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そもそも世界遺産とは?
ユネスコの「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づき、ユネスコ世界遺産委員会での審議を経て登録される、一国にとどまらず人類全体にとって貴重なかけがえのない財産のことを世界遺産と言います。世界遺産条約は1972年にユネスコで採択され、2021年7月現在194か国が締結しています。日本も1992年にこの条約を締結しました。
【補足】ユネスコとは?
(国際連合教育科学文化機関、United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization U.N.E.S.C.O.)
パリに本部があり、諸国民の教育、科学、文化の協力と交流を通じて、国際平和と人類の福祉の促進を目的とした国際連合の専門機関のことです。
世界遺産について
2021年7月現在、世界遺産は文化遺産897件、自然遺産218件、複合遺産39件を含む1154件に上ります。今回は日本ではなく、世界の有名な世界遺産、中でもヨーロッパの世界遺産について紹介していきます。
日本の世界遺産については以下の記事を参照ください。
ヨーロッパの世界遺産
( )内の年は世界遺産に登録された年です。
イギリス
ロンドン塔(1988)
イギリスの首都ロンドンのイーストエンド、テムズ川の岸辺に築かれた中世の城塞。英王室所有の宮殿の一つで、正式名称は「女王陛下の宮殿にして要塞」(Her Majesty’s Royal Palace and Fortress)。イングランドを征服したウィリアム1世が1078年にロンドンを外敵から守るために建設を始め、ヘンリー3世の治世に完成しました。王族や政治家などの幽閉・処刑施設として使われた歴史を持ち、現在は博物館として使われています。
ストーンヘンジ、エーヴベリーと関連する遺跡群(1986)
ソールズベリー近郊の平原に位置し、紀元前3050~前1600年頃にかけて築かれた巨石遺跡。高さ4~5mの30個の立石が、直径約100mの円形に配されています。誰が何の目的で造ったのかは未だ不詳です。
スペイン
グラナダのアルハンブラ、ヘネラリーフェ、アルバイシン地区(1984)
アルバイシン地区とはスペイン南部、アンダルシア自治州グラナダの旧市街地。アルハンブラ宮殿を始め、商工業を担ったユダヤ人やモリスコの居住区アルバイシン、アラブ風に漆喰で塗られた白壁の家などイスラム文化の影響が残っています。
アルハンブラ宮殿は、グラナダ市街南東部の丘の上に立つ古城。13世紀にイスラム王朝であるナスル朝のアルアマール王によって建設されました。グラナダは8世紀に入植したムーア人によってつくられ、13~15世紀末までイベリア半島最後のムーア人の王朝、ナスル朝の都が置かれていました。
ヘネラリーフェは14世紀、アルハンブラ宮殿の敷地外に夏の離宮として建造されました。
アントニ・ガウディの作品群(1984)
アントニオ・ガウディの作品群として世界遺産に登録されているのは以下の4つの文化財です。全てスペイン北東部のカタルーニャ州の州都バルセロナにあります。
- グエル公園…1900年代前半、エウゼビ・グエル伯爵の依頼を受け、広場、道路などを含めてガウディが手がけた分譲住宅地。
- カサ・ミラ…地下1階地上6階の集合住宅。曲線や曲面を多用した独特な造形が特徴です。
- サグラダ・ファミリア…アントニオ・ガウディの代表作として世界的に有名な作品。正式名称は「聖家族贖罪教会」(El Temple Expiatori de la Sagrada Familia)。前任者から引き継いだガウディは一から設計を練り直し、1926年に死去するまでライフワークとしてその建設に取り組みましたが、現在もまだ完成していません。
- カサ・パトリョ…海底洞窟をモチーフにした住宅。1・2階部分は海底洞窟をイメージしてあり、上階に行くほど水面に上昇していくかのような錯覚に陥る仕掛けが施されています。
フランス
モン-サン-ミシェルとその湾(1979)
