立教池袋中学校社会2021年度過去問解説【中学受験】〜日本の宗教観・学問〜

今回は2021年度の立教池袋中学校の社会の過去問を一部修正して社会の問題の解き方、歴史問題の解き方、日本の宗教観・学問について説明していきたいと思います。 

問題

次の①〜⑩は、ある時代に広まった人々の生き方や生活を説明したものです。これらを読んで問いに答えなさい。 

仏の力によって国の安泰をはかることを目的として研究が進められ、国家の保護のもとに置かれた。一方れらと距離を置き、慈悲の精神にもとづいて、ため池やかんがい用水の建設に取り組む動きも見られた。

②対立を戦によって解決しようとする動きや天災が相ついで起こり始めたため社会秩序が混乱し、人々は人間の無力さを痛感した。こうした世の中の変化を仏の教えが通用しない時代の到来ととらえ、人々は死後の世界での救いを求めた。

③人間は生まれながらにして固有の権利を持つという考えにもとづき、学問を通じた個人や国家の不平等の解消や人間の自由や平等の権利を自ら勝ち取ることの重要性が説かれた

④宗教や思想に対する規制は強くとも自然科学や技術への関心は高く、外来書物がさかんに日本語に翻訳された

⑤荘厳な寺院を建設して力を示すことに関心が集まり、仏は利益をもたらす「となりのくにのかみ」として受け止められた。

⑥仏が真理の本体で、日本古来の神は仏の本体が仮の形となって現れた姿であるとする考えが説かれた

⑦外来思想を受け入れる前の古典時代の日本の思想を理想とし、古典の研究を重んじる考えが説かれた 

⑧恵みを与えてくれると同時に時に災いを起こす自然を神々とし、おそれ敬う気持ちで崇拝する考えが見られた。神の意志をうかがうために祭りが行われた。

⑨自然と人間社会には全てに上下の秩序があり、この秩序は礼儀を厳格に守ることで実現されると説かれた。また死や血をけがれたものとして排除する考えが広まり、人を殺傷したり主人の死を追ったりすることに価値をおくそれまでの風潮が改められた。 

⑩武士道を土台にキリスト教を受け入れる考えが、政治に批判的な武士の子弟たちに広がった

問1

①〜⑩の考え方や生活が見られるようになった時代として、また関わり深い出来事としてもっともふさわしいものを、次の(あ)〜(つ)の中からそれぞれ1つ選んで記号で答えなさい。 

(あ)3世紀、卑弥呼が中国に使いを送った
(い)5世紀、倭王武が中国に使いを送った
(う)6世紀、朝鮮半島の百済から五経博士が来日した
(え)7世紀、聖徳太子が中国に使いを送った
(お)8世紀、鑑真が中国から来日した
(か)9世紀、最澄、空海が中国に渡った
(き)9世紀、菅原道真の提案で中国への使いが停止された
(く)12世紀、平清盛が中国と貿易をおこなった
(け)13世紀、2度にわたり中国が北九州に襲来した
(こ)15世紀、足利義満が中国に使いを送った
(さ)16世紀、ザビエルがヨーロッパから来日した
(し)17世紀、徳川家光がヨーロッパ貿易の拠点を出馬に移した
(す)17世紀、徳川綱吉が将軍となり政治を改めた
(せ)18世紀、徳川吉宗が享保の改革をおこなった
(そ)19世紀、ペリーが浦賀に来航した
(た)19世紀、井伊直弼が桜田門外の変で暗殺された
(ち)19世紀、板垣退助が議会を開くよう政府に申し入れた
(つ)20世紀、日英同盟を結んだ後、日露戦争が起こった

【解答】 

1、(お)8世紀、鑑真が中国から来日した
2、(く)12世紀、平清盛が中国と貿易をおこなった
3、(ち)19世紀、板垣退助が議会を開くよう政府に申し入れた
4、(せ)18世紀、徳川吉宗が享保の改革をおこなった
5、(え)7世紀、聖徳太子が中国に使いを送った
6、(き)9世紀、菅原道真の提案で中国への使いが停止された
7、(た)19世紀、井伊直弼が桜田門外の変で暗殺された
8、(あ)3世紀、卑弥呼が中国に使いを送った
9、(す)17世紀、徳川綱吉が将軍となり政治を改めた
10、(つ)20世紀、日英同盟を結んだ後、日露戦争が起こった

問2

①〜⑤の下線ともっとも関わりの深い人物を、次の(ア)〜(ト)の中からそれぞれ1つずつ選んで記号で答えなさい。

(ア)光明皇后
(イ)桓武天皇
(ウ)阿倍仲麻呂
(エ)蘇我馬子
(オ)日蓮
(カ)親鸞
(キ)道鏡
(ク)行基
(ケ)内村鑑三
(コ)福沢諭吉
(サ)中江兆民
(シ)渋沢栄一
(ス)大塩平八郎
(セ)杉田玄白
(ソ)本居宣長
(タ)吉田松陰
(チ)安藤昌益
(ツ)楠木正成
(テ)源義経
(ト)坂上田村麻呂

