集気びんと炎~モノが燃える条件や熱の移動の知識を応用して炎の挙動を明らかにしよう~

 ものが燃えるためには何が必要なのか,燃えることで何ができるのか,といったことを調べる実験として,集気びんの中のろうそくをいろんな条件で燃やす実験があります。

 ここでは,実際の入試問題を参考にしながら,ろうそくと集気びんの実験について,くわしく見ていきましょう。

 実験の目的や,そこから分かること,その原理を確認していきましょう。

入試問題

 まずは,ろうそくと集気びんの実験について,実際に出題された問題を見てみましょう。

 よければ,解説を見る前に自力で考えてみてください。

(開智日本橋学園中 2019)

問題の解説

 それぞれの問題について,重要なポイントや問題の解き方,関係することについて,くわしく見ていきましょう。

問1 燃えたときに発生する気体と,その性質は?

 問1では,ろうそくが燃えたときに発生する気体の性質について出題しています。ろうそくが燃えたときに発生する気体は,ろうそくがどのような物質でできているかに大きく関係しています。

 ろうそくは,主に「パラフィン」と呼ばれる物質で,「炭素(C)」と「水素(H)」を多くふくんでいます。

 このように,炭素や水素を多くふくんだ物質を,「有機物」と呼びます。有機物は,燃やすことで「二酸化炭素」や「」が発生します。つまり,ここで発生する気体は,「二酸化炭素」のことを指しています。

 選べる記号の中で,二酸化炭素の性質が書いてあるのは,「」の「火のついたマッチを気体の中に入れたら,火が消えた」となります。

 二酸化炭素で満たされた場所に火のついたものを入れると,火が消えます。この原理については,問6のところで改めて確認します。

 ちなみに,この性質は消火器にも利用されています。消火器にも様々な種類がありますが,中には二酸化炭素を直接ふきかけることで,消化するタイプのものもあります。

他の記号の説明は,どんな気体の性質?

 ここで,他の記号の説明が何の気体に対応しているかも確認してみましょう。

 「」の「火のついたマッチを近づけたら,ポンと音が鳴った。」という性質は,「水素」の性質について言っています。水素があるところに火を近づけると,酸素と反応して音が鳴ります。実際の音は動画などで見られると思いますので,興味があれば検さくしてみてください。

 しかし,試験管くらいの反応なら「ポンッ」で済みますが,少し大きめのシャボン玉くらいの量の水素となると,マラソンのスタートのときの「パァン!」くらいの音が出ます。

 このとき水素は酸素と反応して水ができています

 「」の「火のついた線香を近づけたら,激しく燃えた。」は「酸素(O₂)」の性質を表しています。酸素物が燃えるのを助けるはたらきがあります。

 「」の「くさいにおいがした。」は,おそらく「アンモニア(NH₃)」や「硫化水素(りゅうかすいそ)(H₂S)」のことだと思われます。アンモニアは,鼻がツーンとするようなにおいがしますし,硫化水素は,くさった卵のようなにおい(腐卵臭(ふらんしゅう))がします。

 「」の,「ゴム風船に集めてふくらませたら,空気中にういた。」は,「ヘリウム(He)」のことだと考えられます。通常,風船をうかせるために,ヘリウムガスが使われます。

関連すること

燃えたときに発生する気体はどうやって調べる?

 ところで,ろうそくが燃えたときに「二酸化炭素」が発生する,ということはどうやったら調べられるのでしょうか。その答えは,「気体検知管」です。ここでは「酸素」と「二酸化炭素」の気体検知管を使います。

 ろうそくを燃やす前には,集気びんの中に,「酸素が約21%,二酸化炭素が約0.03%」あります。ろうそくを燃やした後に,あらためて酸素と二酸化炭素の割合を測定してみると,「酸素が約17%まで減少し,二酸化炭素が約3%に増えている」ことが分かります。

 さらに,ろうそくが燃えた後の集気びんに,石灰水を入れてふることで,白くにごることを確認すれば,より確実に二酸化炭素が発生していることを確認することができます。

 もう少し くわしく しょうかいしましょう。

 ろうそくを燃やしたとき,空気中の酸素が,ろうそくにふくまれている炭素や水素と結びついて,「二酸化炭素」と「」が発生します。

 水が発生するのは,ろうそくが燃えているときに,集気びんがくもることから確認できます。「水蒸気(気体)」として発生した水が,集気びんのカベで冷やされて,液体である水てきへと状態変化しているのです。

問2 ろうそくはどうやって燃えている?

 ろうそくが燃えるのはみなさんが知っていることだと思います。

 しかし,「どうやって燃えているか」と聞かれるとなかなか答えられない人も多いのではないでしょうか。

 まず答えを言ってしまうと,「」の「ろうがとけて,しんについた液体が気体になって燃える。」です。

 もう少し細かく区切って説明しましょう。

 まず,ろうそくに火をつけようとして,しんの先たん部分に火を近づけますよね。そうするとろうそくが熱されます。

 すると熱した部分のろうが,まずは液体になります

 液体になったろうは,しんを伝って上へとのぼっていきます

 水にかわいたティッシュを少しだけつけたままにすると,どんどん水がティッシュをのぼってくるのが見られると思います。あんな感じです。

 そして火で加熱しているところまでのぼってきた液体のろうは,さらに熱されて気体へと状態変化を起こします。この気体が燃えているのです。

 同じような原理が利用されるものは,アルコールランプです。今ではガスバーナーで置きかわり,学校では見なくなったかもしれませんが,調べてみれば出てくると思います。

 これも容器に入っているアルコールがしんを伝って,先たんで蒸発して気体になり,その気体が燃えることで火が付くのです。

関連すること

本当にろうの液体がしんを伝っているの?

