鎌倉学園中学校は、神奈川県鎌倉市に所在している男子中学校です。
鎌倉五山の筆頭である建長寺の境内に学校を構え、鎌倉武士の往時の政権をほうふつとさせる歴史的史跡が周囲にはたくさんあります。
JR横須賀線北鎌倉駅から学校へ向かうためには、歴史の息吹を感じさせる昔から続く道を通ります。
緑と歴史的史跡に囲まれた環境の中で多感な時期を過ごすことができるとして受験生やご家族からの厚い信頼を集めています。
鎌倉学園中学校の歴史は非常に古く、建長寺の創建はなんと1253年(建長5年)にまでさかのぼります。そして1885年(明治18年)には現在の鎌倉学園の前身となる「宗学林」が設立されました。1986年(昭和61年)には中高一貫教育がはじまりました。
そんな鎌倉学園は、第一次・第二次世界大戦の荒波を乗り越え、豊かな伝統を守りつつも新しい学制に基づき、時代の要請に合った姿に自らを変えてきたのです。
鎌倉学園の目指す教育は、鎌倉武士がモットーとしていた「質実剛健」という武士の魂と、「自主自律」の禅の精神を受け継ぎ、知・徳・体のバランスの取れた教育です。
そして、校訓は「礼義廉恥」。これは、「礼:節度を守ること」「義:自分を実際以上に見せびらかさないこと」「廉:自分の過ちを隠さないこと」「恥:他人の悪事に引きずられないこと」を表します。
こうした教育理念に基づき、文武両道をモットーとしている鎌倉学園は、普遍的な教育をいまも、将来も追い求めていくとしています。
生徒に求めるのは、理想は高く持ち、勉学はもちろんのこと、「いましかできないこと」にチャレンジする姿勢。歴史的風土に囲まれたこと鎌倉から、新しい息吹を日本へ、世界へと発信できる、豊かな人間性を備えたリーダーの育成を使命としているのです。
鎌倉学園中学校・高等学校の大学進学実績は近年伸び続けています。2021年度は国公立大学に90名の合格者を輩出。また、早慶上智をはじめ、G-MARCHなどの私立大学合格者は3ケタを超えるほど多数です。
特に、東京理科大学をはじめとした理系に強く、医学部医学科や薬学部などの医療系学部への進学者が増え続けているのも鎌倉学園の特徴です。多様性豊かな教育を行った成果が、こうした鎌倉学園の進学実績における多様性を裏付けていると言えるでしょう。
今回は、伝統と全人格的な教育を融合させ、ますます進化を遂げつつある人気の鎌倉学園中学校について、国語の入試出題傾向や対策を徹底解説します。
ぜひ特徴を押さえて、合格に向けた対策をしっかり行っていきましょう。
Contents
近年の出題傾向
鎌倉学園中学校の国語入試概要
鎌倉学園中学校の入試の国語は、1次・2次・3次共通して50分・100点満点です。大問数は例年5~6題となっていますが、必ずしもこの限りではありません。以前は大問3題ということが多かったですが、近年はおおむね5~6題の出題が続いています。
各大問を見てみると、1題は漢字の書き取り、2題は語彙や文法(ことわざ、慣用表現、文法、文学史など)の知識と運用能力を見る問題、長文読解が2題、また文学的文章・論理的文章とは異なる分野の素材を使って、思考力・表現力をはかる問題が1題出題されています。
長文読解問題に関しては、文学的文章と論理的文章(説明的文章)から1題ずつと、バランスよく出題されています。
詩などの韻文は平成13年度に出題されてことがありますが、出題されることはほとんどありません。長文読解問題2題で配点の6割を占め、2題の配点はほぼ同程度です。
設問のバリエーションは豊かで、記号選択式の問題や書き抜き問題・空欄補充問題が中心となって構成されています。内容としては、指示語や接続語の問題、ことばの意味を問う問題、文学的文章では登場人物の心情や情景の読み取り、主題の読み取りなど、幅広く出題されます。
なお、30~60字程度の記述問題は、どの回の入試でも1問以上出題されています。設問の指示に従って本文の内容をまとめる、といった比較的素直な問題が出題されるので、記述問題があると構えすぎる必要はありません。
正確に読み取れるかどうかは読書量、あるいは塾で触れた文章などについてどれだけ丁寧に読んできたか、によって左右されます。逆にいえば、塾の通常授業で扱うような文章をいかに正確に「処理」できるかが鎌倉学園中学校の国語のキモなのです。
なお、長文読解問題にしっかり対応するためには、土台となる語彙力といった基礎力が定着していることが前提条件。漢字やことばに関する問題が大問で3題出題される鎌倉学園中学校の国語の入試に対応するためには、高い知識レベルをキープすることが合格のために必要不可欠です。
2020年度入試の出題
ここでは、2020年度の国語の入試問題をもとに、出題傾向を見ていきましょう(2021年度入試問題については長文読解が公表されておりませんので、2020年度の入試を取り上げます)。
大問1:漢字の書き取り
