【文系理系ともに進学実績豊富で人気!】鴎友学園中学校の入試の国語の特徴を徹底解説!分析編その2

鴎友学園中学校は、東京都世田谷区の自然豊かな環境にある、中高一貫の女子校です。女子御三家を追う上位校として、近年その人気はますます高まっています。複数回入試(第1回・第2回)を実施していますが、特徴として挙げられるのが、すべての入試回に出願する受験生が多く、第一志望校として不動の地位を築きつつあるということです。

そんな鴎友学園中学校は、実はキリスト教の精神を基盤とした教育を行っています。無教会派なので宗教色がないと思われる方も多いのですが、「慈愛(あい)と誠実(まこと)と創造」を校訓として、思春期の女子学生に対して心の教育を行っているのです。また、リベラルアーツ教育やグローバル教育など、大学教育にも通ずる教育に力を入れていることも、高い人気を集める一つの要因となっています。

毎年東京大学や一橋大学をはじめとした国立難関校、早慶上智といった私立最難関校や医学部などに多くの合格実績を誇っており、「出口」の実績も十分。今後、ますます進路の広がりが期待されている学校です。文系・理系バランスよく合格者を輩出しているのも、進路選択の特徴だと言えるでしょう。

「どう生きるか」を考えさせる生活指導とともに、主体的・能動的な活動を重視した学習指導を両輪としたカリキュラムポリシーのもと、心身共に成長著しい中高6年間を支える体制ができている鴎友学園中学校は、今後も大きな飛躍が期待されています。

今回は、全人格的な教育を実践し、進化を遂げている人気の女子校・鴎友学園中学校について、2021年度の国語の入試出題を取り上げ、傾向やポイントを解説します。ぜひ特徴を押さえて、合格に向けた対策をしっかり行っていきましょう。

近年の出題傾向

概要

鴎友学園中学校の国語は、文学的文章の長文読解が1題、説明的文章の長文読解が1題、漢字の書き取りが1題で、長文読解問題中心の出題です。例年、取り上げられるテーマは非常に幅広いですが、オーソドックスな読みやすい文章が素材文として取り上げられることが多く、受験勉強をする中で、受験生なら何度も教材や模試などで触れてきたテーマが取り上げられる傾向です。したがって、出題される文章そのものが読みにくい、ということはないと言って良いでしょう。

鴎友学園中学校の国語のキーワード

特徴を挙げるとすると、「さまざまな世界観」がキーワードだと言えます。私たちが日常生活を送っているスタンダードな社会にとどまらず、さまざまな世界、シチュエーションを前提とした文章が頻出です。

例えば、2018年度の第1回入試では、ファンタジー小説が題材とされました。主人公がトラネコから「世界中の本を集めて切り刻んでいる男がいる。本を助けてほしい」と頼まれるところから物語が始まります。物語文ですが、違いを比較させる問題が出題されました。

また、2017年度の第1回入試では、障がいを抱えた少年が主人公の物語文が出題されました。中学受験生の中にも、さまざまな事情を抱えたお子さんは少なくありません。そんな中で、自分と事情が異なる主人公の立場、気持ちに立って読解ができるかどうかが決め手となっています。

素材文読解のポイント

文章自体は比較的読みやすく、共感できるかどうかがポイントになっていると言えるでしょう。受験生とは立場や事情が異なる主人公、登場人物が出てくる文章や、さまざまな国・時代を題材とした文章、空想の世界で進む物語など、出題される物語文の世界観は非常に多岐にわたります。「理解できない」では設問に答えることはできませんから、どのような文章が出題されたとしても理解できる柔軟な国語力が求められると言えるでしょう。海外の作品も出題されることがあるので、そうした対策も必要です。

説明的文章は、論説文の出題が多いです。物語文に比べると少し文章の難度は上がります。ただし、受験生の理解の範疇外というわけではなく、小学校6年生でも十分に理解し、設問に挑める出題となっているので、堅めの論説文に多く触れ、「これはどういうことか」自分で自分に説明できるような対策をすると良いでしょう。

