伝統工業とは、古くから受け継がれてきた伝統的な技術や技法を使って、日本の文化や生活に根ざしたものを生み出す工業です。
「伝統工芸品産業の振興に関する法律」によると以下の5つの項目に該当するものが工芸品として指定されています。
- 主として日常生活の用に供されるものであること。
- その製造過程の主要部分が手工業的であること。
- 伝統的な技術又は技法により製造されるものであること。
- 伝統的に使用されてきた原材料が主たる原材料として用いられ、製造されるものであること。
- 一定の地域において少なくない数の者がその製造を行い、又はその製造に従事しているものであること。
また、工業製品は織物・染色・陶磁器・漆器など手工業的で生産されたものが多いです。更に冬場に農作業が出来ない東北地方や北陸地方で発展してきたという背景もあります。
では、地方ごとに日本の主な伝統的工芸品を見ていきましょう。
Contents
北海道・東北地方
二風谷アットゥㇱ(にぶたにあっとぅし)
織物(北海道)
(二風谷民芸組合)
二風谷はアイヌ語で「木の生い茂るところ」という意味の「ニプタイ」からついた地名で、現在の北海道沙流郡平取町で作られている織物です。アイヌ文化を今に残すため受け継がれてきた織物。通気性に優れ、水にも強く非常に丈夫なのが特徴です。
津軽塗
漆器(青森県)
津軽地方で生産される伝統漆器で、「研ぎ出し変わり塗り」といわれる、塗っては研ぐ工程を繰り返す技法で40数回の工程と2ヶ月以上の日数を費やして作られます。
大館曲げわっぱ
木工品・竹工品(秋田県)
(大館工芸社)
スギやヒノキなどの薄板を曲げて作られる円筒形の木製の箱のことを曲げわっぱといいます。秋田県大館市で作られる曲げわっぱは、日本有数の銘木として知られる秋田杉を使用しています。
南部鉄器
金工品(岩手県)
南部鉄器は、盛岡市と奥州市が中心的な産地で、銑鉄を主原料として造られ、仕上げに錆止めとして漆を塗った鉄器です。鉄瓶や急須が有名ですが、近年はフライパンや鍋敷き、キャンドルスタンドなど、現代の暮らしにも取り入れやすい製品も作られています。
宮城伝統こけし
人形(宮城県)
主な産地は宮城県の仙台市、白石市、蔵王町(遠刈田)、七ヶ宿町、川崎町、松島町、大崎市(鳴子)。こけしは古くから東北で子どもの手遊び人形として親しまれてきました。
また、こけしは産地によって【青森県‐津軽系】【秋田県‐木地山系】【岩手県‐南部系】【山形県‐山形系・肘折系・蔵王高湯系】【福島県‐土湯系・中ノ沢系】などさまざまな系統に分かれています。その中で【宮城県‐鳴子系・遠刈田系・弥治郎系・作並系】が「宮城伝統こけし」として、国の伝統的工芸品に指定されています。
会津漆器
漆器(福島県)
会津漆器は、福島県会津地方で作られている漆器です。上塗りには、錆漆を施して鋳物のような渋みのある「鉄錆塗」、もみ殻で模様を作る「金虫喰塗」などの技法を施し、漆をたっぷり含ませた筆で縁起の良い意匠や多彩な加飾を施します。松竹梅と破魔矢を組み合わせた模様は会津絵と呼ばれています。
置賜紬
織物(山形県)
山形県南部に位置する置賜地方にある米沢、白鷹、長井の地区で生産される織物の総称を置賜紬といいます。米沢、白鷹、長井の3つの地それぞれで受け継がれた技術や技法は異なります。米沢は、県花の紅花や藍、刈安など自然の染料を用いた「草木染紬」や「紅花染紬」、白鷹は、「板締染色技法」、長井は、「緯総絣」と「経緯併用絣」、琉球織物の影響を強く受けている「米琉絣」という技法が受け継がれてきました。
天童将棋駒
その他(山形県)
天童将棋駒は、山形県の天童市、山形市、村山市で作られている将棋駒です。天童将棋駒の特徴は、天然の漆を用いた黒く輝く躍動感ある文字です。伝統的な天童将棋駒は、草書体の文字を木地の表面に直接漆を書き込んだ「書駒」ですが、木を彫った部分に漆を塗った「彫り駒」や、漆を生地より盛り上げて作る「盛り上げ駒」が現在では普及しています。
