国語の入試で大きなウエイトを占めるのが選択肢問題です。受験生の皆さんは、選択肢問題をどのように解いているでしょうか?国語は、直前期にテクニックを詰め込めば何とかなる、と思われがちな教科です。また、国語を意識している受験生のご家庭でも、記述式問題に目が向いてしまい、選択肢問題をおろそかにしてしまう傾向が強いです。ですが、記述式問題の書き方を学ぶ前に、しっかりした読解力がなくては解けない選択肢問題の正答率を上げる必要があることをご存じでしょうか。
国語は、出題された文章を読んで内容を把握し、設問を解いていく教科です。ですが、ほかの教科も同じですよね。算数や理科、社会の入試問題もリード文が長文化傾向にありますし、正しく問題文を読んで条件を把握し、設問を一つひとつ丁寧に解いていく、そこに差はありません。ですが、国語の場合、あまりにも当たり前すぎて意識しなくなってしまっている受験生や保護者の方は非常に多いです。
また、単に文章を読むと言っても、国語ではさまざまな文種があり、文種ごとに適した読解法や解法のテクニック、解答に至るまでの思考パターンというものが存在します。なんとなく読んだだけ、では対応できない、国語は非常に論理的な教科と言えるでしょう。そこに気づかないと、「なんで国語なのに点数が取れないのか」と考えてしまい、建設的な解決方法が見えてきません。
中学入試の国語の傾向としては、文章が長文化しており、一つひとつの設問自体も読解が必要なほど長く難しいものが配置されている点がポイントです。こういった設問をしっかり解くためには、文章をいかに丁寧に、しかも速く正確に読むことができるかという力が不可欠です。それが「読解力=国語力」と言えるでしょう。また、設問の意図を把握することができるかどうかも合否を分けるポイントになります。
ほかの教科にも通じる読解力=国語力が身についているかどうかが入試の合否を分けると言っても過言ではありません。どの教科でも正しい問題文の読解と、設問の意図の正しい理解が必要だからです。国語は4教科の土台だということをふまえたうえで、一つひとつの設問を丁寧に吟味することが必要だということを夏休み中に再度確認しましょう。
このことに気づかずにいくらたくさん国語の文章を読んでも、成績はなかなか上がりません。また、きちんとした方法論にのっとって設問を解いていくということをしないと不正解を繰り返し、苦手意識が出てしまい、ほかの教科にも影響を与えてしまいます。対策なしに対抗できるほど国語は甘くないのです。
模試などで多く出題される選択肢問題は、読解の基本を試すにはうってつけの問題なので、数多くの中学校で出題されます。受験生の皆さんは、選択肢問題を「なんとなく」解いていませんか?あるいは消去法で解いてしまうということもあるのではないでしょうか。今回は、選択肢を自信を持って正解できるためのポイントを解説します。
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消去法では正解できない問題も多い
国語の入試問題の中では、文章読解問題が配点の8割がたを占めます。そして、その中の半分以上が選択肢問題となっています。漢字や語句を選ばせるいわゆる知識問題の選択肢ではなく、文章の内容を把握できているかどうか、つまり読解問題としての設問の割合なので、非常に大きなウエイトを占めていることがわかりますね。つまり、選択肢問題に正答できるかどうかは得点に大きく影響するということが言えるのです。
最近の国語の入試問題は記述式問題が増加傾向です。特に、難関校、上位校では記述問題が必ずと言っていいほど出題されるため、記述式問題を攻略することができないと合格できない、という強迫観念を持つ受験生や保護者の方も多いです。ですが、全体的に見れば選択肢問題のウエイトが高く、難関校の中でも、海城中学校や豊島岡女子、渋谷教育学園幕張中学校などは記述問題の割合はそれほど高くなく、ほぼ選択肢という学校も存在します。
選択肢問題の出題傾向
最近の国語の選択肢問題の出題傾向を見ると、以下のような特徴があると言えるでしょう。
- 1問あたりの選択肢の数が多い
- 選択肢の文章が長文化している
- 「本文の内容に合うものをすべて選びなさい」など、答えがひとつとは限らない
- 文章がほぼ同じように見える選択肢のなかから選ばせる、ひっかけ問題が存在する
一口に選択肢問題といっても、そう簡単に解けるわけではないことがわかりますね。このように、一筋縄では解けない選択肢問題をこれでもか、とたくさん出題する中学校が増えつつあり、非常に集中力が求められるようになっています。ですが、お子さんの集中力はそう長くは続きませんし、挙げたように単純ではない選択肢問題の場合、制限時間も気にして「消去法」で解く、という受験生も少なくありません。
