今回の記事は,全国各地の工業地域・工業地帯を一つずつ取り上げて解説していくシリーズの第8本目として,中京工業地帯の特徴についてまとめていきます。この中京というのは,下で確認するように日本で最も栄えている工業地帯です。そのためいろんなテキストや授業で話を聞くことが多いでしょうが,それでも全ての事柄を覚え切るのは難しいでしょう。したがってこの記事では,図表を使いながら簡単かつわかりやすく特徴を取り上げていきます。知らない・覚えていないことだけでもいいので読んでいただけると幸いです。
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場所は?
それでは,まずは中京工業地帯の場所から確認していきます。工業地域・工業地帯について勉強していく上で,どこに位置するかということを覚えておくことは何より重要です。都道府県から工業地域・工業地帯の名前を答えさせる問題を始め,受験においてこれらの知識は周りと差をつけられないために必要となります。
さて,地図を使って中京工業地域の大体の場所を確認しましょう。下の図の青く塗られている部分が該当する区域になります。区域中のオレンジ色の点は代表的な都市を,()の中身はそこで栄えている産業を表します。取り上げてられている都市の名前は,出来るだけ頭の中に入れておきましょう。
上の地図から分かるように,中京工業地帯とは主に愛知・岐阜・三重の辺りを指します。この地域は正直言って馴染みのない方が多いのではないでしょうか。というのも,歴史や公民でスポットが当たりにくいからです。したがって意識的に注力して覚える努力をしていただきたいところです。
ちなみにこの中京という名前の由来ですが,瀬戸内・関東内陸のように地域の名前が来たわけでも,阪神や京浜のように2つの都市名がくっついたわけでもありません。「中京」は愛知・岐阜・三重というエリアが東京と京都という2つの都の中間に位置しているため名付けられたものです。
名前の由来まではテストや受験に出てきませんが,これまでご紹介した「位置がわからなかったら地名を分解しよう」というテクニックは通用しませんので,注意しておきましょう。
工業の特徴!
それではここからは中京工業地帯の工業の特徴について見ていきましょう。第1回から第7回までの記事で繰り返していますが,今回の記事でも同じように出荷額の高さと工業種類別の割合に着目していくことにします。この2つの要素に目を向けることで,その工業地域・工業地帯が日本においてどのようなポジションに位置しているのか・他の地域や地帯と何が違うのか,を知ることができます。出荷額と種類別の割合の詳しい意味は第1回の瀬戸内工業地域編で紹介していますので,よろしければそちらを参照してください。
出荷額について
初めに確認するのは中京工業地帯の出荷額です。下の「全国の工業製品出荷額に占める工業地帯・工業地域の割合」というグラフを確認しながら日本における中京の位置付けを確認していきましょう。この図から,京浜工業地帯の出荷額がどれくらいか・日本で何番目に栄えているのか,を理解することができます。今回注目している中京工業地帯はグラフの黄色の部分になります。(データは教育出版株式会社からの引用です。)
グラフを見て一目でわかる通り,中京工業地帯は日本で1番目にモノを生産しています。そしてその生産額は全国のうち17.9%を占めている,ということもわかります。この17.9%というのは,10.3%である阪神工業地帯の約2倍ですので,中京工業地帯は日本で1番栄えている工業地域・工業地帯ということができます。中京の一番の特徴は,この出荷額の高さだといえます。きちんと覚えておいてください。
ちなみにこの1位・17.3%という数値は,データを取得した年度によっては変動している場合があります。特に順位に関して,中京が1位になったのはここ数年のことですので,10~20年前のグラフだと順位が違っている可能性が大いにあります。もちろん受験に出てくるのは最新の情報なので古いデータに惑わされないようにしましょう。また割合に関しても,17.3%ではなく15%だったり20%だったりする可能性がありますので,臨機応変に対応できるようにいろいろな問題を解いておきましょう。
盛んな産業について
続いては中京工業地域の工業種類別の出荷額割合を見ていこうと思います。日本における興行には重工業と軽工業の2種類があり,重工業には金属・機械・化学の3種類が,軽工業には繊維・食料品などの産業が含まれています。詳しくは第1回の瀬戸内工業地域編でご紹介しているので,よろしければこちらの記事を参照してください。
さてそれでは実際に使って解説していこうと思います。下のグラフは全国の出荷額割合と中京工業地域の出荷額割合とを比較するものです。色別,つまり産業別に比べていくことで中京工業地帯の工業の特徴を知ることができます。(データは教育出版株式会社とHelloSchool社会科からの引用です)。
このグラフから,中京工業地帯は全国と比べて機械産業の生産割合が圧倒的に高く,反対に金属・化学,食料品の割合が低いということがわかります。特に機械産業の割合の数値はなんと69.4%であり,全国にある工業地域・工業地帯の中で最も割合が高いです。50%を超える地域はこの中京と東海(55.1%)しかないので,重要な特徴の一つとして覚えておいてください。
なぜ機械が盛ん?
