本日解説するのは、「開成中学校」さんの国語の入試問題です。
高等部は東大合格者数39年連続1位を誇る名門、開成中学校。
そんな開成中学校の国語の入試問題は、どのようなもので、どんな対策をしていけば良いのでしょうか。
学校情報や入試の基本データをまとめた上で、開成中学校さんの入試問題を分析し、問題を解くにはどういった力が必要なのかを解説します。
Contents
【学校情報】
[応募状況]
◎2020年度:募集人員 300人
応募者数 | 受験者数 | 合格者数 | |
男子 | 1266人 | 1188人 | 397人 |
[倍率]
◎2020年度:3.0倍 (2016年度~2020年度まで2.9倍~3.0倍で推移)
[進路実績]
◎2020年度:大学合格者数
国公立大学 | 私立大学 | ||
東京大学 [理科三類含む] | 185名(119名) | 慶応義塾大学 [医学部含む] | 167名(92名) |
京都大学 | 9名(6名) | 早稲田大学 | 238名(125名) |
一橋大学 | 7名(3名) | 上智大学 | 17名(10名) |
東京工業大学 | 11名(8名) | 東京理科大学 | 60名(27名) |
大阪大学 | 2名(0名) | 明治大学 | 33名(10名) |
東京外国語大学 | 2名(0名) | 中央大学 | 13名(3名) |
筑波大学 [医学部含む] | 6名(3名) | 青山学院大学 | 2名(0名) |
国公立大学[医・歯学部] | 私立大学[医学部] | ||
東京大学 | 13名(9名) | 慶応義塾大学 | 20名(12名) |
東京医科歯科大学 | 6名(4名) | 順天堂大学 | 13名(6名) |
京都府立医科大学 | 1名(0名) | 東京慈恵会医科大学 | 16名(8名) |
千葉大学 | 10名(7名) | 日本医科大学 | 11名(5名) |
東北大学 | 2名(0名) | 日本大学 | 2名(0名) |
・他大学多数合格 / 海外大学合格者数34名(イェール大学など含む)
※表の( )内は、新卒者合格人数。
<学校公式HP「『開成中学校高等学校』2020年大学合格者数」より一部抜粋。>
[学校説明会日程]
◎2019年度:中学校説明会(全6回)
- 第1回 10月19日(土) 9:30~11:00
- 第2回 10月19日(土)11:15~12:45
- 第3回 10月19日(土)15:15~16:45
- 第4回 10月20日(日)11:15~12:45
- 第5回 10月20日(日)13:30~15:00
- 第6回 10月20日(日)15:15~16:45
<学校公式HP「『開成中学校・高等学校』学園説明会」より抜粋>
[入試情報・日程・科目数]
◎2020年度入試
入試 | |
日程 | 2020年2月1日(土) |
試験内容 | 学力検査 [国語・算数・理科・社会] |
出願期間 | 2019年12月20日(金) ~ 2020年1月22日(水) |
合格発表 | 2020年2月3日(月) 13:00~ |
手続期限 | 2020年2月4日(火) 9:00~12:00 |
説明会 | 2020年2月11日(火) 13:00~ |
<学校公式HP「『開成中学校・高等学校』2020年度開成中学校生徒募集要項」 より抜粋>
【基本データ】
[試験時間・満点]
◎2020年度入試
国語 | 算数 | 理科 | 社会 | |
試験時間 | 50分 | 60分 | 40分 | 40 |
満点 | 85点 | 85点 | 70点 | 70点 |
<学校HP「『開成中学校』2020年度開成中学校生徒募集要項」より抜粋>
[問題構成・解答形式]
開成中学校の国語は、試験時間50分85点満点の入試です。
ここ3年間の入試では、大問が2~3問、小問数は11~14問の問題数で、全ての問題の解答形式が「記述での解答」となっています。ただ、問題の内訳としては、漢字の書き取りなど語句の問題で毎年4~5問の出題があり、読解問題の記述式の問題は7問程度です。読解問題の記述式の問題は字数の制限は明示されておらず、解答欄1行~2行(多くて4行)でまとめる問題が多いようです。
また、近年の問題構成は、大問1に「小説の読解問題」、大問2に「説明文やグラフ・詩の読解問題」が配置されている場合が多く、語句の問題は大問3として独立して出題される場合と他の読解問題の中の小問として配置されている場合の2パターンがあります。
[合格最低点・平均点]
・2020年度:合格者最低点 193点
国語 | 算数 | 理科 | 社会 | 合計 | |
合格者平均 | 51.5 | 49.5 | 56.0 | 54.3 | 211.3 |
全体平均 | 42.3 | 38.6 | 48.1 | 50.0 | 179.0 |
満点 | 85 | 85 | 70 | 70 | 310 |
