私たちの身の回りにはいろんな物質がありますが,それぞれ「何でできていますか?」と聞かれたときにどこまで細かく答えることができますか?
ここでは物質を作っているものでもものすごく小さな単位である「原子」や「分子」といったものについて紹介していきます。
原子
皆さんは物体がとても小さな粒でできていることは知っていますか?
硬そうな鉄も,川を流れる水も,そして空気までもが目には見えないほどの小さな粒でできています。
物体をできる限り分けていったとき,(今知られている)分けられる限界の一歩手前にあたるものです。
昔は物体を分けていったとき,もうこれ以上分けられない!というところまで分けてできた粒を「原子」と呼んでいました。
今,原子は約100種類知られています。例えば原子には「水素」,「酸素」,「アルゴン」,「窒素」,「金」,「銀」,「ヘリウム」,「炭素」,…などの種類があります。
皆さんは「周期表」というものをご存じでしょうか。知らなければぜひ調べてみてください。そこに今知られている原子がのっています。私たちの身の回りにある物体は,周期表にのっている約100種類の粒を組み合わせただけなのです。
世界には数えきれないほどの様々な物質があるというのに,それらがおよそ100種類の材料からできてしまうと考えると不思議ですよね。
物体を作っているこの小さな粒はあまりにも小さすぎて,虫メガネやただの顕微鏡を使っただけでは見ることができません。もちろん目で直接見ることはできません。
だから昔の人はどこまで物質が分けられるかというのは想像するしかありませんでした。いろんな実験の結果から,「原子」という単位を見出したのです。
そして今では特別な顕微鏡を使えば,その「原子」を見ることができるようになりました。
そして原子はさらに分けられることも知られてきました(詳しくは「素粒子」で調べてみるといいかもしれません)。
皆さんも物質を分けていくと何になるのか,分けたものをさらに分けるとどうなるのか,身近なものを使って考えてみましょう。
分子
原子は何個か集まることで存在しています。
そして1つの物質としての性質をもった,いくつかの原子の集合体のことを「分子」と呼びます。
空気に含まれる気体としての水素は,水素原子が2個集まったものですし,酸素は酸素原子が2個集まったものです。
さらに違う種類の原子でできている分子としては,水の分子は水素原子が2個と酸素原子が1個で構成されていますし,二酸化炭素は炭素原子1個と酸素原子2個で構成されています。
この「分子」もある意味では粒なのですが,分子同士が引き合う力がどれだけ強いか,分子同士の距離がどのくらい近いかまたは遠いかが気体,液体,固体といった状態に影響してくるのです。
物質の名前
皆さんは上の「二酸化炭素」の名前と構成原子を見て何か気づくことはありませんか?
「炭素」原子に「酸素」原子が「二」個くっついて「二酸化炭素」となっているのです。
さらに炭素原子に酸素原子が一個くっついただけの物質も実はあって,これは「一酸化炭素」と呼ばれます。
このように,物質の名前と構成している原子の種類や数には深い関係があるのです。
他にも次のような例があります。
- 二酸化窒素は窒素原子に酸素原子が二個くっついたものです。
- 十酸化四リンは,リン原子四個と酸素原子十個でできています。
- 四酸化三鉄は鉄原子三個と酸素原子四個でできています。
- 塩化ナトリウムは塩素原子とナトリウム原子でできています。
入試問題演習
ここまでに学んだことを活かして,実際の入試問題にチャレンジしてみましょう!
