模試を最大限に活用するための3つのポイント

4月から大規模な模試が続々と開催されます。これまでにも受けた経験がある方が多いと思いますが、そもそも模試は何のために受けるのでしょうか。また、どのようなことに気をつけて受けるべきなのでしょうか。そして、受けた後はどう利用するのがよいのでしょうか。

模試を受けた結果、点数や偏差値だけ見て終わりにするのはあまりにもったいないことです。結果を受け止めることはもちろん大事なことですが、目的をもって模試を受け、受けるときにはどういう点に注意したらよいのか、受けた結果を今後の学習にどう活かしていくのか。そこに目を向けずにやみくもに受験してきても、疲労感と自己否定感が蓄積されていくことになってしまいます。

今回は、模試を最大限に活用するために気をつけたいポイントについて解説します。

ポイント① そもそも模試を受ける目的って何?

「何月何日、第1回○○模試のお知らせ」この時期になると、このような言葉が塾からのお知らせやホームページで飛び交います。すでに申し込みを済ませておられる方も多いことでしょう。塾でも対策授業を行っているところが多くあります。また、その模試の過去問をすでに解いた、という方もいらっしゃるでしょう。

ですが、考えてみてください。「過去問で何点取れた」「対策授業で高得点が取れた」と、準備段階で点数ばかり気にしていませんか?そうであれば、実際に模試を受けて結果が戻ってきたときも、点数と偏差値を見て「なんでこんな点しか取れなかったの!」「こんなんじゃどこも受からないわよ!」とお子さんを叱り、それを聞いたお子さんはやる気をなくしていく、あるいはそのような言葉を思い出し、模試のたびにおなかが痛くなって受けられなくなる(実際にあった話です)ということにもなりかねません。

模試は、いわば入試本番の予行演習です。予行演習段階でモチベーションを下げてしまってはせっかく時間をかけて受けてきた意味がなくなってしまいます。

ですから、結果に一喜一憂するのではなく、何のために模試を受けるのか、目的意識をもって受験していただきたいのです。

現時点の「自分の」実力を確認する

こう書くと、「じゃあ結局結果がすべてなんじゃない」と思われがちですが、そうではありません。模試の結果、特に偏差値は「他人との」比較です。重要なのは、あくまで「自分の」実力を確認することです。つまり、自分がどの問題が解けて、どの問題が解けなかったのか、それはなぜなのか、という分析を行うことなのです。

結果を素直に受け入れる姿勢自体はとても大切なことです。ですが、ただ受け入れるだけでは、それは結局他人からの(模試の主催者の)機械的な評価、すなわちデータをうのみにするだけで終わってしまいます。そうすると、目先の結果のみを追い求めがちになり、本来あるべき模試の受け方、利用の仕方から離れてしまい、「受けて終わり」の方向に行ってしまいます。

あえて「比較」するのであれば、今回の模試での「他人」と「自分」ではなく、「前回までの自分」と「今回の自分」です。大切なのは、前回と同じ問題で間違えていないか、勉強した範囲でしっかり得点できているかを分析することです。「自分が」どこができるようになったのか、苦手とする分野や出題形式はどんなものなのか、それを克服するにはどうすればよいか、それらをチェックする材料を得ることが模試の第1の目的です。

できなかった問題は宝物!

「チェックする材料を得ること」が模試の目的だと書きました。答案を見て間違いが多いとがっかりするのは当然かもしれません。ですが、あくまで模試であって入試本番ではありませんから、これから入試本番までの間に克服する材料が見つかったことはむしろ喜ぶべきことなのです。やるべきことがはっきり見えてくるわけですから。

「できなかった穴を見つける」、その見つかった「穴」こそが今後の学習における宝物になるのです。たとえば、できるはずの問題でミスをした、それは根本的な理解不足なのか計算ミスや書き間違いなのか、知っている知識だったけれど聞かれ方が違ったためできなかったのか、1問だけとってもお子さんの学習の「穴」がはっきりと見えてきます。

それがわかれば、今後どう対策していけばいいのかという指針が立てられます。指針が立てられれば、それに従い、穴を一つ一つ潰していき、「次回の模試ではここが出たら間違えないぞ」「この範囲は自信がついたから次回は大丈夫」という自信がうまれ、おちついて模試に臨むことができるようになります。

できなかった問題は宝物です。「どうしてこんな問題が解けなかったの!」と否定的に言うのではなく、「今のうちに間違いが見つかってよかったね、今度はこれをがんばろう」と肯定的に声をかけてあげて、次回に向けて学習を進めていきましょう。

ポイント② 模試を受けるメリットとは?

これまで、模試を受ける際に目的意識をもって受験してほしいと書いてきました。目的意識をもって受験するためには、当然受験することにメリットがなければ受けに行く意味がありませんよね。

そこで、次に模試を受けるメリットについて書いていきたいと思います。

試験の雰囲気は試験会場でしか味わえない

普段の自宅での学習や、塾のクラスでの学習時間の雰囲気と、大勢が集まってくる模試の雰囲気は全く違います。自分と同じような受験生がたくさん周りにいて、静寂の中で黙々と問題に取り組む独特の雰囲気は、試験会場でなければ味わうことができません。それは、実際の入試会場の空気とも共通するものです。

自宅で宿題をしているときはすいすい解いていくのに、模試になると緊張してしまっていつもの力が出せないということは、成績上位のお子さんにもよくみられることです。試験の雰囲気に慣れ、自分の目の前の問題に集中できるようにしておくことは、入試本番で実力を発揮するためにも重要なことです。塾での演習時間も、集中して学習する時間ではありますが、人数も雰囲気も模試とは全く違います。

