勝負の夏、総合力の秋、そして本番の冬へ
暑い日が続いていますが、皆さん体調管理は万全でしょうか?
夏休みも中盤になってくると、特に6年生は9月以降、残り数ヵ月の中学受験への追い込みを目前にして少し焦りも出てくる頃でしょうし、どうしても行きたい学校がある人は、ちゃんと結果が出せるのかどうか心配になってくる頃かと思います。
残りの時間が少なくなってくると、気持ち的に余裕がなくなってくるので学習の計画も乱れてくるものです。
4教科で受験する人は、各教科やらなくてはいけない事が山積みで優先順位が付けられず、子供に任せておくと得意教科ばかりに偏ってしまうし、親的には苦手教科を何とかしてあげたいと、普段集団塾に通っているけれど苦手教科だけ個別指導の時間を増やしてみたり、と慌て始める時期だと思います。
焦る気持ちはとても良くわかりますし、特に最初のお子さんで初めての中学受験であれば無理もないかと思いますが、こういう時期だからこそ落ち着いて、バランスよく学習を進めて行っていただきたいと思いますので、中学受験の4教科の相互関係について少し述べてみたいと思います。
すべて教科の根底にあるのは国語力
よく、算数は割と点が取れて得意なのだけれど、他の教科が取れても平均点を上回る事はないです、とか、国語だけが圧倒的に苦手です、とおっしゃる方がおられます。
特に、男の子でも女の子でも、国語だけが圧倒的に苦手で何とかしたいです、という方がとても多いのですが、国語の学習方法はなかなか具体的に「こういう事をやれば必ず偏差値はアップします。」と言えるものではないため、指導者側としてもアドバイスが非常に難しいです。
ただ、不思議な事に、算数は得意だけれど国語が苦手で克服できない方は多くいらっしゃいますが、国語が得意だけれど算数や他の教科が苦手で克服できない、という方はほとんど見かける事がありません。(国語が好き、だけではなく得意で本当に得点力がある場合の事です)
それはどうしてなのでしょうか?
答えは簡単です。
先へ行ってもそうですが、特に中学受験の場合は4教科それぞれの教科自体の相関性が高く、いずれも同じ観点で学習計画を立てて行かないと伸びない、という特性を持っているからです。そして、そのすべての根底にあるのが国語力という事になるのです。
読解力がなければ、
- 算数の文章題
- 理科や社会の、前提の理解
- 各教科にある会話形式の問題文
- 問題の意図(何を最も答えさせたいのか)
等々が本当の意味で読み取れないので、例えば算数であれば計算力や空間把握能力でカバーできる部分は得点出来ますが、読解力が必要な問題では点を落としてしまう、といった事態になってしまう訳です。
また最近、特に公立中高一貫校での出題でどの教科にもよく見られる、長い会話形式の問題文を読んで穴埋めをするものや、傍線部の問いに答える問題においては、途中で内容の本筋を見失ったり、そもそも長すぎて集中できずに最初から内容が頭に入って来なかったり、という事が起きてしまいます。
ですから、国語が得意な人(本当に読解力があって得意な人はどんな問題でも常に9割得点出来るはずです)でも、また苦手な人でも、他の教科でなかなか伸びないものがあるのであれば、まだまだ国語の読解力に改善の余地があると判断して、そこを強化する事をお勧めしたいと思います。
読解力に関しては過去問や問題集ではなく、出来るだけ書籍や新聞等、長めの文章を沢山読むと共に記述力も鍛える意味で要約や感想文を沢山書くようにしてみて下さい。
国語力と併せて幅広い知識を身に着けよう
国語力を日々鍛えると共に、教科を超えた幅広い知識を身に着ける事も重要になります。
例えば地球温暖化という環境問題一つとっても、国語の文章題で出題される可能性もあれば社会の現代社会分野で出題される可能性もあり、更には理科の会話形式の問題で出題される可能性もあります。
また、面接がある学校や作文を提出する必要がある学校だと、普段から社会問題に対して確固たる自分の考えを持ち、それに対して堂々と意見が言える事がとても重視されます。
こういった事は直前数か月ではとても間に合わないので、普段から時事問題や周囲の事に興味を持って記事を読んだり色々調べたりしていなければ対応が難しい種類の事だと思います。
しかし普段から注意を張り巡らせて情報収集をし、自分の考えを持つ癖をつけていれば、それがどんな形でどの教科で出題されてもあわてる事無く、落ち着いてしっかり自分の考えを述べる事が出来るでしょうし、論理的に物事を考える習慣が身に着いているでしょうから算数の文章題を解く時にも功を奏します。
そんな、「どの教科でどんな問題が来ても大丈夫!」という状態こそが、4教科とも得意だと言える状態なのです。
なかなか難しいとは思いますが、一度コツがわかってしまえば、一つの努力で4教科全ての得点力を上げる事が出来るのですから、こんなに良い事はありませんね。
秋からやるべき事
では具体的に、国語力をあげてかつ幅広い知識を身に着けるにはどうしたら良いでしょうか。
折角だから面接や作文にも効果を発揮出来る方法が良いですよね。
まずは毎日新聞を読み、その中で最も気になった記事を一つ選んで、記事を切り取りスクラップをして下さい。
そして、その記事に対する簡単な要約と自分のコメントを数行で書く、という作業を続けて下さい。
4教科の学習以外にそんな時間は取れない、と思われるかもしれませんが、だからこそこの作業を続け、4教科の学習のそれぞれの教科にかかる作業時間を少しでも減らす事につなげて下さい。
読解力と記述力が同時にあがってくれば、作業時間を必ず減らす事が出来ます。
作業時間が減ってくれば取りかかれる問題数が増えていきますから、そうなってから直前に多くの過去問に取り組むようにしても決して遅くはありません。
焦る時期ですが、なるべく冷静になって落ち着いて、より焦る直前期を心安らかに過ごし万全の態勢で本番を迎えられるように、日々地道に上記の作業をやるようにしてみて下さい。
もちろん、だからといって各教科の学習はやらないでよい訳ではありませんので、塾から出された課題等があればこれまでと変わらずバランスよく取り組んで下さい。
まとめ
中学受験という、子供にとっても親にとっても人生の大きなイベントとなる出来事。
是非とも成功させたい、という思いは誰しも同じだと思います。
しかし生まれてまだ10年ちょっとの子供たちの中から、学校に合う子供を選び出す側も一苦労なのです。
そういう見方をすれば、受験でその子がどういう性格や考え方を持った子供なのかを表現出来れば出来るほど学校側にも把握しやすく、選んでもらえる可能性は高まるのですから中学受験の場合は決して学力だけでなく、総合力というか教科を超えたバランスが如何に大切かという事はご理解いただけると思います。
普段から家族でアンテナを張り、良くコミュニケーションを取ってお互いの情報をシェアしたり社会問題について意見を出し合ったり、といった事をやっているだけでもずいぶんと得点力が上がるものです。
決してそれぞれの教科の偏差値や得点だけに振り回されず、教科を超えて対処出来る力をどうか身に着けて頂きたい、と思います。
秋からは特に焦る時期ですから時間に追われますが、落ち着いて上手く時間を使って、無駄のない学習計画をたてて第一志望校に合格できるように頑張って下さい!
<関連記事>