第二次世界大戦が終わってからも、いまも世界中で国際紛争は絶えることはありません。紛争はいきなり起こるものではなく、原因が必ずあるものです。そして、その原因は根が深いことが多いです。
国としての考え方、民族についての考え方、宗教上の考え方の相違・・・様々な理由から、国際紛争は起こります。国際紛争について理解するためには、それが起こる原因、因果関係を理解する必要があります。
時事問題としてもよく入試で出題される国際紛争について、代表的なものを紹介し、解説していきます。
湾岸戦争
名前は受験生の皆さんなら聞いたことがあるでしょう。1990年8月に、イラクのフセイン大統領が、隣の国のクウェートに侵攻し、占領します。それに対して、国際連合の安全保障理事会は、イラクに撤退するよう求めましたが、フセイン大統領は撤退に応じませんでした。
しばらく緊張関係が続いていましたが、ついに1991年1月、アメリカを主力とする多国籍軍が空爆を開始します。これが湾岸戦争です。
イラクのクウェート侵攻の原因としては、石油によって経済を成り立たせていたイラクにとって、石油の増産を続けて価格を下げていた、いわば価格破壊を行い続けていたクウェートは、経済再建を妨げる存在になっていたということが挙げられます。経済政策の一つとして侵攻、占領したようなものでした。
1991年2月24日に地上戦が始まりましたが、100時間で決着がつき、イラク南部とクウェートは多国籍軍に制圧されました。ここにきてイラクは国際連合の決議を受け入れて敗北を認め、クウェートから撤退しました。
日本にとっての湾岸戦争の意義とは?
日本にとって、この湾岸戦争の意義はどこにあったのでしょうか。それは、自衛隊を海外に派遣するきっかけになったということですね。日本は初め、湾岸戦争に対して巨額の資金を提供していました。ですが、お金を提供するだけでは足りないという非難もあったりして、資金の提供だけでなく「血を流す」貢献をしよう、そういう形で国際貢献しよう、ということになり、戦争後の1991年6月、ペルシア湾に海上自衛隊の掃海艇を派遣しました。
これは最初の自衛隊の海外派遣でした。このあと、1992年には国連平和維持協力法が成立しました。いわゆるPKO法です。これによって、国連の平和維持活動(PKO)に参加することができるようになりました。
時事問題に関連する点として、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に参加している陸上自衛隊が5月末に撤収することになった、というニュースがありました。テレビなどでも連日報道されていました。もともと専守防衛のためにある自衛隊が海外で活躍するのは今では珍しくありませんが、その始まりは湾岸戦争の戦後処理にあります。
PKOの意味、自衛隊の海外派遣については、時事問題と関係して頻出です。ぜひ、しっかり押さえておきましょう。
イラク戦争
湾岸戦争に続き、イラクが関係する戦争です。2003年3月、アメリカのジョージ・W・ブッシュ政権が、イラクに侵攻し、イラクのフセイン政権を倒壊させた戦争です。
アメリカがイラクを攻撃した理由としては、イラクがテロ組織を支援していること、大量破壊兵器を開発していること、が挙げられていました。それがアメリカにとっての脅威になっているのでイラクに侵攻し、フセイン政権を終わらせた、というわけです。ですが、結局、イラクには大量破壊兵器は見つかりませんでした。
湾岸戦争との大きな違いは、湾岸戦争は国際連合の安全保障理事会の決議に基づいて、各国が武力を提供しましたが、イラク戦争は、安全保障理事会の決議に基づくことなく、アメリカが独断で始めた、というところにあります。2003年5月には戦闘が集結し、12月にはフセイン大統領を拘束しました。
現代史で問題となっている紛争の根源ともいえるこの戦争については、親御さんも比較的鮮明に記憶しておられるところだと思います。当時の緊張や戦争の経緯などをお子さんにぜひ説明してあげてください。現在のイラクの混乱、中東の混乱、終わりの見えないテロとの戦いと世界中への拡散など、このイラク戦争が残したものは、非常にすさまじいものです。
テロは日々世界のどこかで起こっているという報道もありますね。ニュースなどで目にしたら、なぜこのようなことが起こるのか、その原因はどこにあったのか、など、親子で話し合っておくことは、現代の国際社会に対する理解も深まります。
受験に備えておさえておきたいこと
受験への備えとして必ずおさえておきたいことは、このイラク戦争が起こった原因、つまりアメリカの主張と当時のアメリカ大統領、イラクの大統領の名前です。
また、この戦争のあと、自衛隊が人道復興支援・安全確保支援のために派遣されたという点も重要ですので、あわせて確認しておきましょう。ちなみに、このときの自衛隊派遣はイラク特別措置法という特別な法律に基づいて行われたもので、PKO(国連平和維持活動)ではありません。この戦争に国連は関与しておらず、アメリカが理由をつけてイラクに侵攻したからです。
まとめ
今回は、イラクに関する戦争について解説しました。戦争の背景についてはしっかり押さえておきましょう。
本来、国際的な紛争に対しては、国際連合の安全保障理事会が決議を行い、国連軍を派遣する、というのが原則ですが、各国の思惑によってそのような手続きをとらずにいきなり侵攻することもあります。ですが、そのような行動に出て戦争に発展するには、それまでの国どうしの関係や、政治、経済事情などが密接に関わっています。
このような戦争を口実にしたりして、いまや世界中でテロ行為が行われています。ニュースでも報道されることが多いですね。そのテロ行為も、やはり起こるに至るまでに、国どうし、宗教観の違いなど様々な要因があります。
中学入試では、細かすぎる知識は聞かれませんが、PKOや自衛隊の問題、国際関係で最近話題になっていることはしっかり覚えておきましょう。特にアメリカのトランプ大統領が来日します。アメリカと日本、アメリカと世界中の国との関係についての出題も予想されます。毎日のニュースにも関心をもって、時事問題や国際関係に対する知識を身につけ、理解を深めておきましょう。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。