【中学受験】子どもの集中力が続かない原因3つとその克服法

中学受験を来年に控えた新・受験生の皆さんや、これから中学受験のための勉強を始める皆さんをお持ちのご家庭からよくご相談を受けることのひとつに、「うちの子、勉強に集中できないんです「集中力が続かなくて・・・」という、集中力に関するものがあります。中には、まだ小学校低学年で、そろそろ中学受験を考えてみようか、というご家庭からもそのようなご相談を受けることがあります。

親御さんからみれば、お子さんには、勉強するときは勉強に集中してほしいと思うのは当然だと思います。また、できるだけ長く集中して、今日やらなければいけない受験勉強や学校の宿題を早く終わらせてほしいとも思うでしょう。ですが、現実はなかなか思う通りに行かないことが多いと思います。

勉強に集中してほしいのになかなか取りかかろうとしない、ようやく取りかかったと思ったらもう集中していない、そのような状態ではいつまでたっても宿題が終わらない、とお子さんの集中力の低さにお悩みの親御さんはたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。特に、受験を控えているお子さんをお持ちの親御さんにとっては大きな悩みですよね。

ですが、このような子どもの勉強に対する集中力の低下は、小学生に限らず多く見られます。しかも近年ますます増えているのが現状です。では、なぜ集中力が身につかないのでしょう。また、集中力が持続しないのでしょうか。今回は、子どもの集中力が続かない理由と、克服法について書いていきたいと思います。

集中力が持続しない原因その1

まず、最も親御さんが頭を悩ませていらっしゃるのではないかと思いますが、近年、子どもの勉強に対する集中力が低下してきている原因として、「スマートフォンやゲームの普及」は非常に大きなものです。

ゲームはずいぶん前からありましたし、ゲームをやっているときのお子さんの姿を見ると、とても集中しているように見えるのではないでしょうか。ゲームはもともと子どもが熱中しやすいように設計されて作られていますから、つい夢中になってしまうのは当然のことです。気づけば何時間もゲーム三昧、というお子さんはとても多いと思います。時間がかかるように作られているゲームであれば、そちらにどうしても意識がいってしまいますよね。ですが、いくらゲームに熱中できていたとしても、時間制限なくずっとやっているのは、「息抜き」ではなく「惰性」になってしまっています。それは決して勉強の集中力にはつながりません。

また、スマートフォンはいまや大人にとっても仕事上でも欠かせない存在になっていますが、最近では低学年の子どもたちの中にもスマートフォンを持っているというケースもよく見られます。何に使っているのでしょうか?スマートフォンは友達同士のコミュニケーションツールとして利用されることが多いわけですが、その手軽さゆえに、たいした用事があるわけでもないのに連絡を取り合ったり、スタンプを送り合うなど、本来の「必要なときに連絡を取る」という目的以外に利用している時間が長くなってきています。

たとえば、小学生でもLINEなどでグループを作って夜遅くでもいつまでもスマートフォンをいじっている子どもが増えています。しかも、すぐに連絡がとれるがために、「早く返事をしないといけない」という間違った固定観念にとらわれてしまい、片時も手放せないという子もいるほどです。大人も活用しているだけに、「なぜ使っちゃいけないの」「返事しないと仲間外れにされてしまう」などと言われると返答に困ってしまうのではないでしょうか。

最初は「息抜きも必要だから」と買い与えたゲームや、「みんな持っているし、緊急時に連絡を取るのに必要だから持たせてもよいか」と思って持たせたスマートフォンに、子どもたちは多くの時間をとられています。

何よりも問題なのは、ゲームにしろスマートフォンにしろ、時間を決めて使う、何時以降は使わない、などという制限なく、また何か目的があるわけでもなくダラダラと続けてしまっているということです。楽しいと感じることや、興味の対象が変化していることもあるとは思いますが、この2つは、大人でも手放せなくなる人がいるくらい中毒性の高いものですから、まだ幼い小学生にとっては格好のおもちゃになってしまっています。どちらも熱中していたとしても、集中しているというのとは違います

ダラダラと続けているだけでただ時間がたってしまっているという状況だと、勉強に限らず日々の生活で取り組むすべてのことに対する集中力が奪われる原因になってしまいます。

