2020年の大学入試改革で、大学入試がこのように変わる!

中学受験を終えて、ほっと一息ついていらっしゃる皆さん、毎日どのように過ごしていらっしゃいますか?もうすぐ制服の採寸をしたり、学校によっては入学準備の補習(!)をするところもあり、週末は入学が決まった学校に足を運ばれることが多いでしょう。

それ以外の時間は、これまでがまんしてきた、「好きなこと」「やりたいこと」や、小学校で友達と卒業までの最後の時間を過ごし、寒いですが泥だらけになって遊んでこられるかもしれません。中学に入学するまで2カ月弱です。長いように思えてもあっという間だと思います。ぜひ、小学校生活の最後の思い出、やりたかったことを再開するなど、充実した毎日を過ごしていただきたいと思います。

今年度中学受験をされた方もそうですが、これから中学受験をするというお子さんにも大きく関わってくるのが、「2020年の大学入試改革」です。これまでもこのブログで、この大学入試改革を見すえた各学校の「アクティブ・ラーニング」のありかたや、全ては明らかになっていませんが、どのような力を見るための新しいテストが行われるだろうか、ということについて書いてきました。

今回は、これまでに公表されている大学入試改革についてまとめます。まだ不明な点もありますが、2020年はもうすぐです。実際にどのような入試になるのか、初年度ではありませんから、何年分か過去問が蓄積されるでしょう。ただし、これまでのように「問題」に対して「正解が一つ」という形の試験ではなくなる可能性が高いですし、答えが一つでないことも出てくる可能性があります。そうすると、過去問をやりこんで、どういう傾向で・・・ということをひとことでいうのは難しくなると思われます。過去問題集も、解答(例)という形になり、自分で模索していかなければならないことになる可能性が十分にあります。

ただ、現在公表されている情報を知り、どういうことなのか意識しながら中学校以降の学習を進めていくか方針を立てていくことができるかできないかによって、結果が大きく変わってくることは間違いないのではないかと思います。今後の対策を立てていく導入として、この記事では、2020年の大学入試改革についてご紹介していきます。

キーワードは「学力の三要素」

2020年の大学入試改革の目玉といえるのは、「学力の三要素」です。これまでも求められていた能力ではあるのですが、ことばとしてはっきりと示されたという意義は大きいと思います。大学が求めている能力は大学に入ってから学問を主体的に追究していけるか、というものです。そのために最低限身につけて入学してほしい、というものが「学力の三要素」としてまとめられた、と思っていただければいいと思います。

では、その「学力の三要素」とはどういうものでしょうか?それは、以下の3つです。

  • 「知識・技能」
  • 「思考力・判断力・表現力」
  • 「主体性・多様性・協働性」

2020年には、これらの三要素をふまえた上で入試問題が作問されるという形で大学入試改革が行われます。依然行われた、「共通一次試験」から「センター試験」へと試験が変わったというような変化とは比べ物にならないほど大きな変化になる可能性があります。イメージとしては、公立中高一貫校の初期の入試のサンプルが公表されたときの衝撃はあるのではないかと思います。

「知識・技能」

この「学力の三要素」の中の、「知識・技能」については、これまで中学受験の勉強をしてきたお子さん、大学入試を受けた親御さんも理解しやすいと思います。問題で求められている解答を導くために必要な「知識」を理解し、練習し、覚え、自分のものにし、さらにそれを使いこなす力です。あるいみ学習をするなら当然に身につけなければならないものですから、想像もしやすいのではないかと思います。

ただ、これまでの大学入試ではこういった「知識・技能」は、ある決まった、あるいは幅はあってもだいたい決まっている(記述問題など)「一つの解答」に向かって身につけていくものだったといえるのに対して、2020年の大学入試改革求めている「知識・技能」はより突っ込んだものを求められています。それは、「知識・技能」を活用することは、「思考力・判断力・表現力」を判定するために最低限身につけていなければならないものだということです。

「最低限」必要なものだからといって、「知識・技能」を軽視してはいけません。より応用的な「思考力・判断力・表現力」を入試で発揮するためには、ただ思ったこと、現場で考えたこと、感想を書けばよいというものではありません。必ず、正確な「知識・技能」を身につけておかないと、現場でいくら初見の問題に立ち向かおうとしても、ヒントさえ見つけられない、ということになってしまう可能性があります。

