【中学受験】国語力アップのための過去問活用法

今年の夏休みは、例年以上に自宅学習が重要になってくると考えられます。どの教科で何をどのように学習していこうか、ということを最初に計画立てて行うと自宅学習は非常に効率的になりますが、算数や理科、社会についてはどういった単元が苦手、と理解しやすいのに対し、国語は文種ごとに分けられていることが多く、漠然としていて何をどのように進めたら良いのかわからないという受験生は多いのではないでしょうか、

国語については、多くの受験生や保護者の方が、「直前期に過去問を解けば何とかなる」「いまは他の教科のほうがやらないといけないことが負いから後回しにしよう」とお考えになりますが、それはあとあと大きな壁となって、国語の学習時間を確保できず、ほかの教科にも悪影響を与えてしまう考え方です。国語は算数、理科、社会といった教科の土台になる重要な教科だからです。

文章題を解くときにも、問題文を正確に読まなければ条件を正確に把握できず、いくら考えても答えが出てきません。また、正しく答案を書く力がなくては、説明しなさい、といった理科社会、式を正しく説明しながら書く算数の問題に対処することができなくなります。

「国語力」が中学入試の合否を分けると言っても良いでしょう。読む力、整理する力、語彙力、書く力、それらを総合的に身につける必要がある、それが中学受験で求めらている「国語力」です。後回しにしても要請できるほど容易に身につけることはできません。

ただし、志望校によって求められる国語力は変わってきます。今回は、過去問を上手く利用して国語力をアップしていく方法について考えてみたいと思います。

国語の過去問は夏休みに取り組んでもいい

サピックスにお通いの受験生の方は、すでに塾からの指示でいわゆる「電話帳」と呼ばれる過去問集に手を付けている、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。算数、理科、社会については、基礎基本がしっかり身についていないと解くことができないのでなかなか解くことができない・・・と悩んでいらっしゃることもあるかもしれません。

しかし、国語については少し様相が違います。通常の授業でも入試レベルの読解問題演習が中心になっているかと思います。この時期に過去問をすべてやるには学校によってはまだ難しいところもありますが、併願を考えているところや1月入試校として考えている学校、またそれらの学校と出題傾向が似ている学校の過去問については夏休みから取り組んで時間配分やどのような形で入試の国語の問題が出題されるのかを掴むことは夏休みの国語の学習として非常に有効です。

コロナの第二波のことも考えて早めに読解練習を

漢字やことばの知識がある程度身についていれば、夏休みは読解問題の学習に時間をかけて良いでしょう。特に過去問についてはほかの教科より早めに取り組んでおくと、今後の学習の指針を立てることもできるのでおすすめです。

それというのも、例年であれば、過去問を解くのは夏休み後の9月、10月あたり、あるいは志望校別コースが始まってからということがほとんどですが、今年は例年とは異なり、新型コロナウイルスの第二波が来ることが懸念材料です。もし第二波が来た場合は、秋以降の小学校や塾が休校になる可能性もあり、受験カリキュラムも変更される可能性も否定できません。場合によって、秋以降の学校や塾の授業スケジュールが変更される可能性があり、例年のように塾の授業の中で過去問演習に時間を割いてもらえるとは限りません。

保護者の方にとってみると、「いま過去問をやらせても点数はとれないのでは」「簡単な読解問題もできないのに」と慎重に考えるかもしれません。ほかの教科の場合はたしかにその通りです。まず夏休みにやるべきは基礎基本の徹底、知識の正確な理解と使いこなす力の養成です。しかし、国語の場合はもともとが読解問題演習であることがほとんどなので、過去問も使って学習を進めることが実は有効なのです。

具体的な進め方は?

以上の理由から、国語に関しては夏休みの間からぜひ過去問に取り組んでいただきたいところです。出願予定の学校はまだ決まっていないかもしれませんが、平均して5~6校程度であることが多いので、志望順位の低いところから順番に進めていくと無理なく過去問演習ができるでしょう。

どのくらい過去問を集めるのがいいかということについてもお伝えしておきましょう。第一志望校の場合は、10回分を目安にすると良いでしょう。1回しか入試を実施しない学校の場合は10年分、2回入試をおこなう学校の場合は5年分、といったように集めると良いでしょう。ただし、複数回入試をおこなう学校の場合、出題傾向を第1回入試と第2回入試で変えてくることもあります。また、受験層が入試回によって異なることもあるので、そのあたりは塾の先生と相談して、第何回の過去問を何年分、といったように取り組む過去問を取捨選択すると良いでしょう。

第二志望校は5~6年分、第三志望校なら3~4年分、それ以外は2年分程度、これらが夏休みから受験直前期までにやっておきたい過去問の量です。受験前までにやっていくので、夏休みの間にすべて過去問をやってしまうわけではないことには注意してください。おおむね全部で25回分の過去問を解いていくことを目安にすると良いでしょう。

夏休み、9月から10月ごろまでであれば、制限時間内に全部解ききることは難しいかもしれません。その場合は、10分~15分程度制限時間を延長して構いません。ただし、制限時間内に解いたのがどこまでなのか、ということは一目見てわかるようにしるしをつけておきましょう。制限時間を延長した場合は、できるだけ正答率を上げることを意識しながら解くようにしましょう。この時期過去問を解いたときに望ましいレベルは、合格者平均点の6~7割程度できていれば上出来です。あるいは、合格者最低点の8~9割もひとつの目安です。あくまでこの時期だから、ということに注意して解くようにしてください。

採点は誰がするのがいいの?

