以前の「勉強ができる子ども」のイメージといえば、たくさん勉強してたくさん知識を持っている、というものだったと思います。ですが、最近では中学受験でも、また学校でも「思考力」がある子どもが求められている、と言われていますね。では、思考力とは何でしょう?簡単にいうと、「勉強して知識を得て終わり」ではなく、得た知識を利用して自分で考え、問題を解決していく力や、問題を発見できる力、ということになるでしょう。
大学や高校ではすでに「思考力」が入試の評価の基準になってきていますし、中学入試においても特に最近顕著です。これから始まる新しい大学入試に向け、小さいころから思考力を育てよう、という方向性がだんだん明らかになってきています。今回は、中学受験を目指している今からでも思考力を育てる方法について書いていきたいと思います。
思考力が育つのは幼少期から
実は、思考力は幼少期から育ち始めています。幼いお子さんは、「なぜ?」「どうして?」を1日中繰り返していることもありますね。その時期からすでに思考力は育ち始めているのです。
「なんでだろう?」「どうしてそうなるの?」この純粋なお子さんの疑問に対して、親御さんがどう答えるかによって思考力が育つかどうかが決まります。「忙しいからあとで」はやはり禁物です。また、すぐに答えを教えてしまうというのも、思考する時間を奪ってしまいます。
ですから、途中までのヒントを与えて考えさせ、それでもわからなかったら次のヒントを与える、ということを繰り返したり、どうしてそうなるのか、子どもがわかる適切なことばで、また理解できる範囲で説明したり、なるべく自分自身で答えを見つけられるようにサポートすることが大切です。そうすると、お子さんは自分の中にある情報を駆使し、答えを導き出そうとする力を自分で育てることができるのです。
でも、幼少期はすでに過ぎている・・・今からでは「思考力」を育てることはできないのでしょうか?
今からでも思考力を育てる方法①スケジュール管理
自分で問題を解決する力を育てるためには、中学受験は大きなチャンスです。塾のアドバイスは必要になるでしょうが、入試までの目標や学習スケジュールを自分で考えて実行していくことが思考力を育てます。最初は自分一人でできなくても、親子でやってみるうちに、次の目標設定やスケジュール管理が自分でいくらかでもできるようになり、だんだん自分でできる割合が高くなってくれば、思考力は育っていきます。
立てていた計画が遅れたり、模試の結果によっては重点を置くべき科目が変わったりと、中学受験の目標設定やスケジュールはめまぐるしく変化し、立て直しを繰り返していかなければなりません。スケジュールのメンテナンスですね。その機会をとらえて、スケジュール管理を自分で行うことができるようになってくると、自分で「解決する」力がつくわけです。どうしても、「時間がないから」と、親御さんが自分ですべて決めて「この通りにやりなさい」というケースが多いですが、だんだん本人に任せるようにして、少しずつ手を引いていく、困ったときには相談に乗る、という姿勢でいていただきたいと思います。
今からでも思考力を育てる方法②体験学習
学習面では、わからない問題に対してすぐ答えを与えるのではなく、ヒントを与えながら、お子さんが自力で答えにたどりつけるように導いてあげましょう。この時期になると、簡単に答えが出る問題ばかりではなく、段階を踏んで答えを見つけていかなければならない問題が増えてきています。ですから、「どこまでわかっている」「ここからがわからない」「ここまではわかった」と、お子さん自身が段階的に自分は理解できるようになってきているんだ、という実感を持たせてあげることが必要です。
また、インターネットは、調べ物をするうえで中学受験においても便利なツールとなりますが、あくまでバーチャルな世界ですから、体験していないことも体験したような気持ちになってしまいます。ですから、使い方には注意が必要です。実際に体験したことは、五感も加わり、深い理解や知識の定着に役立ちます。それに比べて、目で見るだけの情報は疑似体験であり、五感をフルに使った体験ではないので、「情報」の域を超えません。情報として得たことはもちろん知識とはなりますが、体験を伴った知識には勝てません。
中学入試でも、実際に五感を使い、実体験を伴う学習をしてきているかどうかを試すような出題が増えています。「頭でっかち」にならないように、受験勉強の合間に、気分転換を兼ねて、五感を通した体験を積ませることも大切です。たとえば、実際に旅行に行く時間はなくても、旅行計画を立ててみる、という形で、例えば新幹線はどこで分かれているのかな、どこで特急に乗り換えればいいのかな、などという学習もおすすめです。中学入試でも、実際にその学校がある周辺地域について考えさせる問題が出題されることもありますよ(開成中学の『東京問題』などは有名ですね)。ぜひ、実体験を伴う学習をときどき取り入れてみることをおススメします。
今から思考力を育てる必要性
中学入試では、「思考力入試」なども行われる時代になりました。難しい問題が解ける、というよりは、問題点を見つけ、試行錯誤し、自分なりの解決方法を表現する、という入試が増えています。また、難関校の入試でも、その場で考えさせる問題、パターンでは対応できない問題の出題が増えてきています。ですから、中学入試を考えたとき、思考力を育てておくことは必要です。
ですが、思考力を育てるのは、中学入試で求められているからだけではありません。これからの将来のために、思考力は必要不可欠な能力です。覚えた正解をそのまま吐き出すのではなく、正解通りにならなかったとしても、状況に合わせてどうすべきか考え、実行できる大人になるために、思考力が必要なのです。
今、受験勉強を頑張っている受験生にとっては、中学受験をすることは思考力を育てるために実はとても良い機会です。ぜひ、今からでも工夫してみていただき、「自分で問題を解決する」姿勢を養うことができるように、ヒントを与えるなど、サポートしてあげてください。
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一橋大学卒。
中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。
得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。
現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。