例年出題される漢字の書き取りですが、2020年度は5問出題されました。
「外国人のキョリュウ地」「地名の由来にはショセツある」「新製品をセンデンする」「やせた土地をコやす」「電線に鳥がムラがる」
学校によると、出題される漢字は、原則として小学校6年生までに学ぶ漢字(教育漢字)の範囲から出題される、としています。小学生が日常使用しないものが出題されることも少なくありません。そうすると正答率が低くなる傾向にあります。
たとえば、「キョリュウ地」は、漢字自体は知っていてもどういう場所のことを言うのか理解できていないと正解は難しいでしょう。
また、「ムラがる」は「群」が正しいですが、受験生の中には「郡」と書いてしまう方が少なくない漢字です。どちらも音読みが同じですが、まったく意味が違う感じなので、こうした同音異義語・同訓異字も含めて普段からの丁寧な漢字学習がストレートに反映される出題となっています。
大問2・3:漢字の書き順・ことばの意味
大問2は漢字の書き順についての出題でした。設問は4つ、指定された画数が何画目にあたるかを「漢数字で」答えさせるというものです。
塾の授業では画数についてほとんど触れられないので、漢字の書き取りをする習慣と、一画ずつ丁寧に書く習慣ができているかどうかで大きく差がつく問題となっていました。
特に「右」という出題については、頻出だと言ってもいいくらい、間違える受験生が多い漢字の一つです。
大問3は、国語辞典(新明解国語辞典 第7版)に載っている「ことば」についての説明を参考に、「さ」からはじまることばを答えさせる設問が3問出題されました。普段の学習や読書などにおいて、どれだけことばの意味まで考えて正確に読もうとしているかが問われる問題です。
いずれもことば自体の難易度は高くはなく、普段から使用するものが出題されています。しかし、大人向けの辞書に載っている説明がヒントとなっているため、その見た目に惑わされてしまい、正解が浮かんでこない受験生も多かったと考えられる出題です。
なお、学校からの発表によると、大問2・3については、「ことわざや慣用表現、文法、文学史などの知識や運用などを幅広く問う」とされているため、鎌倉学園中学校を受験するならば、こうしたことばに対する意識をとぎすまし、幅広い種類のことばの知識を、実際に使いこなすことが求められています。
大問4:長文読解問題(物語文)
出典:高橋秀雄「やぶ坂に吹く風」による
鎌倉学園中学校は、出題の意図を発表しており、大問4については「小説・随筆または詩とその鑑賞のような内容の文芸的文章」としています。
ただし、平成13年度に出題されて以来、詩については出題されていませんので、基本は物語文、あるいは文学的随筆が出題されると言って良いでしょう。
素材文の長さは3,500文字程度で、中学受験の平均からするとそれほど長くはありません。物語文の読み方のセオリーにしたがって丁寧に読み、登場人物の関係、できごと同士の因果関係、登場人物の心情・心象風景、言動から読み取れる心情の変化といったものを押さえれば、各設問に十分こたえることができるレベルだと言えるでしょう。
素材文はそれほど長くはありませんが、設問のバリエーションは非常に豊かで、記号選択式の問題や書き抜き問題・空欄補充問題が中心となって構成されています。
内容としては、指示語や接続語の問題、ことばの意味を問う問題、文学的文章では登場人物の心情や情景の読み取り、主題の読み取りなど、幅広く出題されます。
なお、30~60字程度の記述問題は、どの回の入試でも1問以上出題されています。設問の指示に従って本文の内容をまとめる、といった比較的素直な問題が出題されるので、記述問題があると構えすぎる必要はありません。
2020年度は、主人公の心に浮かんだ気持ちの理由について、20~25字で、空欄に文章を補う形で答えさせる記述問題が出題されました。難易度は高くはなく、素材文の中に答えとなるところが分かる形で出ているので、内容をしっかり把握していればあとは文末処理など、形式面のテクニックを駆使してまとめれば十分正解できる問題です。
大問4・大問5とオーソドックスな長文読解問題が並びますが、この2題で配点の6割を占めるので、1問落とすと大きく差が付けられてしまいます。各設問の正答率を以下にあげられるかがポイントです。
大問5:長文読解問題(論説文)
出典:宇根豊「日本人にとって自然とはなにか」
素材文の難易度は、中学受験の平均的レベルだと言って良いでしょう。大人向けの文章を小学生向きに易しくしたものなど、受験生に対する配慮が随所にみられる出題。また、論理的文章の場合、人文科学的な内容から出題される傾向にあります。
正確に読み取れるかどうかは読書量、あるいは塾で触れた文章などについてどれだけ丁寧に読んできたか、によって左右されます。逆にいえば、塾の通常授業で扱うような文章をいかに正確に「処理」できるかが鎌倉学園中学校の国語のキモなのです。