ときどき、いい点数が取れそうもないので今回の模試は受けるのをやめておきます、とおっしゃる保護者の方がいらっしゃいます。しかし、そういうお子さんこそ、「どうして点数が取れそうもないのか」という原因を突き止めるためにも、またいつもとは違う試験会場の雰囲気を経験するためにも、受験したほうが良いでしょう。点数は取れないかもしれません。ああ、やっぱり・・・と自信を無くしてしまうこともあるでしょう。ですが、「穴」を見つけられるおまけもついている模試を受けないのは大変もったいないことです。点数が取れない原因である「穴」を見つけられないまま時間ばかり経つと、その後の対策が取りにくくなってしまいます。

今後の対策を立て、前向きに学習していくためにも、模試は受けてみることをお勧めします。

試験の時間感覚を身に着けられるチャンス

入試には制限時間があります。入試の時間配分の練習を積むには、模試を受けるのが一番です。先ほども書きましたが、自宅で時間をはかって同じ問題を解いたとしても、試験会場の雰囲気を加味した場合、必ずしも結果が一致するとは言えません。もっと言ってしまえば、本番で実力を発揮することの難しさを身をもって体験するために、模試を受けるメリットがあるのです。

また、科目ごとに自分はどの科目で時間切れになることが多く、どの科目ならちょうど、あるいは余裕をもって見直しまでできる、といった経験もできます。中学受験は4科勝負が基本ですし、特に近年は総合力勝負の色合いが強くなっています。どの科目に時間がかかりすぎるのかなど、弱点になっているところを見つけるためにも、時間感覚を養う意識をもって受けてほしいと思います。

入試本番レベルの問題に触れ、今の自分との距離を測ることができる

総合模試の問題は、各塾の作問者が様々な学校の過去の入試問題を分析し、出題傾向や頻出分野を意識して作られています。中には「これは完全に捨て問だろう・・・」と思われるものもありますが、入試に出やすいキモの部分を押さえた問題が並んでいます。もちろん全く同じ問題が入試本番で出題されるというわけではありませんが、「あの時解いた記憶がある」という問題は出る可能性があります。

また、入試問題は見たこともない問題が並んでいるように見えますが、よくよく見ると、実は「どこかで学習した」基礎的な考え方や知識が融合され、見かけを難しくしている問題が多いのです(中には、最先端の、といいますか、塾の裏をかくような新傾向の問題が大好きな学校もありますが)。本番レベルの問題の出題の仕方を知り、今の自分の知識の定着度の距離を測ることができる、それは模試を受ける大きなメリットと言えます。

模試=集中して相当量の学習をしてくることになる!

お子さんの実力が飛躍的に上がる瞬間、それは「集中して相当量の問題を解いているとき」です。「集中して」「相当量の」ということがポイントです。制限時間がある中で、周りも集中している環境で、4科目の問題に朝早くから昼まで取り組むわけですから、模試を受けること=集中して相当量の問題を解くということになるわけです。

もちろん、正答率が非常に低い問題まですべて集中力を切らさずに解き切るのは難しいかもしれません。ですから、今解ける問題、解けそうな問題まででも構いません。「今の自分」の実力を出し切り、定着している知識をフルに使って、そのとき解ける問題に集中して取り組む模試は、実力をワンランクアップさせる貴重な機会なのです。

ポイント③ 模試当日はメンタル面にも配慮を!

先ほども書きましたが、「できなかった問題は宝物」です。ですがそれは、集中して問題を解いてきた結果できなかった問題です。集中力を欠き、途中で考えるのを放棄してしまっては宝物も得ることができません。集中して問題を解くためには、模試当日のお子さんのメンタル面も重要です。

「こういう問題は解けなきゃだめよ」「何点以上取ってきなさい」等と、発破をかけるつもりで発した保護者の言葉が、本番でお子さんの脳裏によみがえり、「解けなかったらどうしよう」「怒られたらどうしよう」と急にそわそわしてしまう、あるいは先ほども書きましたがおなかが痛くなったり体調を崩して実力を発揮できなかったというケースは非常に多くみられます。こういう事態だけは避けたいものです。

深い思考は、精神的な安定感があってこそ発揮できるものです。どうぞ、模試当日は口げんかなどせず、普通に接して「思い切りやっておいで」と送り出してあげてください。

終わりに

総合模試の始まる季節は、保護者の方の緊張も高まります。ですが、実際に受験するお子さんのプレッシャーも相当なものだということを忘れてはいけません。お子さんの学習へのモチベーションは、保護者の方を喜ばせたいということに大きく依拠しています。保護者の方が成績に一喜一憂してピリピリしていると、お子さんのモチベーションは下がってしまい、普段の学習にも身が入らず、新しくわかった、できたという喜びを体感することができなくなってしまいます。その結果、模試を受けるごとに成績が下降線をたどるということもよくあるのです。

志望する学校に合格したい、その目標を忘れずに、模試に振り回されるのではなく、うまく「活用して」今後の学習につなげていきましょう。今回は模試の活用について書きましたが、「模試を活用する」という姿勢は、マンスリーテストや組み分けテスト、カリキュラムテストなどすべてのテストに共通するものです。ぜひ、実践してみてください。

模試の解きなおしや復習の際に気をつけたいことは、別の機会に記事にしたいと思います。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。