日本国憲法は国民の権利・自由を守るために、国がすべきことが定められた国の最高法規です。そのような日本国憲法には国民が守るべき3大義務について、また天皇の地位、権限についても定められています。
今回は国民が守るべき3大義務と天皇の地位、権限について説明していきたいと思います。
国民が守るべき3大義務
国民が守るべき3大義務については、日本国憲法の「第三章 国民の権利及び義務」に定められています。3大義務とは、それぞれ「(子供に)教育を受けさせる義務」「勤労の義務」「納税の義務」です。一つずつ詳しく見ていきましょう。
(子供に)教育を受けさせる義務
日本国憲法 第二十六条〔教育を受ける権利と受けさせる義務〕
1 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
憲法では全ての国民が教育を受ける権利があることを保証するとともに、子供に教育を受けさせる義務も定めています。現在の日本の義務教育は小学校と中学校の9年間です。
勤労の義務
第二十七条〔勤労の権利と義務、勤労条件の基準及び児童酷使の禁止〕
1 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。
2 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
3 児童は、これを酷使してはならない。
全ての国民は勤労の権利があると同時に義務を負っています。また、憲法では勤労条件など労働者を守る権利も定められています。そのほか労働者の団結を第二十八条で定めています。
第二十八条〔勤労者の団結権及び団体行動権〕
勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
納税の義務
第二十九条〔納税の義務〕
1 財産権は、これを侵してはならない。
2 財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。
3 私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。
国民が納めた税金は、国の大事な財源です。国民は納税者として税金を正しく納めることも大切ですが、税金の使い道に関心を持つことも大切です。
天皇の地位、権限
日本国憲法に定められている天皇の地位、権限についてみていく前に1889年、明治時代に制定された大日本帝国憲法における天皇の地位、権限についてみていきましょう。
1881年、伊藤博文は自由民権運動の高まりを受け、国民に国会を開くことを約束しました。そのためにドイツのワイマール憲法にならい大日本帝国憲法を制定し、1889年に天皇が国民に与える形で発布されました。
大日本帝国憲法の大きな特徴は、主権は国民ではなく、天皇にあり、天皇の権限を強く明示した点です。天皇は国を治める権限を持ち、国民ではなく、天皇の民であるという意で「臣民」と表現されていました。天皇の元国民をまとめる役割を政府が担い、政府が強い権限を持つ憲法になっていました。
一方、日本国憲法はどうでしょうか。
第二次世界大戦後、GHQの指示のもと制定されたのが日本国憲法です。大日本帝国憲法と違い、日本国憲法では主権は国民にあるとする国民主権、そして基本的人権の尊重、平和主義の3原則を掲げています。
大日本帝国憲法では、国を治める権限を持っていた天皇ですが、日本国憲法では日本国民統合の象徴となっています。条文を確認してみましょう。
第一条〔天皇の地位と主権在民〕
天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
また、天皇は政治に直接関与せず、天皇が行える国事行為には制限があります。次に天皇の権限の範囲や国事行為についてみていきましょう。
第三条〔内閣の助言と承認及び責任〕
天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。第四条〔天皇の権能と権能行使の委任〕
1 天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない。
2 天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる。第五条〔摂政〕
皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政は、天皇の名でその国事に関する行為を行ふ。この場合には、前条第一項の規定を準用する。第六条〔天皇の任命行為〕
1 天皇は、国会の指名に基いて、内閣総理大臣を任命する。
2 天皇は、内閣の指名に基いて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。第七条〔天皇の国事行為〕
天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。
1 憲法改正、法律、政令及び条約を公布すること。
2 国会を召集すること。
3 衆議院を解散すること。
4 国会議員の総選挙の施行を公示すること。
5 国務大臣及び法律の定めるその他の官吏の任免並びに全権委任状及び大使及び公使の信任状を認証すること。
6 大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証すること。
7 栄典を授与すること。
8 批准書及び法律の定めるその他の外交文書を認証すること。
9 外国の大使及び公使を接受すること。
10 儀式を行ふこと。第八条〔財産授受の制限〕
皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。
以上の憲法に定められていることに基づき天皇は、内閣の承認と助言によって国事行為を行います。具体的には内閣から届けられた書類に署名や押印、国会開会式の参加、内閣総理大臣の任命などです。