本日解説するのは、「筑波大学附属駒場中学校」さんの国語の入試問題です。
先日の大学入試で東京大学合格者数が93名と、多くの東大合格者を輩出している全国トップレベルの男子校、筑波大学附属駒場中学校。
そんな筑波大学附属駒場中学校の国語の入試問題は、どのようなもので、どんな対策をしていけば良いのでしょうか。
学校情報や入試の基本データをまとめた上で、筑駒さんの入試問題のを分析し、問題を解くにはどういった力が必要なのかを解説します。
【学校情報】
[応募状況]
◎2020年度:募集人員 120名
第一次選考
(抽選) |
出願者数 | 694名 | 受験者数 | ― ※1 | 合格者数 | 694名 |
第二次選考
(学力検査) |
出願者数 | 684名 | 受験者数 | 563名 | 合格者数 | 130名 |
※1 第一次選考の抽選は2020年度入試では実施されなかったため、受験者数の記入無し。
[倍率]
◎2020年度:第二次選考倍率 4.3倍
(過去10年間の倍率の平均は5倍前後。2020年度倍率は若干低下傾向。)
[進路実績]
◎2019年度卒業生:主な合格実績(2020年4月6日発表)
国公立大学 | 私立大学 | ||
東京大学
[理科三類含む] |
93名(72名) | 慶応義塾大学
[医学部含む] |
50名(33名) |
一橋大学 | 3名(2名) | 早稲田大学 | 59名(33名) |
東京工業大学 | 3名(2名) | 上智大学 | 6名(5名) |
筑波大学
[医学部含む] |
3名(2名) | 東京理科大学 | 9名(4名) |
国公立大学[医学部] | 私立大学[医学部] | ||
東京大学理科三類 | 4名(3名) | 慶応義塾大学 | 11名(7名) |
東京医科歯科大学 | 4名(3名) | 順天堂大学 | 2名(1名) |
千葉大学 | 2名(2名) | 東京慈恵会医科大学 | 6名(4名) |
横浜市立大学 | 1名(0名) | 日本医科大学 | 1名(0名) |
他大学 | 3名(2名) | 他大学 | 10名(6名) |
合格者数:総計117名(88名) | 合格者数:総計161名(92名) |
学校公式HP「『筑波大学附属駒場中・高等学校』進路指導・進学状況」
※表の( )内は、新卒者合格人数。
[学校説明会日程]- 年に1度、10月のいずれかの土・日曜日にのみ実施。
- 具体的な日程は、例年6~7月に学校HP「中学校学校説明会のご案内」で発表される。
- 説明会において、年度内初回の募集要項配布が行われる。(募集要項の一般配布は説明会翌日以降。)
≪過去日程≫
- 2019年度:2019年11月30日(土)・2019年12月1日(日)に実施。
※説明会実施時期に大型台風が接近したため、日程を延期して説明会を実施。
◎2020年度入試
第一次選考 | 第二次選考 | |
日程 | 2020年1月15日(水) | 2020年2月3日(月) |
試験内容 | 抽選 (2020年度は実施されず) | 学力検査[国語・算数・理科・社会]
報告書 |
出願期間 | 2020年1月9日㈭・10日(金) | 2020年1月21日(火)・22日(水) |
合格発表 | ― | 2020年2月5日(水) |
合格者説明会 | ― | 2020年2月11日(火) |
※抽選の有無は2020年1月10日(金)17:00に発表。(毎年実施されるわけではない。)
※抽選が行われた場合、募集人員の約8倍の人数まで第一次選考合格者として選出する。
<出願上の注意>
出願要件の1つに、「本校で定めた通学区域内に保護者(志願者の父もしくは母)と同居し、そこから在籍する小学校に通学しており、第二次出願時に住民票でそのことが確認できる者。」(「『例和2年度生徒募集要項』Ⅱ.出願資格」より抜粋)とあり、筑波大学附属駒場中学校から定められた東京・神奈川・千葉・埼玉の市区内に居住している者のみが出願できる。
【基本データ】
[試験時間・満点]国語 | 算数 | 理科 | 社会 | 報告書※ | |
試験時間 | 40分 | 40分 | 40分 | 40分 | ― |
満点 | 100点 | 100点 | 100点 | 100点 | 100点 |
※報告書…所定の用紙で在学中もしくは在学した学校で作成・厳封し、第二次出願時に提出。
[問題構成・解答形式]筑波大学附属駒場中学校の国語は、試験時間40分100点満点の入試です。
大問数は3~4問。読解は物語・詩がほぼ毎年出題されており、それに加えて説明的文章(論説or随筆)か、語句(漢字の書き取り)が出題される構成となっています。
ここ数年、小問数は11問~13問と減少傾向にあり、他の中学校と比べても多くはありません。しかし、この傾向は、2018年度入試以降全ての問題が『記述式の問題』(内容も高度であるもの)となったためであり、問題数が少ないとはいえ、演習を重ねない限り、時間にゆとりを持って解くのは難しいと言えるでしょう。
[合格最高点・最低点]・合格者最高点 2020年度:403点(報告書を含む500点満点)
・合格者最低点 2020年度:340点(報告書を含む500点満点)
※過去10年間の合格最低点の幅:322点(2019年度)∼373点(2013年度)。
【近年の出題内容】
◎2020年度
大問1 | 随筆 | 記述式4問 | 理由・表現・内容説明 |
大問2 | 小説 | 記述式4問 | 理由・心情説明・登場人物 |
大問3 | 詩 | 記述式3問 | 文章の表現・主題 |
◎2019年度
大問1 | 論説 | 記述式6問 | 理由・表現・内容説明・心情 |
大問2 | 語句 | 記述式1問 | ことわざ+漢字の書き取り |
大問3 | 詩 | 記述式6問 | 文章の表現・主題・心情 |
◎2018年度
大問1 | 小説 | 記述式4問 | 内容説明・心情 |
大問2 | 論説 | 記述式3問 | 心情・内容説明・筆者の主張 |
大問3 | 語句 | 記述式1問 | ことわざ+漢字の書き取り |
大問4 | 詩 | 記述式6問 | 文章の表現・主題・理由 |
【出題傾向】
[出題のポイント!]- 「詩」を毎年必ず出題!!
