【中学受験】社会の記述問題の注意点と対策法 実践編

前回の記事では、社会の記述問題の注意点と対策法について、必要な知識について、また国語の記述問題との違いと注意点を解説しました。今回は、現場で記述問題を解く際に注意すべき点と、踏むべきステップについて解説します。

最近の中学受験の社会の問題では、記述問題が非常に多く出題されるようになってきました。国語の記述問題の場合、問題となる文章中に答えとなる部分があり、その中から適切な内容を組み合わせて答案を作っていくのが特徴でした。国語の場合、配点も高いですし、塾の授業でも記述問題に触れることが多いので、いずれかの時期に受験生のご家庭でも対策する時間が必要だと意識するのではないでしょうか。

しかし、社会の記述問題の場合、社会自体が暗記で何とかなるという考え方を払しょくしない限り、対処することは難しいです。つまり、入試の問題の文章の内容からだけでは記述問題に対応できないのが社会の怖さです。受験生の皆さんは、社会の記述問題について、時間をとって対策をしていらっしゃるでしょうか。

社会の記述問題にはさまざまな出題スタイルがありますし、書く内容もさまざまです。また、問題文の中にすべての必要な知識が入っているわけではないので、何を書いても良いわけではないという特徴がある点に注意が必要です。受験生の皆さんは、社会の記述に必要な知識や、書き方のポイントについて意識して学習したことがあるでしょうか?

社会はどうしても暗記科目という印象があるからか、頭から一つひとつ知識を丸覚えしていくという学習をしている方も多いのではないでしょうか。ですが、そういった勉強方法では、社会の記述問題に対応するのはまず難しいです。最近の社会の記述問題では、ぱっと見ても何が問われているのか、何を書いたら正解になるのかがわからないような問題が増えているのです。

社会の記述問題は、問題文中に出てきていないけれども受験勉強では必須の知識を、適切なタイミングに、いかに正確に引っ張り出してきて文章にまとめる、というステップが大切です。出題された文章中にすべて答えがあるわけではないので、基礎基本の知識があることは大前提で、そのうえで知識と知識のつながりを理解し、自分の言葉で説明できなければ答えられないのが社会の記述問題だということを知っておきましょう。

社会の記述問題の対策として必要なのは、ピンポイントの知識ではなく、知識と知識のつながりである「線の知識」を身につけることです。「線の知識」を身につけるためには、、一つひとつの用語について、理由や背景についてもしっかり理解していくことが大切なので、線の知識を身につける、と意識して社会の学習を進めることが重要です。

今回は、社会の記述問題についての実践編について解説します。知識を身につけたら、それを現場でまとめ上げて相手にわかる文章にする必要があるので、やはり対策は必要です。これまで社会の記述問題の対策は特にしてこなかったという方も、記述問題を意識しながら社会の学習の方法を変えていくヒントにしてくださいね。

社会の記述問題の出題傾向は?

社会の記述問題は、「あるできごとの原因や理由」を問うものが非常に多く出題されます。また、最近の傾向としては、「あるできごとを詳しく説明させる」「今後の社会がどうなっていくと考えられるか」という、将来を見据えた社会の方向性について考えさせるという問題も少なからず出題されています。また、これまでは難関校で主に出題されてきた記述問題は、中堅校であっても、形を変えて出題されるようになってきています。

ピンポイントの知識では太刀打ちできない

社会というと「知識」を覚えていれば何とかなると思っていませんか?受験生の多くの方がそのような意識を持っているため、とにかく頭から知識を詰め込む学習をしているケースが非常に多いです。もちろん、基礎基本の用語の暗記は必要です。しかし、社会の記述問題では、それだけでは足りません。

社会の記述問題の場合は、答案の組み立て方が少し特殊です。社会の学習の基本はたしかに知識の正確な理解と定着ですが、社会の記述問題では、その問題の中に書かれていない必要な知識を選び、聞かれていることに合うように組み立てて文章の形で整理してまとめるというステップを踏むことが必要です。これは、国語と社会の記述問題の一番大きな違いでもあります。

「なぜこうなるのか」という、理由を問われている問題の場合であれば、あるできごとや特徴について、理由部分の知識がきちんと自分の頭の中で整理されている必要があります。それができていないと、必要な時にちょうど当てはまる知識を出してくることができません。ぴったり合った知識を出してくることが出来なければまず点数はもらえません。だからこそ社会の記述問題は、設問を読み、それに合った適切な知識を身につけて解答を作っていく訓練をすることが必要です。何の対策もなく解けるほど甘いものではない点に注意しましょう。