関東地方
益子焼
陶磁器(栃木県)
栃木県芳賀郡益子町周辺で作られている陶器。ケイ酸や鉄分が多く、可塑性に富む陶土を用いるため、形を作りやすく耐火性も高くなります。陶土に他の物質を加えないことから厚みのある焼き物に仕上がり、益子焼の特徴といえます。
鎌倉彫
漆器(神奈川県)
鎌倉時代、宋から禅宗の美術工芸品の中に堆朱と呼ばれる盆、大香合などの彫漆品に影響を受けた日本の仏師たちが新たな木彫彩漆の仏具を作りはじめたのが鎌倉彫の始まりです。茶道の普及とともに、茶入、香合、香盆さまざまな調度品が発達していきました。
中部地方
美濃和紙
和紙(岐阜県)
岐阜県で作られている和紙。美濃は和紙の原料となる楮が採取できることから古くから和紙の生産を行ってきました。美濃和紙の特徴は薄さと丈夫さ、美しさの共存です。
輪島塗
漆器(石川県)
(石川の伝統工芸)
輪島塗は石川県輪島市で作られ、輪島市でしか採れない輪島地の粉を使用している点が特徴です。彫りを入れた部分に金を入れ込んだり、金粉と銀粉を用いた蒔絵という表現を凝らし優美さのある漆器になっています。
加賀友禅
染色品(石川県)
石川県金沢市周辺で作られている着物。加賀友禅の特徴は、「加賀五彩」といわれる藍、黄土、草、古代紫、臙脂を基調としているところです。深い古典色の写実的な草花模様の絵画調を中心とし、京都友禅の華やかさとは違った美しさがあります。
近畿地方
京友禅
染色品(京都府)
京都府一帯で作られる染織品。絵画的に動物や器物を表現する友禅模様と呼ばれる文様で知られ、着物に描く模様の輪郭に隣接する模様が混ざらないように糊を引く独特の技法を用います。加賀友禅には刺繍や金銀箔がなく、華やかな京友禅との大きな違いです。
西陣織
織物(京都府)
西陣とは京都の北西部(上京区、北区)にあたる地域の名称で、西陣の織屋が製造する織物を西陣織といいます。生地は先染めをしてから織っているため、一般的な染色法である後染めよりも丈夫で、シワになりにくい特徴もあります。
清水焼
陶磁器(京都府)
清水焼は清水寺の参道で作られていた焼き物の名称でしたが広く京都市周辺で作られている陶磁器の総称となっています。窯ごとに異なる特色を持ち、色絵陶器をはじめ染付・天目・青磁・粉引など数多くの焼き物が焼かれています。
信楽焼
陶磁器(滋賀県)
滋賀県甲賀市信楽町周辺で作られている陶磁器。近年では、2019年下半期のNHK連続テレビ小説『スカーレット』で描かれたことで注目されました。陶土に木節、実土、蛙目などの粘土や原料を合わせて練るため、コシがでて、肉厚な焼き物や大きな焼き物になります。
中国・四国地方
備前焼
陶磁器(岡山県)
備前焼は、岡山県備前市周辺で作られる陶器です。日本六古窯のひとつとされ、釉薬を使わない独特の製法が特徴です。釉薬を塗ることで光沢が生まれ耐水性が増しますが、備前薬では釉薬を塗らないため、光沢がなく素朴な印象となります。
九州・沖縄地方
伊万里焼・有田焼
陶磁器(佐賀県)
伊万里焼・有田焼は、佐賀県有田町周辺で作られている磁器です。キメが細かくなめらかな手触り、透明感のある白磁に染め付け呉須の藍と鮮やかな赤の配色が特徴です。元々伊万里焼と有田焼はほぼ同じものでしたが、出荷する駅や港の名前を使って有田焼・伊万里焼と呼ばれるようになりました。
琉球紅型
染色品(沖縄県)
沖縄県首里市周辺で作られている染織品。色鮮やかな染色模様の「紅型」と藍色だけを使用した藍染め模様の「藍型」の2種類に分けられます。南国ならではの豪華な色合いと大胆な色使いが特徴です。
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