中学受験の社会の中でも、公民分野は小学生にとって理解するのがなかなか難しい内容ですよね。歴史や地理に比べると、比較的基本的な内容が出題されるとはいえ、憲法の条文など暗記が必要であったり、歴史や地理と政治を組み合わせて、歴史の問題だ・・・と解いていると、途中で政治の知識をいきなり聞いてくる、ということはよくあります。また、正しいものをすべて選びなさい、などの形で難度を上げている出題も見られます。
大人にとっても難しいと感じる公民分野ですが、ほかの単元に比べると暗記しなければならない量自体はそれほど多くはありません。問題は、その内容の理解です。
今回は、公民の中でも、比較的身近な「政治」の仕組みについて、理解する方法をお伝えしたいと思います。
理解の方法① イラストレーション
政治の仕組みを理解するには、「イラストレーション」、つまり、絵や図、表を描いてみると、理解するための味方になってくれます。
たとえば、三権分立は国会・内閣・裁判所がお互いを監視する三角形の図(塾のテキストなどにありますよね)を自分で作ってみると、軍と理解しやすくなります。三権分立は、三権を代表する機関(国会、内閣、裁判所)がお互いに監視し合うことによって、どれかの権力の暴走を止めようとするものです。ですから、国会、内閣、裁判所を三角形の頂点にそれぞれ書いて、お互いに矢印を引き、どのような形でお互いを監視しているか、を自分で書いてみるのです。テキストの図はまとまってカラフルで見やすいですが、それをただ見るよりも、「これはどういうことなんだろう」と考えながら、自分で図を書いて何度も覚えるようにすると、記憶の定着度が違います。見なくても書けるようにしたいですね。
また、逆に、三権分立ではなく、一つの機関に権力が集中している絵を描いてみたらどうでしょう。このような状態を独裁国家と言いますが、このような独裁国家だったら国はどうなってしまうのかを親子で考えてみると、さらに三権分立の必要性、意味というものが理解しやすくなります。
国会の衆議院と参議院については、違いがたくさんあります。選挙の方法や議員(漢字に注意してくださいね)定数、被選挙権(立候補できる権利)の年齢の違いなど、様々ある違いを比較して表にしてみてください。すると、その表をみれば、衆議院は参議院よりも任期が短いこと、解散があることに気づくことができます。つまり、任期が短く、解散という制度があることによって衆議院の方が国民の意見(世論と言います)を反映しやすいんだな、ということが理解できます。そうすると、なぜ「衆議院の優越」という仕組みがあるのかが理解しやすくなりますね。なぜ衆議院にあって、参議院にないのか、それが自分で書いた図から読み取ることができれば、しっかり理解できたことになります。これらの関係は、中学入試でよく問われる問題ですが、丸暗記ではなく、制度や仕組みとその理由を結びつけて理解することが大切です。
このように、自分で絵や図、表を描いてみる「イラストレーション」を公民の勉強の中に取り入れてみると、理解が深まり、知識も正確になります。ぜひやってみてください。
理解の方法② デモンストレーション
政治の仕組みを理解するには、「デモンストレーション」、つまり、実演も有効な方法です。
たとえば、ある選挙を想定してみましょう。それに実際に立候補しようと思うならどんな資格が必要か、投票する人にはどんな資格が必要か、を親子で確認してみるのです。選挙権の年齢は最近(いつからでしょう?)20歳から18歳に引き下げられましたが、その点も確認できます。この選挙権の年齢の引き下げは、政治・時事問題で2016年、2017年ともに出題率が非常に高かったです。つまり、それだけ注目を集めたニュースだったということですね。
そういった基本を押さえながら実際に投票したとして、小選挙区だったらだれが当選するか、比例代表制のドント式(政党の得票数を整数で割って、出た数の大きい順に配分することです)で計算したら、だれが当選するのかを計算してみます。すると、ただ「ドント式」と言って丸覚えするよりも実感が持てますよね。その際、さらに小選挙区と比例代表制それぞれのメリット、デメリットについても話し合ってみるとより理解が進みますよ。
内閣についても、「実演」してみましょう。テレビのニュースでもやっていますから、イメージしやすいかもしれませんね。自分が国会議員になったとして、その中からどうやって内閣総理大臣を選ぶのか、国務大臣はどこから選ぶのかを調べて、実際に選びます。子どもに総理大臣になってもらって、内閣を作らせても面白いですね。国会から選ばれ、行政を任された内閣は、国会に対して責任を負わなければならないという感覚がつかめてくると、これまた難しいと思われがちな「議院内閣制」も理解できるようになります。
デモンストレーションは、いわゆる「ごっこ」遊びのようになりますが、過小評価するべきではありません。率直に言ってしまえば、政治は子どもにとっては遠い大人の世界の話です。それを子どもの世界に落とし込んで、できるだけ身近に感じることができるのがデモンストレーションの良さです。ぜひ、親子でやってみてください。実体験が伴うと、理解も深まります。
理解の方法③ 小学生新聞やテレビ番組の活用
難しい政治の仕組みをわかりやすく解説しているテレビ番組があります。小学生には少し難しい説明もありますが、おおいに参考になるものです。また、小学生新聞にもわかりやすい説明記事があります。それらをぜひ活用していただきたいと思います。こういう番組や記事は、最近のニューストピックスを取り上げていますから、時事問題対策にもなりますね。日々、このようなニュースに触れておくと、入試直前期に時事問題を無理に詰め込まずとも、いまのうちから対策をしているのと同じですから、あわてずに済みますよ。
まとめ
公民分野は、大人の世界を子どもに理解させなければいけないという難しさを持った分野です。それを子どもの目線に落としてぜひ親子で話し合ってみていただきたいと思います。また、図を描いたら一緒に確認して、簡単に言うとこういうことだよ、と説明してあげるとより理解が深まります。ぜひ、参考にしてみてください。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。