今回の記事は、等積変形を利用した典型題の紹介です。
等積変形及び等積移動の基本については、↓こちらの記事をお読みください。
等積変形と等積移動の基本の記事で紹介した問題を応用したものと、「ヒポクラテスの月」と呼ばれる有名な問題について詳しく解説していきます。
直角三角形の回転移動
前回の記事では半円の回転移動を紹介しました。今回は直角三角形を回転移動したときの、辺が動いた部分の面積についてどのように求めるかを考えていきます。
半円を回転移動させたときと同じように、まずは次のような図式を作って考えてみます。
全体の面積(半径15cmのおうぎ形と直角三角形)からいらない部分(半径9㎝のおうぎ形と直角三角形)を引いて考えます。
このとき、直角三角形の面積が等しいので、求める面積は半径15cmのおうぎ形から半径9㎝のおうぎ形を引いた形に等しくなります。
全体からいらない部分を引くという考え方と別に、上の図のように斜線部分の一部を切り取って移動させてみます。この考え方でも、斜線部分の面積は半径15cmのおうぎ形から半径9cmのおうぎ形を引いた形と等しくなることがわかります。
計算をするときは、3.14を1回にまとめるように工夫して求めるとよいでしょう。
ヒポクラテスの月
下の図のような、直角三角形と直角三角形の3辺をそれぞれ直径とした半円を組み合わせた図形を目にしたことのない受験生はいないのではないでしょうか。
誰しも一度は見たことのある、「ヒポクラテスの月(三日月)」と呼ばれる有名な問題です。
斜線部分の面積を求めるとき、先ほどのおうぎ形の回転移動の考え方と同様に、全体の面積からいらない部分の面積を引くという方法で式を立ててみます。
ここで先ほどの問題と違う点は、図式をかいてみても、「同じ面積の部分」が見えてこないというところです。しかし、実際に計算式を立ててみると、とても不思議なことが起こります。
全体の面積は、半径3cmの半円と半径4cmの半円と直角三角形です。いらない部分は、半径5cmの半円です。
全体からいらない部分の面積を引くという式を立てたとき、半径3cmの半円と半径4cmの半円の面積の和が、半径5cmの半円の面積に等しいことがわかります。したがって、計算した時に残る面積は、真ん中の直角三角形の面積に等しくなります。
斜線部分の面積が真ん中の直角三角形の面積に等しくなるのは、偶然でしょうか?いいえ、これは「三平方の定理(ピタゴラスの定理)」と呼ばれる直角三角形の性質により、成り立つことがわかっています。
3:4:5で直角三角形が成り立つということは、「6×6+8×8=10×10」や、「12×12+16×16=20×20」なども直角三角形として成り立つということになります。
三辺が整数値になるのは、例えば次のような場合です。
- 3×3+4×4=5×5
- 5×5+12×12=13×13
- 7×7+24×24=25×25
- 8×8+15×15=17×17 など
まとめ……の前に
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まとめ
図形を回転移動させたときの面積については、様々なパターンが考えられます。
半円の回転移動、直角三角形の回転移動、正方形の回転移動などがありますが、いずれも「全体からいらない部分を引く」という図式を作ると、どのような形を計算すればよいかがわかるはずです。
似たような問題に出会ったときに、「あの問題に似ているから同じように考えれば解ける(かもしれない)」と考えることこそが、図形問題を解く上でのヒラメキに繋がります。
問題集や塾のテキストでよく目にするような形の問題については、「重要問題」という認識で考え方を理解しておきましょう。ひとつ理解すれば、それに似たような形の問題を解くヒントに繋がります。
なお、ヒポクラテスの月で使った三平方の定理については、中学数学で詳しく扱うはずです。
辺が整数比にならないもの(直角二等辺三角形や正三角形の半分の直角三角形など)については、√(ルート)を使えば辺の長さを表すことができますが、中学受験の算数ではルートを使うことはありません。
中学校に入ってから数学で学習するまでは、ルートの扱い方は知らなくても特に問題ありません。
(ライター:桂川)