中学入試で頻出の「文化史」ですが、しっかり覚えられているでしょうか。それぞれの時代によって発展した文化の特徴は混乱しやすく、また、史料問題としても出題され、意外に点を取りにくいのです。
「文化史」という歴史科目があるわけではありませんが、「文化」という視点で歴史の流れを整理しておくと、政治や外交とも関連させて、歴史全体を見る視点を養うことができます。
この記事ではそんな文化史をまとめて学んでいきます。読むときは必ず資料集を用意して、時代ごとに確認しながら覚えていくようにしましょう。
Contents
似ている文化はまとめておく
歴史の最初の方に出てくる、飛鳥文化と天平文化は区別がつきにくいかもしれません。似ている文化はそれぞれの共通点を意識しながら、特徴をまとめてみましょう。
飛鳥(あすか)文化
6世紀半ば、百済(くだら)という国から、仏教が伝わってきました。当時摂政であった聖徳太子は熱心に仏教を広めました。
そんな聖徳太子が建てた法隆寺は、世界で一番古い木造建築として有名です。他にも釈迦三尊像や高松塚古墳も飛鳥文化として有名なので、一緒に覚えておきましょう。
天平(てんぴょう)文化
天平文化も仏教が中心ですが、平城京の貴族が作り上げた華やかな文化になります。
このころ日本は唐に使者を送っており、その使者(遣唐使)が持ち帰った唐や西アジア、南アジアの文化の影響を受けています。
この頃に書物が誕生し、日本最古の和歌集である『万葉集』や日本最古の歴史書の『古事記』や『日本書紀』が生まれました。どれも有名な作品なのでまとめて覚えておきましょう。
写真で問われやすい東大寺の大仏や正倉院などが作られたのもこの時代になります。
平安・鎌倉仏教は混乱しやすい
平安時代と鎌倉時代には、さまざまな種類の仏教が登場します。混乱しやすいので、整理しておきましょう。
平安時代の仏教
平安時代は密教である「真言宗」「天台宗」を覚えておきましょう。
- 空海(くうかい)は真言宗を開き、高野山(こうやさん)に金剛峯寺(こんごうぶじ)を建てた
- 最澄(さいちょう)は天台宗を開き、比叡山(ひえいざん)に延暦寺(えんりゃくじ)を建てた
覚えにくいと思うので、参考までに覚え方をご紹介します。まず、名前と宗は「てんさいしんくう」という語呂合わせで覚えることができます。(てん台宗→さい澄、しん言宗→くう海)
空海、高野山、金剛峯寺はいずれも「K」で始まるので、読み方を覚えておけばどちらがどちらかセットでわかりやすいと思います。
鎌倉時代の仏教
鎌倉時代は戦乱やききんが続いたこともあり、新しい仏教が平民にも広まりました。世の中が不穏だったため、仏教にすがるという傾向が強まった時代です。
6つもあるので覚えるのが大変ですが、語呂合わせを作ったりひたすら声に出したりして好きな方法で暗記しましょう。
「しん」しゅうの「しん」らん、りん「ざい」しゅうのえい「さい」、そう「とう」しゅうの「どう」げんなど、読みをひっかけて組み合わせてみると覚えやすいかもしれません。
ここでは詳しく説明しないので、理解して覚えたい方は資料集を見たりインターネットで調べたりしてみてください。
鎌倉文化
武士の力が強くなった鎌倉時代では新しい文化を積極的に取り入れ、先ほど紹介したように新しい仏教の宗派も生まれました。
文学作品は作者不詳のものもありますが、内容や何が描かれているかを問題文にして答えさせるような入試問題も出題されます。「祇園精舎の鐘の声…」から始まる軍記物語の『平家物語』や、兼好法師の『徒然草』などは特に有名です。
また、東大寺南大門や金剛力士像は史料問題でよく出題されますので、資料集などで必ず確認しておきましょう。
室町時代の文化
室町時代の文化は、北山文化と東山文化に分けられます。
室町時代の足利将軍は、文化を大切にした人たちで、彼らの性格がそれぞれの文化に表れています。
北山文化
3代将軍の足利義満は武家と公家の最高位に立ち、日明貿易(勘合貿易)を行いました。室町幕府の全盛期を築いた足利義満の北山文化は、その「華やかさ」が特徴です。
また、武家文化と公家文化の融合だけではなく、明との勘合貿易や禅宗を通じて大陸文化の影響も受けています。
有名なものとしては鹿苑寺金閣(金閣寺)、寝殿造(阿弥陀像)、禅宗様(仏殿風で仏舎利を置いた)などがあります。特に有名な金閣寺は北山文化の華やかさの象徴だと思います。
観阿弥と世阿弥が能を大成したのもこの頃なので一緒に覚えておきましょう。
東山文化
8代将軍で義満の孫にあたる足利義政は、跡継ぎではなかったため都から離れて暮らしていましたが、兄の急死で呼び戻されて将軍になりました。
