新・6年生の皆さんは、これまでもお通いの塾などで何度か総合模試を受けた経験がおありだと思います。総合模試は、毎週、あるいは毎月行われるテストとは違い、これまでに習った全範囲から出題されます。組み分けテストなどもそのひとつです。
4年生・5年生の間はそのような総合模試は組み分けテスト程度でそれほど回数は多くなかったかもしれません。しかし、6年生になると、格段に受験の機会が増えます。さらに、「他流試合」と言って、普段お通いの塾のテスト以外に、ほかの大手塾の総合模試を受ける機会も増えます。
「他流試合」にはいろいろなご意見があると思いますが、どうしても普段お通いの塾のテストの「型」に慣れてしまうと、その出題の癖が身に沁みついてしまい、出題傾向や出題の仕方に慣れてしまうため、それなりの点数をとって安心しがちです。ですが、他流試合になるとそうはいきません。学んできた範囲は共通していても、出題のされ方、設問の問われ方ひとつ違うことによって、いつもとっている成績とは全く違う結果が出ることもあるのです。
さらに、模試にも、上位校向け、中堅校向け、など様々な種類があります。第1志望校に向けてはこの模試を受け、自分の立ち位置を知り、中堅校向けの模試を受けて併願校の合格ラインを知る、そういった使い分けも大切です。
今回は、いくつかある模試の中でも受験者の多い、四谷大塚の合不合判定テスト、組み分けテストを例に挙げて、総合模試を受けるときの注意点などについてお伝えしたいと思います。
四谷大塚は、もともと「テスト会」から始まった塾です。当時は、予習シリーズで自学自習を行い、週末にテストを受ける、という形から始まりました。それだけに、テストと合格の間の相関関係のデータが非常に多く蓄積されてきました。
四谷大塚だけでなく、早稲田アカデミーも、四谷大塚系のテキスト「予習シリーズ」を使い、クラスを分ける際に「組み分けテスト」を受け、さらに「合不合判定テスト」を受けます。合間に、各塾が行う志望校別のテストを受けるというのが通常のケースです。その他に、毎週YTテストという、週例テストを、自分の属しているコースごとに異なる問題で受け、テスト結果が出るような仕組みになっています。
週例テストでは、ある程度範囲が決まっています。その週に学んだ内容から、コースに応じて難易度を調整して問題が作られます。ですが、合不合判定テストや組み分けテストの場合、それまで学んだすべての範囲から出題されるため、どこに焦点を当てて勉強したらよいか、戸惑うことも多いと思います。特に6年生ともなると、中学受験で学ぶほぼすべての範囲から出題されるといっても過言ではありません。
では、そのような範囲の広い「合不合判定テスト」や「組み分けテスト」で高得点をとるためにはどうしたらよいのでしょうか。テストの特徴と、対策について基本を押さえておきましょう。実際に受験するときの参考にしていただきたいと思います。
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「合不合判定テスト」の特徴
合不合テストは、6年生を対象として行われる、範囲なしの総合テストです。受験科目は算数・国語・理科・社会の4教科が基本ですが、志望校に合わせて算数・国語の2教科、あるいは算数・国語・理科の3教科の中から選択できるようになっています。合不合テストは全国の受験生が受けてきますので、関西の学校を第1志望にしておられる方は、3教科受験を選択される方もいらっしゃいます。
これまで蓄積してきた、四谷大塚が持つ膨大な過去の受験データを元にして、おおむね正確に合格圏にあるか、努力圏にあるか、といった判定を行えることが「合不合判定テスト」の最大の特徴です。志望校をいくつか書く形になっていますが、それぞれの学校について合格可能性の%が算出されます。
また、テストの結果のデータを元に、同じ志望校の受験生との成績の比較ができます。そして、偏差値などの載った成績表とともに解答、解説、各設問の正答率が載った「週報」というものがあります。偏差値や点数も大切ですが、あくまで模試ですから、入試本番ではありません。
