湿度 ~空気中の水蒸気の量には限界があることや,その比で湿度が決まっていることについて学ぼう~

皆さんは天気予報番組などでよく見る「湿度」というものがどういうものか知っていますか?簡単に言えば空気がどれだけ湿っているかと言ってもある意味正しいかもしれません.

しかし,例えば湿度100%というのがどういう状態か説明できるでしょうか.

もちろん空気が全て水の状態ではありませんね.それでは湿度とは正確には一体何なのでしょう.

ここでは湿度は何によって決まっているのかを学んでいきましょう.

空気中の水蒸気の量と温度の関係

空気に含まれる水蒸気の量

湿度を考えるうえでは,「空気中に含まれる水蒸気の量」が重要な要素となってきます.

例えば砂漠などでは比較的空気中に含まれる水蒸気量は少ない(0ではなく,そこそこの水蒸気は空気中に含まれている)でしょうが,雨が降っているときの空気中には多くの水蒸気が含まれているであろうことが想像できると思います.

飽和水蒸気量

それでは水を蒸発させ続けて空気中に水蒸気を含ませ続けるとどうなるでしょう.そのうち水中みたいになるでしょうか.

実際にはそうはなりません.

実は空気中に含むことのできる水蒸気の量には限界があります.限界の量だけ水蒸気を含む空気の中にある水は,見かけ上ではそれ以上蒸発しません.

1m³の空気に含ませることができる水蒸気の限界の量のことを「飽和水蒸気量」と呼びます.

飽和水蒸気量:空気1 m³が含むことのできる水蒸気の最大量(g または g/m³)

飽和水蒸気量と温度

上で説明した飽和水蒸気量は温度によって変化します.

例えば温度が高くなればなるほど,空気が含むことのできる水蒸気の量は多くなります.

温度と飽和水蒸気量の関係を表したグラフがこちらです.

気温と飽和水蒸気量の関係

飽和水蒸気量について,このように重さで表される場合もあれば,空気中に限界まで含まれている水蒸気の圧力を温度ごとに示したグラフを用いることもあります.

飽和水蒸気量のときの圧力もまた温度が高くなるにつれて,大きくなっていきます.

露点

 例えば空気にある量の水蒸気が含まれているとき,空気の温度を次第に下げていくことを考えてみましょう.

空気に含まれている水蒸気の量に変化がないとすれば,空気の温度が下がるごとに飽和水蒸気量,すなわち空気中に存在できる水蒸気の量がどんどん減っていくため,そのうち実際の水蒸気量が限界の量をあふれてしまいます.

ここであふれた分の水蒸気は気体から液体へと状態変化を起こし,水滴になります.

つまり温度を下げていくことで,どこかの温度で,空気に含まれる水蒸気量が飽和水蒸気量をあふれ始め,水滴(基本的にはこの水の粒は小さく,雲やきりとなる)ができるようになります.

このときの温度を特に「露点」と呼びます.

露点:空気中の水蒸気が飽和水蒸気量に達して,一部の水が液体になり始める温度

 ここで「露点」や「空気中の水蒸気が冷やされて液体となって出てくる現象」というものをイメージしやすくするため,身近な例を紹介しましょう.

みなさんは冬で窓が曇っているのを見たことがあると思います. どうして外が寒いとき窓がくもるのでしょうか. それは上で紹介したことで説明することができます.

今,外が寒く,部屋の中が暖かいという状況を考えてみましょう.

部屋の中は暖かいので,飽和水蒸気量が多く,よりたくさんの水蒸気を空気中に含むことができます.

一方で外は寒いので飽和水蒸気量が少なく,あまり空気中に水蒸気を含むことができません.

部屋に含まれる水蒸気の量がある程度多い状態のとき,部屋の中の窓付近では何が起こるでしょうか.

窓の近くでは外の冷たい空気の影響で冷えているため,部屋の中に比べて一気に温度が下がります.

もちろん飽和水蒸気量も小さいので,部屋の中にあった水蒸気が冷たい窓によってあふれるため,水滴として窓に付着することになります.

そのため部屋の内側に水滴が付くのです. こうして考えることで窓が曇った時に外側と内側のどちらに水滴が付くかも分かりますね.

さらに寒いときに息が白くなるのも同じ原理です.

外に出た瞬間急激に冷やされることで一部の水蒸気が液体(霧状)になり,白く見えるようになるのです.

湿度

 空気に含まれる水蒸気の量について確認したところで,本題である湿度について学んでいきましょう.

 空気が含むことができる水蒸気の量には限界がありますが,空気が常にその限界の量の水蒸気を含んでいるわけではありません.

実際に空気中に含まれている水蒸気の量は,飽和水蒸気量よりも少ないでしょう.

ここで空気に含まれている水蒸気量が,飽和水蒸気量の何%なのかという値を出します. これが「湿度」と呼ばれるものです.

湿度:飽和水蒸気量に対する,実際の水蒸気量の割合

湿度は下の式で計算することができます.

勘の良い方はお気づきかもしれませんが,空気中に含まれている水蒸気量が変化しなくても,気温が違えば飽和水蒸気量は変化するので,それに伴って湿度も変化するのです.

つまり湿度は温度にもよります.