義政は政治に対するやる気がなく政治能力もあまり高くなかったため、東山の別荘で絵画や茶道などに取り組み、多くの文化人を保護・支援しました。そのため義政は「文化面では一流、政治面では三流」という評価を受けてしまっています。
この時代は禅宗の影響が大きく、質素なものが好まれました。東山文化は北山文化とは大きく異なり、「質素」「わび・さび(貧粗・不足のなかに心の充足をみいだそうとする意識)」が特徴です。
代表的なものとしては慈照寺銀閣(銀閣寺)、書院造などがあります。金閣寺と銀閣寺の写真を見て比べると、北山文化と東山文化の特徴がわかりやすいと思います。
他にも、連歌、御伽草子、茶の湯、生け花、水墨画などが代表的なものなので、資料集で確認して有名な作品や作者の名前は覚えるようにしましょう。
安土・桃山文化
安土・桃山時代とは、室町幕府滅亡から江戸幕府ができるまで、つまり織田信長と豊臣秀吉の時代です。織田信長の「安土城」と、豊臣秀吉の「桃山城(伏見城)」が名前の由来です。
織田信長は西洋文化にも関心があり、派手好きに思われるかもしれませんが、意外に庶民のための政策を打っていました。そんな織田信長と、正真正銘派手好きだった豊臣秀吉の性格が文化に反映されています。
また、この文化の特徴としては、仏教の影響が小さいということが挙げられます。これまでの時代との大きな違いですね。戦国大名によって寺院の力が弱まっていた、という政治状況が影響しています。
ここでは茶道、障壁画、浄瑠璃、かぶき踊り、姫路城、大阪城など特徴的な文化が発展したので確認しておきましょう。
江戸時代の文化
江戸時代の文化は、元禄文化と化政文化に分けられます。
それぞれの時代ごとに、とにかく代表的な文化的作品が多いので、それらがどちらの文化のものなのかを判別できるようになることが大切です。
元禄(げんろく)文化
このころは、町人が経済力をつけて豊かになり、現世を思うままに生きる、ということに関心が集まっていたようです。
世の中が不穏になると来世志向が強まって仏教文化が発達し、安泰になって豊かになってくると現世志向が強まる、という人の気持ちがわかると理解しやすいですね。文化史全般に言えることですので、ぜひ持っていただきたい視点です。
この時代はたくさんの文化作品が出てきます。特に有名なものだけ書き出してみます。
- 俳諧(松尾芭蕉『奥の細道』)
- 浮世絵(菱川師宣『見返り美人図』)
- 装飾画(俵屋宗達、尾形光琳)
- 浮世草子(井原西鶴『日本永代蔵』)
- 人形浄瑠璃(近松門左衛門『曽根崎心中』)
よく言われる語呂合わせとして、「げんろくがちかいひをまつ」というものがあります。
つまり、「げんろく(元禄)がちかい(近松門左衛門と井原西鶴)ひ(菱川師宣)を(尾形光琳)まつ(松尾芭蕉)」というわけです。覚えにくいところだと思うので、覚える工夫の一つとして参考にしてみてください。
化政(かせい)文化
世の中に対しての風刺、皮肉が好まれた時期といってもいいでしょう。それが文化にも現れています。
政治を皮肉った落首が町人の集まる橋のふもとにたてられたりするなど、幕府の政治も次第に力を失い始め、世の中の人の中に批判精神が生まれていた様子がわかります。
元禄文化と同様、化政文化もたくさんの文化作品があります。
- 浮世絵(喜多川歌麿の美人画、葛飾北斎『富嶽三十六景』、歌川広重『東海道五十三次』)
- 俳諧(与謝蕪村、小林一茶)
- 小説(十返舎一九『東海道中膝栗毛』、滝沢馬琴『南総里見八犬伝』)
- 狂歌、川柳
作品名や作者名を覚えるのも大切ですが、これらが元禄文化なのか化政文化なのかもよく問われます。名前、写真のどちらでも区別できるようにしておきましょう。
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最後に
それぞれの時代の文化は、ときの権力者や世の中の情勢と深い関連があります。ですから、「文化だけ」「政治だけ」ではなく、結び付けて覚えたほうが記憶に残りやすいです。
文化に政治の色が、政治に文化の色がお互いに影響し合い、結び付いていますから、それぞれの時代の文化の特徴を整理するときには、その時代の政治の特徴からも連想できるようにしておきましょう。
また、最初にも書きましたが、史料問題では文化史は必須です。ことばや名前だけでなく、資料集でしっかり確認しておきましょう。
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参考
一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。