「人口の多さ」という観点から捉えよう!工業地域・工業地帯まとめ【京浜工業地帯編】

中学受験の社会は大きく地理・歴史・公民の3つの分野に分けられ,満遍なく対策することが必要です。工業地域・工業地帯はこのうち地理に該当するものですが,この範囲は覚えることが多くどうしもてつまずきがちです。そこで今回の記事は,日本全国に存在する工業地域・工業について一つずつご紹介していくシリーズの第6本目として,京浜工業地帯についてわかりやすく簡潔に解説していきます。

場所は?

それでは,まずは京浜工業地帯の場所から確認していきましょう。京浜という地名はほとんどの人にとって馴染みの無いものでしょう。関東内陸・北九州など地方の名前が入っているものや,阪神などスポーツやニュースでよく聞く名前に比べて,京浜という名前から特定の地域を思い浮かべることは難しいでしょう。

特に京浜工業地帯は京葉・中京などと漢字が似ているため,しっかり区別しておくことが必要です。したがってここからは地図を使って場所・地域について確認していきましょう。地図中の青く塗られている部分,この範囲が大体の京浜工業地域の区域になります。オレンジ色の点は代表的な都市を,青い文字はその都市名を,()の中身はそこで栄えている産業を表します。

この地図から分かるように,京浜工業地帯は埼玉南部・東京・神奈川を含むエリアのことを指します。似たような地域で京葉工業地域というものがありましたが,京葉は千葉を含む東京湾の東側京浜東京湾の西側なので,しっかり覚えておきましょう。

そして京浜の場所を覚える・他の工業地域や工業地帯と区別をつける上で有効なことが,京浜という漢字の由来です。京浜という漢字は「東+横」で作られたものです。横浜というのは神奈川の県庁所在地ですので,この漢字の構成を把握しておけば地図上の場所も一瞬でわかりますね。このように「地名+地名」で作られたものは京浜以外にも,京葉阪神などがありますので,セットで理解しておくといいでしょう,

工業の特徴!

それではここからは京浜工業地帯の工業の特徴について見ていきましょう。第1回から第5回までの記事で繰り返していますが,出荷額の高さ工業種類別の割合を覚えておくことが,中学受験に登場する社会を攻略するためには不可欠です。出荷額の高さとはその地域でモノがどのくらい作られているのかを,工業種類別の割合とは全てのモノの中で多く作られているのは何の種類かということを指します。それぞれの詳細な意味は第1回の瀬戸内工業地域編で紹介していますので,そちらを参考にしてみてください。以下では,この2つの要素に目を向けて解説していくことにします。

出荷額について

初めに確認するのは京浜工業地帯の出荷額です。京浜工業地帯ではいったいどれくらいモノが生み出されているのか,について考えていきましょう。

早速ですが,下にグラフを用意しました。このグラフは,全国の工業製品出荷額のうち,それぞれの工業地域・工業地帯の出荷額がどれくらいの割合を占めているかを示すものです。この図から,全国の工業地域・工業地帯の出荷額がどれくらいか・日本の産業において何番目に栄えているのか,を理解することができます。

例えばこの図では一番左に17.9%という割合である中京工業地帯が来ています。このことは日本で一番ものを作っていることを指します。そしてその出荷額は全国の出荷額32兆円に17.9%をかけることで約5兆円と計算できる,というわけです。

それではこのグラフを使って,京浜工業地帯の特徴を覚えていきましょう。今回の記事で取り上げている京浜工業地帯の割合はグラフの赤色の部分になります(データは教育出版株式会社から引用しています)。

このグラフから,京浜工業地帯は日本で5番目に多くモノを生産していることがわかります。そしてその生産額は割合だと,全国のうち8.1%を占めているということも読み取れますね。第5回の北九州工業地帯編で生産性の高い4箇所の工業地域のことを工業地帯と呼ぶ,という話をしましたが,京浜工業地帯もこの工業地帯の1つに該当します。したがって第5位・8.1%という数字の高さには納得できるものがありますね。

なお8.1%という割合は少し瀬戸内と近いため,データの取得年度によっては順位や割合が変わっている場合があります。値の変動は京浜工業地帯に限った話ではないのですが,特定の工業地域・工業地帯の情報を覚えるときは大雑把に覚えておくと良いでしょう。今回の場合,京浜は「5位くらい」「10%はいかないくらい」と把握しておいてください,

