【中学受験】私立中学校の適性検査型入試について知っておこう

2010年を皮切りに、年々増えてきているのが、私立中学校の「適性検査型入試」です。現在も適性検査型入試を新設する中学校が増え、首都圏ではすでに100校を超える中学校が適性検査型入試を実施してきているという実績があります。

では、なぜ私立中学校の入試で適性検査型入試が増え続けているのでしょうか。近年、従来型の4教科入試だけでなく、2教科入試、2教科・4教科選択型の入試、算数1科目入試、英語を導入する入試など、入試の形式は様々です。また、午後入試を取り入れたり複数回入試をおこなう中学校も珍しくなくなってきました。

その中で特に注目を集めているのが適性検査型入試です。本来は、公立中高一貫校が始めた適性検査ですが、従来の4教科入試とは異なり、適性検査の種類によって、4教科の基礎基本を今まで見たことがないような形式や、グラフや図表などを問題文にふんだんに盛り込んで試行錯誤させる、というもので、中学受験界に衝撃を与えました。

2020年の大学入試改革において、大学入試の形式が変わるであろうこと、求められる力がはっきりと打ち出されたことにより、まずは公立中高一貫校でおこなわれた適性検査ですが、公立中高一貫校の大学進学実績が非常に良かったということもあいまって、一気に注目を集めたのです。そこで、私立中学校も入試で適性検査型を取り入れ、これまでにない聞き方をし、受験生に試行錯誤させる入試をおこなうことになったという経緯があります。

では、適性検査型入試とはどのようなものなのでしょうか。今回は、公立中高一貫校の適性検査や大学進学実績などもふまえて、私立中学校の適性検査型入試について考えてみたいと思います。

適性検査と大学進学実績の関係性を考える

公立中高一貫校は、公立であることから、学習指導要領に従わなければならず、また、過度な競争、つまり受験戦争と言われるような状況にならないということが設立の際の前提条件です。そのため、いわゆる「入学試験」、つまり生徒を選抜するための試験は実施してはいけないことになっているのです。そこで公立中高一貫校で導入されたのがいわゆる「適性検査」です。

実質的には入学する生徒を選ぶ試験なのですが、あくまで入学試験ではなく、「学校に対する適性を判断するための検査」という位置づけで実施されています。私立中学校や国立附属校は入学者選抜試験をおこなっているので、公立中高一貫校としてもいわゆる入試を行いたいところです。せっかく公立中高一貫校という新たな一貫教育校を作ったにもかかわらず、生徒のポテンシャルがあまりにも低くては授業の質も担保できず、当然のことながら大学進学実績もおぼつかないからです。

そのため、公立中高一貫校では、難易度の高い「適性検査」を実施することにより、潜在能力の高い生徒に数多く入学してもらいたい、という思いを持って実施しているという背景があります。学校によっては、地域枠があるところもあり、その場合一般枠とは10倍もの倍率の差があるなど、公立中高一貫校に合格した生徒は、必ずしも適性検査の点数が良かったせいとばかりではないというのも事実です。

そのような経緯で始まった公立中高一貫校の適性検査ですが、入学した生徒が6年後の大学入試において実績をしっかり出しているのもまた事実です。公立中高一貫校は学費の安さという点もあり、年々受検者を増やしており、首都圏では開校が相次ぎ、県立千葉や東葛といった県内随一の県立高校が一貫校化するなどして広く認知されるようになりました。その結果、いまでは7,000人を超える生徒が受検するまでになったのです。そして、大学進学実績の良さも相まって、人気をさらに集めています。

たとえば、神奈川県の相模原中等教育学校では、設立時に入学した生徒の中から実に10人の東京大学進学者を出しました。これまでの公立高校からすればビックリするような実績だったのです。私立中学校と比べてみても、設立間もない中高一貫校が10名の東大合格者、進学者を出す、というのはそう簡単なことではありません。

事実、歴史のある私立中高一貫校でも東大合格者10名という学校はそう多くはありません。中堅上位校でも10名という数字はそう出せるものではありません。しかし、公立中高一貫校は適性検査を手探りの中でおこない、6年間の教育の結果、これだけの実績を出したため、一躍注目を浴び、人気はますますうなぎ上りになったのです。

