中学受験というと、やはり受験算数に目が行きますよね。進度も速く、独特の学習が必要になりますから、塾の学習や家庭学習でもまずは算数!となるのも当然だと思います。
ですが、算数の問題を解いていて、こう思うことはありませんか?「問題の意味がわからない」「何を求めたらいいのか混乱する」「図が描けない」・・・。これは、問題を解くためのきっかけをつかめないから起こることです。また、模試やテストで「あれ?」と思うようなミスをすることはありませんか?たとえば、「Aさんの速さを求めなさい」と設問には書いているのに、なぜかBさんの速さをも求めて解答欄に書いてしまった、というようなことです。
このような状況がもし続いているようなら、問題は算数の解き方の理解以前に、「国語力」を見直す必要があるかもしれません。「国語力」と一口にいっても、文章を正確に読む力、設問を読んで聞かれていることに答える力、さらにそれを書いて表現する力、など様々な力が必要です。どうしても国語の勉強は後回し、という毎日になっていないでしょうか。
国語力は全ての教科の基本です。国語力があることを前提に入試問題も、模試の問題も作られています。ですから、国語力がある受験生から順に合格していく、といっても過言ではないかもしれません。では、そのような中学受験にとってとてもたいせつな「国語力」はどのように身につけていけばいいのでしょうか。
今回は、「国語力」を養成するための基礎中の基礎、ですがおろそかにされがちな漢字やことば(語彙力)の勉強法について書いていきたいと思います。ただ目の前の課題をやるだけでは漢字やことばの力を身につけることはできません。覚えやすい、また忘れにくい勉強法があるのです。どうしても計算練習より軽視されがちな漢字やことばの練習ですが、この記事では、効率よく、「身につく」勉強法をご紹介します。
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まずは1日も欠かさないよう、練習を習慣化しよう
たとえばサピックスにお通いの受験生の方は、算数で「基礎トレ」というプリントを自宅でやりますよね。1週間分ためてやってしまっていると、速く正確な計算力を身につけることはできません。
漢字やことばの勉強も同じです。お通いの塾によって教材はさまざまだと思いますが、まず大切なことは「練習を習慣化する」ことです。長い時間漢字やことばの練習を続ける必要はありません。毎日15分から20分、長くても30分程度で結構です。
これまであまり練習をしてこなかった受験生にとっては、すぐに習慣化するのは難しいかもしれません。ですが、習慣化するのは新学年が始まる今こそチャンスです。まずは1週間頑張って継続してみてください。毎日やらないと何か物足りない、という土台を作ることができます。毎日ご飯をたべたりお風呂に入ったりするのと同じように「毎日やって当たり前」という感覚で、漢字やことばの練習ができるように習慣化していきましょう。
ただやみくもに練習しても身にはつかない
漢字やことばの練習は、ただやみくもに大量にやればいいというものではありません。そのため、1日の練習時間はある程度区切ってやることが必要です。
初めて出てきた漢字や、一度で書けなかった漢字、模試などで間違えた漢字は、やはり何回も書いてみないと正確に身につけることはできません。ですが、ここで陥りやすい間違ったやり方で練習すると、正確どころか間違って覚えてしまうので気をつけましょう。
それは、1回の練習で同じ漢字を「書きすぎる」のはかえって逆効果になってしまう、ということです。多くても1回の練習のときには、5から10回程度を目安に、練習量を決めて書く練習をするようにしましょう。頑張って覚えようと20回も30回も練習したとしても、だんだん飽きてきてしまい、「やっつけ勉強」で終わってしまい、結局身につかない、ということになってしまいます。ただやみくもに同じ漢字を一度に大量に書いても効果はありません。
また、繰り返し書いている間になぜか漢字の形が変わってしまうことがあります。その結果、漢字を間違って覚えてしまい、それが正しいと思い込んでしまうケースがよくあります。棒が1本足りない、点を打つべきなのに打っていない、というような間違いをしたことはありませんか?漢字は形を覚えなくてはいけませんが、一度間違えて覚えてしまうと、何度も同じ間違いを繰り返すことになるので気をつけましょう。
特に低学年のお子さんは注意が必要です。最初は張り切って勉強を始めるものの、頑張りすぎて「この字はこう」と思い込んでしまい、間違ったままの漢字をさらに練習し続けてしまうことが多いのです。
漢字やことばの練習はお子さん一人でもできるだろう、と思われがちですが、「正しく書けているかどうか(間違えて覚えていないかどうか)」「雑に書いていないか」「集中して書けているかどうか」を、親御さんがこまめにチェックしてあげてください。特に女のお子さんに多いのですが、間違いを指摘されると、×をつけるのがいやで、決して正しく書き直して「覚えた気」になってしまうお子さんは非常に多いです。一度間違って身につけてしまった基礎を直すのはとても大変です。最初が肝心です。
自分で調べ、口に出し、手を動かすことを面倒くさがらない
「覚えられない」=読んでいるだけになっていませんか?