この工業製品出荷額についてのグラフはシリーズを通して全ての回で掲載していきます。よければ他の地域と比較したり,過去に読んだ記事の内容を思い出したりしながら,この範囲を完璧に仕上げていきましょう。

盛んな産業について

続いて京浜工業地帯の工業種類別の割合を見ていきましょう。第1回の瀬戸内工業地域編でお話ししたように,工業の種類には金属・機械・化学が含まれる重工業と,軽工業は食料品・繊維に分類することができます。日本全体で見ると重工業が盛んで,とりわけ機械産業に優れています。より詳しい区別や意味を知りたい方は,ぜひ過去の記事を見返してみてください。

それではグラフを使って特徴を抑えていきましょう。このグラフは全国と京浜工業地域の工業種類別出荷額割合を並べたものになります。グラフの見方ですが,割合の数字が大きければ大きいほど,盛んにモノが生産されている産業を意味します。全国のグラフと北九州のグラフとを比べて割合が大きいもの・小さいものに注目し,特徴を理解していきましょう(データは教育出版株式会社HelloSchool社会科からの引用です)。

このグラフから, 京浜工業地帯では機械産業化学産業だということがわかります。機械産業の割合は49.4%,化学産業の割合は17.7%と高めです。日本全国のグラフを比べるとほんの少しの差しかないように感じられますが,この数値はどちらも全国2位です。

これまで色々な工業地域・工業地帯を見てきましたが,そのほとんどは1つの種類に特化していました。例えば京浜の隣,京葉工業地域では化学の割合が高い一方機械や金属の割合は低かったですし,同じ関東にある関東内陸工業地域は機会の割合が高い一方金属や科学の割合が低かったですね。その分,機械も化学も栄えているというのは他の地域にはない特徴となります。忘れずに覚えておいてください。

ちなみに2つの産業,それも機械・化学に優れているといえば,瀬戸内工業地域もこの2つの種類の産業が盛んでしたね。そのため「どこが違うのだろう…?」と疑問に思われているかもしれません。したがって相違点を解説していきたいのですが,違いを知るためには特徴・発展の背景を抑えている方がよりわかりやすいでしょう。そのためまずはなぜ機械・化学が盛んかについて触れていくことにします。

なぜが機械・化学が盛ん?

京浜工業地帯で機械産業と化学産業が発達している理由は,他の興業地域・工業地帯でも何度か説明したものになるのですが,この地域が海に面しているからです。海に面しているということは,機械や化学という工業に必要になる原材料を輸入しやすい・出来上がった製品を輸出しやすいということです。このような利便性から,2つの産業の発展という特徴が成立してきたのでしょう。

また人口の多さも理由の一つと言えます。先ほど地図を用いて説明したように,京浜工業地帯とは,東京と神奈川を含む地域のことを指しました。ご存知かもしれませんが,東京都の人口は全国第1位・神奈川県の人口は全国第2位です。そのためこの京浜という地域には必然的にたくさんの人が集まり,人が集まるということはお金も集まるというわけです。したがって東京湾の埋立地に工場が次から次へと作られ,人とお金が工業に使われるようになり,発展が進んでいったというわけです。

ちなみに京浜工業地帯に工場を持つ有名な会社として,自動車メーカーの日産カワサキが挙げられます。企業名や工場名まで覚えるのは難しいかもしれませんが,余裕があれば把握しておきましょう。

瀬戸内との違いは?

ここからは同じような特徴を持つ瀬戸内工業地域との特徴を比べていきましょう。日本にある工業地域・工業地帯にはそれぞれ特徴がありますが,中には似たような特徴や性質を持つものもあります。景品と形容の違いもそうですが,中学受験の社会をマスターするためには,これらの似たような地域をきちんと区別する必要があります。

では類似した特徴を持つ瀬戸内と京浜はどこが違うのでしょうか。大きな違いとしては,出荷額金属の割合その他の工業が挙げられます。一つずつ見ていきましょう。

まず出荷額ですが,これは「出荷額について」のグラフを見てもらうとわかりやすいでしょう。瀬戸内工業地域は9.6%であるのに対し,京浜工業地帯は8.1%と結構差があります。そのためもし2つの地域を比べるような問題が出てきたら,まずは出荷額の大きい方はどちらかと考えていくといいでしょう。