過去問の採点は、保護者の方がしてあげてください。受験生自身だと、志望校の過去問だから、ということで得点をとりたいという意識が働くので、客観的に間違いを間違いだと受け止められない傾向があります。そのため、大人が客観的な目で採点してあげることが望ましいでしょう。

ただし、記述問題の採点、添削をどうするかは保護者の方にとっても難しいかもしれません。赤本と言われる過去問集の記述問題の模範解答は実は的を外していることもあります。また、ことばの使い方などは、模範解答通りでなくても点数を得ることができるので、内容の正確性と表現の兼ね合いを測りながら採点し、添削までするのは大変です。記述問題だけでなく、選択肢問題についても、解説がわかりにくく、なぜ間違えたのかを把握するのが難しいこともあるのが過去問演習のネックになるところです。

そこで、過去問の採点は塾の先生など、第三者の指導者にお願いするのがおすすめです。塾によっては、家庭で解いた過去問を添削して返してくれるところもあります。もし、過去問を解いて持ってきたら採点してあげる、という先生がいたら、ぜひお願いしてみると良いでしょう。

ただし、今後第二波が来て授業がオンライン授業になったりした場合は、それも難しいかもしれません。ただでさえ入試が近づくと質問に来る受験生は増えるので、なかなか過去問添削までしてくれるという先生はなかなかいないのが現実です。

そこでおすすめなのが、過去問対策として個別指導や家庭教師を上手く活用することです。1対1なら、添削してくれた場合も、対話を通してどういう考えでそのような回答にしたのか、どのような段階を踏んだのか、勘違いは無かったのか、文章の内容を把握できているか、ということをしっかり見てもらえます。また、個別の場合、オンライン授業であっても「自分だけの先生」なので、自分のための過去問対策をしてもらえます。特に国語の過去問の添削は保護者にとっても難しいので、個別を上手く利用するのもおすすめです。

国語の過去問はやりながら力をつけていく

ほかの教科と異なり、国語の場合は、過去問を「実力がつくまで寝かせておく」のではなく、「解きながら実力をつけていく」ものです。この点を意識すると、過去問演習に対する意識が変わるでしょう。特に今年のような未曽有の状況では、国語学習において「解きながら実力をつける」ことが重視されるポイントとなります。

今頃から過去問を解いちゃっていいの・・・?と思われるかもしれませんが、志望順位が低い学校のものから、少しずつ進めていけばいいので、雑にやるのではなくていねいに解くことを心がけていきましょう。早めに手を付けて、志望校と自分の実力を測るためには、国語では過去問演習が非常に役に立ちます。指導者と相談して、出題傾向の似ているほかの学校の過去問をやってみても良いでしょう。

過去問演習をする目的は、入試に合格するためにつけるべき力を見極めることです。秋以降の学習計画を立てるためにも、国語に関しては過去問を解きながら力をつけていきましょう。国語の学習全体に言えることですが、学習内容にメリハリをつけながら、できることは後回しにせず、早めに取り組んでいくことが大切です。

 漢字・熟語ができると、記述に強くなる

過去問を解く際に注意しておきたいのは、漢字の学習です。漢字やことばといった知識は、それを運用し、読解問題の長い文章をスムーズに読み進んでいくために必要な道具です。また、熟語は、例えば物語文で重要な登場人物の心情や、場面の状況を端的に表すために必要な知識として欠かせないものです。

たとえば、「気持ちが高まること」を「高揚感」と表現できる受験生は、国語力の運用にたけていると言えるでしょう。簡単かもしれませんが「幸せな気持ち」を「幸福感」「悪いことをしてしまったという気持ち」は「罪悪感」といったように端的に言い表すことができれば、記述問題でも怖がる必要はありませんし、選択肢で心情を聞く問題でも正答率が上がります

漢字や熟語、ことばの知識は国語の学習、ひいては4教科の学習の基礎中の基礎です。夏休みの時期は難しいと感じる問題をたくさん解くことになります。そこで土台がしっかりしていなくては、解けるはずのものが解けるようになっていきません。過去問演習とともに、出てきた基礎基本の知識はしっかり確認しておきましょう。

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一橋大学卒。 中学受験では、女子御三家の一角フェリス女学院に合格した実績を持ち、早稲田アカデミーにて長く教育業界に携わる。 得意科目の国語・社会はもちろん、自身の経験を活かした受験生を持つ保護者の心構えについても人気記事を連発。 現在は、高度な分析を必要とする学校別の対策記事を鋭意執筆中。