2021年度の出題

大問1:文学的文章(物語文)

佐藤まどか「アドリブ」より

鴎友学園中学校の国語の入試問題でひときわ目立つ長文が、文学的文章(物語文)の出題です。

内容としては、有名なフルート奏者に指導してもらえる「マスタークラス」に参加した主人公が、自分の演奏の欠点に気づき、仲間とアンサンブルで演奏する楽しさを味わうことができるようになり、あらためてフルート演奏への情熱を燃やしていく、というものです。なにか習い事などに集中した経験がある受験生であれば読みにくいということはありません。

文章が長いですが、大問2で出題される論説文の問題のほうが難易度が高いことから、この大問1の4つの小問は1つも落とせないという点で、確実に得点しなければならない設問ばかりです。そのため、難易度は決して低くありませんでした。

小問数は4問、すべて記述式問題です。つまり、合否を分けるのも記述式もんだだということです。記号選択肢問題と異なり、答えは1つではないので、それだけに求められている要素をいかに的確に読み取り、構成を考えて表現するという高度な記述力が必要だと言えるでしょう。

また、字数制限がなく、2~3行の解答欄(枠)の中に解答を書いていく形式であるため、相当な量の記述をしなければなりません。〇字以内で、という字数制限がある場合はかくべきことの見当がつけやすいのですが、制限がないだけに、ただ書き始めると読み手にわかるように書くのは難しいでしょう。

内容をとらえ、書くために十分なスペースが与えられているだけに、「書き過ぎ」には注意が必要です。字数制限がないとは言っても、求められているのは「聞かれていることに答えること」ですから、的外れなことを長々書いても時間ばかりとられて点数を取ることはできません。

必要十分な内容を素材文の中から確実に抽出できるかどうか、が大問1における差をつけるポイントだと言えるでしょう。何を聞かれているのか、その内容は文章のどこに書いてあってどう読み取れるのか、さらにはその設問で問われていることを的確に理解し、それにこたえていくという姿勢が重要です。

書き過ぎに注意と前述しましたが、「書かなすぎ」もいけません。字数制限はないものの、2~3行という解答欄があるわけですから、最低でも8割、できれば9割以上書くことができなければ、問われていることに必要十分に答えられているとは言えないでしょう。過去問などで、そうした解答欄の出題では、どれくらいの字数は書かなければいけないか、という見当をつける訓練も必要だと言えます。

制限時間が迫る中で冷静に、必要なことだけ書くというのは、決して易しいことではありません。つまり、この物語文の設問に確実に答えられるかが、受験生の差を大きく広げる出題だと言えるでしょう。どれだけ記述対策を行ってきたか、長文を一読して重要な部分を理解できるかどうかが、合否を分けるポイントです。

大問2:説明的文章(論説文)

稲垣栄洋「はずれ者が進化をつくる 生き物をめぐる個性の秘密」

稲垣栄洋さんの文章は、近年中学入試の国語で頻出と言っても過言ではありません。さまざまな中学校の入試問題の素材として用いられているのは、それだけ物事の本質を突く文章を、受験生たちに呼んでもらいたい、出題する中学校のメッセージだとも言えるでしょう。

内容としては、自然界には「多様性」しかない、ということ、そしてその「多様性」が生き物の進化をもたらしたのだ、ということを説明するというものです。

こうした「生物の進化」についての出題は、鴎友学園中学校ならではと言えるでしょう。というのも、鴎友学園は理科教育に非常に力を入れており、物理・化学・生物・地学の理科4分野それぞれに実験室を設置しているなど、実験教育に注力しています。また、農業(植物栽培)も必須のカリキュラムとなっており、敷地内に畑を作って実際に生徒が植物の世話をし、収穫も行っています。

