前回までの連載では、フルタイムで仕事をしながら中学受験におけるいくつかのステップ、特に母親としてやってきたサポートについて書いてきました。
今回は、一度立ち返って、なぜわが家の息子が中学受験をすることにしたのか、そのワケについて触れたいと思います。中学受験を決意するワケはご家庭によっていろ色だと思いますが、参考にしていただければと思います。
6年間好きなことに打ち込んでほしい
わが家では、息子が中学受験をしましたが、その母である私、そして父(外国人)は、ともに公立中学校の出身です。ちなみに高校も公立で、大学は母が私立、父が国立です。ですから、両親ともに私立中学受験という経験がありませんでした。
母である私は高校と大学を受験したわけですが、ベビーブーマー世代でして(年齢がわかってしまいますね…)、生まれた瞬間から競争、競争の毎日でした。当時はそれが当たり前だったので、もちろんそんなことに考え及びもしませんでしたが、今にいなると青春を謳歌できる(いささか古い表現ですが)中学生活、高校生活ともそれぞれ3年間しかないのに、そのうち3分の1も受験に費やすなんてっもったいない!と考えていました。
息子は小学生の6年間、2つ種類の違うスポーツをかけ持ちしていました。そのほかの習い事もやっていましたが、中心はスポーツでした。どちらも6年間通して続けるほど熱中していたので、のびのびと好きなことに中高6年間打ち込んでほしいなあと思ったのが、中学受験を考え始めたきっかけでした。
成績が良くても行きたい学校を受験できない?
もう一つ気になっていることがありました。それは、高校受験における「内申点」のシステム。地域によって異なりますが、わが家のある地域では、高校受験時に「内申点」+「試験結果」で評価され、合否が決定します。割合は地域や学校によって異なりますが、内申点重視ということがとても引っかかったのです。
内申点はクラブ活動や課外活動、生活態度などを加味して点数がつけられますが、そこで感じていたのは、「公立はゼネラリスト以外は評価が低いのではないか」ということ。要は、勉強もでき、生活態度もよく、部活に打ち込み、先生との関係もいい・・・そういった何でもできる子、いわゆる優等生は文句なく上位校を狙えます。でも、もし勉強は得意でも部活をやっていない、それだけで内申点が低くなり、入試の前にすでに差がついている・・・そのようなシステムに疑問を持ったのです。
アップルの故スティーブ・ジョブス氏は小学生のころから問題児だった、という話は有名ですよね。本人は蝶を追い掛け回すことと読書が好きだったのに、「今は○○すべき」とたしなめられ、子どもにとってとても大切な好奇心を押さえつけられ、そのエネルギーはいたずらをすることに向かってしまうのです。
たとえば自分の子どもがそのような子だったら、高い内申点がつくわけがないですよね。ジョブス氏も成績が悪かったそうですが、もし日本の受験システムだったら全く合わず、行ける高校がない、という事態になったかもしれません。彼のような才能の塊のような人でも、そういうことが起こってしまい、取り戻すのは難しい、そんな型にはめて子供を評価する高校受験のシステムでは、これから花開くかもしれない息子の個性や才能を制限してしまうのではないか、そう思っていました。
わが家の中学受験は母主導で始まった
息子は中学受験をしましたから、これまで書いてきたようなシステムで高校受験をする予定はありません。今は公立中高一貫校もありますし、高校受験システムも昔と全く同じということはありませんし、私の思い込みも多分にあるとは思います。
いずれにせよ、「型にはめないでわが子の才能を伸ばしたい」、そして「6年間、好きなことに打ち込んでほしい」、そんなことを強く感じて、息子になんとなく私立中学を受験することをすすめてみたのです。完全な母主導で始まったわが息子の中学受験。それでも、息子も興味を持ち、次のステップに進むことにしたのです。
次のステップとは・・・「じゃあ、どこの塾に行く?」。次回は、わが家の塾選びについて書きたいと思います。
一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。