本日解説するのは、「麻布中学校」さんの国語の入試問題です。
自由な校風で、関東男子御三家の1つと呼び声の高い、麻布中学校。
そんな麻布中学校の国語の入試問題は、どのようなもので、どんな対策をしていけば良いのでしょうか。
学校情報や入試の基本データをまとめた上で、麻布中学校さんの入試問題を分析し、問題を解くにはどういった力が必要なのかを解説します。
Contents
【学校情報】
[応募状況]
◎2020年度:募集人員 300人
応募者数 |
受験者数 |
合格者数 |
|
男子 |
1016人 |
971人 |
383人 |
[倍率]
◎2020年度: 2.5倍
[進路実績]
◎2020年度:大学合格者数
国公立大学 |
私立大学 |
||
東京大学 [理科三類含む] |
64名(46名) |
慶応義塾大学 [医学部含む] |
96名(52名) |
京都大学 |
12名(6名) |
早稲田大学 |
115名(69名) |
東京工業大学 |
9名(4名) |
東京理科大学 |
45名(24名) |
横浜国立大学 |
6名(2名) |
中央大学 |
12名(5名) |
千葉大学 |
2名(1名) |
上智大学 |
11名(1名) |
北海道大学 |
7名(2名) |
明治大学 |
31名(11名) |
筑波大学 [医学部含む] |
3名(3名) |
立教大学 |
5名(2名) |
- 他大学(海外大学含む)多数合格 ※表の( )内は、新卒者合格人数。
<学校公式HP「『学校法人 麻布学園 麻布中学校・麻布高等学校』2020年大学合格者数」より一部抜粋。>
[学校説明会日程]
★2020年 中学校説明会
- 2020年10月17日(土)、10月18日(日)、10月24日(土)
※新型コロナウィルス感染症に配慮し、説明会はweb公開、学内の見学会は人数制限予定。
※見学会の予約は、2020年9月23日(水)10:00より受付開始。
◎2019年 中学校説明会
- 2019年10月19日(土)、10月20日(日)、10月26日(土)
<学校公式HP「『学校法人 麻布学園 麻布中学校・麻布高等学校』学園説明会・見学会のお知らせ」より抜粋>
[入試情報・日程・科目数]
◎2020年度入試
入試 |
|
日程 |
2020年2月1日(土) |
試験内容 |
学力検査 [国語・算数・理科・社会] |
出願期間 |
2020年1月10日(金) 9:00 ~ 2020年1月17日(金) 13:00 |
合格発表 |
2020年2月3日(月) 15:00 ~ 17:00 |
手続期限 |
2020年2月4日(火) 9:00 ~ 12:00 |
入学手続き者説明会 |
2020年2月11日(火) 13:00 ~ |
<学校公式HP「『学校法人 麻布学園 麻布中学校・麻布高等学校』 2020年度麻布中学校生徒募集要項」 より抜粋>
【基本データ】
[試験時間・満点]
◎2020年度入試
国語 |
算数 |
理科 |
社会 |
|
試験時間 |
60分 |
60分 |
50分 |
50分 |
満点 |
60点 |
60点 |
40点 |
40点 |
[問題構成・解答形式]
麻布中学校の国語は、試験時間60分60点満点の入試です。
大問が1問、小問は14~19問で、「記述式」が中心の入試問題となっています。設問としては、問われた内容を指定された行数でまとめる完全記述式の問題が並び、選択問題は毎年2問程度、語句問題は「漢字の書き取り」が毎年3~4問出題されるのみです。本文を読み解く読解力だけでなく、文章で記述する表現力が問われる問題だといえそうです。
文章ジャンルとしては、過去10年を遡っても「小説」しか出題されていません。記述式の内容・心情・理由説明問題を通して、「小説」の内容を理解しているかが問われる点は、長い間変わらない傾向であるといえるでしょう。ただ、問題の本文が300行以上あることが通例で、試験時間内にある程度長さのある文章を読み解かなければいけず、そのことを念頭においた対策が必要です。
[合格最低点・平均点]
◎2020年度
- 合格最高点 151点
- 合格最低点 110点
【近年の出題内容】
◎2020年度
大問1 |
小説 |
選択式2問 |
内容説明 |
記述式12問 |