問題
解答
- (1) ①エ,カ ②イ,オ ③ア,オ
- (2) (a) 40 (b) 55
- (3) (c) ア (d) エ
- (4) 160 g
- (5) 0.75倍
- (6) 16倍
- (7) 18 g
- (8) 4個
解説
(1)
①
- ア:スチールウール(鉄)を燃やすと,酸素が結びついて「酸化鉄」ができます。
- イ:塩酸にアルミニウムの粉末を入れると,アルミニウムが溶けるとともに「水素」が発生します。
- ウ:水を加熱して沸騰させたときは特に化学反応は起こらず,水が液体から気体へと蒸発して水蒸気になります。
- エ:ヒトが呼吸をすると,吸った空気よりも吐いた空気に含まれる「二酸化炭素」の量が多くなります。
- オ:二酸化マンガンにオキシドールを加えると「酸素」が発生します。
- カ:ろうそくを燃やすと,空気中の酸素とろうそくに含まれる炭素が反応して「二酸化炭素」が発生します。
したがって,答えはエとカになります。詳しくは気体を中心に解説した記事を参考にしてみてください。
②
二酸化炭素を溶かした水は炭酸となり,弱い酸性となります。
酸性ではBTB液は黄色になり,青色リトマス紙を赤色に変化させる性質をもちます。したがって,答えはイとオになります。
詳しくは酸性とアルカリ性に関する記事を参考にしてください。
③
- ア:二酸化炭素を石灰水に通すと白くにごります。
- イ:二酸化炭素は無臭です。
- ウ:二酸化炭素で満たされた場所では火は消えてしまいます。
- エ:二酸化炭素は燃えません。
- オ:光合成では二酸化炭素や水が使われて,酸素やデンプンが作られます。
- カ:二酸化炭素は空気中にわずか0.03%程度しか含まれていません。
したがって,答えはアとオになります。
(2)
問題文から,3gの炭素は燃えると8gの酸素とくっついて,11gの二酸化炭素ができることが分かります。
二酸化炭素は必ず炭素原子1個と酸素原子2個の組み合わせでできているので,使われる炭素が何gだとしても,反応に関係する炭素と酸素,さらにできる二酸化炭素の重さの比は変化しません。
つまり,「燃やす炭素の重さ」:「結びつく酸素の重さ」:「できる二酸化炭素の重さ」は常に3:8:11になります。
今,燃やそうとしている炭素の重さが15gなので, 炭素:酸素:二酸化炭素=3:8:11=15:○:△となり,○=40,△=55となります。
したがって,(a)には40,(b)には55が入ります。
(3)
くり返しになりますが,二酸化炭素は炭素原子1個と酸素原子2個が結びついてできるので,燃える前の炭素の重さと,結びついた酸素の重さの合計は,できた二酸化炭素の重さと等しくなります。
よって,(c)には「ア:和」が入ります。
さらに,できる物質が「二酸化炭素」である以上,1つの炭素には必ず2つの酸素原子が結びつき,それが3個であったり1個であったりすることはない(本当は酸素が1つだけ結びついた一酸化炭素も発生しているのですが,ここでは無視して大丈夫です!)ので,燃える炭素と結びつく酸素の個数の比は常に等しいです。
炭素原子の重さと酸素原子の重さは基本的には決まっているので(本当は少しだけ同じ種類なのに重さが違う原子もあったりします!),個数の比が等しいということは重さの比も等しいということになります。
つまり(d)には「エ:比」が入ります。
(4)
まずは(2)と同じように考えて,必要な酸素の重さを考えます。
炭素:酸素=3:8=12:○となり,○=32となります。32gが必要な空気の20%となるので,32÷0.2=160より,必要な空気の重さは160gとなります。
(5)
二酸化炭素が発生するとき,反応に必要に炭素と酸素の重さの比は,炭素:酸素=3:8ですが,酸素は2個分なので,炭素原子1個分:酸素原子1個分は3:(8÷2)=3:4となります。
つまり炭素原子1個分の重さは酸素原子1個分の重さの4分の3になるので,3÷4=0.75より,0.75倍となります。
(6)
水素2gを燃やして水が18gできたということは,酸素は18-2=16より,16g使われたということになります。つまり,水を作るのに必要な水素と酸素の重さの比は,水素:酸素=2:16になります。
これは水素原子2個分と酸素原子1個分に相当するため,水素原子1個分の重さ:酸素原子1個分の重さ=(2÷2):16=1:16となり,酸素原子1個の重さは水素原子1個の重さの16倍の重さであることがわかります。
(7)
燃やした炭素の重さを〇とすると,炭素:酸素は3:8より,燃やした酸素は○の3分の8倍の重さになります。つまり残った酸素の重さは下のように書けます。
180-〇×(8/3)
さらに,炭素:二酸化炭素は3:11なので,発生した二酸化炭素の重さは○の3分の11倍の重さになります。つまり発生した二酸化炭素の重さは下のように書けます。
〇×(11/3)
容器内にある酸素と二酸化炭素の重さの比は2:1なので,
180-〇×(8/3)=(〇×(11/3))×2
180-〇×(8/3)=〇×(22/3)
左と右に○の3分の8倍の数を足すと,
180-〇×(8/3)+〇×(8/3)=〇×(22/3)+〇×(8/3)
180=〇×(30/3)
180=〇×10
つまり,〇=18になるので,燃やした炭素は18gです。
(8)
二酸化炭素の発生において,炭素:二酸化炭素=3:11なので,3:11=〇:44とすると,〇=12となり,メタンのうち12gは炭素ということになります。つまり,残りの4gが水素です。
ここから水が36gできたということは,酸素原子が32g結びついていることになります。
(6)から酸素原子1個の重さは水素原子1個の重さの16倍であり,さらに(5)から炭素原子は酸素原子の0.75倍なので,炭素原子1個の重さは,水素原子1個の重さの,16×0.75=12より12倍となります。
つまり,炭素原子12gに対して,同じ数の水素原子は1gとなり,それが4gあるということは,メタンは炭素原子1個に対して水素原子が4つ結びついているということが分かります。
まとめ
身の回りにある様々な物質は,原子や分子といった小さい粒でできています。どんなものが,どんな原子でできているのか,ぜひ図鑑などを使って調べてみてください。