水の状態変化の問題として、水を加熱したときの時間変化と温度変化、そのときの水の状態のグラフに関連した問題が出題されることがあります。水を加熱したとき、温度に着目するとどのような現象が見られるのかを学習しましょう。
Contents
水の加熱と状態変化
まずは氷を加熱していった時の温度や状態の様子を確認しましょう。氷の状態である水を加熱していくとその温度や状態の変化は下の図のようになります。
この図では右に行くほど時間が経過し、上に行くほど温度が上がっている様子を示しています。氷を温めていったときの時間に対する温度の変化を赤線で表し、赤線の下にはその温度のときの水の状態が書かれています。時間が経つにつれて温度が上がっていっているのが分かります。
この図で大事なポイントを押さえていきましょう。
Ⅰ.温度変化と状態変化
まずは温度ごとに水がどの状態をとるかに注目しましょう。
① 0℃以下:固体(氷)
0℃以下の状態の氷を温めていくと、氷の状態のまま0℃になるまでどんどん温度が上がっていきます。
② 0℃:固体(氷)と液体(水)
氷をあたためて0℃になると、温度が0℃のまま氷がどんどん解けていって水になります。完全に水になるまで温度が上がらないので、氷が解けている間は、まだ解けてない固体の氷とすでに解けた液体の水が共存することになります。
③ 0℃~100℃:液体(水)
氷が全て溶けてできた水を温めていくと、水の状態のまま100℃になるまでどんどん温度が上がっていきます。
④ 100℃:液体(水)と気体(水蒸気)
水をあたためて100℃になると、沸騰が激しくなって温度が100℃のまま水がどんどん蒸発していって水蒸気になります。完全に水蒸気になるまで温度が上がらないので、水が沸騰して蒸発している間は、まだ蒸発していない液体の水とすでに蒸発した気体の水蒸気が共存することになります。
⑤ 100℃以上:気体(水蒸気)
気体となった水蒸気は、あたためていくとそのままどんどん温度が上がっていきます。
Ⅱ.融点と沸点
純粋な物質では固体から液体になる温度や液体が沸騰する温度が決まっています。例えば上の図から分かるように、氷は0℃で水に解けます。このように固体から液体になるときの温度を「融点」と呼びます。
また水は100℃で激しく沸騰します。このように液体が沸騰して温度が一定のまま気体へと蒸発する温度を「沸点」と呼びます。
※注意
ここで注意しなければいけないのは、「沸点」は「液体が蒸発して気体になる温度」ではなく、「液体が沸騰し始める温度」です。間違えやすいので気をつけましょう。
分かりやすい例を挙げましょう。実は水の蒸発自体は100℃でなくても起こります。洗濯物は外に乾かしておけばそのうち乾きますよね?あれは液体の水が蒸発して水蒸気になっているからです。このように蒸発自体は温度が低くても起こります。しかし圧力を変えない限りは20℃で急に液体の水が沸騰し始めることはありません。
Ⅲ.温度が一定の部分
融点のときと沸点のとき、上の図では0℃と100℃のとき、時間が経っても温度が一定のまま上がっていない部分があることに気付くと思います。これは固体から液体、または液体から気体に変化しているときに起こる現象です。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。
実は「物体が状態変化をするとき、熱の吸収または放出が必要」です。
例えば固体である氷が液体の水になるためには氷が「熱を吸収する」必要がありますし、逆に液体の水が固体の氷になるためには水自身がもっている「熱を外に放出する」必要があります。といってもなかなかイメージが難しいですよね?そこで体に液体の薬を塗った時や予防接種の後のときのアルコールの消毒のときを思い出してみましょう。あのときひんやりしていると思います。あれは液体が気体に状態変化するときに液体自身が「周りから熱を吸収する」ことで「周りが冷やされている」からです。気をつけなければいけないことは、このとき周りの温度は変化しますが状態が変化した物体自身の温度は変化していません。
それでは上の図の話に戻りましょう。融点と沸点のときに完全に状態変化が終わるまで温度が上がらないのは、0℃のときは「外から与えられた熱が全て固体である氷が液体の水に変化するために使われているから」で、100℃のときは「外から与えられた熱が全て液体である水が気体の水蒸気に変化するために使われているから」です。ここの理由も問われることがたまにあるのでしっかり押さえておきましょう。
さらにもう一歩先の内容まで踏み込むと、温度が一定の時間は沸点の方が長くなっていることに気付くと思います。これは「氷が水に変化するために必要な熱」よりも「水が水蒸気になるために必要な熱」の方が大きいからです。
ここまでのポイントをまとめておきましょう。
入試問題演習
この記事で学んだことを活かして実際に出題された入試問題を解いてみましょう。
問題
女子学院中 2017
解説
(1)
記事の上の図も確認しながら各記号の間の水の状態を確認しましょう。
A~B :固体と液体
ここは融点である0℃の状態であり、固体である氷が液体の水に解けている途中なので固体の氷と液体の水がどちらもある。
B~C :液体
水が加熱されて温度がどんどん上がる。
C~D :液体と気体
ここは沸点である100℃の状態であり、液体である水が気体の水蒸気へと蒸発している途中なので液体の水と気体の水蒸気がどちらもある。
D~E :気体
水蒸気が加熱されて温度がどんどん上がる。
つまり「液体」が存在するのはAからDまでです。
答え:AからDまで
(2)
-3℃から0℃まではずっと氷の状態なので体積はほとんど変化しません。
そして「氷が水に変化するときは温度が0℃もまま一定なので横には変化しないまま体積だけ変化します。」
そして0℃から3℃まではずっと水の状態なので体積はほとんど変化しません。
そしてもっとも重要なのが「氷が水になるとき体積が約0.9倍になる(体積が小さくなる)」という点です。
これらのことを踏まえると、-3℃から0℃までは体積が変わらず、0℃になると温度が変化しないまま体積がほんの少し小さくなり、再び0℃から3℃まで体積が変わっていない「ウ」のグラフが正解です。
答え:ウ
詳しく勉強したい場合は「もののあたたまり方」や「密度」のあたりを学習しましょう。
(3)
上の記事で書いた通り、氷が解ける時間より、水が蒸発する時間の方が長いのは、氷が水になるときより、水が水蒸気になるときの方が多くの熱量を必要とするからです。
答え:氷が水に解けるときより、水が水蒸気に蒸発するときに必要な熱量の方が大きいから。
余談(セルシウス温度)
今回の記事に関する小ネタを紹介しましょう。
皆さんは水の融点や沸点を聞いたとき、0℃や100℃とあまりにもきれいな数字だと思いませんでしたか?実は私たちが普段使っている~℃という温度の単位は、「水の融点が0℃、水の沸点が100℃となるように決められたもの」なのです。このような温度を「セルシウス温度」と呼びます。温度にもいろいろな基準があるので気になる人は調べてみてください。
まとめ……の前に
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まとめ
今回は水をあたためたときの温度に対応した状態変化の様子について紹介しました。状態変化は身近な現象であることもあり、実際の現象を例に出題されたり、密度や圧力、もののあたたまり方と関連付けて出題されることが多いです。これらとの結びつきも意識しながら学習を進めていきましょう。