中学受験の理科のうち、特に生物分野は「覚えるしかない」という知識が数多い分野です。単元によって覚える量やことばの難しさはまちまちですが、特に「ヒトのからだ」の単元の、消化液や消化酵素については苦手意識をもつ受験生が多いところです。
たしかに、臓器の名前を覚え、働きを覚え、さらにカタカナの消化液や消化酵素を覚える・・・混乱必至の壁の一つであるといえると思います。ですが、混乱必至の知識だからこそ、中学入試では「差がつく問題」として出題されるわけです。模試でも同じです。では、このような混乱必至の知識、どのように整理して覚えればよいのでしょうか。
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なぜ苦手になるの?
消化液や消化酵素はただどこかから自然にわいてくるというものではありません。消化の仕組みや消化器官の名称を確実に覚えていないと、どこから何が分泌されるのかを覚えることはできません。ですから、ヒトのからだのところが苦手という受験生の皆さんには、まず消化の仕組みと消化器官の名称という、基礎中の基礎の知識を理解することから始めてほしいと思います。そこを覚えていないのに、カタカナの消化液や消化酵素だけ覚えようとしてもまず無理です。
これらのマストの基礎知識、「消化の仕組み」と「消化器官」を覚えていないと、ヒトのからだの単元そのものに対する苦手意識が強まります。そして、さらに出てくるカタカナの消化液や消化酵素の名前が、さらなる混乱を招くのです。
ダメな勉強法
消化液や消化酵素について、塾のテキストや参考書の説明とにらめっこして丸覚えしようとしても、頭に入りませんよね?表を活用して覚えることもお勧めしたいところですが、それ以前に先ほど書いたようなマストの基礎知識、「消化の仕組み」や「消化器官」の名称や位置などを覚えていないといくら消化液や消化酵素を先に覚えようとしても、頭には入りません。
ですから、まずは「消化の仕組み」と「消化器官」の名称や位置を確実に覚えることから始めてください。これを飛ばしてしまっては、いくらテキストとにらめっこしても消化液や消化酵素は覚えられません。
では、「消化の仕組み」と「消化器官」の名称や位置を覚えたら、次にどのように消化液や消化酵素を整理していったらよいのでしょうか。
どのように勉強するか
塾のテキストでは、文章で説明されていることの多い消化液や消化酵素ですが、まずは、消化液と、働きかける栄養素をまとめた図を、自分の力で書けるようにすることが大事です。たとえば、このような図です。
これに、小腸の柔毛で行われる栄養分の吸収の図や、消化器官の図を入れてみるとさらにいいですね。
このような図を描く意義は、消化のプロセスを「流れで」覚えていくことにあります。消化液や消化酵素だけの断片的な知識だと、何が何だか分からなくなると思います。図にして、「どこで」「何が」「どのように」流れていくのか、トータルで理解するようにすると、覚えやすくなります。
記憶を助ける3つの方法
さらに、記憶を助け、定着させるための3つの方法を挙げてみましょう。
①日々の生活の中で、消化液や消化酵素を意識してみる
たとえば、「ごはんはよくかんで食べるように」と言われますよね。実際に、ごはんをよくかんでいるうちに、だんだん甘くなってきます。これは、だ液によって、デンプンが糖(麦芽糖)に変えられたからです。消化液や消化酵素は、毎日の食事に密接に関わっていることですから、難しく考えて混乱する前に、具体的に日常生活の中で意識してみると、理解が深まります。
②語源やネーミングのエピソードを調べてみる
カタカナの多い消化酵素は、語源や、どうしてそのような名前がついたのかというエピソードと一緒に覚えると、記憶に残りやすいです。たとえば、だ液中の消化酵素である「アミラーゼ」という名前は、デンプンの物質名「アミロース」と、分解する物質の語尾につく「アーゼ」という言葉が由来です。ですから、この名前を聞けば,絶対にデンプンに関係する名前だな、とわかるわけです。
また、胃液中にある「ペプシン」という消化酵素は、皆さんご存知の「ペプシコーラ」の名前の由来となっています。ペプシコーラはもともと胃薬で、当初はペプシンが入っていました(現在は入っていません)。このようなエピソードを覚えておくと、ペプシンと胃液はセットで覚えることができますね。
③消化液のはたらきを「少しだけ」詳しく知る
たとえば、胆汁について考えてみましょう。「胆汁は消化酵素を含まないが、消化を助ける働きがある」と習います。脂肪に作用するのですが、具体的には何をしているのでしょうか?脂肪は、「油」のように水になかなか溶けません。ですから、水に溶けているすい液中の消化酵素は、そのままではどうしても働きかけることができません。そこで胆汁が、脂肪が溶けやすくなるように、粒の小さい状態にするのです(これを乳化といいます)。そうすることで、脂肪に働きかけるすい液の消化を助けているのです。
このような知識は、中学受験で直接問われることはありません。「胆汁には消化酵素は含まれない」「すい液は脂肪に働きかける」という、必須の知識の周辺知識ですから、そこまで細かく覚えてなくても入試に関しては問題ありませんが、この「少しの余計な知識」が、2つの必須の知識をまとめてくれるのです。
最初に、消化液や消化酵素は断片的に覚えようとしてもなかなか覚えられない、定着しにくいということを書きましたが、知識と知識をつなげる背景事情を知っておくと理解が深まり、知識をまとめてくれます。
知識を興味深くまとめてみよう
さきほどもご紹介しましたが、表や図に、それぞれの消化液や消化酵素のはたらきや器官との関係などをまとめて整理することは、知識をつなげ、定着させるのにとても有効な方法です。自分なりにまとめてみると、「こういう仕組みになっているのか」ということがよくわかります。ですから、忘れにくくなります。
それに加えて、興味をもたせる「ひと工夫」があるとさらに知識の定着を図ることができます。普段の食事や、カタカナの消化液や消化酵素の名前の由来、さらに少し細かい背景知識、そういったものに興味を持つきっかけがあると、「実感を伴う知識」を得ることができるので、理解度は飛躍的に上がり、ヒトのからだの単元はしっかりマスターできます。ぜひ、やってみてください。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。