塾でも選択肢問題を解く際に消去法で教えているケースもあり、その影響からか受験生のなかには「選択肢問題は消去法で解けばいいんでしょ」と思い込んでいる人もいます。また、保護者の方も選択肢問題は消去法で簡単に解ける、と思っていらっしゃる方が多いのですが、たしかに大人の視点をもってすればそれも可能かもしれませんが、小学生にとって似たような難解な選択肢問題から正しいものを選び出すのは難しいことです。
また、選択肢問題の場合、5~6個ある選択肢のなかから2つまでには絞れても、最後にどれを選ぶかで迷った結果間違えた、というケースが少なくありません。これも消去法で解いていることの弊害のひとつです。
なぜ消去法で解いてしまうのか
選択肢問題では、2つの選択肢まで絞ることは比較的できる受験生が多いです。ですが、最後の段階で消去法で解いたために間違ってしまうことはよくあります。では、なぜ受験生は選択肢問題を消去法で解いてしまうのでしょうか。
これには、ほかの教科の選択肢問題を数多く解いていることによる影響が大きいと考えられます。算数では選択肢問題はそれほど出題されませんが、理科、社会ではよく出題されますよね。リード文や設問を読んで、内容が正しいか、間違っているか答えさせる問題です。そういった問題を解くときには、選択肢を比較して解きますよね。たとえば、理科で「昆虫の〇〇の足の生え方はどうなっていますか。正しいものを選びなさい。」といった問題は多く出題されますが、その問題を解くときには選択肢を見比べますよね。そして違うものを切っていって、正しいものを「ひとつ」選ぶというステップを踏むことが多いです。
ただし、国語の選択肢問題も同じように解いてしまうと、先ほど述べたような複雑化した選択肢問題には対応できません。昆虫の足の生え方はひとつしかなくても、国語の選択肢問題では複数の選択肢が正しい場合もありますから、結果として不正解になってしまうのです。
選択肢問題すべてにおいていえることですが、「消去法」は最終手段だと考えてください。初めから消去法で解こうとしても、選択肢そのものが長文化してどれも同じように見える中、正解となる内容がわからないのにいくら選択肢の文を見比べても、迷うばかりで時間切れになってしまうからです。最近の国語の選択肢問題が長文化し、紛らわしい選択肢が増えているのも、「正確な読解ができているか」「設問の意図にきちんと気づいているか」ということを測るためです。そのため、選択肢のことばを少し変えて、似たように見えるけれどまったく内容が違うという選択肢を出題するケースも少なくありません。そうするとさらに迷いやすくなりますよね。
そういったときには消去法は通用しません。あくまで一つひとつの選択肢をしっかり吟味することが求められているうえ、問題文の正しい内容把握が前提となっているので、答え探し読みをしても正解するのは難しいです。国語の選択肢問題にはこのような特徴があるため、ほかの教科の選択肢問題と同じように解いては不正解になってしまうことをよく意識して問題にあたりましょう。
選択肢問題を解く手順は?
選択肢問題を解く際は、以下の手順で解くのがおすすめです。
- まず最初に問題文をしるしをつけながら丁寧にスピーディーに読む
- 設問をしっかり読む
- 設問に基づいて本文の内容を確認する
- 選択肢を読んで設問に合致するものを選ぶ
選択肢問題を解くときに、受験生が良くやってしまいがちなのが、設問を読んだらすぐに選択肢を見比べ始めるという解法です。最初に長い問題文を読んでいるので、制限時間も気になるなか、一刻も早く答えを選ぼうとしてしまいがちです。しかし、近年の入試の国語の問題文は非常に長文化しており、場合によっては7,000字を超えるような文章が出題されることも少なくありません。
そのような長い文章を一度読んだだけで、完璧に内容を把握できる受験生はまずいません。また、正確な読解ができないと、客観的に読むことができず、自分の主観をいれて読んでしまうこともあるので、本文の内容をきちんと理解できていないことも多いのが現実です。
選択肢問題を解く場合は、まず問題文を読んだうえで、設問をしっかり読み込みましょう。そのうえで、問題文に戻って、その設問の基になっているところをなど、問題文を読み進むときに線を引いたりしるしをつけたところなどに戻って、そのあとはじめて選択肢を読んで吟味する、というステップを踏むことが大切です。設問の基、つまり答えのネタになっているところと内容が一致するものあるいはしないものを設問で問われている内容に応じて選んでいきましょう。こうすると、問題文の内容を正しく把握したうえで選択肢問題に正解できるようになります。答えがひとつの場合、1つめの選択肢が正しければ、それ以外の選択肢は間違いを探すことに集中し、さっと確認すればいいので、時間短縮にもつながります。
