのか、分数の計算のお作法自体を理解できていないことが挙げられます。分数の計算でいつも間違える、という場合は、分数の計算の要領を今一度振り返ってみましょう。なぜ間違えるのか、その原因をしっかりつかむことが克服のための第一歩です。
今回は、算数の成績が上がらない原因その2として、分数の計算の克服法について解説していきます。分数の本質がわかっているか試す例題もあるので、解いてみてくださいね。
分数の計算はルールが大切
分数の計算でよく間違える、という場合は、分数の計算の「ルール」を覚える必要があります。整数の計算のルールをそのまま使えないので、分数の計算ならではのルールがあるのです。具体的には、分数の足し算や引き算では「通分」が必要ですね。割り算の場合は、逆数にして掛け算に直す必要がありますし、「約分」の要領で計算をするというポイントがあります。
このように書いてみると、当たり前のように思えますが、実際に間違えているので、このような分数の計算ならではのルールというものを見直してみる必要があるでしょう。「分数」というものがどういうものなのかよくわからないまま放置したままだと、他のどのような計算問題も身につかないことになるので、算数で点数を取ることはまず難しくなってしまいます。早いうちに手を打ちましょう。
分数が苦手になるのは練習不足と理解不足が原因
計算問題全体に言えることでもありますが、分数が苦手になる原因は、ずばり「練習不足」と「理解不足」です。練習量については、必要な練習量は受験生一人ひとり違うので、ただ塾の宿題をひたすら繰り返していけばいいというわけではない点に注意が必要です。
算数の場合、同じような問題ばかり繰り返す、いわゆる「やりすぎ」がかえって混乱を招くこともありますし、できているのにそれと同じような問題に時間をかけるのは時間のむだにもなってしまいます。
「理解不足」の点については、一見すると見えにくいものです。ですが、分数の仕組み自体をわかっていないと、応用問題や文章題を解くときに間違えるので、気づいたときには時間が足りない、ということになりかねないのでこちらも早めに手を打ちましょう。
この分数の計算、解けますか?
たとえば、次の問題は解けるでしょうか。実は正答率が低い問題なのですが、「分数がどういう数なのか」を確認することができます。
<問題>
「13/15を2/7で割って、商を整数でもとめたときのあまりはいくつですか?」
<解答>
13/15÷2/7=3と1/30
2/7×1/30=1/105
答えは1/105です。多くの受験生が1/30と答えますが、それは間違いです。なぜ間違いなのでしょうか。検算をしてみましょう。
13/15ー1/30=5/6
5/6÷2/7=2と11/12
先ほどの計算で商は3だったので、3にならなければいけないのに2と11/12になっていますね。では、同じことを1/105でやってみましょう。
13/15ー1/105=6/7
6/7÷2/7=3
つまり、答えは1/105が正しいのです。
この問題は、「割り算とはどういうものか」「分数とはどういうものか」が理解できていないと正解できません。この問題は、単純な分数の割り算だと思われるかもしれませんが、本質をついている問題です。
わかりやすく仕組みを解説すると、こうなります。
(13/15=1を15個に分けたもの13個分の大きさ)の中に(2/7=1を7個に分けたもの2個分の大きさ)が何個分あるか=3個分
13/15の中に2/7を3個とると、あまりはいくつになるか=1/105
線分図を描くなどして、図式化するとより分かりやすくなります。
分数の計算を克服するには
分数の計算を克服するためには、分数とはどういうことか、をかみ砕いて理解することが大切です。もし、機械的に問題を解いていてもなかなか間違いが減らないという場合は、分数がどういう性質の数字なのかということがわかっていない可能性があります。基本問題で良いので、間違えないように練習するようにしましょう。
また、割り算を自由自在にできることも分数の計算を克服するためには非常に重要です。割り算ができないと、分数の本質がわかっていないということなので、早めに克服することが必要になってきます。四則計算の中でつまずきやすい分数の計算はこれからますますたくさん出題されてきます。理解を進めて一つひとつの問題を大切に解いて訓練するようにしましょう。
もし、なかなか間違いが減らない、という場合には、個別に先生に教えてもらうことも大切です。分数の理解は、今後の算数の成績を左右します。理解できていないな、と思ったら相談することをおすすめします。
まとめ
分数の計算も数の計算である以上、一定のルールがありますが、いつも間違えてしまうという場合には、「分数とはどういう数なのか」「割り算の仕組みがわかっているか」という、基本中の基本に戻ることが大切です。
分数の計算は、小数の計算と一緒に組み合わせた計算問題として出題されることもありますし、さまざまな文章題や図形問題を解く際にも必須の道具と言えるものです。だからこそ、基本に立ち返って分数の仕組みを理解できるように訓練することがまずは必要です。
分数は、受験算数のカリキュラムにも単元が割り振られています。つまり、それだけ数量感覚が問われる、算数の本質を突く単元だということです。最近の中学入試の算数の問題では、「〇〇とはどういうことか」など、定義や公式の仕組みを記述させるものが出題される傾向があります。いくらたくさんの計算問題を解いたとしても、その計算の本質がわかっていなければ正解できない問題です。
もしなかなか仕組みがわからない、といった場合には、まずは保護者の方が理解度をチェックしてあげましょう。抽象的でわかりにくいところもあるので、ただ問題を解くだけでは対処できません。教え方に迷ったら、個別に先生に指導してもらうことで克服しましょう。より多くの応用問題を解けるようになりますよ。
次回は計算の工夫について解説したいと思います。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。