日本国憲法は権力の集中を避けるため、三権分立を定めています。裁判所とは、三権分立において司法権を担っており、法律に基づき争いごとを解決する機関です。今回はそのような三権分立と裁判所の役割について説明していきたいと思います。
三権分立
三権分立とは、「国会」「内閣」「裁判所」の3つの独立した機関に権力を分散させるとともに、それぞれ監視し合い職権を乱用しないように定めた原則です。それぞれの役割についてみていきましょう。
国会
憲法第41条に「国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である」と定められている国会は「立法権」を担っています。国会では憲法を作ったり廃止することができます。
国会は裁判所に対し、弾劾裁判を行うことができます。弾劾裁判とは、裁判官に対して行う裁判です。また、内閣に対しては内閣不信任案決議を提出することができます。内閣不信任案決議は、衆院議員50人以上の賛成があれば発議でき、可決された場合は内閣は10日以内に衆議院を解散するか、総辞職しなければなりません。内閣の総理大臣の指名も国会が行います。
内閣
憲法第65条に「行政権は、内閣に属する」と定められている内閣は「行政権」を担っています。内閣では、国会で決まった法律に基づき政治を行っていきます。内閣は、内閣総理大臣と国務大臣で構成されており、内閣総理大臣及び国務大臣は、すべて文民(=非軍人)でなければならず、その過半数は国会議員でなければなりません。
内閣は裁判所に対し、最高裁判所長官の指名やその他の裁判官の任命を行います。国会に対し内閣は連帯責任を負い、国会の招集や衆議院の解散の決定権を持ちます。
裁判所
憲法第76条に「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する」と定められている裁判所は「司法権」を担っています。裁判所では憲法に基づき、争いごとを解決する機関です。
裁判所は国会に対して、違憲立法審査権を持っています。違憲立法審査権とは、国家の最高法規である憲法が国家機関によって侵害されるのを防ぐために設けられる憲法保障の制度の一つです。更に内閣に対しても政策が憲法に違反していないか審査する権限を持ちます。
裁判所の仕組み
次に裁判所の仕組みについて詳しくみていきましょう。日本の裁判所には最高裁判所の下に8つの高等裁判所があり、高等裁判所の下に地方裁判所及び家庭裁判所があり、地方裁判所の下に簡易裁判所が置かれています。
それぞれの裁判所について説明していきます。以下裁判所の写真は裁判所のホームページのものです。
最高裁判所
最上級、最終の裁判所で、高等裁判所の裁判に対する不服申立て(上告、特別抗告)を取り扱います。法律や政令が合憲か違憲かについて最終的に判断を下すため「憲法の番人」とも呼ばれています。
高等裁判所
地方裁判所、家庭裁判所等の裁判に対する不服申立て(控訴、抗告)などを扱います。
地方裁判所
民事訴訟、刑事訴訟の第一審を簡易裁判所と分担して取り扱います。そのほか、執行・倒産事件なども取り扱います。
家庭裁判所
家事事件,人事訴訟事件及び少年事件などを取り扱います。
簡易裁判所
比較的少額の民事訴訟と比較的軽い罪の刑事訴訟の第一審を取り扱います。そのほか、民事の調停なども取り扱います。
裁判所の制度についてみていきましょう。日本の裁判所では公平で慎重な裁判を行い、裁判の誤りを防ぐため、三審制を導入しています。三審制とは、裁判所の判決に納得がいかない場合、原則2回まで、上級の裁判所に不服を申し立てることができる制度です。
また、裁判所で取り扱う裁判には主に「民事裁判」と「刑事裁判」があります。
「民事裁判」は日常生活で起こる法律上の争いを判断して解決する裁判です。裁判官が双方の言い分を確かめ、証拠を調べた上で、判決を言い渡すほか、双方が合意して和解することもあります。裁判官と調停委員のあっせんで、話し合いによって円満解決を図る「民事調停」という手続きもあります。
「刑事裁判」は窃盗や詐欺、殺人、傷害など罪を犯した疑いで起訴された人が有罪か無罪か、有罪であればどのような刑罰を科すかを決める裁判です。刑事裁判では、起訴する側の検察官と、起訴された人(被告人)やその弁護人の言い分、証拠を調べ、被告人が本当に犯人であるかどうかを判断し、無罪あるいは有罪の判決をし、有罪の場合は刑を言い渡します。
平成21年5月21日に、国民が刑事裁判に参加する「裁判員制度」がスタートしました。「裁判員制度」とは20歳以上の有権者の中から裁判員候補者がくじで選ばれ、事件ごとに裁判所での選任手続を経て、6人の裁判員が選ばれ、裁判に参加します。「裁判員制度」は、国民の政治、司法への関心を高めることが期待されています。
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