発酵とは
- 発酵…酵素を使わずに呼吸基質を分解してエネルギーを取り出す働き。細胞質基質で行われる。発酵、解糖、腐敗などがある。
発酵の種類
アルコール発酵
酵母菌が行う。酒、ビール、ワイン、パンの製造。
反応式 : C6H12O6 → 2 C2H5OH + 2CO2 + 2ATP
分解 エタノール 解糖系と同じ
乳酸発酵
乳酸菌が行う。乳酸飲料、漬物、チーズの製造。
反応式 : C6H12O6 → 2 C3H6O3 + 2ATP
乳酸
解糖
動物の筋肉の中で、酸素の供給が不十分なときに行われる。
乳酸発酵と同じ経路。
反応式 : C6H12O6 → 2 C3H6O3 + 2ATP
※筋肉疲労(乳酸がたまる)
腐敗
(窒素Nを含む)タンパク質などが嫌気的に分解され、(アンモニアNH3などの)悪臭を伴う有害な物質ができる。
反応経路

図1 乳酸発酵とアルコール発酵の反応経路
●乳酸発酵
乳酸菌の行う発酵。
グルコースの分解で生じたピルビン酸が還元されて、乳酸ができる。
●アルコール発酵
酵母などが行う発酵。
ピルビン酸から脱炭酸酵素によってCO2が除かれてアセトアルデヒドができ、その後これが還元されてエタノールができる。
パスツール効果
パスツール効果…酵母菌は酸素があるとアルコール発酵だけでなく呼吸も行う。
呼吸の方が同じグルコースから多くのATPを得られるからである。
練習問題
問1
問1.酵母はアルコール発酵だけでなく呼吸も行う。
ある酵母が呼吸によって酸素を16mg吸収し、二酸化炭素を33mg放出した。
原子量は、H=1、C=12、O=16とする。
- 呼吸によって消費された酸素は何mgか。
- 呼吸によって放出された二酸化炭素は何mgか。
- アルコール発酵で放出された二酸化炭素は何mgか。
- アルコール発酵で消費されたグルコースは何mgか。
【解答】
(O2 1mol 32g、CO2 1mol 44g)
⑴問題文より消費した酸素は16mg
⑵呼吸の反応式 : C6H12O6 + 6H2O + 6O2 → 6CO2 +12H2O +38ATP
①吸収した酸素のmolを計算する。
原子量と比によって計算する(消費された酸素のmolをxとする)と
1mol : 32g = xmol : 16mg
x = 0.5m mol
酸素は0.5m mol消費されたこととなる。
②呼吸の式から放出した二酸化炭素のmolを求める。
物質量と係数の関係より、酸素:二酸化炭素=6:6=1:1
よって、放出した二酸化炭素は0.5m mol
③二酸化炭素は何mg放出されたか求める。
0.5m mol × 44g/mol = 22 mg
⑶問題文より全体で放出された二酸化炭素が33mgより、
33 mg – 22 mg = 11 mg
⑷アルコール発酵 : C6H12O6 → 2C2H5OH + 2CO2 + 2ATP
アルコール発酵で放出された二酸化炭素が11mg
よって、アルコール発酵によって放出された二酸化炭素のmolは、
11 mg / 44 (g/mol) = 0.25m mol
物質量と係数の関係より、グルコース:二酸化炭素=1:2
よってアルコール発酵で消費されたグルコースのmolは、
0.25m mol / 2 = 0.125m mol
またグルコースの式量は、180 g/mol
よって0.125m mol × 180 g/mol = 22.5mg
問2
問2.酵母をある条件下においたところ、酸素48mgを吸収し、二酸化炭素を110mgを放出した。これについて後の問いに答えよ。
ただし、原子量は、H=1、C=12、O=16とする。
- 酵母がエネルギーを得るために行う2つの反応の名称を書け。
- 酸素を用いる反応において放出された二酸化炭素は何mgか。
【解答】
⑴アルコール発酵、呼吸
⑵酸素を用いる反応→呼吸
呼吸の反応式 : C6H12O6 + 6H2O + 6O2 → 6CO2 +12H2O +38ATP
①吸収された酸素のmolを求める。
48mg / 32(g/mol) = 1.5m mol
→物質量と係数の関係より二酸化炭素は1.5mol放出された。
②放出された二酸化炭素(mg)を求める。
1.5m mol × 44(g/mol) = 66mg
よって呼吸によって放出された二酸化炭素は66mg
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