受験生の保護者の方は、すでに志望校の学校見学に行かれていることと思います。第一志望校の学校見学にはかなり早い学年から行かれたという方も多いのではないでしょうか。今後は、第一志望校と一緒に受ける併願校の学校見学に行かれる機会が増えることと思います。学校側もさまざまな方法で学校見学の機会を設けていますので、ぜひ調べて積極的にあ足を運んでください。
また、学校見学は、受験生だけでなく4年生、5年生、あるいは低学年であっても見に行ける学校も多くあります。中には受験生限定、保護者限定という学校もありますが、多くはオープンに土日などに親子で行けるように設定しているところもあります。
学校見学に行くことによって、志望校への思いを強くしたというご家庭もあれば、学校見学に行ったためにかえって迷いが生じてしまった、というご家庭もあるのが現状です。ですが、他の方の噂話と、実際に自分の目で見に行く学校見学では入ってくる情報や学校の雰囲気など、感じることは大きく違います。
今回は、必ず行っていただきたい学校見学と、見てくるべきポイントについて解説します。これから学校見学に行く機会をお持ちの保護者の方は、ぜひ参考にしてください。
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学校見学に行く意味とは
わが子を通わせたい学校はすでに決まっているのだから、わざわざ学校見学に行く必要はない・・・そのように考えていらっしゃいませんか?学校見学は警備の厳しい学校の中に入り、実際の校舎の様子や生徒さんの学習風景などを見学できるよい機会です。それを見ないと、実際にお子さんを通わせる具体的なイメージを持つのは難しいのではないでしょうか?
少子化の影響もあり、学校説明会など、学校見学の機会は非常に多様化してきています。授業見学、校内ツアー、共働きのご家庭向けにナイトツアーをおこなっている学校もあります。また、お子さんと一緒に学校見学ができる行事として文化祭がありますね。これから文化祭シーズンが真っ盛りです。学校によって生徒さんの活発さや、先生の受け答え、親身になって生徒をサポートしているか、さらには生徒さんと先生方の信頼関係といったものが短い時間であっても明確に見えてくることもあります。
以前、一度も学校見学に行かずに、偏差値の高い学校に合格されたご家庭がありました。しかし、そのご家庭は一度も学校見学に行かなかったのです。そのため、偏差値、お子さんの成績、噂話で志望校を決め、いざ合格したものの、お子さんの性格と学校の校風が合わず、残念ながら高校から他の学校を受験されたというケースがあります。ある程度以上の偏差値の学校なら安心でしょ?というのがそのご家庭の考え方だったのですが、高校受験なしに6年間のカリキュラムでお子さんを学校に通わせたかったという親御さんの思惑とは反対に、結局高校受験を余儀なくされましたし、お子さんにとっても校風の合わない学校に通っている時間が非常に苦痛であったようです。
このように、学校見学はだいたいこんなものでしょう、と決めつけて行かずに受験をすると思わぬところでご家庭の教育プランが崩れることがあります。たった一度であっても学校に足を運んであれば、もっと真剣にお子さんの性格と校風がマッチするかどうかを考える機会があったかもしれませんし、実際の生徒さんの様子とお子さんの雰囲気が合うかどうかについても考えることができたのではないかと非常に残念でした。
ですから、これから受験を目指す皆さんは、第一志望校はもちろんですが、併願校についても、受験する可能性がある学校の学校見学にはぜひ一度足を運んでいただきたいのです。お子さんが思春期の成長著しい時期を過ごす学校ですから、できる限りのサポートをしてあげていただきたいと思います。
学校見学で見てくるべきポイントとは?
