戦国時代については、歴史ドラマになったり、いろんな英雄がでてきて、比較的小学生にもなじみがあり、好きな子も多い時代です。ですが、実は戦国時代の始まりには諸説あり、受験生でも「いつからを戦国時代というの?」という疑問を持つことの多い時代でもあります。
室町時代の前期は南北朝時代と重なっており(1336年~1392年)、後期は戦国時代と重なっています。戦国時代とは、室町幕府の力が衰え、各地に戦国大名が次々誕生して群雄割拠した時代をいいますが、このように、室町時代~戦国時代にかけては、時代区分がはっきりしない部分があるのです。今回は、わかりにくい、でも面白い戦国時代について、重要な出来事・流れを中心にまとめていきます。
応仁(・文明)の乱
戦国時代について、応仁(・文明)の乱(1467年)が始まりだという説があります。この年号は非常に重要なので、必ず覚えておきましょう。かつては応仁の乱と呼ばれていましたが、この戦乱のほとんどは文明年間だったので、応仁・文明の乱と呼ばれることが多くなりました(中学受験のテキストでは応仁の乱と書かれていますので、無理して文明とつけなくてもいいです)。
この戦乱の原因は、後継者争いです。8代将軍足利義政には後継ぎが生まれなかったので、弟の義視を後継者に指名しました。しかし、そのあと妻の富子に子どもが生まれ、富子と義視の間に後継者争いが勃発します。さらに、幕府の要職である管領の畠山家で、畠山政長と畠山義就の間にも後継者争いが起こります。畠山政長には細川勝元、畠山義就には山名持豊(宗全という名の方が有名ですね)という有力武将がつき、武力衝突に発展します。
他の管領の斯波家でも斯波義廉と斯波義敏の間で後継者争いがあり、事態は泥沼化していきます。将軍の義政には、これらの争いを調整する能力がなかったようです。彼は銀閣を建てるなど、文化人としては一流でしたが、政治家としては三流だったと言われています。
泥沼の合戦が約10年繰り返された後、細川勝元と山名持豊の死によって、応仁の乱は終息します。ほとんど得るものがなかったこの戦いは、京都の町を焼野原にし、室町幕府の力も弱体化させてしまいます。幕府の権威失墜です。室町幕府に不満を抱く武士は、独立して動くようになり、勢力を拡大していきます。守護大名が領地を取り合う戦乱の時代となり、各地で一揆も起こりますが、幕府にはもはやそれらを制御する力もありませんでした。そこで、全国は群雄割拠の時代に突入したということで、応仁の乱が戦国時代の始まりだという説があるのです。
応仁の乱は歴史の流れの中でも非常に重要な出来事です。年号とともに、どのようなきっかけで起こった事件なのか、しっかり押さえておきましょう。
明応の政変
もう一つの説は、1493年の明応の政変を始まりとする説です。応仁の乱でかなり幕府は力を失っていたものの、中央政権はまだ存続していました。ですが、細川勝元の子である細川政元が、10代将軍である足利義材(のちに改名して義稙・よしたね)を追放し、足利義澄を将軍に据える、という事件が起こります。これが明応の政変です。この事件以降、室町幕府の中央政権は完全に失墜し、全国に戦乱が広がり、下克上の流れが顕著になっていきます。
どちらが始まりか
この二つの説が代表的ですが、最近では幕府の中央政権機能が失われた、明応の政変を戦国時代の始まりとする説が有力です。応仁の乱と明応の政変を一連の事件ととらえる見方もあるようです。ですから、幕府が弱体していく流れの中で、幕府の権威失墜のきっかけとなった内乱の年を始まりとするか、幕府の権威が完全に失墜した政変の年を始まりとするか、の違いととらえることもできます。諸説あるところなので、戦国時代が始まった年を答えなさい、というような問題はまず中学受験では出されないでしょう。しかし、室町時代の権威が失墜し、群雄割拠の時代になった出来事、流れについてはしっかり押さえておく必要があります。
なぜ戦国の世になってしまったかに注目しよう
ただやみくもに年号や事件を覚えようとすると忘れやすくなりますし、混乱します。戦国時代とはどんな世の中だったのか、最初に書きましたが、理解すべきは、なぜ全国に武将が群雄割拠する戦乱の世になってしまったか、ということです。
それは簡単に言うと、「幕府が国をしっかり治められないから」ですね。それをいつからと考えるか、に注目すると理解しやすいと思います。下克上の風潮や戦国大名の登場など、時代の特徴を覚えることも大事ですが、それはどちらかというと「結果」です。いつから下克上の世の中になったのか、ではなく、なぜ下克上の世の中になったのか、その原因を考えるとこのあたりから戦国の世が始まったのだな、と理解しやすいです。
歴史では一番、流れが大事です。その流れを変える大事件が起こり、時代が変わっていくのです。原因と結果を確認しながら、学習を進めるように心がけましょう。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。