湿度と温度は密接な関係があり,例えば空気中に含まれる水蒸気の量があまり変化しないとすれば,気温が上がれば湿度が下がり,気温が下がれば湿度が上がるのです.

入試実践演習

ここまでに学習したことを活かして実際の入試問題に挑戦してみましょう.

問題

(大谷中 2016)

解答

  • (1) 積乱雲
  • (2) 小さくなる
  • (3) 61.2%
  • (4) 8 ℃
  • (5) 8.3 g

解説

(1)
晴れているときなどで暖かい空気があるところに,冷たい空気のかたまりがやってくると,冷たい空気は暖かい空気の下にもぐりこみ,暖かい空気は急激に上昇します.

このようにして上昇した空気が縦方向に発達した雲を作り,これを「積乱雲」と呼びます.

積乱雲はせまい地域に激しい雨を降らせる特徴があります.

 

(2)
空気の圧力は,地面から高いところほど,その圧力が小さくなっていきます.

問題のように,空気のかたまりが山にぶつかって斜面に沿って上昇すると,まわりの空気の圧力は上昇するごとに小さくなっていくため,空気のかたまりは膨張していきます.

この膨張にともなって空気のかたまりはその温度が低くなっていきます.

 

(3)
まずここで,雲ができ始めるまでは空気中に含まれる水蒸気の量は変わらないと考えます.

そして湿度を考えるうえで,A地点の空気中に含まれていた水蒸気量を求めます.

空気が山の斜面に沿って上昇し,その温度が下がっていくと,空気中に含ませられることのできる水蒸気の最大の量,すなわち飽和水蒸気量は小さくなっていきます.

もちろん飽和水蒸気量は,基本的に今空気に含まれている水蒸気の量以上の値です.

空気中に含まれる水蒸気の量が変わらず,空気中に存在できる最大の量だけが減っていくことを想像すると,いつか飽和水蒸気量が今空気に含まれている水蒸気量が同じになります.

さらに空気のかたまりが上昇すると飽和水蒸気量がどんどん小さくなっていきます. 今,含まれている水蒸気の量より,飽和水蒸気量が小さくなると,あふれた分の水蒸気は水滴になり,これが雲となります.

この水滴が現れ始めたとき,すなわち飽和水蒸気量が今空気のかたまりに含まれる水蒸気量と同じになった瞬間が,雲ができ始める瞬間になります.

つまりB地点の飽和水蒸気量が,はじめから空気中に含まれていた水蒸気量ということになります.

ここで注意しなければいけないのは,空気のかたまりがA地点からB地点まで上昇してくる際には,その温度がどんどん小さくなっている点です.

問題文を読むと,空気のかたまりが雲をつくり始めるまで,つまりA地点からB地点までは100 m上昇するごとに,空気のかたまりの温度は1 ℃ずつ下がっていくことが分かります.

図より,A地点からB地点までは800 mあることがわかるので,ここまでに下がる温度は

800÷100=8より,8℃下がることが分かります.

問題文より,A地点での空気のかたまりの温度は21 ℃なので,B地点での空気の温度は

21-8=13より,13 ℃であることが分かります.

表より,13℃の飽和水蒸気量は11.4 g/m3であるので,地点AからBまでは空気のかたまりの中に,1 m3あたり11.4 gの水蒸気が含まれていたことになります.

さらに,地点Aにおける飽和水蒸気量,すなわち21 ℃での飽和水蒸気量は,表から読み取ると18.3 g/m3であることが分かります.

すなわち,地点Aにおける湿度は,

空気1 m3に含まれる水蒸気量÷飽和水蒸気量×100=11.4÷18.3×100=61.29…≒61.3

より,約61.3%となります.

 

(4)
地点Bからは雲ができ始めているので,問題文より,地点Bから山頂までは100 m空気が上昇するごとに0.5 ℃ずつ下がっていきます.

問題の図から,地点Bから山頂までの高さは,

1800-800=1000 より,1000 mとなります.

つまり,空気のかたまりが地点Bから山頂へ行くまでにどれだけ温度が下がるかを計算すると,

1000÷100=10

10×0.5=5

より,5 ℃下がることになります.

(3)より,地点Bでの温度は13 ℃なので,山頂での空気のかたまりの温度は,

13-5=8より,8 ℃となります.

 

(5)

雲となって現れるのは,空気のかたまりに含まれていた水蒸気のうち,温度が下がることによる飽和水蒸気量の減少により,あふれて出てきた分だけです.

つまり,空気のかたまりが山頂に着いた時点で,それ以上の飽和水蒸気量の減少はないため,飽和水蒸気量の分,つまりあふれなかった分は空気中に水蒸気としてまだ残っています.

(4)より,山頂での空気のかたまりの温度は8 ℃なので,8 ℃の飽和水蒸気量は8.3 g/m3となり,つまり山頂において空気1m3あたりに含まれる水蒸気は8.3 gです.

まとめ

湿度を考えるうえで重要になってくるのは「空気中に含まれる水蒸気の量」であり,これには限界があります. そして実際に含まれる水蒸気の量の比が湿度として表されるのです. 湿度は地学分野で扱われるものですが,温度による空気中の水蒸気量の限界の変化は化学分野で重要になってくるため,双方しっかり押さえておきましょう.

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