学校見学でよく見てきていただきたいポイントはいくつもありますが、まずはこれだけは、という代表的なものを挙げておきましょう。
学校の教員の雰囲気・受け答え
何よりも大切なのは、実際にお子さんが入学した時に毎日接する学校の教員の先生についてです。それなりに人数がいらっしゃいますし、学校見学に参加する先生方はその年の入試広報や学年主任といったある一定の先生方であることが多いです。いわば、その年の学校の顔ともいえる先生方なわけですね。
そういった先生が中心となって、学校見学や説明会を仕切っていきます。その際に、よくある学校見学のパターンとしては、最初に校長や副校長による学校についての説明・生徒指導や進学担当、入試広報担当の先生による説明を聞いてから、校内を案内してもらえるというものです。最近は、その後個別相談会を開催し、学校について疑問がある方に対して答えるということも多くあります。ぜひ活用したいものです。
その際にぜひ注意してみていただきたいのは、教員の先生の雰囲気や受け答えがどのようなものであるか、です。学校にどう思われるか、というのは実際の入試問題で測られるものですから、学校見学の段階では何を質問してもマイナスになることはありませんから、ぜひ積極的に観察するようにしてください。
先生の表情が少し暗いな、と考えた場合は要注意です。特に伝統校と呼ばれる学校に多いのですが、先生方の中で守旧派と改革派のいわゆる新旧分裂が起こっている可能性があるからです。特に私立学校は転勤がないことが多いですから、中には30年選手という先生もいますし、他の学校からきて5,6年という先生もいます。その場合、その学校だけの価値観に凝り固まってしまっている先生と、よいものをどんどん取り入れていきたいという先生の間で軋轢が生じることがあるのです。
そのようなことが日常茶飯事だと、学校の方向性が決まらないため、入学してからお子さんが伸び伸びとした学校生活を送ることができず、先生の顔色をうかがうことにもなりかねません。また、そのような学校の場合、保護者の方もPTAなどの場面で苦労することが多いですので、よく観察してきてください。
また、個別相談で特にいえることですが、質問したことに対して先生が的確に瞬時に答えられるかどうか、ということは非常に重要です。入試改革がおこなわれる場合は特に、どのように変わるのか、変わることによって学校の将来はどうなるのか、自分の子どもを入れた場合、子どもの力を伸ばすための試みとしてどのようなことを考えているのか、という学校生活に直結した問題であればなおさらです。そこで即答できないようでは、学校の中が分裂しているなどして、公式にはっきりしたことが言える段階に今になってもなっていないということができます。
また、進学実績については特に気になるところだと思いますが、よいことばかり言う先生も要注意です。もちろん学校は受験者数を集めたいですから、教科書はこれを使います、カリキュラムは難関校に向けてこのようになっています、と説明することが多いです。しかし、お子さんがその教科書を使って力を伸ばすことができるのか、難関校カリキュラムにはフォローがあるのか、といった点は、難関校を目指すクラスに入る以上に重要なことです。
カリキュラムについていけないことはどのお子さんでも起こりうることです。全科目よい成績をおさめる優等生というのはそれほど多くありません。進学実績のみを目標にしている学校の場合、そういった生徒に対するフォローを手厚くしても、苦手意識がある生徒さんに対してのフォローをおろそかにする傾向がありますので、注意しながら慎重に質問を重ねましょう。
また、学校生活では教員の先生方以外に、職員の方も大きくかかわってきます。学校見学では、職員も参加していますので、職員にも詳しいカリキュラムなど授業内容以外で、コース制や制服などについて質問してみて、さっと答えてくれるようなら学校全体の意思疎通ができていると言えます。できるだけ快適に学校生活を送りたいですよね。そういった点も見学してくるとよいでしょう。
校長先生の受け答え・表情
校長先生というと、学校案内の最初に出てくるイメージですよね。その通り、校長先生は伝統を受け継ぐその学校の「顔」です。教員や職員をまとめ、生徒さんの学校生活が円滑なものになるように大所高所から目を配り、また、学校を広く知ってもらうために広報部長という役割を果たす、それが校長先生という存在です。
