社会問題読解〜国際社会・ヨーロッパ〜[中学受験社会過去問解説シリーズ]

今回は平成30年度の帝京大学中学校の社会の過去問を一部修正して社会の問題の解き方、さらに国際社会について説明していきます。 

問題

皆さんの中で日頃、鉛筆を使っている人はどのくらいいるでしょうか。鉛筆の起源はわからないことが多いですが、古代Aギリシャでは「鉛」を使った筆記用具が使われ、動物の皮にこすって記号を書いたといわれています。14世紀のBイタリアでは、画家たちが「鉛」と「錫」を混ぜて作った芯に木をつけた道具を用いて絵を描いていました。

16世紀のCイギリスでは質の良い「黒鉛」が発見されました。「黒鉛」が文字を書くことに適していることに気づいたイギリス人は、薄く切った「黒鉛」の板に糸を巻いたものや、「黒鉛」を木の板にはめこんだ道具で記録を残すようになりました。これが鉛筆の始まりとされています。イギリス製の鉛筆は人気があり、ヨーロッパ各地に輸入されましたが、良質な「黒鉛」が次第に取れなくなると、代用品がみつからず、しばらく新たな技術を待つことになります。 

18世紀に入ると、Dフランスのコンテという人が「黒鉛」と粘土の粉末を高温で焼き固めて芯をつくる技術を開発しました。大量生産も可能であるこの方法は現在の鉛筆芯の製造法の基礎になります。

フランス同様、Eドイツでも18世紀に鉛筆の生産が始まりました。当初はイギリス製鉛筆の方に人気が集まっていましたが、上記のコンテの技術を応用したことで品質が向上し、ドイツ製の鉛筆は世界各地に広まっていきました。 

問1

文章中の下線部Aに関連して、現在のギリシャの説明として正しいものをア〜エから1つ選び、その記号を答えなさい。 

  • ア、この国には多くのイスラム教徒が住んでおり、リヤルと呼ばれる通貨が用いられている。日本はこの国から多くの原油を輸入している。
  • イ、この国には多くの仏教徒が住んでおり、バーツと呼ばれる通貨が用いられている。世界有数の米の輸出国で、天然ゴムの栽培もさかんに行われている。
  • ウ、この国には多くのキリスト教徒が住んでおり、レアルと呼ばれる通貨が用いられている。コーヒー豆やサトウキビの栽培がさかんに行われている。
  • エ、この国には多くのキリスト教徒が住んでおり、ユーロと呼ばれる通貨が用いられている。観光業がさかんだが、近年では経済危機にみまわれていた。
  • 【解答】エ
    ギリシャはEUに加盟しており、用いられている通貨はユーロです。また、ギリシャにはパルテノン神殿をはじめ古代ギリシャにまつわる遺跡が数多く残っており、観光がさかんです。
    その他の選択肢がどの国に関するものなのか説明していきます。それぞれ、通貨宗教産業その国の特徴になっています。

    • ア、この国には多くのイスラム教徒が住んでおり、リヤルと呼ばれる通貨が用いられている。日本はこの国から多くの原油を輸入している。⇨サウジアラビア
    • イ、この国には多くの仏教徒が住んでおり、バーツと呼ばれる通貨が用いられている。世界有数の米の輸出国で、天然ゴムの栽培もさかんに行われている。⇨タイ
    • ウ、この国には多くのキリスト教徒が住んでおり、レアルと呼ばれる通貨が用いられている。コーヒー豆サトウキビの栽培がさかんに行われている。⇨ブラジル 

問2

文章中の下線部Bに関連して、イタリアは1940年にアメリカに対抗するため、他の2つの国家と軍事同盟を結びました。この2つの国家の組み合わせとして正しいものをア〜エから1つ選び、その記号を答えなさい。 

  • ア、フランス・ドイツ
  • イ、ドイツ・日本
  • ウ、日本・ソ連
  • エ、ソ連・フランス
  • 【解答】イ、ドイツ・日本
    第二次世界大戦下の1940年にベルリンで調印された日独伊三国同盟。1937年から始まった日中戦争が膠着し、アメリカを仮想敵国した近衛文麿内閣とナチ党率いるヒトラーファシスト党率いるムッソリーニの三国が軍事同盟を組みました。 

問3

文章中の下線部Cに関連して、イギリスは世界で初めて産業革命が行われた国として知られています。当時のイギリス製品は安くて良質であったことから、多くの国で販売されていました。19世紀なかごろのイギリスの経済的な強さをあらわし、「世界の【 】」と表現されていました。【 】にあてはまる表現を漢字2字で書きなさい。

  • 【解答】工場
    植民地で原材料を作り、イギリスで製造し、世界に輸出していく、まさに世界経済をイギリスが回していました。その後イギリスはドイツ・アメリカの工業に抜かれ、その後アメリカが経済の中心になっていきます。 

問5

文章中の下線部Dに関連して、現在のフランスの説明として正しいものをア〜エから1つ選び、その記号で答えなさい。 

  • ア、西ヨーロッパ最大の農業国で工業もさかんである。イギリスとの間のドーバー海峡の海底にユーロトンネルを開通したことでも知られている。
  • イ、この国は小麦・ぶどう・オリーブの栽培がさかんである。観光客も多く、世界で最も世界遺産登録地の数が多い国としても知られている。
  • ウ、この国は自動車工業がさかんである。欧州連合で最も人口の多い国だが、多くの移民を受け入れて労働力を確保していることでも知られている。
  • エ、この国は小麦やとうもろこし、大豆などがさかんに栽培され、世界の食料庫と呼ばれている。人口は3億人を越え、多民族国家としても知られている。
  • 【解答】ア
    他の選択肢がどの国の説明か解説していきます。

    • イ、この国は小麦・ぶどう・オリーブの栽培がさかんである。観光客も多く、世界で最も世界遺産登録地の数が多い国としても知られている。
      イタリアオリーブの生産量が多いことで知られ、ベネチアやローマなど多くの遺跡が世界遺産として登録されています。
    • ウ、この国は自動車工業がさかんである。欧州連合で最も人口の多い国だが、多くの移民を受け入れて労働力を確保していることでも知られている。
      ドイツ…フランス・イタリアは農業国として知られていますが、ドイツは工業国として知られ、中でも自動車産業がさかんです。また人口が多い(EU加盟国の中で)ことも特徴です。
    • エ、この国は小麦やとうもろこし、大豆などがさかんに栽培され、世界の食料庫と呼ばれている。人口は3億人を越え、多民族国家としても知られている。
      アメリカ…総人口は中国・インドに続き3位のアメリカ。広大な土地を利用した農業がさかんであり、さまざまな人種が暮らす多民族国家です。

問6

文章中の下線部Eについて、この国は約50年間、東西に分かれていましたが、1989年に両国の分断を象徴する建造物が壊され、その翌年に統一国家が成立しました。現在もその一部が残されている建造物の名称を書きなさい。 

  • 【解答】ベルリンの壁
    第二次世界大戦後、アメリカソ連によって東西に分断されたドイツ。その分断の象徴とも言えるのがベルリンの壁でした。 

まとめ

今回の問題は鉛筆の話の文章を用いながら、世界の産業やEU諸国の特徴を問う問題が多く出ていました。特に問1や問5のような各国の特徴から選択肢を選ぶ問題は、その国の特徴をおさえておく必要があります。EUでは特にフランス・イタリア・ドイツが出題されることが多く、その国の産業や気候などをおさえておくようにしましょう。 

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