国際バカロレア資格(IB)とは?IB認定校の入試について

中学受験をお考えの保護者の方にとっては、近年、「国際バカロレア」とか「IB」ということばを耳にされる機会が増えてきたのではないでしょうか。海外留学経験をお持ちの保護者の皆様にとっては、もしかするとなじみがあることばかもしれませんが、これが中学受験とどのように関わるのかについてはあまり実感を持つことはできないかもしれません。少なくとも、横文字であることから、最近注目を集めているキーワードである「グローバル教育」と何か関係があることばであることは予想がつくでしょうが、実際にはどのような内容なのかよくわからない、という方が多いと思います。

ですが、今後予定されている大学入試改革だけでなく、グローバルに活躍する人材を養成するために、現政権のもと、文部科学省は国際バカロレア(IB)プログラムを推進しようとしています。大まかには、海外の大学に進学するために有利になる資格、というイメージをお持ちになるのではないかと思います。お子さんを留学させることをお考えの親御さんも増えてきていると思いますが、実際にどのようなカリキュラムが想定されているのかわからないと、お子さんの中学進学にあたってどのようなメリット、デメリットがあるのか予想がつかないということもあるのではないでしょうか。

今回は、「国際バカロレア(IB)」について、どのような教育プログラムなのか、日本の中学校・高等学校でも取り入れられ始めている現状について解説していきます。国際バカロレア(IB)認定校では、学校説明会でいろいろと説明がされると思います。その内容をしっかり理解するためにも、国際バカロレア(IB)の基本を知っておきましょう。

国際バカロレア(IB)とはどういうものか

まずひとことでいうならば、「国際バカロレア(IB)」とは、国際バカロレア機構が提供する、国際的な教育プログラムのことをいいます。総合的な教育プログラムとして、世界の複雑な仕組みを理解して、それに対処できる人材を育成を目的として作られた、「世界共通の大学入試資格とそれにつながる小・中・高校生に対する教育プログラム」とされています。

英語では、「International Baccalaureate」(インターナショナル・バカロレア)と書き、「IB」(アイ・ビー)と略して呼ばれています。日本国内では、「国際バカロレア資格」や、「IB」と略して呼ばれています。なぜいま国際バカロレアが注目を浴びているかというと、国際バカロレア認定資格を得ることで、海外の大学に進学することが可能となるということが大きな要因となっています。

受験生のお子さんを持つ保護者の立場から知っておきたい重要なこととしては、まず以下のような点が挙げられると思います。

  • IBの教育プログラムの内容とはどのようなものなのか
  • IBの教育プログラムが受けられる日本国内の学校はどこか
  • IBプログラム校の入試は具体的にどういうものなのか

以下、一つひとつ簡単にまとめていきます。

IBの教育プログラムには何種類かある

文部科学省によると、IBプログラムは、「アイデンティティー形成期にある年齢の児童生徒の発達ニーズとともに、学校が地域から求められる教育的要件、文化的状況や優先事項にも合わせられるよう、カリキュラムを編成している」とされています。抽象的なので、お子さんの発達・年齢に合わせてどのようなプログラムが予定されているか簡単にまとめてみると、以下のような内容になっています。次の機会にそれぞれの具体的な科目などについて詳しく書きたいと思います。

PYP(プライマリー・イヤーズ・プログラム)

幼稚園から小学生程度の、3歳~12歳を対象として、精神、身体の両方を成長させることを重視しているプログラムです。プログラムの内容を実践するためには、英語だけでなく、どのような言語でも行うことができるという特徴があります。

MYP(ミドル・イヤーズ・プログラム)

主に中学校レベルの、11歳~16歳を対象として、青少年に、これまでの学習と社会を結ばせるプログラムとされています。こちらも、英語に限らず、どのような言語でもプログラムを実施することができます。各教科を、単独のものととらえるのではなく、ほかの教科や実生活と関連していることをより深く認識できるようなプログラムが想定されています。

DP(ディプロマ・プログラム)

DPは、高校生レベル、16歳~19歳を対象としたプログラムです。所定のカリキュラムを2年間履修し、最終試験に合格すると、国際的に認められる大学入学資格(=国際バカロレア資格)を取得することができます。大学やその後の職業において必要となる専門分野の知識やスキルを、大学入学前の段階で準備しておくという位置づけとなっており、いくつかのグループの中から選択して学ぶことになっています。「日本語DP」の対象科目等を除き、原則として英語、フランス語又はスペイン語で実施されることになっています。

「日本語DP」については、文部科学省と国際バカロレア機構が協力して、DPの一部の科目を日本語でも実施可能とするプログラムです。学校によって日本語DPを取り入れていないところもあります。また、「日本語DP」を採用していても、一部の科目は日本語以外の、英語などで履修することになっています。