漢字やことばに限ったことではないのですが、「覚えるのが苦手で・・・」というお子さんは、教科書やノートを「読んだ」だけで、勉強した、覚えた気になってその日の勉強を終わらせてしまっていることが非常に多いです。お子さんの勉強のやり方をチェックされているでしょうか。
ほんの1,2分すきま時間をつかって覚えているかどうか確認する、というようなときはそれでも構いません。ノートを広げて書く余裕がないですから。ですが、毎日の習慣にしている漢字やことばの勉強時間に取り組むときは、五感を使って勉強することがとても大切です。
漢字やことばの練習をするときには、知らないものは「調べて自分の目で見る」「実際に手を動かして書く」「漢字の場合は読み方も自分の口で発音してみる」「その音を自分の耳で聞く」というステップを踏むようにしましょう。そして、その際にとても大切なことは、「その漢字やことばの意味を考えて」覚えることです。
特に「実際に手を動かして書く」ことはとても重要です。もちろん、単に機械的に手を動かしていただけでは、「写している」だけなので、なかなか覚えることはできません。必ず漢字やことばの「読み方や意味を考えて」書くようにしましょう。そうでないと、漢字は書けるけど読み方がわかっていない、どういう意味なのかわからないままで、実際に使うときに正確なものを自分で選んで書くということができなくなってしまいます。学年が高くなるにつれて同音異義語や同訓異字が出てきますが、まさに「書けるけど読めない」「意味が分からないので適当に書いてしまう」ということになってしまいます。
この「手を動かす」ことは、漢字やことばの練習に限らず、すべての教科の勉強でもとても大切なことです。たとえば算数の問題でも、図形問題では「手を使って」わかっている条件を図形に書き込み、補助線を引いてみて、その図を見ながら考えていくというステップが重要です。文章題でも、自分で線分図などを書いて問題文の条件を整理しないと正解することは難しいでしょう。「手を使う」ことはそれだけ勉強において大切なことなのです。実際に手を使わないと、次の手が見つからず、結局何を求めたらいいのかわからなくなってしまい、正解することはできません。
国語のなかでも、漢字やことばの練習以外、つまり読解問題や記述問題でも同じことが言えます。問題文を読みながら、大切だと思う部分には線を引いたり、どの部分が筆者の意見なのか、どの部分で登場人物の心情が変化しているか、などをメモしたり印をつけたりしながら読み進むことが大切です。そのことが、設問に答えるための大きな「ヒント」になってくれるからです。
中学受験の国語の文章は非常に長いものが多いです。入試問題では10ページを超える文章が出題されることも珍しくありません。その文章に何も印をつけずに内容を一度読んだだけで覚えるなどということはまず無理です。そのような長い、内容も難しい文章を読むときには、ことばの切れ目や意味の切れ目、段落のつながりを意識しながら読み進めていかなければいけません。ですから、書き込むべきことはたくさんあります。手を実際に動かしながら文章や設問を読むことが求められます。
読解法を身につけるために必要なことについては別の記事で書きますので、漢字やことばの勉強に戻りますが、漢字やことばを覚えるときももちろん同じように「手を動かす」ことはとても大切です。そして、手を動かしながら口に出してみて読むということを同時にすることによって、「書き」「読み」「意味」を同時に勉強することになるので、覚えやすいですし、定着もしやすいのです。
ぜひ、お子さんの漢字やことばの練習の様子を観察してみてください。ただ黙々と何度も書いているだけ、という勉強をしているな、と思ったら、ぜひ手を使うこと、口に出すこと、意味が分からなければ辞書を引いて調べることを習慣づけるようにしましょう。最初は一緒にやってあげるとお子さんも一人でできるようになります。こういう勉強のやり方をクセにできると、他の教科の成績も上がってきます。ぜひやってみてください。
漢字やことばは何かと関連付けて覚えると身につきやすい
最近は、社会でも漢字指定が増えてきています。難関校に限らず、中堅校でも同じような傾向がみられます。それはなぜでしょうか?ズバリ、「差がつく」からです。社会で出てくる漢字指定の問題は、固有名詞、たとえば人の名前や地名など、ことばとして「聞いたらわかる」ものがほとんどです。ひらがなやカタカナで書けたとしても、本当に意味を分かっているのかがはっきりしないので、本当に理解しているかどうかを見るために漢字指定が増えてきています。
たとえば、「明治政府」「富国強兵」「殖産興業」という3つの単語をバラバラに覚えても、つながりがわからなくなってしまいます。「明治政府は、国の力を強くするために、富国強兵や殖産興業という政策をすすめた」と3つの単語を関連付けて覚えた方が、1つの文の中で、そのことばと意味、漢字もまとめてを覚えられることができ、忘れにくくもなります。また、文で書いてみると、記述問題対策にもなります。親御さんにも、単語をバラバラに覚えるより、関連付けて1つのストーリーを作ったほうが覚えやすかったというご経験があるのではないでしょうか。