学習指導要領の流れに合った適性検査の問題

私立中学校で行われる入学試験は、どちらかというと正確な受験知識が身についているかどうかを問うものが多い傾向にありました。難関校については、受験知識にとどまらず、その知識をどのように応用するか、という問題も以前から出題されてきましたが、そういった問題を解くことができるのはいわば上位生であって、すべての中学受験生がそのレベルに達していたとは言えません。現場で試行錯誤させるような問題に取り組む余裕がある受験生のための入試だったと言えるでしょう。

一方、適性検査は、受験カリキュラムのような単元ごとの知識を問うというよりは、その知識をどう活用して初めて見るデータやグラフを使いながら問題を解いていくかという問題が出題されており、知識問題にとどまらない、知識を「使いこなす」力を問う問題で各適性検査が構成されているのが特徴です。

なぜそのような形になったかというと、やはり2020年の大学入試改革に向けた新しい学習指導要領の流れに沿った問題を作ろう、ということが最も大きかったと言えるでしょう。大学入試改革は高校入試改革に繋がりますし、さらには中学入試の方向性を決め、小学校での学習内容にも影響を与える存在です。いわば、適性検査は、そういった方向性を先んじておこなったと言えるでしょう。

ただし、最初のころの適性検査は出題側も試行錯誤している状態で、どのような問題を出題するかというサンプル問題も「結局この問題で何を見たいんだろう」と思わざるを得ないものもありましたが、今は各公立中高一貫校の特徴を活かした適性検査が実施されています。たとえば、最も難関と言われる東京の小石川では、以前は文系色も強かったですが、現在は理系の色が濃くなっています。

さらに、現在では公立中高一貫校の適性検査の難易度がかなり高くなり、実際の問題と志願者の実力の差も見られますが、今後さらに改良が加わり、実情に合った設問が工夫されて出題されるでしょう。これまでの都立高校の入試でも、本質的な基礎基本の学力を問う良問が数多く出題されてきました。そういった問題も参考にしながら、ポテンシャルの高い生徒を集めるための新・適性検査がおこなわれていくと考えられます。

東京と神奈川の公立高校の現状

では、公立中高一貫化していない公立高校の大学進学実績はどうでしょうか。私立中学を受験されるご家庭でも大学への進学実績は、わが子の力をどこまで伸ばしてくれるのか、という点において非常に気になるところですよね。実際のところ、都立高校では日比谷、西、戸山などの独自作成校(トップ校)、神奈川県立高校では横浜翠嵐や湘南といった高校はともかくとして、いわゆる2番手校と言われる高校について言うと、東大はおろか、早慶上智クラスも現役合格は難しいのが現状で、補助金の問題で各私立大学が合格者を絞った影響もあり、G-MARCHクラスの大学への合格も容易ではなくなっています。

もちろん、G-MARCHと呼ばれる大学の難易度が上がってきたということも要因にはありますが、こういった現状を見ると、これまでのように公立高校から大学受験をするコースを歩む場合、公立中学校から公立トップの高校に合格する必要があります。もしそれができないと、大学受験で結果を残すことは難しいでしょう。

公立中高一貫校は倍率も高く、結果が出るまで時間がかかるという点で1本に絞る、という選択はなかなかできないかもしれません。また、そもそもやはり私立中高一貫校にわが子を入れたいとお考えのご家庭もあると思います。その場合は、適性検査型入試をおこなっている私立中学校を受験校として考えることもひとつの選択肢です。適性検査型入試をおこなっている私立中学校はどちらかというと偏差値が低い傾向にありますが、出口を見ると、G-MARCHへの合格を含め、通常の公立高校からの大学進学よりもはるかに高い結果を出している学校も少なくありません。

もし経済的事情で、中学受験はしたいけれど私立中学校の学費が高すぎる、という理由で公立中高一貫校を第一志望にしているという場合は、適性検査型入試を実施している私立中学校の「特待生枠」を狙ってみるという選択肢もあります。特待生として合格すれば、学費が免除あるいは半額免除になったりするほか、入学してから手厚く指導を受けることができるので、お子さんの力を伸ばしてもらえるチャンスだと言えるでしょう。

公立一貫校の併願としての適性検査型入試

適性検査型入試を行っている私立中学校にはどういった学校があるのでしょうか。なかでも受験者数が多い中学校を見てみましょう。安田学園、宝仙学園、開智日本橋学園、聖徳学園などが挙げられます。これらの学校の特徴は、公立中高一貫校の近くに位置していることが多く、公立中高一貫校の併願校として受験する受験生が多いという点にあります。