雑な読み方やセオリーを無視した読み方をしていると、文章の内容を把握することは難しく、得点を積み重ねることができなくなりかねません。
日本へ、世界へ発信できる生徒を育成したいと考えている鎌倉学園中学校の教育方針から考えると、社会動静などを簡潔にまとめた新聞記事なども読む習慣をつけることが推奨されます。
設問の傾向ですが、こちらもバランスよく様々な形式の設問が出題されています。記述問題、文章中の空欄を埋める問題(空欄補充問題)、段落分けの問題、文章中から適切な部分を抜き出す問題(書き抜き問題)、記号選択肢問題と、一通り網羅されているため、それぞれにしっかり対応することが重要です。
なお、鎌倉学園中学校の長文読解問題は、記号選択肢問題が多く出題されますが、それぞれの選択肢が長いことが大きな特徴です。
この大問5でも、一つの選択肢が3行程度、4つ並んでおり、素材文の読解に加えて選択肢も正確に読み取らなければなりません。そういった意味で、選択肢の吟味に時間がかけられるよう、受験生がみんな正解してくる問題はスムーズに解き進むことも大切です。
大問6:思考力・表現力をはかる問題
出典:永井均「子どものための哲学対話」
鎌倉学園中学校の国語の最大の特徴が、この大問6です。学校による発表では「文芸的文章、論理的文章とは違う分野の素材を扱って、思考力・表現力などをはかる問題を出題する」とされています。
年度によって出題の仕方は変わりますが、表やグラフの読み取りを含む文章が出題されることもあります。配点はこの1題で1割程度となっていますので、落とすわけにはいきません。過去問などで出題に慣れておく必要があるでしょう。
2020年度の出題は、哲学的な対話が題材となっています。ただし、登場するのは小学校5年生の「ぼく」と、ぼくの家に住み着く猫の「ベネトレ」。大人同士の哲学対話ではなく、受験生と同世代の小学生と猫の対話、という形で哲学、論理について対話を重ねている構成となっています。
ただし、内容が哲学であり、論理的に読み進まないと問に答えられないので、この問題で大きく差がついてしまったと考えられます。素材文の長さは非常に短いのですが、内容が濃く、1行でも読み誤ると正解することはできません。
設問は、記号選択肢問題と短い記述問題の計2問。ただし、記号選択肢問題は他の長文読解問題同様、3行程度の選択肢がずらりと並んでいます。
素材文の内容が哲学であり、「こうだからこう」という論理の詰め方で進んでいくため、選択肢の内容も哲学的、論理的です。素材文の意図するところを読み誤ると、選択肢の内容が頭に入ってこず、結果的に失点してしまう可能性は高いと言えます。
また、記述問題も1行あるかないか程度の短さではありますが、論理学の要素が入っており、「この発言は論理的に考えておかしいから、正しくはこうだ」という解答を書かなければなりません。一般的な記述問題よりもパズル的要素が強く、得意不得意が分かれる問題だと言えるでしょう。
この問題は、論理的思考力と表現力を問うていますが、設問はたった2問、しかも配点が全体の1割を占めます。こうした問題への対策が、鎌倉学園中学校の国語では必須なのです。
まとめ~高得点をとるカギ
鎌倉学園中学校の国語で高得点を取るカギは、以下の5つです。
- 要点を読み取るためのスピードと正確さ、読み切る力
- 文章中の根拠を正確に読み取り、解答に活かす
- 記述問題は短いがオールオアナッシング、必ず解答する
- 論理的思考力と表現力を問う問題は対策必須
- 漢字の正確な知識・ことばの運用能力で配点3割
鎌倉学園中学校の国語では、長文読解の素材文の長さは3,500字程度、1題あたりとしては、ごく平均的な文章量です。設問数はあまり多くないため、1問あたりの配点は高めだと考えられますから、1問の成否が大きな差をつけてしまう「怖い」入試でもあります。
ただし、出題自体は決して奇をてらったものではなく、むしろオーソドックスです。大切なのは、素材文を内容に忠実に読み進み、ポイントを素早く押さえること。それができれば、合格最低点に大きく近づくことができるでしょう。
普段の受験勉強の中で、いかに一つひとつの文章を丁寧に読み、文章内容を正確に把握する訓練ができるかがポイントです。
こうした傾向に合わせた対策は、これからでも十分間に合います。方向性をブレさせずに準備を進めていきましょう。
次回の記事では、鎌倉学園中学校の国語の入試について、攻略法を解説します。ぜひ参考にしてくださいね。
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参考
一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。