中学受験をするかどうか?これは、何を一番重視して判断すればよいのでしょうか。
中学受験を目指す場合、とくにいわゆる進学校(大学付属などエスカレーター校は別にして)を目指す場合、やはり親御さんとしては出口=大学受験実績を意識されると思います。もちろんほかにも、充実した施設で6年間のびのび過ごし、自分の進みたい道を考えてほしい、など、中学受験を考えるにあたって考えるべき要素はたくさんありますよね。
でも、小学校4年生や5年生ののお子さんが中学受験を主体的に判断することは難しいですから、やはり保護者の方が主導権を握ることが多いでしょう。お子さんは、そういう保護者を喜ばせたい一心で勉強を始め、言われる通り中学受験をすれば将来というものが開けるらしいと思って頑張る・・・そのような構図が一般的ではないでしょうか。
では、中学受験をすることはが、ご自分のお子さんにとって本当に必要なのかどうか、ということを考えたことはありますか? 受験をしたその先にはどんな世界が待っているのでしょうか?そして、公立中学校への進学と比較してみたことはあるでしょうか。
もちろん、自然に「この学校に入りたいな」というお子さんの意思を尊重して始める姿が理想的ですが、一度中学受験のレールに乗れば、降りる決心はなかなかつかないものです。今回は、中学受験のメリットとデメリットをご紹介していきます。ぜひ、お子さんに合った進路選択をしていただくための材料としていただきたいと思います。
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中学受験をするメリット
では、中学受験をすることによるメリットとは何でしょう?代表的なものを、いくつかご紹介します。
メリット① 学力の向上
中学受験を目指して勉強していくことにより、当然ながら学力の向上が見込めます。目指す学校が難関校であればあるほど、理解しなければならないことも多く、できるようになるまで多くの問題演習を重ねる必要がありますから必然的に勉強時間・量ともに増えますし、勉強している中で自分なりの効率のよい学習法を身につけられる可能性が高いです。小学生のうちからそのような学習法が確立していれば進学後の学習にとっても理想的です。
メリット② 高校受験がないため、6年間を通したカリキュラムで早めに高校単元に入る
私立中高一貫校の場合、多くは公立中学より進度が早いです。特に英語や数学は、検定教科書こそ配られるものの、6年間のカリキュラムを意識した一貫校向けの教材や学校が作ったオリジナル問題集を使って、中学3年、早いところでは中学2年で高校の単元に足を踏み入れる学校もあります。難関大学や医歯薬系などに進学実績を出している学校では特にその傾向が顕著です。
そして、高校受験がないため(中には中学の成績によって、ほかの高校への転学を勧められるケースもありますが)、「高校受験用の勉強」にこだわらずに、様々なアプローチから「考えさせる」カリキュラムが組まれていますから、様々なものの見方を身につけることができるというメリットがあります。
部活動や学校行事を中学高校合同で行っているところも多く、早いうちから「高校生になったらこういう先輩のようになりたい」という自覚を養うことができるのも大きなメリットです。
メリット③ 学力レベルや家庭環境が似ている生徒が集まる
中学受験をする場合、基本的にその学校の教育理念や方針に共感して受験し、進学するのが一般的です。また、その学校のカラーというものもあり、その一つに似た家庭環境の生徒が多く集まってくるので、切磋琢磨し、一生の友人を作ることもできるでしょう。
また、早いうちから大学に向けた進路指導や、キャリアデザインカリキュラムが組まれているので、将来どういう方向に進もうか、一緒に頑張ろうという学校の雰囲気も魅力的です。
中学受験をするデメリット
まずはメリットをお伝えしましたが、当然デメリットもあります。
デメリット① 一度ついていけなくなるとリカバリーするのは大変
メリット③のところで、学力レベルが似ている生徒が集まる、と書きましたが、定員が多い学校では、同じように合格しても入口のところですでに学力差が生じています。各学校のHPなどで合格最高点、最低点が公表されている場合がありますが、これを見ても科目別にかなりの差があることが見て取れます。
もちろん、中学校に入って初めて学ぶ概念や単元は多いですから、入学した時の順位と入ってからの成績が必ずしも一致するわけではありません。入学してからしっかり頑張れば、仮にぎりぎりで合格した生徒さんでも、成績上位をキープして卒業していくということも多いです。