※過去5年間合格者最低点
- 2020年度 193点
- 2019年度 218点
- 2018年度 227点
- 2017年度 195点
- 2016年度 196点
【近年の出題内容】
◎2020年度
大問1 | 小説 | 記述式5問 | 記述 (心情・表現・内容) 5問
※字数制限なし。解答欄の長さ1行/2行。 |
大問2 | 説明文 | 記述式9問 | 語句 (漢字の書き取り) 7問
記述 (主題・内容) 2問 ※字数制限なし。解答欄の長さ2行。 |
◎2019年度
大問1 | 小説 | 記述式4問 | 記述 (心情・内容) 4問
※字数制限なし。解答欄の長さ1行/1.5行/2行。 |
大問2 | 説明文 | 記述式7問 | 語句 (漢字の書き取り) 4問
記述 (内容・理由) 3問 ※字数制限なし。解答欄の長さ2行。 |
◎2018年度
大問1 | 小説 | 記述式4問 | 記述 (心情・内容) 4問
※字数制限なし。解答欄の長さ2行/2.5行/4行。 |
大問2 | グラフ | 記述式2問 | 書き抜き (表現) 1問
記述 (内容) 1問 ※字数制限なし。解答欄の長さ4行。 |
大問3 | 語句 | 記述式5問 | 語句 (二字熟語) 5問 |
【出題傾向】
[出題のポイント]
- 『小説』の読解を軸に、説明文や資料・詩の読解も出題。小説を中心にしながらも、幅広いジャンルの読解問題の対策を!
開成中学校の国語の問題では、大問1に『小説』の読解が配置されていることが多く、『小説』の対策は必須と言えます。設問内容としては、心情や内容を問う問題も多く、比較的スタンダードなものではあるでしょう。ただ、本文にある『隠喩的な表現』に着目し、そこに表現された内容や心情を説明する問題や、登場人物の性格や出来事から人物の心情を自力で推測してまとめなければいけない問題も出題され、試験時間内で問題を解き終わるには、なかなか重めな記述の問題であると言えます。
また、大問2では、説明文や資料(グラフ)・詩など、出題されるジャンルは多岐に渡ります。各ジャンルとも設問数は少ないですが、こちらも記述式の問題であり、小説と同様難度が高いため、全てのジャンルに対し穴が無いように万全の準備をするには、なかなかの時間が必要と言えるでしょう。 - 全ての問題の解答形式が『記述式』! スピード感をもって本文内容を整理し、内容を端的にまとめる練習を!
開成中学校の国語の問題は、全て記述式での解答となっています。しかも、字数制限は明示されていないので、解答用紙の行数(長短)を見て、どのくらいの文量でまとめるかを自分で判断する必要があります。
記述式の問題傾向としては、「傍線部の前後の根拠となる文章をもとに端的にまとめかえす問題」と共に、「本文を手掛かりに自分で内容を考えてまとめる問題」も出題されています。この2つの問題に試験時間内に対応していくためには、スピード感を持って本文の内容を整理する力、まとめるべき内容を端的な言葉で記述する力が必要だと言えそうです。 - 語句系統は『漢字の書き取り』が頻出。思わぬ減点をされないよう、日頃からハネ・トメなどにも気を付けて!
語句系統の問題としては、『漢字の書き取り』が頻出です。2020年度の問題では、設問の条件に「ハネ・トメなど丁寧でない場合は減点されることもあります。」とあり、日頃から漢字のハネ・やトメなども正確に練習をしていく必要があります。正答できているのにハネがなく減点されるなど、もったいない減点は絶対に避けたいところです。
また、語句の問題として独立して出題されていなくても、読解問題の中に、敬語の知識や故事成語の知識を手掛かりに解答させる問題も出題されているため、基本的な語句の知識は一通り身に付けておく必要があります。
[問題の分析と対策]
開成中学校の問題は、「大まかに文章の流れを整理して読むこと」と「細かい表現に着目して読むこと」の2つを、速く正確に行うことが求められているような問題であると見受けられます。
たとえば、2020年度に出題された「登場人物の心情や性格の変化に関する説明問題」は、出来事の前後を整理してまとめるタイプの問題ですが、その後の「なぜ傍線部の言葉にはカギ括弧(「」) がつけられているのか」と表現の理由が問われる問題は、表現の意味を登場人物の心情などから推測しないと解けないようになっています。また、『隠喩的な表現』を読み解いて説明する問題も、出来事の流れや心情と比喩を照らし合わせて述べられている内容を推測しなければいけません。
このように、小説の設問の中だけでも、「流れを整理するのみの問題」と「流れを掴んだ上で丁寧に読み込まなければいけないタイプ」の問題がちりばめられており、それを短い試験時間の中で解いていくためには、「流れを整理しながら速く読むけれども、立ち止まるべきところでは立ち止まって丹念に読んでいく」といった、『読みの緩急』ともいえる技術が重要になると言えるでしょう。
