これまで2回にわたって、小学校が休校中の今だからできる、苦手分野勉強法・克服法の国語対策編をご紹介しました。国語にはさまざまな文種がありますが、それぞれの文章読解法には特徴があります。説明文・論説文、物語文、随筆文、詩に分けてそれぞれの読解方法についてまとめてきましたが、これまで国語の文章読解でつまずいてしまうポイントを把握できたのではないでしょうか。
国語は、日本語だから直前にテクニックを詰め込めば何とか読める、と思われる受験生や保護者の方は非常に多いです。また、算数には解法があるということはわかっても、国語については「ただ読んで内容を把握すれば設問は解ける」と考えている方もまた少なくありません。
たしかに国語は、「出題された文章を読み、内容を把握して設問を解いていく」という教科です。ですが、そこに算数との差はあるでしょうか?すべて同じだと思いませんか?国語にも実は立派な読解法、そして解法のテクニックが存在します。何となく読みでは対応することのできない非常に論理的な教科、それが国語なのです。
この点に気づかないという受験生や保護者の方が非常に多いのです。今の中学入試の国語のトレンドは、文章が長文化していること、設問についても読解が必要なほど難しいものが配置されているという傾向です。いかに文章を大切に、ていねいに素早く読むことができるか、また、設問の意図をしっかり把握することができているか、ということを見るためです。
国語力の有無が中学入試の合否を分けるといっても過言でないのが今のトレンドです。中学入試は4教科の合計で結果が決まりますが、そのどの教科においても「正しい読解」「設問の意図の正しい把握」ということが求められます。つまり、国語は4教科すべての要の教科であると言えるのです。
このことに気づかずにいくらたくさん国語の文章を読んでも、また、きちんとした方法論にのっとって設問を解いていくということをしないと、成績が上がることはありません。ですから、対策なしに対抗できるほど国語という教科は甘くないのです。
今回は、今だからできる苦手分野勉強法・克服法の国語対策編その3として、これまでにご紹介した文種ごとの読解法を前提に、では実際に設問を解く際に何に気をつけて取り組むべきか、テクニックなどの方法論についてご紹介します。ただやみくもに問題を解いていたな、と思う方でもこれから身に着けていけばほかの教科にも応用できますので、ぜひ参考にしてくださいね。
Contents
国語の設問には大きく分けて4つある
模試などで国語の文章題に取り組んだ経験は皆さんあると思います。国語の設問には、大きく分けて以下の4つがあります。
- 選択肢問題
- 書き抜き問題
- 記述問題
- 漢字やことばなどの知識問題
これは、国語に限らず、算数や理科、社会でも共通しています。当然でしょ、と思われるかもしれませんが、それぞれ対策法が異なるのに頭から解こうとして時間切れになったり、問題の意図がわからず解けなかったりということがよく起こるのです。ご経験があるかもしれません。それはなぜなのでしょうか?
頭ではこのように設問には種類がある、とわかっていても、それぞれに対策法があるという基本的なことを特に国語では忘れがちです。また、文章によっても設問の種類の比率は変わるので、対策法を切り替えながら各設問に取り組まなければ、時間内に確実に正解していくことが難しいのです。
また、国語では、記述問題が書けない、というご相談を非常によく受けます。その際に、選択肢問題でどのくらい正解できているか、知識問題に穴がないかということを模試の答案などを拝見して聞いてみると、穴がたくさんあるということが多いのです。方法論にのっとって設問に対峙できていない受験生が多いということがよくわかる瞬間なのです。
では、それぞれの設問の種類によって解法と克服法をご紹介していきましょう。
選択肢問題の解法とは?