中学受験でも、求められるのは「思考力」といわれ始めてある程度時間がたちましたが、それはしっかりとした基礎力、つまり「知識・技能」を身につけたうえで判定されるものに試行錯誤の末、変化してきました。大学入試ではさらに広範囲にわたって「知識・技能」の正確さが求められ、それに基づいて初見の問題に対して「思考力・判断力・表現力」を発揮して、採点者に対して自分の能力をアピールするということが求められるようになるでしょう。ですから、「思考力」の方に飛びつくのではなく、中学受験でも、また中学に入ってからの学習においても、大切な「知識・技能」つまり基礎力を徹底して身につける必要があるということを忘れないようにしてください。

「思考力・判断力・表現力」

「思考力・判断力・表現力」とは、自ら課題を発見し、その解決に向けて探究し、成果などを表現するために必要な「考える力」「解答への方向を判断する力」「それをわかりやすく表現する(書く力などです)力」です。中学受験でも同じことをやってきましたね。

最近の中学受験では問題文が長文化する傾向がある、ということを以前にも書きましたが、長い問題文、多くの資料を読み解き、解答の方向性を判断し、途中式や理由付けなどを読む人にわかりやすく記述する(表現する)ということは、難関中学校の入試ではずっと行われてきています。そして、そのような傾向の問題を出題する中学校が非常に増えてきました。また、理科社会融合型のような問題も増えてきています。

本質的に学問を探究するためにはそれができるための好奇心や、わからないものを試行錯誤して克服していこうという姿勢が不可欠です。大学入試改革ではそれが前面に押し出されているので、中学入試の出題傾向も変わってきているのです。そこで求められている力を簡単に要約するならば、「思考力・判断力・表現力」ということになるわけです。

特別難しいことが要求されているわけではありません。ただ、問題文を読んで答えを探すだけでなく、そこに至る「思考のプロセス」がより重視され、さらにそれを自分だけでなく他の人にも納得してもらえるだけの表現力を身につけてきてほしい、というメッセージがこの能力には込められているといっていいでしょう。実際に論文を書くときに、ただ「自分はこう思う」と書いても、指導教官はおろかほかの学生や研究者にはわかってもらえないでしょう。

なぜそういう結論に達したのか、その理由付けに納得してもらう必要があります。論文はただ書いて終わりではありません。それを日本中の、それにとどまらず世界中の研究者に引用され、その考えの裏付けをさらに発展して考えてもらえるというレベルが今後求められてきます。その基本形を、大学入試までに理解し、身につけてほしいというのが「思考力・判断力・表現力」を前面に改めて押し出した理由だと考えられます。

「主体性・多様性・協働性」

主体性をもって、さまざまなバックグラウンドを持った人たちの多様な考え方を受け入れ、さらに協力して何かを成し遂げる力、ということになるでしょう。が、これまでに解説した2つの能力に比べて少しわかりにくいかもしれませんね。

ある難関中学校の先生がこのようなことを言っていました。その学校の入試問題の国語は、長い物語文1題です。ですが、その学校は理系に進学する生徒が多く、受験生も理系志向が強いといわれています。それならば、説明文や論説文など、科学的な考え方の方が受験生にとっては理解しやすいと思われるでしょう。

しかし、その先生がおっしゃったのは、「うちの学校は、医師を目指して医学部を受験する生徒や、研究者を志して国公立大学の理系を目指す生徒が多いです。ですが、医師といってもただ一人で診断を下し、一人で手術をする時代ではありません。チームを組んで、さまざまな意見を統合して診断を下し、中にはセカンドオピニオンを必要とすることもあります。手術をするときも、医師一人ではできません。患者の命がかかっているのですから、チームでコミュニケーションをとって、最短時間で最良の治療をしなければなりません。研究者も、一人で孤独に実験を行うのではなく、研究室に入って、何人かで協働して研究を行います。ときには、国を越えて外国の研究者と協働することもあります。こういったときに、『他の人が考えていること』をお互いに理解し合わないと、前に進むことができません。だから、物語文を出題し、登場人物の気持ちを考え、さらには作者の想いに気づいてもらいたいと考えています。」ということでした。

もちろん主体性、つまり自分の考えをしっかり持つことは必要です。ですが、他の人の意見を取り入れることや、比べてみてやはりこちらの考えの方がいいのではないか、と試行錯誤し、最終的に多くの人と協力して何かを創り上げることができる力、それが「主体性・多様性・協働性」ということばで表現されているのです。