フランス北西部、ノルマンディーとブルターニュとの間にはさまれたサン・マロ湾の南東、モン・サン・ミシェル湾上の小島にある修道院。付近の海域は潮位の差が大きく、岩がちの島の中央にそびえる壮麗な修道院は美麗で毎年多くの観光客が訪れるフランス有数の観光地です。
ヴェルサイユの宮殿と庭園(1979)
パリ南西のベルサイユにあるルイ王朝の大宮殿。壮大な整形庭園は 1660年代に A.ル・ノートルが計画しました。ルイ15世の時代には A.ガブリエルのもとロココ様式による増築や改修が行なわれ、18世紀には古典様式の室内装飾が加えられました。
アルル、ローマ遺跡とロマネスク様式建造物群(1981)
フランス南部のプロヴァンス地方都市アルルに残されている、ローマ帝国属州時代建造された遺跡群。約2万6000人の観客を収容できるローマ劇場や、戦車競走や剣闘士の試合を開催して観客をわかせた円形劇場などローマの繁栄を思わせる遺跡群が残っています。
ランスのノートル-ダム大聖堂、サン-レミ旧大修道院及びトー宮殿(1991)
ノートルダム大聖堂は、フランス北東部、グランエスト地方、マルヌ県の都市ランスにある大聖堂。ノートルダム(Notre-Dame)は「われらの貴婦人」という意味です。シャルトル大聖堂、アミアン大聖堂に並ぶ同国屈指のゴシック様式の聖堂として知られています。
サン-レミ旧大修道院は、フランス北東部、グランエスト地方、マルヌ県の都市ランスにある聖堂。11世紀に建造され、ロマネスク、ゴシック両様式が見られます。
トー宮殿は、フランス北東部、グラン‐エスト地方、マルヌ県の都市ランスにある宮殿。現在はカール大帝の護符や戴冠式にゆかりの宝物などを展示する美術館になっています。
ドイツ
ケルン大聖堂(1996)
ドイツ中西部、ノルトラインヴェストファーレン州の都市ケルンにある、ドイツ・ゴシック建築で最大であり、ゴシック様式の建築物としては世界最大の大聖堂。12世紀後半に東方三博士の聖遺物が安置されたことで、数多くの巡礼者を集める聖地となりました。壮大なステンドグラスの窓が有名です。
ロシア
モスクワのクレムリンと赤の広場(1990)
ロシア語でクレムリ(Кремль/Kreml)は城を意味します。ソ連最高会議(国会)とソ連閣僚会議(政府)がありソ連の最高指導部を意味していました。ソ連崩壊後もロシア連邦の大統領府があります。赤い広場はロシア連邦の首都モスクワの都心にある細長い広場。モスクワのシンボルと言われ、ロシア革命後の1920年代末に造られたレーニン廟もあります。
イタリア
ローマ歴史地区、教皇領とサン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂(1980)
古代のローマ時代から続く古い歴史を反映して「永遠の都」とも称されるローマ。フラウイウスの闘技場と呼ばれ剣闘士同士や、剣闘士と猛獣の戦いが見世物が行われていたコロッセオやコンスタンティヌスの凱旋門など古代ローマ時代の繁栄を色濃く残す建造物が世界遺産として登録されています。
ヴェネツィアとその潟(1987)
イタリア北東部,アドリア海の北岸にある水上都市。英語名はヴェニス。中世にヴェネツィア共和国の首都として栄えた都市で、「アドリア海の女王」「水の都」とも呼ばれていました。
ピサのドゥオモ広場(1987)
イタリア中部のトスカーナ地方の都市ピサにある広場。ロマネスク様式のドゥオーモ(大聖堂)があり、この大聖堂の鐘楼はピサの斜塔として有名です。
ギリシャ
アテネのアクロポリス(1987)
アクロポリスは、古代ギリシアのポリス(都市国家)において、アゴラ(市民の政治、経済にまたがる生活の中心をなした広場)とともに中心市の主要部を構成した小高い丘。紀元前から城壁が造られ、前5世紀後半から前4世紀初頭にかけてパルテノン、プロピライア(前門)、エレクテイオン、アテナ・ニケ神殿などが完成しました。
バチカン市国
ローマ歴史地区、教皇領とサン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂(1980、1990)
前述のイタリアのローマ歴史地区と共に登録されました。教皇領とは、ローマ教皇が主権者として支配する国土のことであり、サン・パオロ・フオーリ・レ・ムーラ大聖堂は教皇領であるバチカン市国にあります。
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