生物を基礎からわかりやすく!DNAの複製について【複製過程・半保存的複製・レプリケーター】

DNAの複製とは

もとのDNAとまったく同じDNAがつくられることをDNAの複製という。

複製の過程(簡単に)

図 1 DNA複製の過程(簡単に)

  1. DNAが複製されるとき、塩基どうしの弱い結合である水素結合が切れて二重らせんがほどける。


  2. 鋳型の塩基と相補的な塩基をもつヌクレオチドがやってきて、塩基どうしが再び水素結合をつくる。
    ※RNAポリメラーゼ(RNAの鎖をのばす酵素)がはたらく。


  3. 新しいヌクレオチドどうしがつながると、新しい鎖ができる。
    このときDNAポリメラーゼという酵素がはたらく。


  4. こうしてできた2本鎖DNAは、もとのDNAとまったく同じ塩基配列をもっている。


  5. 新しい2本鎖DNAには、もとのDNAの鎖の一方が必ず含まれる。
    このような複製を半保存的複製という。

DNAの半保存的複製の証明実験

1958年 メセルソンスタール
N(窒素)の同位体           14N…軽い
                                        15N…重い

図 2 DNAの半保存的複製の証明実験

つまり、何回繰り返し複製されてももとのDNAの鎖を1本含むDNAはなくならない。

《半保存的複製の証明実験 まとめ》

 

重い

中間

軽い

全部で

初め

1

0

0

1

1回目

0

2

0

2

2回目

0

2

2

4

3回目

0

2

6

8

4回目

0

2

14

16

n回目

0

2

2n-2

2n

 

複製の過程(詳しく)

  1. DNAの二重らせん構造の一部がレプリケーター(複製起点)の部分から開裂する。このとき、DNAヘリカーゼという酵素が働く。

    図 3 詳しい複製の過程①、②



  2. レプリケーター(複製起点)にプライマーという短いRNAが結合する。


  3. プライマーの隣りに、新しいヌクレオチド三リン酸がやってきて、鋳型鎖の塩基と水素結合する。

    図 4 詳しい複製の過程③、④



  4. ヌクレオチド三リン酸から2つのリン酸がとれ、放出したエネルギーでプライマーと結合する。
    このとき、DNAポリメラーゼという酵素が働く。

    図 5 ATPのエネルギー放出

     

  5. 鋳型鎖が3’→5’の場合、新生鎖は5’末端から3’末端へと連続的に合成される。
    この鎖をリーディング鎖という。

    図 6 詳しい複製の過程⑤



  6. 鋳型鎖が5’→3’の場合、新生鎖は5’末端から3’末端へと断続的に合成される。
    これは、DNAポリメラーゼによるヌクレオチドどうしの結合が5’→3’にしかできないからである。
    このときできる短い新生鎖の断片を岡崎フラグメントと呼ぶ。

    図 7 詳しい複製の過程⑥

    図 8 5’→3’方向と3’→5’方向の伸長について



  7. プライマーの部分は分解される。
    そして、岡崎フラグメントは、DNAリガーゼという酵素によってつながる。
    この鎖をラギング鎖という。

    図 9 詳しい複製の過程⑦

レプリケーター(複製起点・複製開始点)の数

真核細胞の場合

…レプリケーターは複数ある。

図 10 真核細胞のレプリケーター

原核細胞の場合

…原核細胞のDNAやプラスミドは環状であり、レプリケーターは1ヶ所のみ。

図 11 原核細胞のレプリケーター


[岡崎フラグメント]

岡崎フラグメントは、岡崎令治らによって1966年に発見された。
この業績はノーベル賞受賞が確実視されていたが、岡崎令治は、1975年、中学生のときの広島での被爆を原因とする慢性骨髄性白血病のため44歳で急逝した。
その後、研究は妻の岡崎恒子らに引き継がれ、岡崎フラグメントの合成開始から連結までの全過程が解明された。

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