語句(漢字の書き取り) 3問 記述(内容説明)[1行] 1問 記述(内容説明)[2行] 4問 記述(内容説明)[4行] 1問 記述(理由説明)[3行] 1問 記述(理由説明)[2行] 1問 記述(心情説明)[1行] 1問 |
◎2019年度
大問1 |
小説 |
選択式2問 |
心情、行選択(内容説明) |
記述式17問 |
語句(漢字の書き取り) 4問 記述(内容説明)[10字以内] 1問 記述(心情説明)[1行] 1問 記述(心情説明)[2行] 1問 記述(理由説明)[1行] 2問 記述(理由説明)[2行] 2問 記述(理由説明)[3行] 1問 記述(理由説明)[5行] 1問 記述(内容説明)[1行] 1問 記述(内容説明)[2行] 3問 |
◎2018年度
大問1 |
小説 |
選択式2問 |
理由、内容説明 |
記述式15問 |
語句(漢字の書き取り) 4問 抜き出し(心情) 1問 記述(内容説明)[1行] 3問 記述(内容説明)[2行] 2問 記述(内容説明)[3行] 1問 記述(心情説明)[2行] 1問 記述(心情説明)[3行] 1問 記述(理由説明)[1行] 1問 記述(理由説明)[5行] 1問 |
【出題傾向】
[出題のポイント]
1.毎年、300行以上に渡る『小説』の読解問題を出題!
ある程度長い文章の内容を、的確に掴めるように対策を行いましょう。
麻布中学校の国語の問題では、「小説」の読解問題が1題だけ課される形の出題が長年続いています。本文として出題される「小説」は、毎年300行を超える範囲で出典から抜粋されており、その問題本文の長さは麻布中学校の入試問題の特徴の1つと言って良いでしょう。
設問では、内容・心情・理由説明など、本文の内容に関する問題が中心となって出題されます。そのため、長い文章であっても、登場人物の関係や置かれている状況、心情、物語のテーマなどを的確に掴みながら読んでいくことが必要です。
本文の長さと設問の傾向から、大きく本文の内容(テーマ)を掴みながらも、緻密に読む、そんな読解力が試される問題といえるでしょう。
2.ほぼ全ての問題の解答形式が『記述式』!
解答をまとめる根拠やヒントになる本文を精確に見極めて、解答をまとめましょう。
麻布中学校の国語の問題の出題形式は、ほぼ全て記述式です。先述した通り、記述式の問題の他に出題されるのは、選択問題が2問程度、漢字の書き取りは3~4問程度と、記述式以外の問題の比重は軽めです。
記述式でいかに得点できるかが分かれ目になるため、読解力と共に、記述力(文章表現力)が試されている問題だといえるでしょう。
記述式の問題では、行数指定のみで、具体的に文字数が指定されている問題は少なく、また、制限時間と問題数を比べても、1問1問にあまり多くの時間をかけられません。そのため、記述式の問題に数多く取り組み、自分の考えを過不足なくまとめることに慣れておく必要があります。
3.語句系統は『漢字の書き取り』のみ、3~4問程度出題!
取りこぼしのないように気をつけましょう。
語句系統の問題としては、『漢字の書き取り』のみ、毎年出題されています。その問題も3~4問程度と少なく、小学4~6年で習う漢字が出題されることが多いため、高得点をねらうためには落としたくない問題であるといえます。
ただ、読解問題が記述式メインのため、誤字で減点されてしまわないように、漢字の知識は確実に身につけておく必要があります。
また、記述の問題を解くには、使える語彙も増やさなければなりません。漢字の問題対策としてだけでなく、読解や記述で使える言葉の知識を高めておく必要があるでしょう。
[問題の分析と対策]
麻布中学校入試問題における対策として、力を入れて行いたいのは、①長文の小説対策 ②記述式の問題対策の2点です。
長文の小説対策
まず、麻布中学校の問題では、出典から本文が長めの文章量で抜粋されており、その内容がしっかりと理解できているかが問われます。そのため、長い文章を整理しながら読む練習を行う必要があります。
それも、ただ読むのではなく、大きな視点で小説のテーマや登場人物の心情の変化を捉えつつ、人物の置かれた状況や人物が発したセリフにどのような心情が込められているのかなどを文脈の中で精緻に捉えなければなりません。
したがって、読解問題を解く際には、ただ漫然と読み解くのではなく、丁寧に物語の展開や心情を確認していくことが重要です。問題を解いた後に、あらすじを自分でまとめたり、主人公の心情を場面ごとにまとめ、心情の変化を確認したりするのも、読みを深めるための良い練習になるかもしれません。