次に金属の割合も重要ですね。割合を比較するために,瀬戸内工業地帯のグラフを載せておきます。「盛んな産業について」の京浜のグラフと見比べてみましょう。

ここで金属の部分の割合を比べてみると,瀬戸内は18.3%であるのに対し京浜は8.9%と2倍近く差がありますね。これは京浜が特別劣っているわけではなく,どちらかといえば機械や化学が栄えている分相対的に割合が低くなっているだけでしょう。そのため特に理由や背景などを覚える必要はないですが,金属に大きな違いがあると理解しておきましょう。

最後にその他の産業について解説していきます。その他というのは,日本で栄えている金属・機械・化学の重工業以外のことをここでは指しています。

瀬戸内工業地域ではせんい産業が盛んでしたね。その背景には,海上交通の便が良いという地域性から綿花が集まり,その綿花から織物を作ることが伝統となっていったという歴史がありました。他方,京浜工業地帯はせんい産業はそこまで盛んではなく,発達している産業としては印刷業が挙げられます。この印刷業については下の章で詳しくご案内しますが,このように重化学以外のところで違いを覚えておくと,分別しやすいかと思われます。

印刷業も栄えている京浜!

それでは上の章で少し触れた,京浜工業地帯における印刷業について説明していきます。

印刷業とは本を作って売る産業だと考えてもらえるといいでしょう。東京・神奈川を含む京浜工業地域には,印刷業を営む出版社などがたくさんあります。集英社・小学館など,読者の方々も聞き覚えのあるような企業が勢揃いしています。どれほど栄えているのかというと,印刷業の出荷額の25%はこの京浜で賄われていると言われるほどです。

発展している理由には,先程挙げた人口の多さがやはり関係しています。人口が多いということは情報が集まるということでもあります。そのため色々な情報が京浜に集まり,本となって出回るというわけですね。重要な特徴の一つとして覚えておいてください。

工業以外産業の特徴!

ということで,ここまで京浜工業地帯の特徴を見てきました。次は工業以外の産業である農業や漁業について注目していきましょう。ここで工業以外の産業についても合わせて解説する理由は,地域ごとに産業・人口・気候などの要素をまとめて覚えるのが社会をマスターする近道だからです。受験においては,1つの地域に関連して色々な範囲・分野の内容が登場するという複合問題が頻繁に登場しがちです。そのためこのような複合問題に対応するため,この記事で産業について一気に抑えられると,周りの受験生と差がつけられるでしょう。

ただ,やはり優先して覚えるのは工業の特徴です。もし上で書いた工業の特徴がまだ掴めない,また少し難しいように感じていたら,飛ばしてしまっても構いません。余裕がある方は,続きを読んで軽く頭の中に入れておくと役に立つでしょう。

農業の特徴は?

まずは京浜工業地帯の農業の特徴についてです。この京浜工業地域では,何回か他の回の記事でも登場している近郊農業が取られています。京浜は東京・神奈川という人口の多い都市圏に近いため,作物を育てて新鮮なうちに届けるということが可能です。最近だと,この京浜は都市に「近い」のでなく都市の「中にある」ことから,都市農業が行われていると言ったりもします。ともあれ,都市圏に位置するという特性が活かされていますね。

主な特産物は,果物がたくさん栽培・出荷されています。あまり聞いたことがないかもしれませんが,神奈川県というのは全国で2番目にパンジーの出荷量が多い地域です。ただここまでマニアックなことは受験には登場しないと考えられますので,近郊農業という性質を中心に覚えておくといいでしょう。

漁業の特徴は?

次に京浜工業地帯の漁業の特徴について見ていきます。京浜という地域は東京湾相模湾という2つの海に面しているため,様々な漁業が取られています。日本の漁業には大きく分けて,陸に近い海で漁を行う沿岸漁業・少し遠めの海に向かう沖合漁業・かなり陸から離れた海に行く遠洋漁業がありますが,これらが満遍なく営まれている印象です。

例えばマダイやアナゴ,マグロなどの水揚げが盛んです。海以外にも,相模川や芦ノ湖でアユやワカサギが獲れたりもします。その他深海魚が水揚げされることもあり,多種多様な魚が獲れます。農業と同様にここまで細かい知識を覚える必要はないですが,豊かな漁場であることを把握しておきましょう。

まとめ……の前に

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まとめ

今回は京浜工業地帯の特色について簡単にまとめていきました。この工業地域・工業地帯の特集シリーズも折り返しを迎えているため,全部の回に目を通している方は情報量で頭がパンクしているかもしれませんが,心配要りません。受験本番までに覚えておけば問題ないので,焦らず少しずつ頭に入れていきましょう。本記事が今後の学習のお役に立てれば幸いです。

(ライター:大舘)

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