【解答】 

1、(ク)行基
2、(テ)源義経
3、(サ)中江兆民
4、(セ)杉田玄白
5、(エ)蘇我馬子

それぞれの問題文を用いて解説していきます 

①仏の力によって国の安泰をはかることを目的として研究が進められ、国家の保護のもとに置かれた。一方これらと距離を置き、慈悲の精神にもとづいて、ため池やかんがい用水の建設に取り組む動きも見られた。⇨「仏の力によって国の安泰をはかること」から鎮護国家の思想で政治を行なった聖武天皇の奈良時代であると分かります。奈良時代は710-784年、8世紀です。聖武天皇の時代に民間事業に携わった有名な僧は行基です。 

②対立を戦によって解決しようとする動きや天災が相ついで起こり始めたため社会秩序が混乱し、人々は人間の無力さを痛感した。こうした世の中の変化を仏の教えが通用しない時代の到来ととらえ、人々は死後の世界での救いを求めた。⇨「死後の世界での救いを求めた」部分から平安時代末期に広まった末法思想であると考えられます。平安末期は12世紀です。平安末期から武士が台頭し始め、源平の合戦となり鎌倉時代へと向かっていきます。 

③人間は生まれながらにして固有の権利を持つという考えにもとづき、学問を通じた個人や国家の不平等の解消や、人間の自由や平等の権利を自ら勝ち取ることの重要性が説かれた。⇨「人間の自由や平等の権利を自ら勝ち取ること」から政治に参加する参政権などをとなえた自由民権運動であることがわかります。民権運動に大きな影響を与えた人物として板垣退助の他に中江兆民がいます。中江兆民はルソーの『社会契約論』を訳した『民約訳解』を著し、その中で天から授かった生得の権利があるという天賦人権論を解きました。 

宗教や思想に対する規制は強くとも自然科学や技術への関心は高く、外来書物がさかんに日本語に翻訳された。⇨「宗教や思想に対する規制」というのは江戸時代の鎖国体制をさしています。1720年8代将軍徳川吉宗が実学を奨励し、漢訳洋書の輸入の禁を緩めたことで蘭学の研究が盛んになりました。杉田玄白前野良沢らと共に蘭書『ターヘル・アナトミア』を翻訳した『解体新書』を著しました。 

荘厳な寺院を建設して力を示すことに関心が集まり、仏は利益をもたらす「となりのくにのかみ」として受け止められた。⇨日本は古来、神道を信仰していたため、仏教が日本に伝来した当初は、となり大陸中国)からやってきた神として仏を「となりのくにのかみ」(蕃神ばんしんとも)とよんでいました。仏教の伝来時期は諸説ありますが、6世紀には伝わっていたとされています。しかし、問題文には「荘厳な寺院を建設して力を示すことに関心が集まり」とあり、仏教を広めようと寺院を建設し始めたのは聖徳太子の7世紀の話だとわかります。聖徳太子と共に政治を行なった有力豪族が蘇我氏です。 

仏が真理の本体で、日本古来の神は仏の本体が仮の形となって現れた姿であるとする考えが説かれた。⇨本地垂迹説のこと。平安時代中期、本地垂迹説により神道と仏教の融合が進みました。平安時代中期は国風文化が盛んな時期であり、国風文化が発展するきっかけの一つに菅原道真による遣唐使廃止の提言があります。 

外来思想を受け入れる前の古典時代の日本の思想を理想とし、古典の研究を重んじる考えが説かれた。⇨江戸時代中期から後期に勃興した『古事記』『日本書紀』『万葉集』などの古典研究を中心とする国学の内容であると考えられます。1764年-1798年成立した本居宣長の『古事記伝』など多くの国学研究書が著されました。国学研究に影響を受け、尊王攘夷思想が発展しました。井伊直弼は日本の開国・近代化を断行し、反対派によって暗殺されました。 

⑧恵みを与えてくれると同時に時に災いを起こす自然を神々とし、おそれ敬う気持ちで崇拝する考えが見られた。神の意志をうかがうために祭りが行われた。⇨女王卑弥呼は巫女として神託によって国を治めていました 

⑨自然と人間社会には全てに上下の秩序があり、この秩序は礼儀を厳格に守ることで実現されると説かれた。また死や血をけがれたものとして排除する考えが広まり、人を殺傷したり主人の死を追ったりすることに価値をおくそれまでの風潮が改められた。⇨「自然と人間社会には全てに上下の秩序があり、この秩序は礼儀を厳格に守ることで実現される」は林羅山の「上下定分の理」と考えられます。林羅山は江戸幕府の徳川家康・秀忠・家光・家綱の将軍4代に侍講として使え、16世紀に活躍しました。 

武士道を土台にキリスト教を受け入れる考えが、政治に批判的な武士の子弟たちに広がった。⇨『武士道』を著したのは新渡戸稲造です。明治時代になり、キリスト教を受け入れる風潮が広がり、新島襄はキリスト教の理念を取り入れた同志社大学を設立しました。 

同志社大学

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