 ろうの液体がしんを伝っていることを確かめる実験があります。それは,燃えているろうそくのしんをピンセットなどではさむ実験です。

 こうすると,はさんでいるものにジャマをされて,ろうの液体がしんをのぼりきることができず,そのうち火が消えます。

 ここから,ろうの液体が上へのぼっていることがわかります。

本当に気体のろうそくが燃えているの?

 燃えているのは本当に気体のろうそくなのかどうかを調べる実験についてしょうかいしましょう。

 まず,燃えているろうそくのしんの先たん部分,炎(ほのお)の中心部分にガラス管を入れます。

 そうすると,炎の中心部分にある気体が,ガラス管の反対側の出口から出てくることになります。

 ここで炎の中心とは逆側にある,ガラス管の出口に火をつけると,実際に燃えることが確認できます。

 燃える性質のある気体があることは,まちがいないようです。

 しかし,これは本当にろうなのでしょうか。

 それはガラス管の先たんから出てくる気体は,白いけむりとなることから判断できます。

 これは気体だったろうが空気によって冷やされて,空気中で細かい固体となって見えるようになるのです。

 白いということは,ろうである可能性が高いでしょう。

 これは湯気が見えるのと同じような現象ですね。

問3,問4,問5,問6 ろうそくが燃え続けるために必要なことは?

 問3から問6のテーマは,「ろうそくが燃え続けるために必要なものについて」です。

 ろうそくが燃え続けるための条件を調べるための実験として,「底がない集気びん」と「ねんど」と「フタ」を使い,主に4つの条件でろうそくの炎が燃え続けるかどうかを調べる実験があります。

 その条件は下の4つです。

  1. 底のねんどにすきまがなく,フタなし
  2. 底のねんどにすきまがなく,フタをする
  3. 底のねんどにすきまがあり,フタなし
  4. 底のねんどにすきまがあり,フタをする

 ①の条件が問3の条件,④の条件が問4の条件,③の条件がほとんど問5の条件となります。

 そしてこの実験で重要となる要素は,空気の流れです。それぞれの問題の線香は,空気の流れを見えるようにするために使っています。

 まず実験結果を言いましょう。ろうそくの火は,それぞれの条件で次のようになります。

  1. 燃え続ける
  2. 消える
  3. 燃え続ける
  4. 消える

 つまり,「問3」の答えは「燃え続ける」,「問4」の答えは「消える」となります。

 次に,それぞれの条件での,「けむりの動き」,すなわち,「空気の流れ」はどうなっているのかをしょうかいします。

 ①の条件では,びんの口に近づけた線香のけむりは,問3の問題文に書かれているように,「一度びんの中に吸いこまれて,すぐに出ていく」ような動きをします。

 これはろうそくの炎で熱された空気は上にのぼり,温度の低い空気は下に向かうからです。

 ②の条件では,もちろんけむりの入る場所はありません

 ③の条件では,線香をびんの口に近づけると,「けむりはびんの中には入っていかず,上へのぼっていきます」。また,線香をねんどのすきまに近づけると,線香のけむりは,「びんの中を通って,上の口からぬけていきます」。

 これの原理は,①の条件のときと同じです。

 上から線香を近づけても,炎によって熱せられた空気の「上しょう気流」にジャマをされて,下のびんの口へ向かえないのです。

 逆に,下からけむりを入れれば,ほのおで熱せられて上しょうする空気にのって,びんの中を通って,上へのぼっていくのです。

 つまり,問5の答えは,「ねんどのすきまからびんの中を通り,びんの口から上へぬけていくような矢印」を書けばよいということになります。

 ④の条件では,ねんどのすきまから入った線香のけむりは,「集気びんの中を円をえがくように回ります」。

 そしてけむりがびんの中に流れこまなくなります。

 これは,あたためられた空気は上へのぼっていこうとするために,けむりはびんの中で対流するだけで,ほとんど外に出て行けず,出ていけなければ,それ以上新しい空気は入っていけないのです。

 これらのことから,炎が燃え続けている条件①と条件③の共通点が,もともとあった空気が出ていき,外から新しい空気が入り続けることであると分かります。

 つまり,問6の答えは,「空気が絶えず入れかわること」となります。

本当に必要なものは?

 もう少し,深いところまでいきましょう。

 空気が絶えず入れかわることで何が起こるのでしょうか。

 それは,絶えず十分な「酸素」が供給されることです。

 問1の解説のときに,酸素はものが燃えるのをたすけるはたらきがあるとしょうかいしました。

 逆に,酸素がなければ燃えることができません。

 ものが燃えるためには,十分な酸素が必要となるのです。

 つまり,問1で二酸化炭素によって炎が消えるのは,そこに「酸素が足りないから」であって,二酸化炭素に「炎を消す性質があるわけではない」のです。

まとめ

 ものが燃えることに関する条件を調べるための実験について,様々なものをしょうかいしました。

 それぞれの実験の条件と,何を知りたいのかという目的,どのような結果が得られて,そこからなにが分かるのかといった点をしっかりおさえておきましょう。

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参考

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