こうした学校のアドミッションポリシーが色濃く出るのが、鴎友学園中学校の国語の入試問題では、論説文の出題という形です。もちろん、理科だけに偏っているわけではありません。例年さまざまな題材の文章を出題しています。ただし、そこで問われるのは「物事の本質を考え抜いたことがありますか。考え抜いてほしい」ということです。これが、学校からのメッセージだと言えるでしょう。

ただし、問われるのは本質ですが、文章そのものは決して難しくはなく、むしろ読みやすいものがチョイスされています。そういう意味では、「読み」の段階では受験生の間でそれほど差がつくとは言えません。問題なのは、設問にいかに答えるか、内容の的確な把握と必要十分な表現力、というわけです。

設問はたった2問。いずれも記述式問題です。いずれも傍線部について説明させるという問題であり、1問は字数制限がなく2行の解答欄に解答を書くもの、もう1問は120字の字数制限がある出題です。

論説文で何よりも大切なのは「客観的な読み」。つまり、文章の中に書いてあることがすべてなのです。言い換え表現で筆者が強調していること、筆者の考え、対立する考え方、そして要旨といったことを、文章に書かれていることだけから導き出さなければなりません。ここで主観が入ってしまい「自分はこう思う」という思考回路になった瞬間、論説文の読解は失敗に終わってしまいますので、以下に最後まで文章に書かれている内容に忠実に読み進み、解答を作成できたかがポイントだったと言えるでしょう。

大問3:説明的文章(論説文)

漢字5問は、すべて書き取り。具体的な出題は以下の通りです。

「スイソク」の域を出ない/「オウロ」はバスを利用する/トキは「キショウ」動物だ/それは「シュウチ」の事実だ/一度勝ったからといって「ユダンタイテキ」だ

中学受験の漢字の出題という点からすると、標準的レベルだと言えるでしょう。日々の漢字練習を確実に行っていれば、それほど難しくはありません。ただし、同音異義語や同訓異字には注意が必要ですから、標準レベルとは言え、備えとしては高い語彙力を養っておく必要があるでしょう。日々の漢字練習の積み重ねが問われる出題です。この傾向は例年続いているので、着実に対策を行っていきましょう。

まとめ~高得点をとるカギ

鴎友学園中学校の国語で高得点を取るカギは、以下の4つです。

  1. 要点を読み取るためのスピードと正確さ、読み切る力
  2. 文章中の根拠から外れた読解はNG
  3. 字数制限のない記述式問題の対策は必須
  4. 漢字やことばの高度な運用能力

鴎友学園中学校の国語は45分で100点、小問数の少なさからすると十分対応できそうに思えるかもしれません。しかし、素材文の文章量は多く、設問は漢字以外オール記述ですから、すばやく正確に読み、確実に解答を作り続けなければいけないので、余裕がある試験だとは決して言えないでしょう。

問題数が少ないからこそ、1問の不正解が命取りになるので、実際のところは大変厳しい入試です。また、受験生はみな記述対策をしっかり行ってきていますから、書き負けてしまうと大きく差がついてしまうので注意が必要です。

また、文章量の多さに圧倒されてしまうと、必要以上に難しくとらえてしまい、正解できないという落とし穴があるのも鴎友学園中学校の国語の特徴です。決して奇をてらった出題はされておらず、文章を素直に正確に読むことができれば、決して難易度が高すぎるというわけではありません。

大切なのは、出題されている文章に忠実に読み進み、ポイントとなっている部分を素早く押さえることです。それができれば、合格者平均点に大きく近づくことができ、合格を手にする可能性が高くなるでしょう。そのためには、普段の受験勉強の中で、いかに一つひとつの文章を丁寧に読み、記述式問題対策を行うことができるか、が重要です。

こうした傾向に合わせた対策は、これからでも十分間に合います。方向性をブレさせずに準備を進めていきましょう。次回の記事では、鴎友学園中学校の国語の入試について、攻略法を解説します。ぜひ参考にしてくださいね。

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参考

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。