ただし、「正しいもの(間違っているもの)をすべて選びなさい」という選択肢問題には注意が必要です。このような選択肢問題の場合は、問題文を読んだ後、選択肢の文が問題文の内容と合致しているか、あるいはしていないか、ということを照らし合わせるという作業を丁寧におこなわなければ「すべて」選ぶことは難しでしょう。設問に該当するものをすべて選ぶ選択肢問題の場合、答えとなる内容は問題文中にすべて書かれていることが多いです。ただし、なかには問題文全体の内容を前提に正解を選ばせる選択肢問題もあるので、この場合はより問題文と選択肢の文を細かく〇×をつけて正しいのか間違っているのかを判断する必要があります。注意してください。
正しくない選択肢の代表ともいえるのは、「正しいっぽい」選択肢です。一般常識が書かれていることが多く、いかにも「私が正しいです」と言っているような選択肢に誘導され、どれが正解か迷っている場合にそれを選んでしまう受験生も多いので注意しましょう。
選択肢が正しい理由を考える習慣を
受験生が選択肢問題を解いているところを実際に見ると、「なぜこの選択肢が正しいのか」をよく考える姿勢がついていないケースが多いことに気づきます。そもそも問題文を答え探し読みしてしまう受験生もいます。間違った問題をもう一度解く際に解答解説を読むと思いますが、答えが「ア」だった場合、「ア」が答えという先入観を持ってしまって、それが正しいから答え、で終わらせてしまい、なぜ「ア」が正解なのかという理由をしっかり考えるという受験生は多くありません。ですが、大切なのは「ア」ではなくて、選択肢問題を正解するための手順を身につけることです。それを意識しないと選択肢問題の正答率は上がりません。
選択肢問題は「因果関係」がポイント
また、選択肢問題を解くときに、本文中のことばが使われているとそれがそのまま正解だと思ってしまう受験生も少なくありません。特に、選択肢の文が長い場合、集中力が途切れてしまって、問題文との因果関係をきちんと整理できずに適当に解いてしまう生徒さんも目立ちます。
選択問題では、因果関係が成立してないのに、本文の語句が使われていればそれが答えだと考えてしまうこともあります。特に選択肢の文章が長いと内容がきちんと整理できないケースも目立ちます。本文では「AだからB」と書いてあるのに、「BだからA」という選択肢を選んでしまうことが非常に多いのですが、これは問題文から答えに該当するネタをきちんと探せていないから起こることです。たとえば、「日本人は中庸を大切にするので、なるべくトラブルを起こさないようにする」と文章中にあるのに、「日本人はなるべくトラブルを起こさないようにするから中庸を大切にしている」と反対に読んでしまい、不正解になるケースなどが挙げられます。
選択肢問題は適当では絶対に正解できない
国語の選択肢問題は、このように論理的に解くものです。正しい選択肢は、問題文との間に必ず「因果関係」が存在します。つまり、「この選択肢が正解である理由」た必ずあるのです、ですから、選択肢問題で不正解を連発医師ている場合は、「なぜその選択肢が正しいの?」と質問してみてください。そうすると、「イ」はここが違う、「ウ」はここが違う、だから「ア」しか答えがない、といった答えが返ってくるでしょう。
これはまさに「消去法」を使っていますね。選択肢イ、ウについてはどこが違うかわかっていても、「アが正しい理由」は考えていません。正しいと思うなら、その根拠が必ず問題文中にあるはずです。普段から選択肢問題を解く場合は、「正しい理由」までしっかり考えて解答する習慣を身につけることが大切です。
こういった習慣をつけて選択肢問題を解く訓練を積むと、正しい選択肢をピンポイントで選べるようになってきます。そういう体験をしてこそ、受験生は自分のこれまでの「消去法」に頼っていた選択肢問題の解き方では不十分だということに気づくことができるのです。それに気づくことができれば、選択肢問題の正答率は飛躍的に上がります。
選択肢問題では語彙力も大切
選択肢問題を正しく答える際には、語彙力が切っても切れない重要性を持ってきます。選択肢の中には、問題文の内容と合っているものの、問題文の中に出てくることばをほかのことばに言い換えているものが紛れ込んでいます。たとえば、問題文で「いぶかしく思った」とあった場合、選択肢問題に「いぶかしい」ということばがなく、「疑問を抱いた」ということばが入っていたとします。「いぶかしい=疑問、不思議に思う」という語彙力がないと、「いぶかしい」の意味が分からないのでまず正解できません。
なぜそのようなことばを出題するかというと、出題する中学校側が、「このレベルのことばは知っておいてほしい」と考えているからです。入試問題は、中学校から受験生に対するメッセージです。だからこそ、ことばひとつについても敏感になる必要があります。選択肢の文に使われることばで知らないものがあった場合は、必ず調べる習慣をつけておきましょう。そのことが語彙力アップにつながるので、長い問題文を読む際にも役に立ちます。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。