【中学受験】今年の夏期講習、どう取り組む?注意すべき点2

前回は、夏期講習において、塾の集団授業の夏期講習でありがちな注意点についてご紹介しました。まもなく夏期講習の時期に入りますが、今年は新型コロナウィルスの影響もあり、小学校のなかには、長いところでは2週間ほど夏休みを短縮すると発表しているところもあります。そのため、塾の夏期講習は期間短縮あるいは時間を短縮しておこなわれることが予測されます。

しかし、受験学年、すなわち6年生の夏期講習では、中学受験に必要なカリキュラムを一通り終わったことを前提として、全範囲からの問題演習をひたすらやる、というのが主流です。それは期間が短くなったり1日の時間が短くなったりしても同様だと考えられます。「夏期講習で総復習を」と塾からは説明を受けることが多いかと思いますが、まんべんなくおこなわなければならないため、どこかの単元を重点的にやるということは考えにくく、どの単元にも同じくらいの時間が配分されます。

ですが、一通り受験カリキュラムを終えて、受験生の皆さんや保護者の皆さんは、いま、何をするべきだと思っておいででしょうか?いつも点数が取れるところと、なかなか同じような問題で間違え続けたり、理解が不十分だな、と感じるところなど、カリキュラム全体を見てみてもお子さんの力がついているところとそう出ないところが明確になりつつあるのではないでしょうか。

受験生一人ひとり、得意や不得意、弱点は異なります。ですが、集団塾ではそういった一人ひとりの違いまで視野に入れてそれぞれに合った授業をしてくれることは望めません。なぜなら、受講しているすべての受験生にいきわたるよう、一通りの最大公約数的授業をおこなわなければ、「これに触れた」ということにならないからです。

いまの時期から受験生の皆さんがやるべきことは、自分の実力と、志望校で求められているレベルを比較し、その距離を縮めていくための「自分のための学習」をすることです。ですから、得意・不得意が異なるほかの受験生に合わせる必要はないのです。どうしても横並び一線のほうが安心する、という心理が働きがちなのですが、「ほかの受験生と比べる」ことよりも「自分がどこまでできているか、どこができていないか」ということを見極めるほうがずっと重要です。

「自分のための学習」をするためには、目標を設定し、自分の弱点を一つひとつつぶしていくことが何よりも重要です。夏期講習でひたすら大量の問題演習をおこなっていると、目標が「問題を解きまくること」にすり替わってしまい、終わってみると、たくさん問題演習をしたはずなのに同じような問題が解けるようになっていない、知識があやふやなままで残ってしまった、ということになりかねません。そのような事態は避けたいものです。

どうしても「総復習」ということばに惑わされがちな夏期講習ですが、今回は夏期講習を最大限に利用するために意識したいメリットやデメリットなどについて解説します。それらを認識したうえで受講し、着実に力をつけていきましょう。

夏期講習は本当に「総復習」?

塾からは「夏期講習ではこれまでの単元の総復習をおこなうので受講してください」と指示されることが多いでしょう。受験生や保護者の皆さんは、「総復習」ということばにどのようなイメージをお持ちになるでしょうか。全部の範囲をまんべんなく、わかっていないところをもう一度解説してくれて理解が深まる、と期待しますよね。

しかし、塾で言うところの「総復習」はそのような親切なものとは言えないのが現実です。なぜなら、塾の夏期講習の内容は、たしかにこれまで学習してきた受験カリキュラムに沿うものではありますが、あくまで「その単元の問題を扱う」ということであって、「その単元のポイント解説をもう一度する」ということではないからです。その点が夏期講習マジックともいえるのですが、意識せずにただ受講して、終わってみると何も身についていなかった、という結果につながることもあるのです。

夏期講習の「総復習」は落とし穴になりやすい

塾では、夏期講習のテキストに基づいて、毎回何を扱うかが決まっています。これまで、受験カリキュラムは1週間をかけて知識の説明、例題、知識の確認、基本問題、演習問題・・・と進んできたことでしょう。しかし、それが一通り終わっている、というのが夏期講習のカリキュラムの落とし穴なのです。

夏期講習の「総復習」は、これまで一通りザっと終わらせた受験カリキュラムを土台にして問題演習をひたすら繰り返すというものです。まんべんなくおこなわれるので「総復習」というわけです。しかし、受験生が全員、これまでのカリキュラムで学習した内容を100%理解しているわけではありませんよね。それなのに、わかっていることを前提にしてひたすら問題演習を、しかもこれまで解いてきたような単元ごとの問題ではなく、融合問題をたくさん解く、ということを繰り返して、果たして実力がつくでしょうか?

現在の時点で、受験生の皆さんはできるところ、できないところがおぼろげながらわかっているはずです。たとえば「図形が苦手」「〇〇算が苦手」「理科の力学がわからない」「中和のところでいつも間違える」「社会の地理の内容を忘れている」「公民分野ってわけがわからない」「物語文でいつも点数がとれない」「記述問題に手がつけられない」・・・思い当たるところはありませんか?