学校見学、説明会では最初に出てきて挨拶と学校の沿革について話をすることが多いのが校長先生ですが、その話しぶりと内容についてしっかり観察してください。広報部長であるならば、最初の挨拶からしてひきつけるものがあるはずです。下を向いて原稿を読んでいるだけでは聞いている方もがっかりですよね。
また、だらだらと学校の沿革を説明する場合も要注意です。はっきり言ってしまえば、それは学校案内のパンフレットを見れば出ている内容なのです。大切なのは、この校長先生のもとで伸び伸びとした学園生活が送れるだろうか、という印象を持つことができるかどうかです。大げさに言えば、「皆さん、ようこそ!」と学校見学に来た保護者やお子さんに対して歓迎しますよ、という姿勢を示すことができているかどうか、学校案内に書いていない学校の取り組みについて簡潔に説明することができているかどうか、それがポイントです。
ぜひ校長先生の話ぶりと内容をしっかり見て、安心して任せられるリーダーシップがありそうかどうかという判断をぜひしてください。そのために学校見学があるのですから。
生徒さんの学校生活における様子
日曜日に行われる学校見学ではお休みなので、生徒さんの学校生活の様子を見ることが難しいかもしれませんが、平日や土曜日などであれば、実際に授業の様子を教室の窓から見ることができます。その際の授業の活発度や生徒さんたちの表情をよく観察してみてください。
先生に対して生徒さんがおどおどしているクラスが目立つようであれば、先生と生徒さんたちの関係性に対して注意して見て、のちに個別相談などでぶつけてみてもいいでしょう。6年間という期間を共に過ごす先生と生徒さんの醸し出す雰囲気は非常に大切ですし、お互いに信頼関係があることが校風を作り出していくのです。
学校によっては、お昼休みにカフェテリアに案内してくれ、実際に生徒さんの話を聞くこともできますので、そういう機会がある場合はぜひインタビューしてみてください。思わぬ面白いホンネの話が聞けるかもしれません。
学校設備が使いやすいものであるか
ある女のお子さんの保護者の方の中には、女子校の見学に行くなら必ずトイレと校内の清掃状態をチェックしてくるという方がいらっしゃいました。女の子だから・・・というだけの理由ではなく、校内清掃、特に日常的に使うトイレがきれいに保たれているかどうかは、学校側が生徒に快適に学校生活を送ってほしいという意識を持っているかどうかを見極めることができるから、というのがその理由でした。
清掃が行き届いていない学校は、いわゆる「手抜き」をしています。それは、清掃をおこなう職員が怠慢だから、というよりも、学校全体がルーズだからということができます。手抜きが嵩じれば、授業に手を抜かれてしまう可能性も否定できません。このあたりのこともよく観察し、場合によっては個別相談で聞いてみて全くかまいません。
まとめ
学校見学・説明会は、これからわが子を託したいと思う保護者の方であればぜひ一度は足を運んでいただきたい行事です。それは、質問をぶつけることによって、形式的なものにとどまらない学校の本当の顔を見ることができるからです。
生徒さんの素顔を見たい、先生と生徒さんの関係を見たいという場合は、文化祭を見学に行くこともオススメします。保護者の方だけでいかれた場合、在校生の保護者の方にお話を聞いてみてもよいですね。また、お子さんの中には、文化祭に行ってその雰囲気が気に入って志望校にしたい、ということもよくあります。
学校見学・説明会では、教員や職員、そして何より校長先生の様子をしっかり観察してください。個別相談の場合、氏名を書かされることがあるので、あまり突っ込んで聞けないのでは、服装は紺色でなければいけないのでは・・・など、不安に思われる方も多いのですが、学校見学や個別相談が入試結果に関係することはまずありません。それよりも、不安を払しょくしたうえで入試に向かう方がよほど合理的です。服装についても、小学校のお受験と異なりTPOをわきまえた少しきちんとした格好であれば全く問題ありませんので、まずは足を運んでみてください。そして、わが子を伸ばしてくれる学校かどうか、安心して預けることができるかどうかという点についてしっかりチェックしてきてくださいね。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。