まちがえた問題がどのような問題だったのか、その問題の正答率はどのくらいだったのか、その問題を正解していたらどのくらいの点数、偏差値になったのか、ということまで分析したうえで、弱点克服をすることができると非常に効果的です。
大切なのは、「自分が間違えた問題」が、「受験生のほとんどが正解するような基本問題だったのか」「正答率がとても低い、正解できなくてもあまり差がつかなかったのか」「理解があやふやで、差がつく問題を落としたのか」という分類をすることによって、復習する際にも目標を持って行うことができます。
また、合不合判定テストは、いつもの塾ではなく、実際の志望校や中学校を会場にして開催されます。本番さながらの雰囲気、環境でテストを受けられるということは、本番で必要以上に緊張せずにすみます。数回行われますから、志望校、併願校を会場に選べば、保護者の方はお子さんがテストを受けている間に、実際にその学校の先生による入試説明会を受けることができます。本番に向けたシミュレーションにもなります。
2017年には、合不合テストは6年生の4月から12月までの間に、合計6回実施されました。夏休み前は回数が少ないですが、夏休み後には毎月実施されます。そして、志望校をおおむねつける11月の合不合テストは一番多くの受験生を集めます。その回のテストでの合格可能性をみて、志望校や併願校を大体決める目安にされる方が多いです。
夏休み後の合不合テストの出題範囲は、中学入試で出題される全範囲です。また、理科、社会はそれから4回で全範囲を網羅するように出題されます。ですから、全範囲を振り返る良い機会と言えるでしょう。その分、テストを受けるごとに弱点が明らかになってきます。そこであせらず、弱点が本番前にわかってよかった、と前向きに考えて受けることをオススメします。このように、合不合テストと週例テストでは、出題範囲や難易度において大きな違いがあるので、使い分けをうまく考える必要があります。
「組み分けテスト」の特徴
組み分けテストは、先ほどの6年生対象の合不合判定テストとはまた違います。小学校4年生・5年生・6年生が受験します。四谷大塚に通う生徒さんが受ける組み分けテストのほかに、ほかの塾にお通いの生徒さんや通常は授業を受けていない生徒さんも受験する公開組み分けテストがあります。
受験科目は、これも算数・国語・理科・社会の4教科が基本で、4年生は算数・国語の2教科です。
組み分けテストの出題範囲は、「予習シリーズ」の学習進度に合わせて、5回に1回行われます。たとえば、第1回から第4回までの範囲の総合回が第5回で、第5回に第1回から第4回の範囲全体から総合的にさまざまな問題が出題されます。
四谷大塚の組み分けは、「組み分けテスト」の成績によって機械的に決められます。成績順に、上から順にコース分けがなされ、S、C、B、Aクラスに振り分けられます。そのコースの中で、さらに細かく成績順にクラスが分けられます。たとえば、S1クラス、C6クラス、といったクラス分けになります。塾のクラスも、この組み分けテストのコースとクラスによって決められます。
また、毎週行われる「週例テスト」がそれぞれのコースごとに違う問題が出題されるのに対し、「組み分けテスト」はコースに関係なく全員が共通の問題を受験します。そのため、コースやクラスの昇降に限度はありません。特に、最難関中学を目指す生徒さんはSコースか、Cコースの上位クラスを目指す必要があります。
それは、毎週受ける週例テストの内容が全く違うからです。コースが上がればいいというものではありません。コースが上がると当然問題は難しくなり、偏差値もコース内で決まるため、なかなか成績がとれない、と錯覚してしまうからです。逆に、コースが下がると、点数がとりやすくなり、成績が上がったように感じますが、問題1つ1つをていねいに復習しないと、次の組み分けテストで思うように点数がとれないこともあるので注意が必要です。
「合不合判定テスト」と「組み分けテスト」、総合テストの対策ポイント
よく合不合判定テストや組み分けテストといった総合テストについて、ご質問を受けるのは以下のようなことがあります。