速く読むことだけを意識して闇雲に文章を読むのではなく、普段から、論理構造やキーセンテンスに着目して「読むところ」と「読み捨てるところ」を判別できるようにしていくことが大切です。最初は時間がかかっても良いので、小説であれば、登場人物の関係を整理しつつ心情表現には線を引いて読んだり、論説であれば、筆者の主張と事実を切り分けて、キーセンテンスに線を引いて読み進めたりするなど、内容を丁寧に整理しながら読む練習を行うのが良いと思われます。
また、開成中学校の問題では、記述をする際に「端的な言葉で内容をまとめる力」が必要になると思われます。文章中の言葉を繋げ、文末の言葉を設問の条件に合うように変えて記述するのではなく、本文中の言葉を用いながらも、自分が身に付けた語彙でわかりやすく言い換えて記述することが、設問と解答欄の長さから読み取ることができます。
そのように端的に言い換えて記述をするためには、本文内容をしっかりと理解する読解力と豊富な語彙、そして文章の書き慣れが必要と言えるでしょう。だからこそオススメしたいのが、文章を読んだ後の『字数制限付きの要約練習』です。
本文の内容を要約するためには、文章の流れだけでなく、筆者の主張や人物の心情など、本文中の本当に重要な箇所を掴まなければなりません。そして、字数制限付きの要約となると、重要な部分を掴んだ上で、コンパクトに内容をまとめる必要がでてきます。本文の言葉を繋げて要約しようとすると必然的に長くなってしまうので、コンパクトにするためには、本文の内容を端的な言い回しで表現する必要があります。その際に、本文の内容を自分の言葉で言い換えて説明する力が鍛えられるのです。
したがって、読解力+記述力も鍛えるためにも、読解問題を解く際に、『①線を引くなどの工夫をして本文の内容を整理しながら読む ②問題を解く ③字数制限付きの要約を行う』といったプロセスで学習を行うと、対策としては有効だと言えると思います。
そして、そういった記述の練習をする前に必ず必要になるのが、豊富な語彙を蓄えることです。
意味を知っていて、かつ、自分が使える語を増やさない限り、文章を読んで要約することは難しくなります。当たり前のようではありますが、文章を読んでいてわからない語があったら必ず辞書を引き、どういった意味なのかを確認すること。そして、その文章自体が何を言っているのかを理解することが重要です。
開成中学校の説明的文章の問題の中では、設問の傍線部の中に、「カルチャーショック」「実証的」「客観的」など、説明的文章で多用される語が含まれていることがあります。日常よく使われる語だけではなく、よく説明文や論説文の中で使われる語の意味を理解し、文章を書く際にも使えるまでにしておくと、解ける問題の幅がぐっと広がるでしょう。
[おすすめの問題集]
- ふくしま式「本当の語彙力」が身につく問題集[小学生版]
記述力の土台となる豊富な語彙を身に付けるためにオススメの1冊です。
類似の意味を持つ語がまとめられているため、同じ意味を持つ表現を理解しやすく、また、それらの言葉を使って一文を作る練習ができるようになっています。
1冊やりこむことで、使える語彙を増やすことができるのは間違いないと思います。 - ふくしま式200字メソッド「書く力」が身につく問題集[小学生版]
文章を書くための「型」を身につけることのできる1冊です。
文章を書くときに使うと良い論理構成を少しずつステップアップしながら、無理なく学ぶことができます。開成中学校の問題にも、「たしかに、~。しかし、…。」の構文に当てはめて文章を書く問題が以前出題されており、文章を書く時の型を知っておくことは損がないと思います。
問題集の終わりには要約を練習する単元もあり、文章を書くのが苦手、まとめるのが苦手な方にもおすすめです。
【総括】
本日は開成中学校の国語の入試問題の解説を行いました。
高度なレベルで読解も記述も行わなければいけない入試問題は、さすが名門校の入試と言えるでしょう。文章を「読む」「書く」ための力を養うということは「思考力」や「表現力」を高める1つの訓練にもなると思います。そうなると、入試はもちろん、それ以外の場面でも確実に活きてくると思うので、問題対策の際には、高度な「思考力」と「表現力」を身に付けているのだということを励みに演習を重ねてみてください。
【参考】
- 学校公式HP 『開成中学校・高等学校』
- 『ふくしま式200字メソッド 「書く力」が身につく問題集』特設ページ
- テレ東プラス 『THE名門校 日本全国すごい学校名鑑』
明治大学文学部卒。
明光義塾、トライグループと渡り歩いた豊富な指導経験を活かし、初学者の躓く勘所を抑えた記事を多数執筆。
大学での選考は日本近代文学で、芥川龍之介や梶井基次郎など大正時代の文学論にも造詣が深い。