選択肢問題は、テキストで国語の学習をする際に必ず解いてこられたと思います。その正答率はいかがでしょうか。なかなか選択肢問題の正答率が上がらなくて国語の成績が振るわない、という方は正しい解法で選択肢を吟味できていない可能性が非常に高いです。
選択肢を吟味することを徹底しよう
選択肢問題では、実にさまざまなことを聞いてきます。「傍線部の理由について正しく述べたものを選びなさい」「傍線部と同じ内容が書かれている選択肢を選びなさい」「筆者の意見として正しいものを選びなさい」「登場人物の心情について正しいものを選びなさい」などなど、文章によってたくさんの選択肢を作ることができるのです。
受験生が国語の設問に取り組む際に観察するとわかるのですが、あとに記述問題がひかえていると思うと焦ってしまい、選択肢をよく読まないで適当に「それらしい」選択肢を選んでいっているということが非常に多いのです。国語の設問の選択肢は、適当に選んで正解できるほど甘いものではありません。
そもそも国語という教科は、設問自体も長いということが多いですし、今の中学入試ではその傾向が顕著です。つまり、長い文章を読み終わった先に、大量の「設問」という文章を読まなければならない、ということに注意して時間配分をしておかないと最後まで解ききることができないということを常に意識しなければなりません。
選択肢問題を解く際には、一つひとつの設問を読み、さらに4~5つあるそれぞれの設問の選択肢を正確に速く読みとって内容をつかむ、ということをしなければならないのです。その点に気づくことができれば、これから訓練を積むことでスピードアップしつつ正答率を上げることができます。
具体的な選択肢の吟味の方法については、のちほど解説します。
「答え探し読み」では選択肢問題は解けない
国語の問題を解くときに、受験生が陥りがちなのがいわゆる「答え探し読み」をしてしまう、という点です。答え探し読み、というのは、設問の選択肢を先に読んでから問題文を読み、選択肢に含まれていた部分を探す、という読み方のことです。
限られた時間の中で正解の選択肢を選ばなければいけないので、答え探し読みは一見効率の良い読み方に見えるかもしれません。しかし、あらかじめ読んだ選択肢に書かれている内容を把握できていても、文章中に使われている該当箇所のことばと選択肢に使われていることばが変えられているため、同じ内容だということがわからなくなってしまうことがよく起こります。
また、理由と結論などが混在している設問の場合、文章を読んでいると前後の流れに混乱してしまい、ただ読んだだけでは理由を聞いているのに結論の選択肢を選んだり、結論を聞かれているのに理由が書いている選択肢を選んだりしまうなどして、必ずと言って良いほど間違えてしまいます。
これらの間違いがなぜ起こってしまうかというと、選択肢を先に読んで、文章中から答えが書かれている部分を探しに行っているからにほかなりません。答え探し読みは一見効率的に思えるかもしれませんが、実は選択肢を吟味せず、無意識のうちに「この辺りに答えが書いてあるだろう」という見当をつけてしまっているので、間違う確率が非常に高いのです。
特に受験生が取り組む国語の文章は、これまでに比べて格段に長く、また内容も難しくなっています。そんな中で答え探し読みをしようとすると、効率的に解答するつもりが、かえって惑わされて時間ばかりかかってしまうということにもなりかねません。最後の方の設問の答えが実は文章の最初の方に書かれているという設問も増えてきます。必ずしも設問の順番は、文章の最初から順番に作られているわけではありません。
そういったことを常に意識しながら設問に取り組むためには、答え探し読みをするのではなく、まずは焦らずに文章全体の構造を把握しながら読むことを徹底しましょう。そのときには、設問の選択肢を全部読むといったことは必要ありません。何よりも文章の構造、内容をきちんと把握しないと、いくら設問を解こうとしても、正解の選択肢を選ぶことができません。
文章中のどこに何が書かれているのかということをを確認するのが「文章の構造を意識しながら読む」ということです。説明文・論説文なら、段落ごとに中心となる文を見つけて線を引いておき、その上に「筆者の考え」「理由」「結論」「具体例」などと簡単でいいので印をつけておきましょう。その中に設問の解答が隠されていることが多いので、文章を注意深く読むということが選択肢問題を正解する第一歩だということを忘れないでください。
選択肢問題の吟味の具体的な方法
選択肢問題の設問に正確に答えるためには、文章の構造と内容を正確に把握すること、選択肢自体を細かく読んで吟味し、解答となるものを選びきるということが重要だということがわかりました。では、どのように選択肢を吟味し、正解を選べばよいのでしょうか。具体的な吟味の方法について解説します。
受験学年ともなれば、1つの設問の中にある選択肢そのものが2行、3行にわたることもあり、決して短く端的に書かれているとは限りません。むしろ、受験生に「選択肢そのものの正確な読解」を求めているといってもよいでしょう。だからこそ、長い選択肢を一つひとつしっかり吟味しなければ正解を選ぶことはできないのです。
設問が何を聞いているのかを端的につかむ
制限時間の中で1つの設問にいくつも選択肢が書かれていると、それを見ただけで「早く解かなきゃ」と、選択肢だけを読んで文章中に解答を探しに行くという経験をしている受験生は少なくありません。ですが、ちょっと待ってください。いくら正しいことが書いてある選択肢を選ぶことができたとしても、設問で聞かれていることに答えていなければ、それは不正解になるということを忘れてしまっていませんか?