総復習するなら、自分の弱点克服に重点を置くことがポイント

このように、カリキュラム全体を見回してみると、自分の弱点となっているところは穴となって残っているはずです。つまり、実力に凸凹がある状態です。できるところをより伸ばす、というのもひとつの方法ですが、それは前提として、まんべんなく全範囲の基礎ができているからこそできることです。土台ができていない部分があるのにできるところばかりやっていては、そこはとてもよくできるようになるかもしれませんが、できないところはそのまま放置されてしまいます。

そうすると、その単元が扱われる回は「お客さん」になってしまい、問題を解こうと思っても解くことができず、ただノートをとっておしまい、ということにもなりかねません。それではせっかく夏期講習を受けても効率的ではありませんし。そこで学んだことを今後最大限に活かしていくことはできません。

つまり、夏期講習で総復習をするなら、「自分が得意なところ」「苦手なところ」「まったくわかっていないところ」といった段階づけをして、苦手、弱点となっているところを一つひとつつぶしていく、という意識を持たないと大量の問題演習に押しつぶされ、時間を無為に過ごすことになりかねないので注意が必要です。そのため、自宅学習で弱点分野を克服する時間をしっかりとることが必要だということを理解しておいてください。

とにかく拘束時間が長いのがネック

塾の夏期講習は拘束時間が非常に長くなります。今年度は新型コロナウィルスの影響もあり、通常の場合より全体の拘束時間は短めになるかもしれませんが、使える時間はすべて使う、というのが塾の夏期講習ですから、かえって1日の拘束時間は長くなる可能性が高いです。6年生の夏期講習ともなれば、朝から夜の9時ごろまでまさに1日中塾に缶詰め、ということにもなるかもしれません。

その長い拘束時間の中で、受験生はどういった学習をするのでしょうか?待っているのは「大量の問題演習」です。正しいやり方でついていけば、吸収する力が高い受験生は、苦手なところもその問題演習の中で克服できる、ということはあるかもしれません。しかし、大量に問題演習を行い、生徒が全員、やったところをすべて吸収出来れば良いですが、現実は甘くありません。

自分で問題を解く時間も夏期講習時間

なぜなら、問題演習に時間を使う、ということは、「生徒がひとりで問題を解く時間」も講習時間内に含まれているということです。その時間はそれまでの知識を総動員して問題を解くので、たしかに1問1問真剣に取り組み、どこまでできてどこがわからないか、という分析をする「正しいやり方」でおこなえば効果が得られます。

しかし、実際のところ、解けない、わからない問題にどれだけの時間を集中して取り組むことができるでしょうか?普段の学習でもそうですが、わからない問題にいくら時間を使っても、理解できていない以上時間の無駄になってしまいますよね。それと同じで、夏期講習での問題演習時間は、使いようによっては有益になることもありますが、あまりにも大量なため、時間を無為に過ごしてしまうことにもつながりかねないのです。その時間を使って他の単元や教科の知識の確認ができますよね。

すべての問題を解説してもらえるわけではない

また、解説についても、問題を自力である程度解けていなければ「あ、そうか!」とわかる瞬間は来ません。さらに、解説がおこなわれる問題は、時間の関係もあって、演習した問題のほんの一部です。イメージとしては、単元1セット問題を解き、その中のいくつかをピックアップして解説する、という感じです。そして、これは筆者の塾講師としての経験からもあることなのですが、ピックアップして解説するのはいわゆる「難問」であることがほとんどです。

たしかに、難易度低めの問題は解ける生徒さんも多いので、そこに時間をかけることは非合理的かもしれません。しかし、解ける生徒さんが少ない「難問」の解説に重点が置かれると、ついてこれる生徒さんはクラスの中の一握りです。それ以外の生徒さんは不完全燃焼で、結局どうすればその問題が解けたのか、自分はどこまでわかっていたのか、ということを認識できずにその回を終えてしまうことになりかねないことに注意が必要です。

夏期講習は毎日長時間であるため、いわゆる「脳の体力」、つまり長時間頭をフル回転させる力をつける、という点では一定の効果がたしかにあります。しかし、あくまで最大公約数としての授業なので、「自分のための学習」とは言えません。弱点を把握し、一つひとつつぶしていくためには大量の問題演習をひたすらおこなえば良いというわけではありません。最低限の知識が身についているのか、ある程度の基本問題は解けるのか、という段階に応じて弱点を克服するためにコツコツ積み上げていくことが必要です。

塾の夏期講習では、弱点補強というよりもカリキュラム全体をザっと見直し、「総復習した」という実績を残すことに主眼が置かれているので、生徒一人ひとりの弱点補強まで手が回るはずがありません。ですから、夏期講習を受ける際には、取捨選択が必要になってくることも考えの中に入れておくほうが良いでしょう。

次回は、夏期講習を受けることによるメリットやデメリット、今やるべき弱点克服について解説します。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。