筑波大学附属駒場中学校では、毎年必ず「詩」が出題されます。
「詩」の読解問題を課す中学校は少なく、また、小説や説明的文章などに比べて、言葉の内容をしっかりイメージできないと内容や主題を把握することも難しいため、必ず別途対策をする必要があります。
- 記述問題の割合がほぼ100%!
以前から記述式の問題の比重が高い傾向にありましたが、2018年度入試から昨年度までの3年間、記号問題が一切なくなり、全ての問題が「記述式」となっています。
文章表現に関する設問など、文脈を読み取って自分で表現の意味や心情を推測しなければならない記述問題が出題されるため、難度の高い記述式の問題と言えるでしょう。
さらに、解答する際に字数を示されるわけではないので、解答欄の大きさに合わせて記述するテクニックも必要とされます。
- 語句系統はことわざの知識も含む『漢字の書きとり』が頻出!
語句の問題が出る際には、仮名で書かれたことわざなどを漢字に直す形式で出題されることが多い傾向にあります。
「全体をていねいに大きく一行で書きなさい。」といった指定を伴うことも多いため、設問に答える際はそういった条件にも注意を払いましょう。
[絶対に落としたくない問題!]- 漢字の書き取り
漢字の書き取り関連は、年度によっては出ない年もありますが、出題された際には基本的なものが出る場合も多く、得点に繋げやすいです。記述をする際にも、語句や漢字の知識は必要となるので、基本のものは必ずおさえておきましょう。 - 記号問題
こちらも最近は滅多に出題されていませんが、今までに出題されている記号問題は文脈をしっかりと追えれば容易に解くことができる問題も多いです。
筑波大学附属駒場中学校の入試問題は記述式の問題がほぼ100%なため、どれだけ記述式に慣れて解けるようにするかが対策として肝要です。
しかも、筑波大学附属駒場中学校の記述問題は傍線部の文章の前後をまとめれば良いシンプルな記述ではなく、文章中の表現からどんなことが表現されているのかを考えて自分の言葉で説明しなければいけない問題が多いです。そうなると、解くときに大分時間を要する上に、解くセオリーも下記のように増えてきます。
≪通常レベルの記述式の問題を解くセオリー≫
- 設問を読み、何を説明する問題なのかを把握する。
- 根拠となりそうな文章や言葉を文章中から探す。
- 2をまとめる。
≪筑波大学附属駒場中学校の記述式の問題を解くセオリー≫
- 設問を読み、何を説明する問題なのかを把握する。
- 根拠となりそうな文章や言葉を文章中から探す。
- 2で見つけた文章表現が表しているもの(内容や心情)は何かを考える。
- 3で考えたものを自分の言葉で文章化し、表現する。
このことから、筑波大学附属駒場中学校の記述式の問題を解くためには、「文章表現が表しているもの(内容や心情)を考える力」と「自分の考えを自分の言葉でまとめる力」を日頃から養うことが重要だといえるでしょう。
そういった力を養うためには、ただ国語の問題集を解いていくだけではなく、普段からどのくらい詩や小説を読み、人物の心情や表現の細部に目を向けているか、自分の考えを書き慣れているかといったころも重要になってくると思います。
問題集で詩の読解問題を解いた際に、主題を自分の言葉でまとめる練習を行うことや、小説を読んだ際に感想文を書いてみること(50~100文字程度でもOK)も練習のひとつになるやもしれません。
[おすすめの問題集]◎記述式の問題が本当に苦手で基礎の基礎からおさえたい!
- 「中学入試 国語の文章で答える問題の答え方がすっきりわかる」(旺文社)記述式の問題の基本が平易にまとめられています。国語が苦手で、記述の問題も基礎の基礎から確認したい生徒さんにおすすめです。塾の教材に+して補強のために取り組むと良いやもしれません。
◎考える力を養成しながら記述にも慣れたい!
- 「読解・作文トレーニング」(水王舎)
一文の構成にも着目しながら、文章を読むことにも書くことにも慣れていける教材です。
論理的に読む力も養えるので、国語の基礎力を養うにはもってこいの問題集です。
総括
今回は、筑波大学附属駒場中学校の問題を紹介しました。
記述式の問題に慣れ、ひいては自分の考えを自分の言葉で表現することに慣れておくことは、大学受験にも直結してきます。
ぜひ筑波大学附属駒場中学校の問題を対策する際には、記述の問題に力を入れて取り組んでみてください。
【参考】
- 筑波大学附属駒場中学校・高等学校 公式HP
- 中学入試過去問題シリーズ 筑波大学附属駒場中学校 2020年度10年間(東京学参)
- 四谷大塚ドットコム 中学入試過去問データベース
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明治大学文学部卒。
明光義塾、トライグループと渡り歩いた豊富な指導経験を活かし、初学者の躓く勘所を抑えた記事を多数執筆。
大学での選考は日本近代文学で、芥川龍之介や梶井基次郎など大正時代の文学論にも造詣が深い。