正しい選択肢を選ぶということは、あくまでも設問に対する正しい答えを見つけることです。「設問に対する正しい答えを選ぶ」ということを忘れてしまっては、いくら時間をかけて選択肢を吟味しても正解を選ぶことはできません。
まずは、設問が何を聞いているのかを正確につかみましょう。たとえば、「○○についての具体例として正しいものを選びなさい」であれば○○についての具体例を選ばなければならないので、理由や筆者の意見などを選んでも不正解になってしまいます。同じように「理由」「結論」「意見」「反対意見」などについても、設問で言及されていることを素早く把握しましょう。
物語文であれば、「誰がなぜそのような行動に出たのかという理由」「誰の心情を聞いているのか」「情景描写」「心情が変化した理由」「文章の主題」といったことなどが設問でよく聞かれますので、最初に文章を読解するときに気をつけながら重要部分を把握することを徹底しましょう。
選択肢を一つひとつ分解する
文章読解問題の選択肢は、長くなってきている傾向があります。1つの設問について4~5つの選択肢が書かれている場合がありますが、中には1つの選択肢が100文字を超えるということもあります。そうすると、すべての選択肢を読むと1つの設問で400~500文字の文を読んでいるということになります。選択肢を読んでいる間も、単なる選択ではなく、「短い文章の読解」が求められているということを常に意識しましょう。
なぜそこまで選択肢の読解をしっかりしなければいけないかという点に選択肢問題の特徴があります。長めの選択肢であればあるほど、受験生がしっかりと文章の構造や内容を把握し、さらには内容や設問と合致した選択肢を読み解くことができるか、という2段、3段の高度な読解力を確認することができるからです。単に文章を読んで正しいものを選びなさい、であれば時間をかければ誰でも正解できるかもしれません、そこに、設問と選択肢をかませることによって、さらに事務処理能力もみようというのが、中学入試の選択肢問題のキモなのです。
そのような問いに答えるためには、設問をしっかり読んで何について聞かれているのかを把握したうえで、一つひとつの選択肢をしっかり「吟味」しなければいけません。その「吟味」方法にもコツがあります。その際に意識したいのは、「選択肢の中に引っ掛けが潜んでいる」ということです。
選択肢が長めの文である場合、前半は合っていても後半が間違っている、またはその逆という可能性が潜んでいるのです。ただ選択肢をざっと読んだだけでは正しいのかどうか把握できません。だからこそ、選択肢を分解して、文章の内容と照らし合わせるという「選択肢の吟味」が必要なのです。
選択肢をまず前半と後半に分けましょう。長い選択肢の場合、1つの選択肢が2文に分かれていたり、読点でいくつかに区切られていることがほとんどです。分かれている部分に斜め線を入れるなどして選択肢を「分解」しましょう。これはなぜかというと、選択肢が長い場合、単に全体を読んだだけでは内容を正確につかむのが難しいからです。文を短く区切ることによって、それぞれの内容を把握したうえで文章と照らし合わせていきやすくなります。
選択肢を分けたら、分けた部分を一つひとつ見ていきます。その際に、分けた部分に書かれていることが設問と対応しているかどうかを確認しながら、文章の内容と合致しているかどうかチェックしていきます。
具体的には、まず設問が「理由」を聞いているならば、「理由」について書いていない選択肢は外してしまいましょう。選択肢のうえに×をつけていき、本当に吟味すべき選択肢の数を減らすのです。そのうえで、分割した選択肢を一つひとつ読みながら、文章内容と合っているか確認していきます。分割した部分が文章の内容と合っていたら横に「○」をつけ、違うことや文章中に書いていないことが入っていたらその部分には「×」をつけていきます。
分割した部分すべてが「○」のものが正解となります。ですから、選択肢を吟味する場合は、素早くていねいに読むことが必要です。中には、○なのか×なのか一読した場合はよくわからない選択肢も紛れ込んでいます。どちらかはっきりしない場合は、△をつけておいて、ほかの選択肢に進みましょう。選択肢問題を解く際には「消去法」も大切です。ほかの選択肢がすべて一部分でも×ならば、△の選択肢をもう一度文章と照らし合わせて正解とするということが必要になる場合もあります。
選択肢のことばが文章中にない場合は?
