最近よく耳にする「アクティブ・ラーニング」。どういうものなのか、漠然としたイメージはお持ちだと思います。最近では「アクティブ・ラーニング」を前面に押し出して学校の特色としている学校も増えてきました。
「アクティブ・ラーニング」とは、具体的にはどのような学習法なのでしょうか。大学や高校では先んじて取り組まれていましたが、もっと早い時期から「主体的・能動的な学習」が必要だと考えられ、中学校にもその期待が高まっています。「アクティブ・ラーニング」への取り組みは学校によって様々です。今回は、具体的な学校の取り組みについて、3つ取り上げてご紹介します。
カリタス女子中学高等学校「理科研究レポート」
カリタス女子中学校では、生徒の「思考力・判断力・表現力」を育むため、各教科で言語活動の充実を目指しています。物事をとらえ、自ら考え、整理し、最終的に自己表現する力を養うための授業を行っています。
たとえば、「学芸コンクール」では、学年ごとに設定された課題図書を読み、感想文を仕上げたり、「理科研究レポート」では、中学1年生では「樹木ウォッチング」、2年生で「動物園実習レポート」、3年生で「地学実習レポート」を課題にしています。レポートを「書く」ことにより、観察力、情報処理能力、分析力、表現力を身につけることを目的としています。
「思考力・判断力・表現力」は、大学入試改革で評価される学力の3要素の一つです。中学受験でも、「思考力重視」が顕著になってきています。カリタスでも、そういった学力の養成を意識したアクティブ・ラーニングへの取り組みがなされています。
麹町学園女子中学校「思考型授業」
麹町学園中学校では、自ら課題を見つけ、主体的に考え、仲間と協働しながら解決できる力を身につけることを中学・高校の最終目標として、「思考型授業」を全教科・全科目で行っています。中学生の段階では、課題の選定は先生が中心となって行い、授業も先生がリードする「問題解決型学習」が行われています。中学3年生以降は、生徒自身やチームで課題を設定する「課題発見型学習」を行っています。
たとえば、英語科では、「アクティブイングリッシュ」として、ICTツール(情報コミュニケーション技術)を活用し、先生が一方的に話す授業ではなく、生徒が活動し、学び合う学習法を実践することによって、アクティブ・ラーニングを行っています
主体性、協働性も大学入試改革の目玉である学力の3要素の一つです。麹町学園でも、将来の大学入試を見据えて、各教科で結果を出すべく、アクティブ・ラーニングに取り組んでいます。
栄東中学校「知識を使える人材を育てる」
栄東中学校では、各教科、校外学習のすべてにアクティブ・ラーニングを取り入れています。多様性や創造性、コミュニケーション能力などを備えた、新しい社会を創出できる人材を育成するためにも不可欠であり、将来的に企業が求める「発想力」や「創造力」を持った人材育成に力を入れています。
また、大学受験においても、体験を伴う学習の方が、講義中心の受験指導よりも知識の定着度が高いという期待が持てるということから、全教科にアクティブ・ラーニングを取り入れているという意図もあるようです。
たとえば、歴史の授業では、各時代に活躍した人物の実績や、その人物がもしいなかったらどうなっていたか、という場合を想定して議論をするような取り組みがされています。また、理科の授業では、年間100回を超える実験を行っています。実体験をし、主体的に取り組むような、能動的な学習を行っています。習得した知識を「使うことができる」人材を育成しようと、全校をあげてアクティブ・ラーニングに取り組んでいます。
まとめ
アクティブ・ラーニングへの取り組みは、学校によってさまざまです。ですが、共通して言えるのは、今後行われる大学入試改革に合わせ、求められる学力の要素を各教科の授業に取り入れていることです。中学入試には、入学後、そのような授業に主体的・能動的に取り組むことができる生徒に入学してきてほしい、という各学校のメッセージがこめられています。栄東中学のように、「習得した知識を使うことができる」という能力は、難関校入試で最近特に求められている力です。中学受験で終わるのではなく、大学入学、その先大人になったときに、そういった授業がどのように実践的なものであり、役に立つのか、そういう視点で各学校のアクティブ・ラーニングの取り組みを検討し、受験校選びの一助としていただきたいと思います。
<関連記事>
一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。