日本における四大公害病の歴史と公害問題への対策!【資源とエネルギー】

近年環境問題についての関心が高まる中,小学校の教育課程でも資源とエネルギーという分野が取り上げられるようになり,その結果中学受験を攻略する上でも環境問題に関する知識が欠かせないものとなりました。そこで今回の記事では,資源とエネルギーに関するシリーズの第5本目として,公害問題について取り扱っていきます。

公害とは?

公害とは,広い意味で言えば大勢の人を迷惑させるような行為を指す言葉です。そのため色々な捉え方があるのですが,中学受験の社会で登場したときは,企業の活動が原因となって環境が汚染された結果人々の健康や生活に及んでしまう被害を指すことが多いです。

この公害は総務省のまとめるところによると7種類に分類できるそうです。その7つとは,空気が汚れる大気汚染・水が汚れる水質汚濁・土が汚れる土壌汚染・騒音・振動・地盤沈下・悪臭です。このような公害は人々の健康や生活に影響をもたらす可能性があり,また事実として過去に社会問題になっており,対策のための法律が制定されています。

どうして公害が発生するの?

ではなぜこのような公害が発生してしまうのでしょうか。その原因は様々ですが,とりわけ上の文章で述べたような企業による生産活動が主な原因として考えられます。企業はしばしばお金を稼ぐことに傾倒してしまい,それゆえ時に企業は,知らず知らずのうちに人々の生活や社会や環境に悪影響を及ぼしてしまうのです。

ただし,環境に対する配慮が注目されてきたのは実はここ数年の話である,という事実には注意しておきべきでしょう。現在は公害対策が国や地域によって入念にとられているものの,下で取り上げるような公害問題が発生したのは,まだ環境問題や地球温暖化に対する関心が低く排水や排気ガスに対する処理の技術も十分ではない時期であったため,工場や企業が絶対に悪いと責めきれない点も確かに存在します。これからの社会を担っていく私たち全員が向き合わなければいけない問題ですね。

日本で起きた公害病

公害問題は日本でも例外なく発生していました。中でも高度経済成長期と呼ばれる時期に公害問題が多発しました。この高度経済成長期というのは日本の重工業が急速に発達した時代であり,工場がたくさん建てられたのですが,今よりも環境に対する関心が低かったために排気ガスや汚水が制限されずに排出されていました。そのせいで公害が発生しやすかったのです。

そしてこれらの公害の中で特に大きな病気を引き起こした4つの公害のことを四大公害,そして引き起こされた4つの病気のことを四大公害病と呼びます。ここからはこの四大公害病に焦点を当て,原因や症状などについてまとめていきます。

水俣病

まずは水俣病です。おそらくこの病気が公害病の中で最も有名なものではないでしょうか。この公害病は熊本県水俣市の八代湾周辺で発生したために名付けられ,その地域にあった化学工場が工業廃水を処理しないで排出していたこと,つまりは水質汚濁が原因で生じたものです。

この工業廃水には有機水銀という有毒物が含まれていて,海の魚が誤ってこの水銀をエサと共に取り込んでしまいます。そしてその魚を何も知らない人間が食べることで間接的に有毒物質を体内に取り込んでしまい,物質が蓄積されていったというわけです。

症状としては軽いものだと頭痛や疲労などが挙げられますが,重いものだと感覚障害や言語障害,ひどい場合には死に至ることもあったそうで,後に公害の原点とも言われるくらい大きな衝撃を与えました。

四日市ぜんそく

次にご紹介するのが四日市ぜんそくです。この病気は三重県四日市市(よっかいちし)で発生した病気です。四日市ぜんそくも工場での生産活動に原因を持つ公害病ですが,水俣病及び下でご紹介する2つの公害病と大きく違うところが水質汚濁ではなく大気汚染によって生じたということです。

四日市市の石油化学工場が排出する煙には亜硫酸が含まれていて,この亜硫酸ガスを吸い込んだ住民にぜん息患者が多く見られるようになり,四日市ぜんそくと呼ばれるようになりました。ただし,単にぜん息と言ってもその症状は大変重く,気管支炎や呼吸器疾患にもつながる危険性があるということで問題視されました。

イタイイタイ病

3番目に触れるのがイタイイタイ病です。なんだか面白い名前だと思う人もいるかもしれませんが,この公害病も上の二つと同様に大きな健康被害をもたらしました。イタイイタイ病が発生した場所は富山県神通川の流域で,金属精錬工場川の水を汚染してしまったことに原因がある公害です。

この工場が川に流してしまった物質はカドミウムというもので,カドミウムに汚染された水を飲んでしまったり,汚染された農地で作られた農作物を食べてしまったりすることで人々の体に蓄積されていきました。イタイイタイ病の主な症状は骨が脆くなることに起因する全身の痛みで,最終的には1人で動けなくなって寝込んでしまうほどの痛みに襲われるそうです。患者はこの症状に対して「痛い痛い」と苦しみ続け,この叫びから病名が名付けられました。

新潟水俣病

最後にご紹介するのが新潟水俣病です。別名で第二水俣病と呼ぶこともあるこの公害病は,新潟県阿賀野川の流域で発生した病気です。名前から察した方もいるでしょうが,新潟水俣病は場所が違うだけで水俣病と全く同じような水質汚濁から生じました。

この地域にあった化学工場が処理しないまま工業廃水を阿賀野川に流してしまい,そこに含まれていた有機水銀が川魚などを経由して人々の体に蓄えられていき,水俣病と同様の症状が現れてしまったというわけです。

日本の公害対策

このような公害病の話を読んだり聞いたりすると,つい「自分は大丈夫だろうか」と考えてしまいますよね。しかし現代日本ではこれらの公害問題を受け,きちんと対策が取られています。

一番初めに行われた対策が,1967年に政府によって出された公害対策基本法です。これは文字通り公害を予防するための法律で,上で挙げた7公害の防止対策がこの法律に基づいて進められました。またこれと同時期の1972年に制定された法律で,自然環境保全法というものも存在します。こちらは公害というよりは生物や森林を守るための対策になります。現在はこれらの法律の代わりに,2つの内容をセットにまとめて1993年に制定された環境基本法という法律が,環境問題や公害問題を起こさないための枠組みとなっています。

また対策は法律だけでとられているのではありません。政府の中の省庁で環境や公害といった問題に直々に対応しているものも存在します。それが2001年に設置された環境省です。この環境省は1971年に設置された環境庁がグレードアップした組織なのですが,この環境省が省資源・省エネルギーなどを訴えることでも公害の克服が達成されています。

この他にも,国際的な水準でとられている対策や条約や会議といったものが存在するのですが,それらはまた今後の記事で扱いたいと思いますので,ひとまずは日本国内の対策をメインに覚えていただけますと幸いです。

まとめ

今回の記事では日本における公害の歴史と現在取られている対策をまとめていきました。このシリーズで取り上げている環境・資源・エネルギーというのは中学受験の社会において出題されやすい単元であるため,しっかりと覚えておきたいところです。もちろん重要度が高い分覚えることは多いでしょうが,一つずつ着実に暗記していきましょう。本記事が学習のお役に立てば幸いです。

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