今回の記事は,日本全国に存在する工業地域・工業について一つずつご紹介していくシリーズの第4本目,京葉工業地域編になります。この工業地域・工業地帯という範囲は中学受験の社会で頻繁に出題されます。しかし色々なことを覚えなければいけないので,どうにも頭の中で情報を整理できない,とお悩みのお子様も多いでしょう。そこでこのシリーズでは,各工業地域・工業地帯について簡単にわかりやすくまとめていきます。初めて聞いた人もよく理解している人も,よければ一読ください。
Contents
場所は?
まずは京葉工業地域の場所について確認しておきましょう。これまで扱った瀬戸内・関東内陸などはある程度イメージしやすいですが,京葉という言葉からパッと特定の地域を連想することは,ほとんどの人にとって難しいかと思われます。
また他の漢字二文字の工業地域である東海・京浜などとも混ざりやすいので,場所を正しく覚えておく必要があります。次の図の青く塗られている部分が京葉工業地域のだいたいの区域になります。オレンジ色の点は代表的な都市を,()の中身はそこで栄えている産業を表します。ここで取り上げている都市・産業は,出来れば頭の中に入れておきましょう。
この地図から分かるように,京葉工業地域とは東京・千葉の海に面している部分を指します。京葉とはこの「東京+千葉」という2つの単語がくっついた言葉になります。
ちなみにこの2つの単語がくっついているという工業地域名は結構多いです。例えば京浜は東京+横浜という構成ですし,阪神は大阪+神戸という構成になっています。もし地名と地域がリンクしなかったら,一度単語を解体してみるといいでしょう。
工業の特徴!
ではここからは京葉工業地域の工業の特徴について見ていきましょう。第1回から第3回までの記事で繰り返していますが,工業地帯・工業地域の特色を掴む上で大切なのは,出荷額の高さと工業種類別の割合の把握です。出荷額の高さとはその地域でモノがどのくらい作られているのかを,工業種類別の割合とは全てのモノの中で多く作られているのは何の種類かということを指します。それぞれの地域ごとに共通点・相違点がありますので,ぜひ違う回のデータやグラフと比較しながら,特徴を覚えていってください。
出荷額について
初めに確認するのは京葉工業地域の出荷額です。下の図は全国の工業製品出荷額に占める工業地帯・地域の割合についてのグラフです。このグラフの数値が大きければ大きいほど,たくさんモノを作って売っていることを表します。
例えば一番左側,17.9%という割合である中京工業地域は日本で一番ものを作っている,ということになりますね。今回取り上げている京葉工業地域は下のグラフの黄色い部分になります。(データは教育出版株式会社からの引用です。)
この図から,京葉工業地域は日本全国の出荷額の3.8%を占めているということがわかります。順位で言うと日本で9個工業地域・工業地帯があるうちの8番目になります。この3.8%という数字は他の工業地域・工業地帯と比べてやや見劣りしますが,それでも東京・千葉で海に面している地域という狭いエリアだけでこれだけのモノを生産している,という事実には目を見張るものがありますね。
3.8%という数字は,北陸の4.4%・北九州の3.0%という数字と近いです。そのためデータを取得した年度によっては順位や数値が変動している可能性がありますので,大雑把に「4%くらい」「順位は低め」と覚えておくと良いでしょう。
この工業製品出荷額についてのグラフはシリーズを通して全ての回でお見せします。将来的には数字・順位を聞いただけで地域名を思い出せるくらい知識が定着しているといいですね。
盛んな産業について
続いて京葉工業地域の工業種類別の割合を見ていきましょう。瀬戸内工業地域編でお話ししたように,工業の種類には重工業と軽工業があります。さらに重工業は金属・機械・化学に,軽工業は食料品・繊維に分けられるとお話ししましたね。これらの詳しい区別や意味を知りたい方がいましたら,ぜひ過去の記事を見返してみてください。
下のグラフは,全国と東海工業地域の工業種類別出荷額割合を比較したものになります。 割合の数字が大きければ大きいほど,盛んにモノが生産されている産業を意味します。全国のグラフと比べて極端に割合が大きいもの・小さいものに注目して,特徴を理解していきましょう(データは教育出版株式会社とHelloSchool社会科からの引用です)。
このグラフから,京葉工業地域は全国と比べて金属・化学の割合が高く,反対に機械の割合が低いということがわかります。数値で見ても,機械の割合は全国が13.4%なのに対し京葉は19.8%と約1.5倍も高いです。化学の割合はもっと差がありますね。こちらは全国が13.4%なのに対し京葉は39.2%と,約3倍も高いです。この化学ですが,全国で1番といっていいほど割合が高いです。化学が全体の40%近くを占めているという工業地域・工業地帯は他にありません。ぜひ主要な特徴の一つとして覚えておきましょう。
なお繊維については,京葉工業地域の生産割合のデータが見つからなかったためグラフからは割愛しました。おそらく全国平均である1%前後と大差ないと考えられます。
なぜ化学・金属が盛ん?