なお、それぞれのプログラムの対象年齢に幅があるのは、国際的なプログラムであるため、年齢に幅を持たせているためです。

プログラム同士の関係

最初にも述べましたが、お子さんの発達や年齢に合わせて各段階のプログラムが組まれています。その中で、PYPとMYPでは、主にカリキュラムの「枠組み」を提供し、科目横断的、実生活との関連性を生徒自身が認識しながら学習するようにプログラムが作られています。

一方、PYPとMYを経てから取り組むDPでは、世界中の大学への入学資格を生徒に与えるためのプログラムなので、いくつかのグループに分けられた具体的なカリキュラムが提供されており、その数も多くなっています。課題論文に取り組んだり、知識の本質について考えたり、創造・奉仕活動などもプログラムの中に含まれています。

国際バカロレアプログラムを修了すると・・・

国際バカロレア資格(IB)認定校での教育プログラムを修了したあと、一定の成績をおさめることによって、国際バカロレア機構(IBO)から、大学進学のための国際バカロレア修了資格の証明書が授与されます。この資格は、国際的に通用する大学入学資格なので、海外の大学への進学を目指すお子さんにとって有利とされてきました。しかし、最近では、日本の大学においても、国際バカロレア資格で受験できるところも増えてきています。

日本国内で国際バカロレアの教育プログラムを受けられる学校は?

国際バカロレアのプログラにはいくつか段階があることをさきほど書きましたが、全てを導入することも、どれか1つのみを導入することも可能となっています。文部科学省によると、国際バカロレアの認定を受けている学校は、平成29年6月1日現在で、世界全体で140以上の国・地域に拡大しており、約4900校にのぼります。それだけ国際的なプログラムであり、将来の進路を考える上でも重視されてきているということがうかがえますね。

日本では、インターナショナル・スクールで主に導入されてきました。インターナショナル・スクールにもいろいろな種類がありますが、基本的には学校教育法で規定されている「日本の学校の卒業資格」は与えられませんから、当然といえば当然のことでした。

現在では、学校教育法で規定されている、いわゆる日本の学校として、20校あまりが国際バカロレア資格認定校とされています。ほとんどの学校がDPの段階のプログラムを取り入れており、「日本語DP」プログラムを実施している学校が多いです。今後導入を検討している学校も出てきていますが、認定されるためには、国際プログラムに対応できる教員の確保、シラバスの準備などのハードルがあり、導入を決めてから実際に始まるまでには時間がかかっているのが現状です。

参考までに、首都圏では、以下のような学校が国際バカロレア資格のプログラムを取り入れています。どの段階のプログラムを取り入れているかは、各学校のホームページなどで必ず確認するようにしてください。また、変更の可能性もありますので、学校説明会などでしっかりカリキュラムについて確認していただきたいと思います。

  • 茗渓学園高等学校
  • 昌平中学校
  • 筑波大学附属坂戸高等学校
  • 玉川学園中学部・高等部
  • 東京学芸大学国際中等教育学校
  • 東京都立国際高等学校
  • 法政大学女子高等学校

特に、玉川学園中学部・高等部、東京学芸大学国際中等教育学校などは、初期のころから注目を集めてきた学校です。

IBは学校選びの注目ポイントになってきている

日本の高等学校の中には、毎年のように海外の大学に多くの卒業生が進学している実績を出している学校があります。私学教育研究の第一人者である、森上教育研究所の森上展安氏は、ある講演会で、そのような学校の進学実績に対し、「多くの海外大学に進学者を出しているのは、国際バカロレア(IB)教育プログラムを行っているからだ」と述べていました。また、「今後、IB教育を実施しているかどうかが、学校選びの有力な選択肢になってくる」とも述べていました。政府は2018年中に200校という目安を打ち出していましたが、それだけの数の実現は難しいかもしれません。

しかし、国際バカロレア認定校は、国内ではまだ数が少ないものの、私立学校のみならず、公立初のIB認定校となった都立国際高校など、これから数が増えていき、注目を浴びていきそうです。まもなく始まる大学入試改革も、もともとは海外に通用する人材の育成を目標として始まったものです。これまで、アクティブ・ラーニングという形でご紹介してきましたが、より進んだ形で国際バカロレア認定を目指す学校が増えてくると考えられます。

国際バカロレア(IB)認定校の入試とは?