大学入試でも、すでに変化が表れ始めています。たとえば、私立の医学部の多くは、第1次試験として学力試験を行います。そこで合格した受験生に対して、2次試験では小論文と面接を課します(中には小論文を省略する大学もあります)。小論文では、順天堂大学の医学部のものが有名です。絵画を見せて、それについて受験生に考えを書かせるというものです。それは、階段を上っていく男の人の背中であったり、貝殻に耳をあてている少女であったり、医学部受験に果たして必要なのだろうか?とこれまでも言われてきました。ある意味、対策の立てようがない、といわれたものです。そのほかにも、文学的な作品や、評論文を出題して、それに対して受験生に相対する考えを示させ、自分はどちらの考えに賛同するか、それはなぜか、といういわば「1人ディベート」をしてそれを文章で表現させるものがあります。

また、面接では、以前は個別面接や、集団面接といっても順番に1人ずつ面接官から問いが投げかけられ、それに対して答えていくという形式が多かったですが、いまは面接時間が長くなったり、集団討論に姿を変えた大学が増えています。そこではまさに、自分の意見を主張し、周りの意見を整理し、賛同できるものは取り入れ、最終的には協働して結論を出す、というプロセスが評価されます。

こういった形で、「主体性・多様性・協働性」はこれまでも合否の判定の基準に使われてきました。今回新たにはっきり打ち出したことにより、どのような形で大学が出題してくるのか、一番読めないところでもあります。

新しい2つのテスト

2020年の大学入試改革では、学力の三要素を測るために、2つのテストが新しく導入される予定になっています。そのテストは、「高等学校基礎学力テスト」と、「大学入学希望者学力評価テスト」です。

これまではセンター試験が行われており、それは大学受験をする生徒だけが受けるものでしたが、「高等学校基礎学力テスト」は、大学受験をしない高校生も受けるテストになる予定です。これらのテストは、新たな実施機関を設けて実施されます。以下、2つのテストについて詳しく説明しましょう。

「高等学校基礎学力テスト」とは

高校生の時点での学力のレベルの共通性、ある一定程度以上の学力が必要という考え方から、導入されることになったテストです。ですから、高校生の基礎学力の定着度合いを把握するためのテストです。

このテストは、さまざまな出題形式で行われることが予定されています。当初、このテストは大学入学の資料として活用される予定でしたが、2022年までは活用されないことが決定されました。

学力の三要素でいうと、「知識・技能」を測るテスト、と位置付けられるものになるでしょう。中学から高校までかけて、どこまで正確な基礎知識を身につけ、それを実際の問題で使えるようになっているかを判断する目的で設置されると考えられます。

「大学入学希望者学力評価テスト」とは

これまでに実施されていたセンター試験の代わりに導入される予定となっているテストです。「学力の三要素」のうち、さらに進んだ「知識・技能」、それらを基礎とした「思考力・判断力・表現力」を評価することが目的です。

もちろん、このテストが新設されても、さらに個別の大学の入学者選抜試験がなくなることはありません。大学は個別に、どのような学生がほしいかということを盛り込んだ入試を行うことになります。そこには「主体性・多様性・協働性」も盛り込まれることになるでしょうが、まだ詳しい形はわかりません。

大学入学希望者学力評価テストと、個別の大学の入試が組み合わされる形で、「学力の三要素」を様々な方向から試し、総合的に評価されるようになるのが、2020年の大学入試改革の目玉といってよいでしょう。

実際にどのような形でそれぞれのテストが行われるかははっきりしていないため、不安を感じておられる方も多いと思いますが、まずやるべきことは、正確な「基礎力」を身につけることです。「知識・技能」の部分ですね。それは、学校によって授業のやり方が異なりますから、課題や体験学習などにしっかり取り組みましょう。レポートや論文の作成も増えると考えられます。自分でテーマを決め、仮説を立て、参考文献を探し、論理を組み立てて書いていくという過程は、これからの大学入試改革で必ず役に立ちます。おろそかにせず、真剣に取り組みましょう。まさに、「主体的な」取り組みが求められます。

まとめ

いまだ、2020年の大学入試改革の具体的な形ははっきりしていません。どのような形でそれぞれのテストが行われるのかというイメージは、中学・高校の先生方もまだはっきりわからず、模索している状態ですから、生徒にとってはなおさらわからないことによる不安が大きいかもしれません。