ではなぜ中京工業地帯では機械の割合が高いのでしょうか。その背景を解説していきます。
簡単に言うと,自動車工業が栄えているというのが,機械産業が盛んな理由となります。 機械産業とは取り寄せた部品から1つの製品を作り出すことを指し。それゆえこの自動車工業も機械産業に含まれます。日本は昔からこの自動車工業が経済を支えていました。したがって日本全体で見ても自動車工業が占める割合はとても大きいのですが,その中でも中京工業地帯はずば抜けて栄えています。
その理由は愛知県豊田市の自動車工場にあります。皆さんご存知のトヨタの発祥の地ですね。 トヨタは戦後間もない頃から現在にかけて続く世界的メーカーであり,そのインパクト絶大なものです。このトヨタの存在が,機械産業の発展に,ひいては中京工業地帯の生産額の高さを支えていると言っても過言ではないでしょう。 中学受験で具体的な企業名が出される事はほとんどないでしょうが,それでも知識として頭に入れておくと便利でしょう。
ちなみにこのトヨタが中京工業地域にある理由ですが,木曽川から豊富な工業用水を確保できること・濃尾平野をはじめ工場を建てる広大な土地があることが考えられます。工業の特徴・発展の背景・地理的特徴をセットで覚えておいてください。
ちなみに金属・化学・食料品等の割合が低い理由は,それらの産業が栄えていないからではなく,機械産業と比べると相対的に生産額が低いからですね。実際これらの生産額を計算すると,金属は約50億円。化学は約35億円となり,決して少ないわけではありません。このことからも,それだけ機械産業——特に自動車産業——の影響力が大きいことがわかりますね。
工業以外産業の特徴!
ということで中京工業地帯の特徴を見てきました。次は農業・漁業といった工業以外の産業について確認していくことにしましょう。「工業の特徴ですら覚えきれていないのに,それ以外の産業なんて覚えられない」と思う人もいるかもしれません。しかし,ここで一度に産業や地形,気候等のことを頭に入れておくというのは,受験を乗り切る上で大変有益です。
というのも,中学受験の社会では複合問題が出されるからです。複合問題とは,1つの地域に関連して色々な分野の要素が混ざり合う問題のことを指します。 したがってたくさんの要素を覚えておくことだけではなく,覚えた要素を頭の中でつなげることも重要になります。そのため工業以外の産業にも着目すると言うわけです。
しかし,やはり1番大切なのは工業の特徴です。このことを十分に覚えていない人が工業以外の産業の情報を詰め込むのは厳しいでしょう。そのような場合は,まずは上に書いてある工業の特徴をきちんと整理することに力を入れていきましょう。
農業の特徴は?
まずは中京工業地帯の農業の特徴についてです。農業の特徴を抑える上で覚えておきたい大切な事は,その地域の地理的な特性と気候の特性です。地理的な特性からは栽培方法の特性を,気候の特性からは作物の特性を知ることができます。それでは中京の気候と地理はどうなっているのでしょうか。
はじめに中京の地理的な特性ですが,この地域は海抜0メートル地帯から海抜3000メートルを超す飛騨山間部まで幅広い地形を有しています。そのため中京は気候もバラエティに富んでいて,年中を通して温暖な地域から冬に厳しい寒さが訪れる地域まで,様々な特性を抱えています。そのため取れる農産物は多種多様なものとなっています。代表的なものが,ビニールハウスを使用して栽培される野菜・果物・花といった園芸品目です。ちなみにこのように人工的にビニールハウスなどで温室を作り出す農業を施設園芸農業と言います。
加えて前述したように,宗教は2つの都に囲まれていますので,都市圏に近いとも言えますね。何より愛知には3大都市の1つである名古屋がありますから,都市に住む消費者をターゲットとした栽培方法がとられています。 すでにこのシリーズでも何回か登場していますが,このように都市に近いと言う特性を生かして行われる農業のことを近郊農業と呼びます。施設園芸農業と近郊農業という特色,ぜひ覚えておいてください。
漁業の特徴は?
次に中京工業地帯の漁業の特徴について見ていきます。中京では漁業も盛んです。それは木曽川・矢作川・豊川などの河川から豊富な栄養がもたらされるからです。伊勢湾・三河湾と言えば,読者の皆様も聞いたことがあるでしょう。また地形としては,河口付近に干潟が広がっているような場所があれば,緩やかな大陸棚が広がる場所もあり,多彩な魚介類が獲れます。
例えば,伊勢湾といえばエビが有名ですね。それだけではなくアサリ・ガザミ,内陸部ではウナギやアユなどが豊富に獲れます。その他だとノリの養殖が盛んです。細かい水産物まで覚える必要はありませんので,色々なものが水揚げされる,とざっくり知っておくといいでしょう。
まとめ
今回は中京工業地帯の特色について簡単にまとめていきました。前述したように,中京工業地域にはスポットが当たりがちですが,その分短期的な暗記にばかり力を入れ,その背景にあるものや知識を関連づけることに焦点が当てられる機会は少ないです。したがって特徴と深掘りし,まとまった知識をご紹介する本記事が,中学受験における社会を攻略するために有効なものとなれば幸いです。
(ライター:大舘)
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