では、国際バカロレア(IB)認定校の入試とはいったいどのようなものなのでしょうか。いわゆる日本の学校のほとんどはDP、つまり高等学校の段階からIBのプログラムを取り入れているので、中学入試でどのような形がとられるかはまだ十分な情報がありません。ですが、先ほど述べてきた教育プログラムの内容から考えて、当然ながら「通常の英語の授業についていけるだけの英語力」が求められていくことは間違いないでしょう。入試も特徴的なものになることが予想されます。

ここでは、DPプログラムを念頭に置いた、「都立国際高校」の入試を例に、どのような入試が行われているのかご紹介します。都立国際高校は、国際バカロレアコースを平成27年4月から導入しています。中学校からのプログラムを導入する学校とは異なるでしょうが、将来的に中学校からのIBプログラムを行う学校の入試の参考になると思います。

都立国際高校の入試とは

入試科目は、以下の通りです。

  • 英語運用能力検査(筆記試験60分としてリスニング、リーディング、ライティング。加えて、10分のスピーキングの面接がある)
  • 数学活用能力検査(50分)
  • 小論文(50分)
  • 個人面接(15分から20分)
  • 集団討論(35分程度)

これらの試験に加えて、調査票の内容が加味されて合否が判定されます。

数学、小論文、個人面接、集団討論については、出願時に、英語で受験するか、日本語で受験するかを選択することができます。

まとめ

これまで述べてきた3段階のプログラムに加えて、国際バカロレア(IB)プログラムには、CP(キャリア関連プログラム)というものがあります。これは、16歳から19歳まで、つまりDPの段階にある生徒を対象とした、キャリア教育、職業教育に関連したプログラムです。生涯におけるキャリア形成に必要なスキルの習得を重視するとして、2012年に新設されました。

内容としては、学習の方法(コミュニケーション能力、異文化理解など)、コミュニティと奉仕活動、外国語学習、振り返りのプロジェクトが挙げられています。振り返りのプロジェクトなど、一部の科目については、英語、フランス語またはスペイン語で実施されることになっています。

CPのカリキュラムは、それぞれの学校がキャリア教育、職業教育に柔軟に対応できるように、「枠組み」を提供するものになっています。実際にカリキュラムを組み立てるのは各学校ということになっています。

IB校を見学する際には必ず先生に質問を

IB校には、必ず「コーディネーター」と言われる先生がいます。国際バカロレアプログラムの専門家の先生です。国際バカロレアプログラムを実のあるものにするために、年に何度も教員を対象とした国際バカロレアプログラム実戦のための研修を、各学校を代表して受けている先生です。各学校の教育プログラムの内容をより良いものにするために、これらの先生方が、年に数回、自分の学校の教員に対して、カリキュラムについて話し合う場を設けています。

言ってみれば、各学校の国際バカロレア(IB)プログラムがうまくいくかどうかは、このコーディネーターの先生しだい、ということになります。コーディネーターの先生の中に熟練された先生がいる学校、まだまだ新米のコーディネーターの先生だけの学校、改革中の学校など、それぞれの学校によって、国際バカロレア(IB)プログラムのレベルが変わってきてしまいます。

もし、国際バカロレア認定校を志望校として検討していらっしゃる場合は、ぜひ、学校見学会や個別相談会などに積極的に足を運び、その学校のコーディネーターの先生の経験、学校のプログラムの実態と実績などについてじっくり聞いてみてください。学校にとっても国際バカロレア(IB)のカリキュラムに舵を切るということは相当の覚悟がなければなりません。そうしないと、国際バカロレアを売りにしても、実際に国際バカロレア「資格」を生徒にとらせることができなくなってしまうからです。

国際バカロレアのカリキュラムに魅力をお感じであれば、ぜひしっかりと最初の段階で学校の取り組みをよく知っておく必要があります。

これまでも日本の高等学校から海外の大学に進学する生徒さんはいらっしゃいましたが、多くが帰国子女という時代がありました。今後は、海外の大学への進学を目指すならば国際バカロレア(IB)認定校を志望校として選び、国際バカロレア資格を取得することを目指すという大きな道が身近になってくることでしょう。ただし、プログラムについていくためには相当の修練が必要になりますし、学力以外にも求められる能力が多くなります。

ですから、国際バカロレア認定校に入学したからといって、国際バカロレア資格が簡単にとれる、という意識でいてはせっかく入学しても中途半端な学校生活に終わってしまいます。ご家庭でよく話し合い、明確なビジョンを持つことができた場合はぜひチャレンジしてみると、将来のお子さんの選択肢が広がると思いますが、よく調べずにとびつくだけでは、将来の進路に迷いが出てきてしまう可能性があります。

グローバルな人材に育ってほしい、そのための選択肢として今後国際バカロレア認定校は注目を集めていくでしょう。だからこそ、しっかり調べ、お子さんの能力を伸ばしてくれるかどうかについてよく吟味して受験を考えることをオススメします。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。