漢字やことばの意味を知ると覚えやすく、忘れにくい
漢字やことばが指し示す意味を知らないでただやみくもに覚えても、身につくものではありません。覚えるべきものに何らかの「意味」をつけると、覚えやすくなり、忘れなくなります。また、他の漢字やことばにも応用がききます。たとえば、漢字であれば、「へん」「つくり」「かんむり」など、部首を意識すると覚えやすく定着しやすいです。たとえば、「海」という漢字なら、「さんずい」ですから、「水」に関連したことばであるということがわかりますね。そのように意識して勉強すると、忘れにくくなりますし、おなじように「湖」のように「さんずい」がついた漢字が出てきたら、「水」に関係するグループだな、と考えられるようになります。
文を意識して練習しよう
漢字やことばの問題集を使って勉強すると、どうしても問題集のつくり上、1つ1つの漢字やことばの暗記に終始してしまいがちです。そうすると、覚えたと思ってもすぐに忘れる、また覚える、また忘れる、の繰り返しになってしまうケースが多くみられます。
漢字やことばの練習をするときには、単に問題集の「単語」を何度も書くのではなく、それを使った「文」を意識して覚えることが大切です。「文」を意識して覚えることによって、たとえば同音異義語や同訓異字のような難しい熟語などが出てきても、文脈を読みとって、どの漢字を使うのが正しいのか判断することができるようになります。このような判断が瞬時にできるようになると、さらに点数をとることができるようになりますし、「使いこなせる」ようになっているというレベルまで持っていくことができています。
文章は、「単語→文→段落→文章」という仕組みになっていますから、文章を読んだときに漢字やことばが文章中に出てくると、きちんと知識をひもづけることができます。そのように文章を読んだときに知識の確認ができ、さらに定着が進むのです。そして、文章の中で意味まで考えてひもづけができるので、漢字やことばの形だけでなく意味も定着させることができ、読める文章が飛躍的に増えていきます。特に熟語や慣用句などは文章によく出てきますから、このように文を意識して勉強することが点数にも直結します。
このようなことから、漢字やことばは、問題集に出てきたものを単に機械的に何度も書くという勉強、単語だけを覚える勉強ではなく、その漢字やことばが使われている文、文章をしっかり読めるようになるまで覚えることが大切です。
例文を書き下して練習しよう
漢字やことばの問題集には、必ず例文がついていると思います。漢字やことばを覚えるには、この「例文」ごと理解して覚えることが、定着させるためにはとても効果的な勉強法です。
漢字やことばで点数がとれない、というお子さんの勉強の仕方をよく見てください。漢字だけ、ことばだけをノートに書き連ねていませんか?先ほども書きましたが、「文」を意識して勉強しないと、覚えられませんし、定着させることが難しいのです。ですから、もし漢字だけ、ことばだけを書いているようなら、「文」を意識させるように仕向けてみまし
難しいことをする必要はありません。問題集にでている例文を実際に書き下して、それを口に出して読むことを習慣づければよいのです。もちろん、知らないものが出てきたときは辞書で調べることも大切です。これも、ただ写しているだけでは意味がありません。5回程度書いたところで、漢字やことばの意味を実際に口に出して説明できるか確認してあげてください。文の意味までしっかりつかめていたら、国語力は着実にアップしています。
まとめ~学校の国語の教科書もおろそかにしないで勉強を
塾にお通いの場合には、どうしても塾のテキストを中心に勉強することになりますよね。学校の国語の授業では、1つの文章を時間をかけて学習しますよね。ですから、進度はやはり塾の方が速いです。学校の進度に合わせているだけでは今の中学入試を突破するのは難しいでしょう。
ですが、漢字やことばに関しては、学校の教科書を活用すべきです。学校でも漢字テストはありますから、それで100点取れるように練習することは大切ですし、それ以外にも、学校の教科書では、単元(1つの文章ごと)のあとに、その単元の「新出漢字」がまとめられています。それをどんどん自分で進めると、その学年の漢字を一足早く覚えることができます。
教科書の新出漢字を、文と結びつけて練習し、そのあとで教科書の本文を読む、という練習をしてみてください。覚えた漢字やことばをその場で理解できているかがわかります。学校でもそれをクセにして、塾でも同じように勉強をすると、漢字やことばで困ることはなくなり、「国語力」の基礎ができてきます。
「国語力」は全ての教科の基本になる大切な力です。まだまだ時間はあります。今のお子さんの漢字やことばの力を一度チェックしてみましょう。場合によっては、前の学年の教材に戻って見ることも必要です。塾の学年が変わる今から春休みが漢字やことばの力を見直し、立て直すチャンスです。ぜひ、勉強法の見直しも含めて、「国語力」の基礎をしっかり固めましょう。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。