前回の理科の記事では、気温の正確な測り方について、百葉箱を例に解説しました。
今回も、暗記すべきことの多い地学分野の中から、受験生が間違えやすい「風」について説明します。
天気予報でよく耳にする身近な存在の「風」ですが、ただやみくもに覚えようとしても仕組みがわかっていないとテストで間違えやすい単元なのです。ですが、あるポイントをしっかり理解すれば、間違いも格段に減り、得点源にすることができます。今回は、特に間違いがちな「谷風と海風」「陸風と海風」に絞って、要点をまとめていきます。
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たかが二択、されど二択!?
受験生の多くは、「谷風と山風」や「陸風と海風」の問題に出会ったとき、問われているのが「谷風と山風」なのか「陸風と海風」のどちらなのかを判断することはできるでしょう。しかし、答えが谷風なのか山風なのか、はたまた陸風なのか海風なのか、ピンポイントで正確に答えられるかというと、かなりの受験生が二択、つまり50%の確率に賭けて(カンで)勝負に出てしまうのです・・・。
確かに、二択なら半分の確率で正解できるかもしれません。しかし、それでは当然半分の確率で間違える可能性があるということです。入試で「風」の問題が出たところを想像してみてください。その1問で合否が分かれることだってあり得るのです。
そのような二択に賭けるのではなく、しっかり理由とセットで覚えておけば、間違えることはなくなります。では、その理由とは何でしょうか。
「谷風と山風」「陸風と海風」の問題を考えるときのポイントはズバリ、「温度変化」です。
エアコンを例にとってみましょう。暖かい風は上方向に、逆に冷たい風は下方向に集まりますよね。このような温度の変化を念頭に置いて気流を考えると、「風」の問題は怖くなくなります。
谷風と山風
昼間に発生する「谷風」
昼になって日がさし始めると、山の斜面が太陽熱によって温められ、地温が上昇するため、空気を温めます。そうすると、暖かく軽い空気が山の斜面沿いを上昇します。つまり、暖かく軽い風が「谷間から山」に向かって吹くので、これを「谷風」といいます。
夜に発生する「山風」
逆に、夜になって日射がなくなると、山の熱もなくなり、地温が下降します。低くなった地温は空気を冷やすため、下降気流が発生するので、「山から谷間」に向かって風が吹くので、これを「山風」というのです。
昼と夜の温度変化が、風の向きを変えることがわかりますね。
海風と陸風
海と陸を比較すると、
- 海・・・温まりにくく冷めにくい。地表付近では気圧が高い
- 陸・・・温まりやすく冷めやすい。地表付近では気圧が低い
という特徴があります。まずこれを理解しましょう。
昼間に発生する「海風」
昼になって日がさし始めると、陸上にある空気は海上にある空気よりも速く暖められます。暖まった空気は密度が低くなって軽くなるので、上昇気流が発生します。上昇気流によって上空へと移動した空気は、気圧が下がるため、今度は冷やされます。このようにして陸上では地表付近では海上より気温が高くなりますが、上空では逆に気温が低いという状態になります。つまり、地表付近では陸側は海側よりも気圧が低くなるので、「気圧の高い海側から気圧の低い陸側」に向かって風が吹きます。これが「海風」です。
夜に発生する「陸風」
夜になって日射がなくなると、陸上にある空気は海上にある空気よりも速く冷えていきます。そうすると、海風とは反対に、陸側の温度が下降するため下降気流が発生し、「気圧の高い陸側から気圧の低い海側」に向かって風が吹きます。これが「陸風」です。
凪とは?
ちなみに、海風と陸風が入れ替わる、風がやんでいる状態を「凪(なぎ)」といいます。1日に朝(朝凪)と夕方(夕凪)の2回起こる現象です。「凪」ということばは、国語の文章、特に詩などによく登場するので、覚えておきましょう。
まとめ
いかがでしたか?「風の発生が、日中の温度変化と深い関係がある」ことが理解できれば、二択の勝負に出て負けることもなくなります。ぜひ、100%の確率で正解できるように、風と温度変化の関係は、しっかり押さえておきましょう。
一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。