ではなぜ化学・金属の割合が高いのでしょうか。この工業的特徴の背景にあるものを見ていきましょう。
主な理由として,海沿いにあるという地理的な特性が挙げられます。化学とは石油を加工する産業のことです。石油は日本では採れないので,海外から輸入する必要がありますね。上の地図から分かるように海に面している京葉工業地域はその点,海外から石油を輸入しやすい,更には石油から作り出したモノを海外に輸出しやすいという強みがあります。この強みから石油産業が発達したのでしょう。
金属の割合が比較的高いのも,同じような理由で説明可能です。金属という産業は,鉄などの金属を加工する産業のことを指しました。石油と同様にこの金属というのも,日本ではなかなか得られない物質です。そのため海外から取り入れなければいけません。したがって海沿いの京葉工業地域では金属という原材料を輸入しやすく,金属産業が発達したのだといえます。
なおこの金属・化学産業を支える重要な特徴として,埋め立て地に作られた石油化学コンビナートという施設を覚えておいて欲しいです。コンビナートとは,工業に関するいろいろな工場や施設が集まった地域のことです。このコンビナートのおかげで金属や化学の生産が発達してきた,という側面も京葉工業地域にはあります。上の知識に付け加えて暗記していただきたいです。
瀬戸内工業地域との違いは?
ちなみに金属・化学といえば,瀬戸内工業地域もこの種類の産業の割合が高かったですね。この瀬戸内工業地域と京葉工業地域の違いは,出荷額の高さです。1つ目のグラフをみれば分かるように,瀬戸内は9.6%と日本で4番目に高い出荷額であるのに対し,京葉は3.8%とやや数値では劣っています。
また化学や繊維産業が全体に占める割合でも違いが見られます。以前の記事でもお見せしましたが,瀬戸内工業地域の工業種類別出荷額割合をもう一度取り上げ,上でお見せした京葉工業地域のグラフと比較してみましょう。
グラフを比べて分かるように,金属・化学が特徴といっても,京葉は瀬戸内と比べたときに化学の割合が2倍近く大きいことがわかります。また繊維産業についても差がありますね。京葉工業地域の繊維産業の割合は,全国の割合と同じ1%程度でしたが。瀬戸内は2%と高めです。「1%の差なんて大したことない」と思われるかもしれませんが,生産額で言うと数億・数十億の違いがありますので,ぜひ相違点の大事な一つとして把握しておいてください。
このように日本全国にはたくさんの工業地域・工業地帯があるため,中には特徴が似たもの・被るものが存在します。そのような場合でも出荷額・割合のどこかに何らかの違いがあるので,それぞれの地域を比べて覚えておくのがいいでしょう。
工業以外産業の特徴!
ここまでは工業の特徴を見てきました。次は農業・漁業といった工業以外の産業についても触れていくことにしましょう。「なぜ工業地域の話なのに工業以外の産業も覚えなければいけないの?」と思う人もいるかもしれませんが,このような産業・人口・気候などの要素は地域ごとにまとめて覚えてしまった方がお得です。というのも,受験においてはこれらのいろんな要素が絡まって一つの問題として出題されることもあるからです。言うまでもなく覚えるのは工業を優先して欲しいのですが,これらの事柄についても軽く頭の中に入れておくと今後の役に立つでしょう。
農業の特徴は?
まずは京葉工業地域の農業の特徴についてです。といっても工業地域ではやはり工業が盛んなので,京葉というよりは東京・千葉の臨海部における農業の話になります。
この地域は年間を通して比較的温暖で,関東ローム層という豊かな大地に恵まれています。そのため特に千葉県は全国有数の農業県だといえます。また地域柄として都心部に近いという特徴から,近郊農業が行われています。近郊農業とは,都心に近い場所で野菜や果物を育て,新鮮なうちに消費者に届けるという産業の形態を指します。具体的には,コマツナやホウレンソウ,梨などが育てられています。
漁業の特徴は?
次に漁業の特徴について見ていきます。京葉工業地域画面している東京湾は,「江戸前」とも呼ばれた歴史があるほど,昔は漁業で有名な地域でした。工場による水質汚染などが影響を及ぼしたこともありましたが,現在は生態系の再生を目指した水産業が行われています。
よく獲れるのはアサリやスズキ,アナゴなどですが,この地域の漁業に関しては特産品というよりも伝統的な「江戸前」が汚染され,再生されていくという歴史の方が重要です。そちらを重点的に覚えておきましょう。
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まとめ
今回は京葉工業地域の特色について簡単にまとめていきました。初めの方でも触れたように,工業地域・工業地帯はほとんど必ず入試で出題されます。特に都市圏にあるこの京葉工業地域は,重点的に頭に入れておくと得点アップにつながりやすいでしょう。他の工業地域・工業地帯についての記事も今後投稿していきますので,よろしければそちらもご確認ください。本記事が今後の学習の手助けとなれば幸いです。
(ライター:大舘)