ですが、「学力の三要素」のうち、「思考力・判断力・表現力」や「主体性・多様性・協働性」を評価するテストが実施されることは間違いありません。そして、その前提となる「知識・技能」を磨いておくこと、つまり各科目の基礎力をしっかり身につけておくことが必要です。

各科目で分けて基礎力を身につけるだけでなく、科目の間を超えて、融合的な知識を身につける必要性も大きくなるでしょう。たとえば、麻布中学では「世界」という科目が以前からあります。「アクティブ・ラーニング」を古くから実践しているような科目で、地理や歴史、文化論まで踏み込んで授業が行われ、活発に議論も行われています。生徒にも非常に人気のある授業だということです。生徒に人気があるということは、中学生であってもやり方によって知的好奇心を刺激することによって主体的に学習することを促すことは十分可能だということです。関連する本を自分で探して読んだり、そこからさらに発展させて、学んでいないことについての本まで興味を広げる生徒もいるそうです。

このように、「やらされ勉強」ではなく、自分で主体的に勉強することは将来の大学受験に必ず役に立ちます。中学に入ってからは自分で学習を計画的に行なっていくことが必要になりますが、親御さんは、時事問題のときに一緒にニュースを見たりして話し合った経験を活かして、何かの話題についてどう考えるのか話し合う習慣をぜひうまく続けていただければ、「自分で主体的に考える」ことが苦痛ではなくなります。ある程度の時期までは、ぜひ少しずつそういった話で刺激をしたり、興味を持ちそうな本をさりげなく机に置いておくなどしてみると、とても良い学習の助けになると思います。

先ほどのレポートや論文の例のように、「読む人を説得できるような文章力」を身につけることも必要になってきます。単に知識を覚えるだけでは、そのような文章を書くようにはなれません。中学受験で記述問題は苦手だった・・・という方も多かったことでしょう。ですがそのような苦手意識を転換するチャンスが今です。答えは一つではない、でも設問をよく読んで、何が問われているのか考え、自分の考えを書き出してみる、ということを時間をかけてやることができるのが中学・高校の6年間です。

まだまだ正体が見えにくい大学入試改革ですが、単に知識を覚えるだけ、という学習ではなく、すぐに答えを求めるのではなく自分自身でしっかり考える、さらにそれを他の人にもわかりやすく説明することができる、という学習姿勢を、学校の授業をしっかり活用して、養っていっていただきたいと思います。特別なことをやる必要はありません。学校で出される課題一つひとつに意味があるということをしっかり意識したうえで、毎日必ずコツコツと学習を積み重ねる姿勢を身につけるように学習計画をお子さん自身が立てられると一番良いですね。テスト前に詰め込んで何とかなる学習とは大きく異なるのが中学・高校の学習です。

また、部活との両立も大きな課題になりますが、部活は「主体性・多様性・協働性」を養うにはとても重要な意味を持ってきます。文化祭などの学校行事にもぜひ積極的に取り組んでほしいと思います。ひとりの力ではできないことが、他の人と力を合わせると大きなものに進化していくことを実感を持って体験することができます。

勉強が忙しいから帰宅部、はもったいないことです。部活が忙しければ時間の使い方を工夫する力が養えます。お子さん同士での情報交換もコミュニケーション能力を身につけるにはとても大切な経験です。体力的なことの心配はあるかもしれませんが、お子さんには、ぜひそのような活動にも主体的に取り組んで経験を積んでいただきたいと思います。

もしお子さんの様子を見ていて、気になることがあれば、ぜひ学校の先生や塾にお通いになる場合にはその先生など、第三者に意見を積極的に求めましょう。これまで計画立てて学習する習慣がなかった、という場合には、初めは一緒に学習計画を立ててもいいですね。

小テストや課題が出るタイミングなど、必ず1週間の中で、計画を立てる核になる部分がわかってきます。そうした計画的な学習を行う中で、「自分でしっかりと考える」習慣を身につけて、他の人にも伝えることができるようになるように日々の学習をしっかり行っていきましょう。そうすれば、新しい大学入試にも十分対応できる力が身についていきます。

まだ中学入学前で気が早い、と思われるかもしれませんが、そうした意識をぜひ持っていけるようなきっかけをつくって、頑張っていきましょう。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。