集中力が持続しない原因その2

勉強をするときの「環境」に問題がある場合も、勉強に対する集中力を奪ってしまいます。最初に書いたゲームやスマーフォンを手元に置いたまま、あるいは視界に入る状態で勉強をすることを許していないでしょうか。もしゲームやスマートフォンをしてよい時間を決めたとしても、目の前に置いたまま勉強していては、「勉強」と「勉強以外」の時間の区別がつかなくなり、結局気になってしまって勉強に集中できなくなるのも無理はないことです。

ゲームやスマートフォン以外にも、興味を持ちそうなものが近くにあれば、子どもは興味を抑えきれず、気が散って勉強に集中するどころではなくなってしまいます。

もしお子さんに個室を与えている場合は特に注意が必要です。「勉強するから」と自分の部屋にこもっていたと思ったらなかなか部屋から出てこず、様子を見に行くと勉強どころかマンガや勝手に持ち込んだゲームをやっていた、というご経験はないでしょうか。

常に監視をしていては、お子さんの自主性ややる気を奪ってしまいます。ですが、ある程度目の届くところで学習する時間を確保するということも必要です。

集中力が持続しない原因その3

先ほどは勉強する環境が集中力を持続させることを害することについて言及しました。もう一つ、集中力が持続しない原因としては、部屋などの環境以外に、「生活リズム」ができていないことが挙げられます。

たとえば、睡眠時間が短い子どもは勉強に集中できる時間も短いといわれています。これは睡眠時に分泌されるセロトニンというホルモンが影響しています。睡眠時間がが不足すると、このセロトニンが減少し、疲れやすく集中できなくなるといわれています。

また、食事をとる時間が一定でなかったり、栄養バランスが偏っていないと、成長期の子どもは体力をつけることができません。体力がないということは、長時間の勉強に耐えられるために必要な「脳の体力」もつかないということです。この「脳の体力」こそが集中力の源です。

「脳の体力」を身につけるために必要なのは食事だけではありません。勉強も目的意識や「今日はここまでやる」という目標がなければ、惰性でただ時間がたつのを待つだけになってしまいます。たとえば、集中して勉強して、今日やらなければならない分が終わったのに、「早く終わったんだからもう少しやりなさい」と勉強時間延ばしをしていませんか

子どもは「ここまではやろう」という目標があると、集中して勉強することができますが、「終わったのに量を増やされた」と思うと、一気にやる気を失ってしまいます。もし「早く終わったら好きなことをしていいよ」と約束していたとしたらなおさらです。親御さんと約束したことを頑張ってやり切った、それなのに勉強する量、つまり勉強時間を延ばされると、お子さんは「親御さんが約束を破った」と思うでしょう。

どうしてもできるだけたくさん勉強させたい、と思うと親御さんは最初は集中してやったらごほうびに好きなことをしていいよ、と言って始めさせ、終わったとなるとさらに課題を課したくなるものです。ですが、それはお子さんを勉強から遠ざけてしまうことにもつながり、ひいては「約束してもどうせ破られるから」と、時間がたつのを待つようになり、集中力を書くようになってしまいます。

子どもの集中力を高めるためにできることとは?

大切なのは「勉強するための環境づくり」

お子さんの集中力を持続させるために親御さんができることとして最も大切なことは、お子さんが集中して勉強することができる「環境づくり」をすることです。これは小学生のお子さんにはまずできません。

そのためには、まず「勉強に集中するスペース」を作ることが大切です。これは、個室でなくてもいいのです。むしろ、小学生のお子さんの場合、ある程度勉強している姿勢を親御さんが見守ることが必要です。難関校に合格するお子さんは、リビングの一角に勉強机を置き、親御さんの目の届くところで「今日やるべきこと」を緊張感をもってやるというケースが結構多いのです。もし集中していない場合は、親御さんは怒るのではなく、「何分考えても分からなければ持っておいで」とあらかじめ決めておくなど、常に見守っているよ、ということをお子さんに伝えましょう。

また、お子さんの気が散りそうなものは、勉強するスペースには置かないようにしましょう。これは、「勉強する時間」と「好きなことをする時間」を区別し、生活時間にメリハリをつけるためです。ここでも、やはり親御さんの声かけやある程度の管理するなどのサポートは必要です。理想的なのは自分から机に向かってくれることですが、小学生ではなかなかそれを自分で習慣づけることは難しいものです。

