日本人なら知っておきたい文学作品!文学作品まとめシリーズ【歴史物語】

歴史物語の覚え方は?おさえるべきポイント! 

今回は歴史物語の中から『栄花(華)物語』と『大鏡』『今鏡』『水鏡』『増鏡』の「四鏡(しきょう)」について紹介していきます。『水鏡』は鎌倉時代、『増鏡』は南北朝時代の成立ですが、他の歴史物語は平安時代の成立です。成立時期、成立順などきちんとおさえていきましょう。 

【補足】形式について 

  • 編年体…歴史記述の形式の一。年月の順を追って事実の発生・発展を記述するもの。 
  • 紀伝体…歴史記述の一。本紀(帝王の年代記)・列伝(臣下の伝記)・志(社会の現象)・表(年表や系譜など)からなります。『史記[i]』に始まり中国の正史形式の標準となり、日本でも『史記』に習って歴史書の形式に取り入れられました。

栄花(華)物語

  • 作者:正編30巻は、藤原道長の妻倫子に仕えた赤染衛門。続編10巻は道長と倫子の娘である一条天皇の中宮威子に仕えた出羽の弁などの女房たちであろうとされています。
  • 成立時期:平安時代(1030〜1100年ごろ) 
  • 描かれている時代:宇多天皇(59代)から堀川天皇(73代)の寛治6年。15代約200年間(880年代〜1092年)
  • 形式:編年体

六国史[ii]の最後、『日本三代実録[iii]』の後を受け継いで書き継いだ形式ですが、勅撰の歴史書ではなく、『大鏡』に先立つ歴史物語の初めとなりました。30巻の正編と10巻の続編で成り立ち、正編は藤原道長が政争に勝ち栄花を極めていくまでを描いています。続編では道長の仏道や信仰生活を中心に宮廷での日常が多く描かれています

大鏡

  • 作者:未詳(漢語混じりの簡潔で叙述的な文体であり、貴族の男性の手によるものかと考えられている)
  • 成立時期:平安時代(1025年以後40、50年から90年の間の成立かと考えられている)
  • 描かれている時代:文徳天皇(55代)の嘉祥3年から御一条天皇(68代)の万寿2年。14代176年間(850〜1025年)
  • 形式:紀伝体

上・中・下の3巻からなります。 世継ぎの翁繁樹の翁若侍を中心に2人の翁が若侍に昔話をする形で語られていくのが特徴。藤原道長の栄華を中心に描いている『栄花物語』とは異なり、藤原道長を中心とした摂関政治の社会背景を写実的に描き、時には批判をも交えています。「四鏡」の一作目。 

今鏡』

  • 作者:未詳(中山忠親、源通親の説もあり)
  • 成立時期:平安時代(1170年成立あるいはそれ以降) 
  • 描かれている時代:後一条天皇(68代)の万寿2年から高倉天皇(80代)の嘉応2年。13代146年間(1025〜1170) 
  • 形式:紀伝体

10巻。『大鏡』の語り手の一人であった大宅世継の孫で150歳をこえる老女が語るとい描かれており、『大鏡』の語り口を継承しているといえます。政治的な変動よりも宮廷貴族社会の朝儀典礼や風流についてより多く語られているのが特徴です。 

水鏡

  • 作者:未詳(中山忠親、源雅頼などの説がある)
  • 成立時期:鎌倉時代(1185~1199年ごろ)
  • 描かれている時代:神武天皇(初代)から仁明天皇(54代)嘉祥3年
  • 形式:編年体

3巻。『大鏡』の形式に倣い、老尼が大和国高市郡の竜蓋寺(岡寺)を参拝した際。1人の修行者に出会い話を聞くが、そのときに修行者が葛城で会った仙人から聞いた話を老尼がまた聞きして記録したという形になっています。平安末期に書かれた『扶桑略記[iv]拠ったものと推測されています作者の仏教的世界観を当時の歴史と重ねようとしている様子がうかがえます。「四鏡」の他の作品と比べると文学的価値は低いとされています 