- 週例テストでは点数がとれるのに、合不合判定テストや組み分けテストになると点数がとれない
- 毎回、同じような問題で間違えてしまう
- テスト後、とき直しをするとできるのに、いざテスト本番では解けないことが多い
このような状況に陥ってしまい、毎回同じような悩みを抱えるご家庭は少なくないと思います。では、その原因はどこにあるのでしょうか。大きく分けると、2つのパターンが考えられます。
パターン①解き方を丸暗記してしまっているパターン
合不合判定テストや組み分けテストは総合テストなので、出題範囲が広いということは先ほども述べました。この範囲の広さのため、少し前に勉強した範囲からも出題がありますが、数週間前に学習した範囲からの出題も当然あります。小学生の記憶力はそれほど持つものではありません。そのため、学習してから少し時間がたってしまった範囲では特に、「習ったはずで、見たことはある気はするけれど、何の問題だったっけ」という、出題の単元という点で混乱するという状況に陥ってしまうお子さんが多いのです。
このような状況に陥ってしまう原因の多くは、家庭学習のやり方にあります。家庭学習というとどうしても、毎回の宿題を「こなす」ことに追われ、勉強した気になっている方がとても多いです。たとえば、テスト前に問題のパターンを覚えようとしたり、解答のプロセスを理解しないまま解答を丸暗記するような勉強の仕方をしていませんか?
問題の解き方のパターンを理解せずに暗記したり、「この問題はこの答え」と、解答を丸暗記してしまっていると、テストで違う問題が出た場合、たとえば少しひねったり、聞き方を変えられたり、数字が変わっているときに、「見たことはあるけど解けない」ということになってしまうのです。これが、家庭学習に時間をかけているのにテストで点数がとれない一番の原因です。
特に、記憶力がよく、覚えるのが得意なお子さんや、要領がよいお子さんほどこのパターンはよく見られます。「覚えれば何とかなる」という意識が働いてしまい、学年が下のときであれば通用しても、学年が上がるにつれて点数をとることは難しくなってしまいます。
それは、「理解をしていない」「理解をするという手間をおろそかにしている」からです。家庭学習で何よりも大切なことは、「理屈・解放のプロセスをしっかり理解すること」と、「わかった気になって終わらずに、実際に自分で一から解いて正解できるよう、使いこなすことができるまで練習すること」です。
「わかる」と「できる」ことは全く違います。授業を聞いてわかった気になっても、いざ家に帰ってきてその日習った問題を解き直して解けない、ということはありませんか?それは、「わかった」気になっているだけで、決して「できる」ようにはなっていない、ということです。
パターン②テストの受け方に問題があるパターン
ほかにも、総合テストを受けるときに考えられる悩みとしては、以下のようなことが挙げられると思います。
- ケアレスミスが多い
- 時間切れになってしまって最後まで解ききれない
- 見直しをする時間がない、または見直しをしようとしない
- 1問に時間をかけすぎてしまう
普段の学習ではあまり問題はないと思っていても、テストになるとこのような症状が出てしまうお子さんも非常に多く見られます。
ケアレスミス、時間切れ、このようなことで点数を取りこぼさないようにするためには、やはり普段の家庭学習でも、塾の授業でも、時間配分の仕方や見直しの仕方など、「テストの受け方」を意識して、身につけていくことが必要です。もしケアレスミスがなかったら、あるいは時間切れになるような解き方をしなければ、いったいどのくらい点数を積み上げられただろう、とテストを受けた後にしっかり見直してみましょう。
いくら普段の学習で問題を解けていても、入試本番ではケアレスミスや時間切れ、という言い訳はできません。常に意識することが必要です。ただし、ケアレスミスがあった、時間切れがあった、ということでお子さんを責めすぎないようにしましょう。そういうことが続くと、テストを受けるたびに「怒られる」という意識が強くなってしまい、途中でお腹が痛くなったり、かえって1問にこだわりすぎてしまう、ということが起こってしまいます。