お子さんと一緒にスケジュールをたてる

お子さんが自分から机に向かうように仕向けるには、無理やり座らせるのではなく、親御さんとお子さんでよく話し合い、1日のスケジュールを大まかでよいので決めておくことをオススメします。「勉強する時間」と「それ以外のことをする時間」が区別できるように簡単なスケジュール表を作ってもよいでしょう。

ガチガチに1日の行動を縛ってしまうとかえってお子さんのやる気や集中力をそいでしまいますので、スケジュールを組み立てるときには「予備時間」を設けるようにして、ゆとりを持たせた方が実行に移しやすいです。学校に行く時間、塾に行く時間など、家にいない時間をまず区切り、そのうえで1日にどれくらいの時間が残るか見えるようにしてみましょう。そして、食事や睡眠、お風呂などの時間はなるべく一定になるように決めておきます。それ以外の時間が自宅で勉強する時間と、趣味など好きなことをする時間ということになりますね。

その日に塾があるかどうか、いつまでにどの科目の宿題をやっておくのが良いのかという視点から「勉強する時間」を決めておきましょう。同時に「勉強以外のことをしてよい時間」を決めるのです。これは受験までの期間がどれくらいあるか、学年によって変わるかもしれませんが、ゲームの時間は1時間まで、などとはっきりしたラインを決めておきましょう。

なかなか集中力が続かない、という場合は、続けて同じことをするようにスケジュールを立てるのではなく、少し短めの時間で組み立てるのもよいでしょう。大切なのは、「メリハリをつけること」です。一度の勉強時間もあまり長すぎると集中力が切れ、メリハリが失われます。勉強時間をお子さんの集中が持続する時間とのバランスを考えて設定し、その時間にやるべき勉強が終わったら、「もう少し」と延ばすのではなく、一度気分転換の時間をはさんでまた勉強するというサイクルを作るようにしましょう。お子さんも「これだけ勉強する」と約束し、親御さんも「勉強をきちんと終えたら無理やり延ばさない」と約束して、お互いにそれを守るようにすれば、信頼感も増し、集中力もついてきます

体力をつけるためのサポートをする

いくら勉強させたいからといっても、睡眠時間を削ることはオススメできません。中学受験は成長期と重なりますから、適度な睡眠時間をとることは体の体力だけでなく脳の体力をつける、つまり集中力を持続させる力をつけるためにとても重要なことです。スケジュールを立てる際にも、睡眠時間は削らないようにしておきましょう。

また、体力をつけるためには成長期に必要な栄養をきちんと取ることがとても重要です。最近は学校に行く直前まで寝ていて、朝ご飯を食べずに学校に行き、全校集会で貧血を起こして倒れるお子さんも増えています。睡眠時間ももちろん大切ですが、朝、昼、晩ときちんと三食食べることも集中力を持続させるために必要なことです。

ご飯やパン、麺類などの炭水化物は脳のエネルギー源になりますから、脳の体力をつけるためにも必要です。体を作るたんぱく質、野菜など、バランスよく食事をとることを重視しましょう。

まとめ

中学受験に必要なのは「体の体力」と「脳の体力」です。そのバランスも大切です。そのために必要なサポートをしっかりしてあげてください。環境と栄養、睡眠時間の確保がポイントです。

中学受験に向けた勉強は長丁場です。そして学年に応じて学習する内容は深く難しくなっていきます。そこで集中力を欠いてしまうと、難問はおろか基礎力をつけることも難しくなってしまいます。

難しいことをする必要はありません。規則正しい生活と、勉強とそれ以外の時間のメリハリをしっかりつけられるように環境を整えて、親御さんはぜひ見守ってあげてください。もしお子さんが約束を破ったときはある程度厳しく注意することも必要ですが、そこに「なんで勉強できないの」「勉強時間が足りない」などという主観を入れて叱るのではなく、「親子の約束を破ったこと」についてお子さん自身に考えさせるように注意することがポイントです。

なかなか集中して勉強しない、集中力が持続しない、というお悩みを持っていらっしゃる親御さんは多いと思います。ぜひ一緒に考えるときは考え、あとはサポートに徹してください。どうしてもお子さんにこれもやらせたい、あれもやらせたいと思うかもしれませんが、実際に勉強するのはお子さんであって、親御さんができるのは「プロデュース」です。ぜひ「名プロデューサー」になって、お子さんの受験勉強をサポートしてあげてください。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。