必要なときに必要な知識を使いこなせるためには、通常の社会の学習の取り組み方が大切です。知識を正確に使いこなせないと、記述問題に限らず、選択肢問題などでも正解できません。地名や人名などの固有名詞やできごとの「名前」だけを覚えていても足りません。ピンポイントの用語だけでは、点の知識を問う問題に答えることはできても、記述問題には対応できません。

「線の知識」を意識しよう

社会の記述問題では、答えとその理由の組み合わせが大切です。そのような問題を解くためには、点の知識と点の知識をつなぐ「線の知識」が身についていることが必要です。いくら1問1答の点の知識だけ詰め込んでも、知識と知識のつながりを問われる問題は解けません。

たとえば、あるできごとの名前は知っていても、その背景や因果関係まで深く正確に理解できていなければ、なぜそのできごとが起こったのかという理由を答えることはできませんよね。そのため、普段の学習の際にはピンポイントの知識だけでなく、どのように知識を線の形で入れていくのか、つながりを持たせるのかということが必要です。

では、このような「線の知識」を身につける重要性を理解したうえで、実際の社会の記述問題を解く際の実践的な注意点と克服法を見ていきましょう。

問題文の読み取りをしっかりと

国語の記述問題でも、問題文の読み取りは大切ですよね。文種ごとに読解方法をしっかり用いながら、文章中にヒントを残しながら文章全体を読み切って記述問題に対策することが必要です。

社会の記述問題を解く際には、問題文の読み取りはより重要になってきます。この点を理解せずに社会の学習をしている受験生の方が多いので注意が必要です。社会の記述問題においては、文章中に書かれていない関連知識を問題に応じて取り出してくることが要求されます。ですが、問題に合った知識でなければ意味がありません。社会の記述問題においては、問題文をしっかり正確に読み取ることが出来ていなければ、解答するためにどのような知識が必要で、いつそれを使わなければならないのか、ということが判別できないので、どのような知識が必要なのか見極めるためにも、問題文の読み取りは非常に重要なのです。

設問に合った知識を使いこなすことが必要

社会の記述問題では、上記のように問題文の読み取りが非常に重要ですが、その際に特に意識するべきことは、「問われているポイント」「答えなければならないポイント」がいくつあるのか、という点です。これを整理できないと、必要十分な答案を作ることが出来ません。

前回、キリスト教の弾圧の例を出しましたが、その時にはポイントは「江戸幕府の目指した支配構造」と「幕府にとってのキリスト今日の教えの不都合さ」の2つでした。ですが、特に上位校の社会の記述問題では、字数も200字程度のものがいくつも出題されることがあり、それぞれの問題で「問われているポイント」「答えなければならないポイント」を分けるのも複雑になってきます。

だからこそ、1つのテーマについてどれだけ関連知識があるのかといった「線の知識」をしっかり身につけて、設問に合った知識がどれだけあるのか、この問題にその知識が必要なのかそれとも必要でないのか、といったことを見極める必要があります。いくらたくさん文字を書いたとしても、それがその問題に必要なものでなければ減点されたり、最悪の場合0点になってしまうことがあり得ます。なぜかと言うと、「知っていることをただ書いただけ」とみなされたり、「知識の整理が出来ていない」とみなされたりしてしまう可能性があるからです。

だからこそ、点の知識を身につけたうえで線の知識を身につけたら、それを「どのように使いこなすか」ということがとても大切になってくるのです。その問題のポイントわけをしっかりとおこない、必要な設問に必要な知識を組み合わせて解答を作っていくのが、社会の記述問題対策としては一番大切なことです。

また、これは国語の記述問題とも共通しますが、時間に追われるために、いきなり文章を書きだしてしまい、最後に字数が足りなくなった、あるいは書きすぎた、同じことを繰り返して書いてしまった、ということになりかねません。社会の記述問題では「何を」「どのように」書いていくかが大切です。あせっていきなり文章を書き始めるのではなく、まずは「何を聞かれているのか」ということをしっかり把握しましょう。そのうえで、書かなければならないポイント頭から引っ張り出して、整理し、小分けにして考えていくことが必要です。

文章を書くためには、文章の「構成」がとても大切です。ですから、解答を作る際にもその意識をしっかり持つようにしましょう。解答の構成については次の項で解説します。

解答の構成をよく考える

社会の記述問題では、以下のステップを踏むことが必要です。

  • 問題文をしっかり読み解く
  • 設問をよく読み、何を聞かれているのか把握する
  • 聞かれていることに対応する知識は何なのか正確にとらえる
  • どの順番で何を書くか構成を考える
  • 書くことが決まったら、適切な順番で書いていく
  • 文末処理をしっかりする