合不合テストや組み分けテストで大切なのは、「正しい勉強法」を身につけること
テスト、それも成績が厳然と出る総合テストでは、できるだけよい成績をとりたいですよね。そのためには、テストの正しい受け方、つまり時間配分に気をつけること、ケアレスミスに気をつけること、1問に時間をかけすぎないことなどはもちろん必要です。
ですが、何よりも大事なのは、解き方や解答を丸覚えして「勉強した気になってしまう」ことのないようにすることです。このような丸覚え勉強では、6年生になって応用問題、発展問題の数が増えてくるカリキュラムについていくことは非常に難しくなってしまいます。
塾のカリキュラムは、「らせん式」が多いです。一度習ったことをもう一度、またもう一度、と繰り返して学習していきます。ですが、1回目に出てきたときにきちんと解法や原理原則を理解しておかないと、2回目、3回目に出てきたときに、あやふやな知識のまま、応用問題を解くことになってしまいます。
場合によっては、以前学習した内容を忘れてしまっていることもあるでしょう。これでは、もう1回同じ単元が出てきた、と思っても、解いても解いても正解できない、ということが繰り返され、大幅に成績が下がってしまいます。特に、範囲のない総合テストではすべての単元から出題されるので、「できない」という結果になってしまいます。
それでは、受験学年になったお子さんのモチベーションが大幅に下がってしまいます。モチベーションが下がると、当然成績も下がってしまいますから、悪循環に陥ってしまう危険性があります。
まとめ
受験勉強をしていると、どうしてもテストの点数や偏差値が一番気になってしまい、「なぜ」間違えたのか、「どういう問題を」間違えたのか、という分析をおろそかにしてしまいがちです。範囲のそれほど広くない週例テストなどではそれでも「次、頑張ろう」で済ませてしまうかもしれませんが、その1回1回の勉強が、合不合判定テストや組み分けテストの結果に大きく影響してくるということを忘れないでいただきたいと思います。
何より大切なのは、テストを受けながらでもよいので、受けるたびに自分の勉強法を見直し、丸覚え勉強になっていないか、原理原則を理解しているか、解法を理解していて数字が変わっても解けるか、そういうことを意識しながら着実に「わかったこと」を「できるまで」練習することです。
テストで点数がとれないのは、ケアレスミスなどもあるでしょうが、基本的には学習したことが「定着していない」からです。これから本格的に総合テストが始まる時期です。毎日の学習姿勢が問われます。もし、今まで「覚えればいいや」という意識で勉強してきた方は、4月から本格的に始まる総合テストの前に、自分の勉強法の問題点を洗い出しましょう。知識は聞かれ方を変えられても答えられるか、数字を変えられても答えられるように解法を理解しているか、その地道な積み重ねがあってこそ、テストで好成績がとれるようになっていくのです。
1回のテストでうまくいかないことがあっても、どこで間違えたか、この問題は落ち着いてやれば解けた、ケアレスミスでこれだけ落としてしまった、といった「分析」をしっかりしましょう。そして、正答率などを参考にして、「受験生のみんなが確実に得点する問題」を落とさないようにすることや、ケアレスミスを減らせばこれだけ点数が上がる、ということを実戦で身につけていきましょう。
ほかの塾のテストも受けることになると、かなりタイトな週末になってきます。どの模試の、どの回を受けるか、あるいは省くか、そういったこともぜひ塾の先生とも相談して、「いつまでにこれをやろう」という、勉強の進度のマイルストーンにしていってください。
正しい勉強法を積み重ねていけば必ず成績は上がってきます。模試はただ受けるだけでなく、弱点を発見するうえでとても大事なものです。ぜひ、ていねいに解き直し、復習をして、解法などの理解を進めていきましょう。頑張ってください。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。