分割した部分が全部○ならば、自信をもってそれが正解だということができます。中には、文章中のことばが同じ内容のほかのことばに置き換えられている場合もあります。その場合は、ことばの知識がものを言います。「言い換え」も選択肢問題を正解するためには重要であることを意識しておきましょう。
そのように意識しておけば、内容が○なのに×にしてしまうということがなくなります。選択肢問題は、「文章の内容」と合致しているものを選ぶものですから、内容が合っていて、ことばが言い換えられているだけなら正解としてよいのです。そのことばが文章中にないから×にしてしまうということのないように、選択肢の文中に書かれていることば一つひとつに神経を使いましょう。
決して「それらしい」選択肢に飛びついてはいけない
実は受験生が非常にやりがちな選択肢問題を解くときの間違いがこのパターンです。選択肢問題の場合、これまで解説したように一つひとつの選択肢を○×でしっかり吟味していけば、間違えることはありません。しかし、早く次の設問に進まなければ、という意識が強すぎるあまりに、一つひとつの選択肢をざっと読んで選択肢を選んでいくクセがついている場合は、やらかしてしまいがちな間違いがあるのです。
それが、「それらしい」選択肢に引っかかってしまうということです。「それらしい」選択肢とは、主にいわゆる「一般常識」が含まれており、「正しそうに見える」選択肢だと思ってください。内容に一般常識が含まれていると、受験生は無意識のうちにその内容を「○」だと思ってしまう傾向があります。
ですが、正しい選択肢を選ぶときに忘れてはいけないことは、答えは文章中に書かれている内容にある、ということです。これは、説明文や論説文、物語文にかかわらず言えることです。一般常識の内容自体は正しいだけに、急いでいる受験生はこれに引っかかりがちで、文章中に書かれていないのに○の選択肢にしてしまうということが非常に多いので注意しましょう。
いくら書かれている一般常識の内容が正しいものでも、文章中に書かれていなければ、それは選択肢としては間違いです。このことを意識するだけでも選択肢問題の正答率を上げることができますよ。注意してみてください。
まとめ
今回は、国語の選択肢問題の正答率を上げるための解法や克服法についてご紹介しました。中学校の中にはオール記述問題という学校もあるので、選択肢問題よりも記述問題対策をしなければ、と焦る方も多いのですが、選択肢問題の正答率を上げていくということは、記述問題対策にもなります。
なぜなら、文章を正確に速く読み進み、結論や理由、具体例、など文章中にちりばめられている文章の重要部分を把握する非常に良い訓練になるからです。記述問題に取り組む際には、何より文章の内容をどれだけ正確に把握できたかということが第一歩です。ただまんべんなく読んだだけでは、何度も読み返すことになり、記述問題に取り組む時間が無くなってしまいます。
選択肢問題の正答率が上がるということは、文章の読解能力が上がっているということとイコールです。「どれか選べばよい」という意識では、文章の構造や内容を正確につかむことはできません。ぜひ、選択肢問題を正解するという経験を積んで、どのような形の設問にも正解できるようにしていきましょう。
選択肢問題の正答率がなかなか上がらない、という場合は、自分の解き方が正しいかどうか個別で見てもらうのも有効な方法です。通常授業でどんどん違う文章を読んでいる中では、なかなか選択肢問題に時間をかけて正答率を上げるという訓練は時間の関係もあってできません。学校が休校中の今の時期は、自宅学習の時間がいつもより格段にとれるので、オンライン個別授業を受けて選択肢問題を克服しておくことをオススメします。今の時期に選択肢問題の正答率を上げておくと、これからの受験勉強が格段に楽になりますよ。
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次回は、書き抜き問題や記述問題など「書く」設問について、勉強法と克服法について解説します。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。