増鏡

  • 作者:未詳(二条良基の説もあり)
  • 成立時期:南北朝時代(1338〜1376年ごろ)
  • 描かれている時代 安徳天皇(81代)の治承4年から後醍醐天皇(96代)の元弘3年。15代154年間
  • 形式:編年体 

3巻。『増鏡』も他の「四鏡」同様『大鏡』と同じ語り口で、嵯峨清凉寺に詣でた際、100歳を超える老尼が作者に語ったものを記した形で描かれています。鎌倉時代の歴史的な大事件、承久の乱元弘の変を中心に南北両朝迭立に揺れ動く武家社会の様子などが描かれるほか、宮廷における行事や公家の文化的生活も詳しく描かれているのが特徴です。 

覚え方 

よく言われていますが四鏡」はだい(『大鏡』)こん(『今鏡』)みず(『水鏡』)まし(『増鏡』)で覚えましょう 

同じく藤原道長が栄華を極めるまでを描いた『栄華物語』と『大鏡』ですが、前者は道長に近い女房らの手によるものと考えられ、女性的な情緒に溢れ、宮廷での生活が詳しく描かれています。後者は男性の手によるものと考えられ、藤原道長が栄華を極めるまで、摂関政治の仕組みを写実的に描いています。特に『栄花物語』と『大鏡』は問題に出やすいのできちんとおさえておきましょう。 

(註)

  • [i]史記…前漢の司馬遷が著した中国最初の正史。前91年ころに完成したと考えられる。黄帝から前漢武帝までの紀伝体の史書で,12本紀・10表・8書・30世家・70列伝の計130巻。本紀は歴代王朝の皇帝中心の記録,表は年表,書は文物・制度の変遷を説いたもの,世家は有力諸侯の国別による年代記,列伝は官吏・学者・経済家・庶民などで後世に名を残すにたる個人の伝記。のちの中国の正史はすべてこの形式に従った。客観的・総合的な歴史叙述は後世史書の模範となった。(旺文社『世界史事典』) 
  • [ii]六国史…奈良〜平安前期,古代天皇制の盛期に,政治上の重要事項を記録編集した六つの勅撰史書の総称。すべて勅撰。『日本書紀』『続 (しよく) 日本紀』『日本後紀』『続日本後紀』『日本文徳天皇実録』『日本三代実録』の6書で,いずれも漢文・編年体で書かれている。『日本書紀』の後半以後は,官庁の記録によって編纂された重要史料。律令国家の衰退とともに中絶したが,明治時代にこれを継ぐため修史局(現史料編纂所)が置かれ,『大日本史料』を続刊中である。(旺文社『日本史事典』) 
  • [iii]日本三代実録…六国史の第六。五〇巻。源能有、藤原時平、菅原道真らの撰。宇多天皇の勅をうけて着手、醍醐天皇の延喜元年(九〇一)奏送。清和・陽成・光孝の三代三〇年間を編年体で叙述。六国史中最大の巻数を持ち、内容も精細かつ正確である。三代実録。(『日本国語大辞典』) 
  • [iv]扶桑略記…平安末期,延暦寺の僧皇円の著した歴史書。30巻。神武天皇から堀河天皇までの漢文編年体の史書。仏教関係の記事が多く,六国史にない記述も少なくない。2〜6巻,20〜30巻までの計16巻と神武天皇から平城天皇に至る抄本が現存する。(旺文社『日本史事典』) 

問題

問1、『栄花物語』は誰の栄華を描いた歴史物語ですか。
問2、『大鏡』は紀伝体、編年体どちらの形式で書かれていますか。
問3、『大鏡』が成立したのは何時代ですか。
問4、『大鏡』の次に書かれた「四鏡」の一つは何ですか。
問5、「四鏡」の最後に書かれたのは何ですか、また何時代に書かれましたか。

【解答】

問1、藤原道長
問2、紀伝体
問3、平安時代
問4、今鏡
問5、増鏡/南北朝時代

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