たとえば、安田学園の場合には両国高等学校附属中学校、宝仙学園の場合にはや小石川中等教育学校や富士高等学校附属中学校、聖徳学園の場合には三鷹中等教育学校や南多摩中等教育学校といった、公立中高一貫校が近くにあります。第一志望はそれぞれの公立中高一貫校にしますが、公立中高一貫校の入試日、合格発表日が遅いので、適性検査型入試で対応できるこれらの私立中学校を併願校としているケースが多く見られます。

また、すでにご存じの方も多いでと思いますが、公立中高一貫校の志願倍率は7~10倍にものぼり、私立中学校の倍率と比べてみても高倍率であることがわかります。公立中高一貫校を受験する受験生は、適性検査のための対策をしてきていますが、出来不出来の幅が非常にあるので、受験生も二極化しています。なかには記念受検という方もいるので実質倍率はもう少し下がると思いますが、それでも高い倍率です。

一方、適性検査型入試を実施している私立中学校は、どちらかというと中学受験の偏差値表に載ってこない、つまり私立中学受験の偏差値としては低い中学校が多いです。しかし、出口の進学実績を出していることから見ると、中学校側としては、第一志望の公立中高一貫校は不合格だったものの、意欲的に学習に取り組み、試行錯誤することをいとわない優秀な生徒をできるだけ受け入れ、6年間かけてしっかり育てたいという意図を持っています。つまり、入学者に対する手厚い教育が期待できます。

特に特待生を入試定員の中に設けている中学校の場合は、私立であっても公立中高一貫校と同じように高い授業料がかからないため、実は20倍を超える倍率になることも珍しくありません。ただし、複数回入試を行っており、1回あたりの合格者数を抑えている傾向なので、その点も確認しておきましょう。

公立中高一貫校の予行演習としての位置づけも

適性検査型の入試をおこなっている私立中学校の入試は、公立中高一貫校よりも早い時期におこなわれます。複数回入試がおこなわれることも少なくありません。一方、公立中高一貫校の適性検査は1回のみです。そこで、近年、私立中学校の適性検査型入試を、公立中高一貫校受検の予行演習として受験する、という位置づけになりつつあります。

公立中高一貫校の適性検査を受検する場合、現場で試行錯誤する力を身につけるためには教科書レベルの知識を正確に、深く理解しておかなければなりません。ただし、低学年の場合はまだそのような知識をつける段階にはないですし、脳の発達という意味でも試行錯誤したり、問題を抽象化したりすることができるようになるのは早くても5年生の終わり、おおむね6年生に入ってから、ということになるでしょう。

そのため、私立中学受験のように4年生から受験カリキュラムにそって3年間学習するというよりも、適性検査対策の勝負は小学校6年生の1年間、短い場合は3か月~半年程度の準備期間で適性検査に臨むということも少なくありません。これには、塾の費用が高いということも関係していて、経済的な理由からあまり塾にお金をかけずに済ませたい、というご家庭の事情も関係してきます。ただし、小石川などの難関公立中高一貫校の場合は、この限りだとは言えないのが現実です。

ただし、適性検査の問題は簡単ではありません。よくよく見ると聞かれている知識はそれほど細かいものでなくても、正確な理解と、知識の使いこなし、書く力といった能力が総合的に試されますし、また、適性検査ならではありますが、解答がひとつではなく、発想力を見るという問題も出題されます。もちろん、出題者の意図を組んだ解答でなければ点数はもらえないので、そこは訓練が必要です。特に目立つ記述式の問題を見ると「本当に解けるのかな」と大人でもハードルが高いと感じる設問もあり、制限時間のわりに処理しなければいけない問題数も決して少なくはありません。

一方、私立の適性検査の問題は比較的基本的なものが多く、知識面もいわゆる中学受験の基礎中の基礎が理解できていれば対応でき、それほど突っ込んだ試行錯誤を要求する傾向にはありません。そのため、2月3日の公立中高一貫校の入試の前の予行演習として私立中学校の適性検査型を受け、最後の模試のような形で実力を確認し、合格をもらって自信をつけたいという受験者の人気を集めているという面も大きいと言えるでしょう。

とはいえ、まったく対策せずに合格できるほど甘いものではないので、適性検査型入試の対策をしながら、受験校の過去問をしっかり解いて添削してもらうなどの対策は必須です。記述問題が多いので、保護者の方が丸つけや添削をしたり、個別で答案の作り方を教えてもらうのもおすすめです。

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