中学受験で歴史を勉強する場合、中心となるのは政治史です。歴史は時代ごとに何が起こったか、その出来事と理由が続いていき、中心となった人物を含めて政治の流れが中心になっているからです。
しかし、入試のことを考えるとおろそかにできないのが「文化史」です。それぞれの時代によって発展した文化の特徴は混乱しやすく、また、史料問題としても出題され、意外に点を取りにくいのです。「文化史」という歴史科目があるわけではありませんが、「文化」という視点で歴史の流れを整理しておくと、政治や外交とも関連させて、歴史全体を見る視点を養うことができます。
今回は、歴史の中でも文化史の学習法のポイントについてまとめていきます。しっかり点が取れるよう、知識の整理のしかたを自分のものにしてしまいましょう。
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似ている文化はまとめておく
歴史の最初の方に出てくる、飛鳥文化と天平文化は区別がつきにくいかもしれません。似ている文化はそれぞれの共通点を意識しながら、特徴をまとめてみましょう。
飛鳥文化
- 蘇我氏、聖徳太子の時代
- 仏教中心
- 中国と朝鮮の影響が強い
- 法隆寺、釈迦三尊像、高松塚古墳が有名。
天平文化
- 聖武天皇の時代
- 仏教中心
- 遣唐使が持ち帰った唐、西アジア、南アジアの文化の影響を受けている、国際色豊かな文化
- 平城京の貴族が作り上げた
- 壮大で華やか
- 東大寺の大仏、正倉院、古事記、日本書紀、万葉集などが有名。
この2つの文化はどちらも仏教中心です。しかも、どちらも中国の影響を受けているなど、国際色がある点では共通しており、区別がつきにくいのです。キーワードの一つは「遣唐使の影響」ですね。また、建造物や歴史書、歌集などについて、その文化の特徴や、政治の中心人物とも関連させて整理しておきましょう。
平安・鎌倉仏教は混乱しやすい
平安時代と鎌倉時代には、さまざまな種類の仏教が登場します。混乱しやすいので、整理しておきましょう。
平安時代の仏教
- 真言宗:空海(弘法大師)、高野山金剛峰寺
- 天台宗:最澄(伝教大師)、比叡山延暦寺
「てんさいしんくう」という語呂合わせで覚えることができます。空海、高野山、金剛峯寺はいずれも「K」で始まるので覚えやすいでしょう。時代が進むにつれ、ときの政治と対立する仏教もありますね。
鎌倉時代の仏教
- 浄土宗:法然(「南無阿弥陀仏」と唱える)
- 浄土真宗:親鸞(阿弥陀仏への信仰、悪人正機、他力本願)
- 時宗:一遍(踊り念仏)
- 臨済宗:栄西(禅宗)
- 曹洞宗:道元(禅宗)
- 法華宗:日蓮
「しん」しゅうの「しん」らん、りん「ざい」しゅうのえい「さい」、そう「とう」しゅうの「どう」げんなど、読みをひっかけて組み合わせてみると覚えやすいかもしれません。
鎌倉時代は、戦乱やききんが続いたこともあり、新しい仏教が平民にも広まりました。世の中が不穏だったため、仏教にすがるという傾向が強まった時代です。
鎌倉時代・室町時代の文化
武家政治が本格的に始まった鎌倉時代、室町時代は、それまでとは違う文化の特徴が出てきます。
鎌倉文化
- 武家の影響が強い
- 素朴で力強い
- 平家物語、徒然草などの文学作品
- 東大寺南大門、金剛力士像などの建造物、仏像
文学作品は、作者不詳のものもありますが、内容や何が描かれているかを問題文にして答えさせるような入試問題も出題されます。また、東大寺南大門や金剛力士像は史料問題でよく出題されますので、資料集などで必ず確認しておきましょう。
室町時代の文化
室町時代の文化は、北山文化と東山文化に分けられます。
北山文化
- 3代将軍足利義満の時代
- 伝統的な公家文化と振興の武家文化が融合し、華やか
- 明との勘合貿易、禅宗を通じて大陸文化の影響も受けている
- 鹿苑寺金閣、寝殿造(阿弥陀像)と禅宗様(仏殿風で仏舎利を置いた)
- 能の大成
東山文化
- 8代将軍足利義政の時代
- 禅宗の影響を受け、質素
- 慈照寺銀閣、書院造
- 連歌、御伽草子、茶の湯、生け花、水墨画、狩野派
室町時代の足利将軍は、文化を大切にした人たちでした。彼らの性格がそれぞれの文化に表れています。東山文化のころは、戦国時代の幕開けにつながる時期で、世の中は落ち着きがなく反乱も多かったので、文化面では一流、政治面では三流という評価を受けてしまっています。
文化は、「世の中のムード」と結びついている
それぞれの時代の文化は、ときの権力者や世の中の情勢と深い関連があります。ですから、「文化だけ」「政治だけ」ではなく、結び付けて覚えたほうが記憶に残りやすいです。文化に政治の色が、政治に文化の色がお互いに影響し合い、結び付いていますから、それぞれの時代の文化の特徴を整理するときには、その時代の政治の特徴からも連想できるようにしておきましょう。また、最初にも書きましたが、史料問題では文化史は必須です。ことばや名前だけでなく、資料集でしっかり確認しておきましょう。
別の記事で、安土・桃山時代や江戸時代の文化についても整理していきます。