しかし、中学受験で「のびきってしまった」状態で入学してしまうと、たとえ上位で合格したとしても勉強そのものに興味が持てなくなり、入学後の勉強の質と量についていけないケースも実は多いのです。そして、私立の場合、学習内容やレベルは比較的現場の先生の裁量に任されていますから、テストの問題もクラスによって違ったり、また、習熟度別クラスを設けている場合、上のクラスに入らなければという強迫観念に駆られてしまい、ますます勉強に身が入らなくなってしまう生徒さんもいます。
6年間独自カリキュラムの影の部分といっても良いでしょう、一度ある教科でつまずいてしまうと、その教科ばかり勉強しようとして、気づけばほかの教科の成績が下がってしまう・・・そのような連鎖に入ってしまうと、取り返すのは非常に大変だということは知っておくべきことです。
デメリット② 意外に軽視されがちな理科と社会
もちろん、主要5科まんべんなく指導してくれる学校もありますが、特に理社に関しては、いわゆる「先生の趣味」の分野に偏りがちで、先生によって進度もまちまち、6年間で教科書が終わらない・・・というケースもあります。そういった場合、定期テストの時だけ出るところを勉強して終わり、を繰り返すことになるので、理社の基礎知識が身につきにくいという点も忘れてはいけないポイントです。
公立中学から公立高校に進学する場合には、5教科受験ですから、理社の基本的な全体像を一度俯瞰することができますが、私立中学校の場合、高校生になっても理社の全体図が見えないまま、基礎知識や用語が身についていないというリスクもありますので、大学受験までに全体を終える自学自習、あるいは塾通いが必要になってきます。2020年度から大学入試改革が行われる(予定)ことから、細かい知識はなくてもよい、と思われるかもしれませんが、そこで求められているのは「基礎知識あってこその応用力」だということを忘れてはいけません。
うちの子は私立中学向き?公立中学向き?
一般的に公立中学の場合、学区がありますから、住んでいる地域は同じでも家庭ごとに教育に対する考え方は様々です。私立の場合は、様々な地域から生徒が通ってきますが、教育方針などは似通った考え方をお持ちの家庭が多いでしょう。この点については、保護者の教育方針に関わってきますので、十分に考える必要があります。
また、私立中学、特に難関校を受験するお子さんは例外はありますが早熟であることが多いです。大学受験を見据えるならそういったお子さんの多い環境にわが子を入れたいと考えるのは自然なことです。お子さんが将来の夢をすでに持っているなら、中学受験をしてそういった実績のある学校に進学するのが良いでしょう。
小学校からスポーツやブラスバンドなど、地域を超えて本格的に取り組んでいらっしゃる場合は、非常に悩まれるところだと思います。もちろん私立中学でもスポーツやその他の活動で全国的な成績を修めている学校も多くありますが、その場合、そういった活動と受験勉強との両立が可能なのかよく考える必要があります。どちらを優先するか、についてもです。小学校の勉強はしっかりしながら、塾通いの分の時間を思い切りやりたい活動に打ち込むために公立中学に進学するというのも一つの選択肢だと思います。
公立中学に進学するからといって日々の勉強をおろそかにできるわけではありません。やりたいことがあって公立中学を選んだのであれば、それを続けるためにも、いずれくる高校受験に対する意識はしっかり持って、学校の勉強や提出物の管理などもしっかりやらなければなりません。より自立を求められるようになる部分もあることを忘れないでください。
終わりに
私立の中学を受験するか、地元の公立中学に進学するか、いずれにしてもそれぞれメリットデメリットがあります。ですから、受験を決める前には、家庭の教育方針と、お子さんの成熟度、そして今何が一番やりたいのか、ということについて親子でよく話し合っておく必要があります。また、「友達と一緒に中学校に進学したい」というお子さんの意思も無視せず、よく話し合いましょう。
中学受験は、あらゆる点で親子が協力していかないと乗り越えることはできません。受験を決めたとしても、「勝手に受験を決められた」という意識でお子さんがいるならば、受験勉強に身が入るはずがありません。後々後悔しないように、受験をするメリット、デメリットについて親子で(家族で)しっかり話し合い、学校見学に行くなど、できることは早いうちに始めておきましょう。
一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。