最初の3つについては、前の項で説明したとおりです。社会の記述問題では、問題文の読み取りが国語以上にとても大切です。そこで書かれていることも記述のヒントになることがありますし、必要な知識を確認するためにも重要です。そして、記述問題の設問をよく読み、「何を聞かれているのか」というポイントを把握しましょう。それができないと、いくら書いても的外れな答案になってしまうので、しっかり把握するようにしましょう。「何を聞かれているのか」がわかったら、それを答案にするために必要な関連知識を正確に引っ張り出してきましょう。これが「知識を使いこなす」というポイントです。その設問に必要な関連知識を正確に、必要なだけ取り出して書き出しておきましょう。

書く必要のあるポイントを整理出来たら、次に実際に答案を書くために、構成を組み立てていきます。この「構成」が記述問題で点数が取れるかどうかを分けるキモの部分なので、ぜひしっかり行うようにしましょう。

社会の記述問題は、国語とは異なり、字数制限が設定されている問題がほとんどです。字数制限が設定されているということは、出題者側が「必要なことをきちんと入れて解答を作ったらこのくらいの字数におさまる」と考えている、ということの裏返しです。単に適当に字数制限が設けられているわけではないので、出題者の意図を読み取るようにしましょう。

字数制限がある以上、よけいな要素や不必要な知識を入れてしまうと、字数制限をオーバーしたり、肝心の聞かれていることに答えられていない答案になってしまいます。字数制限にばかり注意が向いてしまうと、とにかく「書かなければ」ということにばかり意識が行ってしまい、肝心の問われている内容や必要な要素が抜けてしまうということになりかねません。そうすると、書いても書いても出題者の要求にこたえていることにならないため、点数はもらえないのです。

もし、洗い出したポイントを全て盛り込むとすると、字数がオーバーしてしまう場合には、必ず自分が必要だと思った回答の中には必要のない知識や項目が含まれている、と思ってください。逆に、字数が大幅に余ってしまう場合は、書かなければならない必要な要素をすべて書けていない、ということになります。このような場合には、もう一度問題文、設問に戻って、「何を聞かれているのか」「この問題を書くにはどの要素が必要なのか」「関係ないことを書いていないか」「足りない点はないのか」といったことを考え直す必要があります。

これらの手順は、実際の入試や模試でいきなりやろうとしてもできることではありません。普段の学習の中でポイントを意識しながら、何が必要で何が必要でないのか、また、解答と自分の答案を見比べて、足りていなかった知識を再度見直して、忘れていたものについては線の知識として関連付けて覚え直す、ということをしておくことをおすすめします。

まとめ

社会の記述問題は、近年特に出題が増えています。特に、大学入試改革を見据えて、各中学校は記述問題という形で正確な知識とその運用ができているかどうかを試すために出題しています。そして、難関校の専売特許だったように思われてきた社会の記述問題のすそ野は広がり、中堅下位校でも多く出題されており、その傾向は今後も続くと考えられます。

社会の記述問題の基本は、やはり何といっても正確な「知識」に基づく記述です。その知識も、単なるピンポイントではなく、1つのことを核にして、関連する知識を塊で覚える「線の知識」でなければ記述問題に対応することはできません。

また、国語の記述問題以上に、社会の記述問題には必要十分に書かなければ満たすことの出来ない字数制限が厳しく設けられています。社会の得意なお子さんはあれもこれも知っているから書いてしまおう、として聞かれていることから離れてしまったり、字数をオーバーしてどこを削ればよいのかわからなくなってしまうことが良く見られます。苦手なお子さんの場合、知識そのものが出てこなくて白紙に近い形になってしまう、ということになりかねません。

社会の記述問題で字数制限がある場合は、最低でも9割~9割5分は埋める必要があります。出題者が必要十分な内容を書けばそのくらいの字数になるはず、と想定しているからです。しっかりと必要なことを聞かれたとおりに書くことが出来るように、出題者の意図をくんで訓練することが必要です。

ですが、難しく考える必要はありません。必要な知識を必要なときに記述の際に使えるように、基礎基本を徹底して、知識を正確に定着させ、記述の構成をしっかり考えて記述の訓練を積んでいきましょう。社会の記述問題は部分点が狙えるので、白紙答案で出すのはもったいないです。ぜひ苦手意識を持たないように、今のうちから社会の記述問題の対策のためのステップを意識した学習を進めてくださいね。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。