また、普段の読書の際に、同様のまとめを行うのも効果的かと思われます。読書の場合には、自分がどんな場面で心が動いたのか、具体的に人物の行動や心情に沿って説明をする習慣をつけると良いでしょう。
そうすることで、だんだんと物語の内容を緻密に把握していけるようになる上、文章を書くということに慣れることができると思います。
記述式の問題対策
記述の問題対策としては、第一に文章を書き慣れることが肝要です。自分の考えたことを自然な文章で、簡潔に述べられる表現力が必要なため、くりかえし文章を書いては添削をしてもらいましょう。まずは言葉の使い方が精確な自然な文章を書けるようになることが、問題を解くための第一歩です。
記述の問題傾向としては、「傍線部の前後を読み端的に内容をまとめる問題」から、「広い範囲を読んで解答をまとめなければいけない問題」、そして、「本文から自分で内容を考えて記述しなければいけない問題」が並びます。
試験時間のことを考えると、1問1問にそれほど時間をかけられるわけではないため、問を読んで大まかな答えが思い浮かべられるようにしなくてはなりません。
まずは、問題の最初から中盤にかけて配置されている「傍線部の前後を読み端的に内容をまとめる問題」や「広い範囲を読んで解答をまとめなければいけない問題」をすばやく解けるように練習を行いましょう。
こういった問題ですばやく解答するためには、日頃から丹念に文章を読み込み、そして、その導きだした答えを、定められた行数や条件で端的に記述できるよう、くりかえし記述式の問題演習を行うことが大切です。過去問をたくさん解いて練習を行うのも良いですし、記述対策の問題集で速く精確に解けるよう時間を測りながら練習を行うのも良いかもしれません。
また、麻布中学校の問題の中で一番難しい記述式の問題は、最後の方に配置されている「本文から自分で内容を考えて記述しなければいけない問題」です。その問題では、「○○に注目して」「〇行から△行を読んで」などの条件がついており、その条件から設問で問われている内容を自分で推測して記述することになります。
解答を推測するためには、条件自体もヒントになるのでよくその条件を加味すること、小説のテーマとも関連していることが多いので的確に物語の主題を捉えること、そして、なによりその場面までの流れをしっかりと捉えていることが必要です。
こちらの問題は他の問題と比較すると難易度が高いので、記述を重視している他の中学校の入試問題も解いて、より多く練習を重ねてみても良いかもしれません。
[おすすめの問題集]
◎ふくしま式「本当の語彙力」が身につく問題集[小学生版]
記述力の土台となる豊富な語彙を身に付けるためにオススメの1冊です。
類似の意味を持つ語がまとめられているため、同じ意味を持つ表現を理解しやすく、また、それらの言葉を使って一文を作る練習ができるようになっています。
◎中学入試 最高水準問題集 国語
難関校の入試問題の中から良問を厳選して集めた問題集です。難関中学校の問題を幅広く集めているため、様々な入試問題に対応できる力が養えます。
基本的な対策をし終わり、他の学校の問題も解いて、様々な問題への対応力を身につけたい場合におすすめです。
難関校から問題を選んでいるため、難度の高い記述の問題も含まれています。
◎中学入試 分野別 集中レッスン 国語 記述力
記述に特化した問題集で、順をおって丁寧にステップアップできるように作られています。「入試問題にチャレンジ」のページもあり、基礎から入試問題まで記述問題に特化してカバーできるかと思います。
[総括]
本日は麻布中学校の国語の入試問題の解説を行いました。
昨年今年と志願者数が1000人を超え、高い人気を保持し続けている麻布中学校の入試は、長い文章をしっかり読み込める読解力と自分の考えたことを表現できる記述力を求める問題でした。
記述式の問題は難度が高いですが、記述に特化した対策を行い、盤石の態勢で入試に備えましょう。
【参考】
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明治大学文学部卒。
明光義塾、トライグループと渡り歩いた豊富な指導経験を活かし、初学者の躓く勘所を抑えた記事を多数執筆。
大学での選考は日本近代文学で、芥川龍之介や梶井基次郎など大正時代の文学論にも造詣が深い。